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琉輝編
【琉輝編】 #7 唯一無二の友達
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「はぁ!?今日休みって!?」
翌日の早朝、僕の部屋にやってきた勝海が話した内容に、僕は思わずそんな声を出してしまう。
「だから、もう仕事はしなくて良いんだってさ。後は街で観光でもして帰れってウチの母さんが言ってたぞ」
「なんでまた…なぁ、勝海。もしかして僕…なんかやらかしたか?」
勝海の母親…つまりこの旅館の女将さんだ、もう仕事をしなくて良いと言っていたということは何か機嫌を損ねるような事をしてしまったのでは無いのだろうか?という不安が頭をよぎる。一応本来なら今日の昼まで働くつもりだったのだが…
「はぁ…駿、お前…」
そんな事を考える僕の様子を見た勝海が、呆れたような声でため息を付きながら言ってくる。
「お前…大分無理してんだろ?入院するくらいの怪我をして次の日にはまた働き出すなんてどうかしてるぜ」
「ハハッ、流石にあの時は三途の川が見えたな」
なるほどな、女将さんは僕に気を利かせてくれたわけだ。この旅館に来てからもそんなに話していた訳じゃ無かったが、変わって無いようで安心したよ。ほんとに…あの人には敵わないなぁ…
「まあ、そういうことだ。今日は琉輝ちゃんと一緒に楽しんでこいよ」
「ん?琉輝もか?」
「ああ、琉輝ちゃんは普段殆ど外に出ないんだろ?そんな子がいきなり働き出したらしんどいに決まってるだろ?」
まあ、確かにそうだな。昨日は色々と大変だったせいで琉輝にあまり気を配れてやれてなかったからな…
「・・・分かった、琉輝と観光でもしてくるよ」
「おう!俺の分も楽しんでこいよ!せっかくあんなに可愛い女の子とデート出来るんだからな」
デートなのかはともかく、琉輝も疲れてるらしいし一緒に街を回って楽しむのもいいかもな。
僕はそんな事を考えながら自分の部屋の掃除に取り掛かり、出発の準備をするのだった。
「よっ!じゃ行くぞ」
「お~う、駿君楽しそうだねぇ」
現在時刻は朝の9時、旅館の入口近くに集合した僕と琉輝は、そんな掛け声を掛け合っていた。
「でもまさか休みにしてくれるなんてねぇ」
「まあ、女将さんの気づかいには感謝しとこうぜ」
どうやら勝海は僕の部屋に行ったあとに、琉輝の部屋にも同じ事を伝えに行ったらしい。にしても、昨夜の風呂での事を琉輝はあまり気にしていない様子なので、少し安心する。あれが原因で避けられでもしたら立ち直れないからな…
「で駿君、どこに行くの?」
琉輝はこちらを見ながらそう聞いてくるが、僕も特に行きたい場所や予定があるわけではない。
「・・・んまぁ、街を歩いてたらなんか面白いものでもあるだろ」
「あ、えと…その…」
僕が琉輝の質問にそう返すと、琉輝は何か言いたげな様子でこちらを見てくる。
「ん?どうした?」
「いや、じゃあさ…ボク、行きたい場所があるんだけど」
「おう、良いぞ。で、どこに行きたいんだ?」
騒がしく、様々な音が全方向から聞こえてくる。そして、そんな音を無視して、僕は目の前で集中している琉輝の視線の先に目を向ける。
琉輝が操作すると、アームが動き出し、ピッタリの位置で止めるとアームは下方向に移動して景品を掴む。そしてそのまま持ち上げて、移動を再開し、景品の獲得を意味する穴まであと少しという所で、アームは掴んでいた景品を落としてしまう。
「ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ!!取れないょ゙ょ゙ょ゙!」
それを見た琉輝は大声で叫び、床に力無く倒れ込む。
UFOキャッチャーでモバイルバッテリーを取ろうとしていた琉輝は5回ほどプレイしたのだが、惜しくも獲得には届かなかった。
「というか、行きたい場所ってゲーセンだったのか」
「うん、そうだよ。ボクも久しぶりに来たけどね」
琉輝が行きたい場所はどうやらゲームセンターだったらしく、僕と琉輝はスマホで近くのゲーセンを探してここまで来た。
「なんでゲーセンなんだ?別に帰ってからでも行けるだろ」
別にゲーセンが嫌な訳では無い。僕自身普通にゲーセンは好きだし、中学時代は良く知り合いと行っていた。しかし、何故琉輝が今ゲーセンに行こうと思ったのかをシンプルに知りたいのだ。
「ん~、まあ…気分?」
「おう、そうか」
気分なら仕方ないな、僕もよく気分で動くことがあるし、まあ琉輝もそういうことなのだろう。僕はそう納得する。
「う~ん、じゃあ次はあっちいこうよ!」
「ハハ、分かったよ」
モバイルバッテリーは諦めたのか、琉輝は某赤い帽子おじさんのレースゲームに指を指して僕の手を引く。
久しぶりに見る琉輝の楽しそうな表情に、思わず笑えてくる。
「僕は昔は"免許返納皇帝"の名で通ってたんだぞ?この僕に勝てるのか?」
「それ…多分バカにされてるよ…」
「え、まじか…普通にショックなんだが…」
と、そんなボケをしつつ、僕と琉輝は100円玉を機械に入れて、ゲームを開始する。
「駿君、弱くない?」
「まあ、免許返納皇帝の名に恥じないプレイだったな」
結果は琉輝が1位の僕が最下位。琉輝に負けるのはともかく、NPC負けるとは思わなかった。
壁に激突を繰り返し、アイテムも取れず、相手のアイテムには引っ掛かる。その結果最下位になってしまった訳だ。
「いや、琉輝。実は僕はまだ本気を出していないんだ」
「ん、それってどういう?」
「僕はまだ進化を2回残しているんだ…」
「いやそれってフリーザじゃん!」
「ふぅ~、楽しかったね!」
「ああ、そうだな」
それから2時間ほど、僕と琉輝はゲーセンで色々なゲームをしていた。琉輝は様々なゲームを網羅しており、素人同然の僕では勝負にならなかった。
「琉輝、なんか上手くないか?」
「まあね、昔かなりやってたし。・・・駿君下手だし…」
なんか失礼な発言がボソッと聞こえてきた気がするが…なるほど、昔やっていたのか。つまりこれがやってた者とやってなかった者の差と言うことか、やはり世の中経験が物を言うな。
「んまあ、ほらこれ」
僕はポケットから取り出したモバイルバッテリーを琉輝に手渡す。
「え?これ、ボクがさっき取れなかったやつじゃん…いつ取ったの?」
「さっき僕がトイレに行ってだだろ?その時にな」
前に黎奈とショッピングモールに行った時にかなりの回数UFOキャッチャーやったからな。そのおかげで多少は上達していたらしく、3回ほどですぐに取ることが出来た。これも経験のおかげだな。
「えへへ、駿君ありがとうっ!」
「ああ、どういたしまして」
琉輝が笑みを浮かべて嬉しそうにお礼を言ってくる。可愛いな。
「琉輝、旅館で働いてみてどうだった?」
時刻は昼前、ゲーセンの近くにあった喫茶店で僕と琉輝は一息ついていた。
目の前でパンケーキを食べている琉輝に僕はそんな質問をする。
「ん、まあ疲れたよね」
「ははっ!そりゃそうだろな」
普段引きこもりの琉輝が働いてたんだ、そりゃ疲れるのは当然だろう。
「でも楽しかったよ?色々させてもらったし」
そう言ってもらえると、僕も嬉しいし、勝海のやつも嬉しがるだろうな。これがきっかけで外に出る頻度が増えたり、学校に行けるようになったら嬉しいのだが。
「いい経験になったようで良かったよ。かなり頑張ってたしな」
「うん、まあ…でもまだ学校には行けないかな」
「まあそこはゆっくりでもいいさ、無理に行こうとしても逆効果だしな。僕も出来る限りの事はするから」
最初は少しだけでも良い、そこからちょっとずつでも進んでいけたら何の問題もない。それに琉輝は動画投稿で稼げているし、もしそれで稼げなくなってもそこで得たノウハウでなんとかなるだろう。だから学校に行けるに越したことはないが、無理する必要は無いんだ。
「駿君駿君」
「ん?何だ?」
急に名前を呼ばれ、目の前の琉輝に視線を合わす。
「あ~ん」
すると琉輝はパンケーキを一切れフォークに刺し、それを僕の目の前に持ってきた。
「お、サンキュ」
僕はそれを口に入れると、柔らかい感触とともに蜂蜜の味が口に広がっていく。
「美味いな」
「えへっ、そうでしょ?」
パンケーキを飲み込んだ僕はコーヒーを飲み、そう感想を伝える。
「ありがとね、駿君」
「ん、ああ」
突然お礼を言われたことで、少々戸惑ってしまうが、とりあえずそう返しておく。
バイトの件か、モバイルバッテリーの件か、僕にはそのお礼が何に対するものなのかは分からないが、琉輝が嬉しそうだからまあいいか…
「っっっ!ぃたっ!」
路地の裏、ボクは相手の同級生にビンタを食らわせられる。その衝撃で壁にぶつかって頭を打ってしまう。
「お前さぁ、調子に乗ってんじゃねぇぞ」
中学になってから2ヶ月、クラスのリーダー格になった女子にボクは目を付けられてしまっていた。周りにはその取り巻きもいて逃げることも出来ない。ここ数週間、様々な嫌がらせを受けてきたが、ここまで直接的なのは今回が初めてだ。
「っ…そもそも何で、ボクをいじめるの?」
そうなのだ、ボクは何故自分がこんな目にあってるのか、その理由を知らない。
「はぁ?それはねぇ…私の好きな先輩がお前の事が好きだからだよ!」
そう言って、女は再びボクの事を殴ろうとしてくる。
「お~い」
「え…?」
「あ?」
しかし、そこで少し離れた所から声が聞こえてきた。声のした方向に目を向けると、男子高校生らしき人がこっちに近づいてきている。
「な~にしてんの?いくらその子が可愛いからって暴力は良くないよ?」
「あ?ただのじゃれあいだっての!」
「んじゃあ"コレ"学校に見せても良いよね?」
高校生はそう言いながらスマホの画面を女に見せる。よく見ると、それはさっきボクが暴力を受けていた所を映した録画だった。
「先輩?だっけにも見せちゃったりして、そしたらもうおしまいなんじゃない?」
「おまっ!それ消しやがれ!」
「いや~だね!じゃあな!」
高校生は女を煽るような口調で捨て台詞を吐き、その場から逃げていく。それを追いかけて、女とその取り巻きも全員路地裏から出ていく。
「助かったぁ…」
壁に持たれれかかりながら、建物の間から垣間見える空を見上げながら息を付く。
「よお、大丈夫か?」
すると隣から声を掛けられて、そちらの方向に視線を向けると、そこには先程の高校生がおり、少し心配そうにこちらに視線を向けている。
「少し痛いけど…大丈夫です。」
「おうそうか、なら良かった」
高校生は安心したように笑みを浮かべ、ボクに手を差し伸べてくる。
「立てるか?」
「うん、立てます」
ボクはその手を掴み、壁にもたれ掛からせていた身体を起こして立ち上がるのだった。
その後、高校生と共に路地裏から出たボクは、近くにあったベンチに座り込んでいた。
「ほら、これやるよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
そんなボクに、高校生は缶のりんごジュースを手渡してくれる。
「敬語じゃなくていいよ。で、お前、いじめられてたんだろ?親とか友達には相談しなかったのか?」
「あ、うん。ボクの親は遠くに住んでるし、友達も居ないから…」
中学に入ると同時に家を出て下宿を初め、一人暮らしをしている。そのため、家族とはあまり会わないし、来たばかりの土地で知り合いも出来てない…そのためボクには頼れる人が居ない。
「最近は学校にもあんまり行けてなくてね…若干不登校気味…」
「それで親に帰って来いって言われないのか?不登校気味なのは学校から親に知らされてるだろ」
「いや、ウチの親は基本放任主義だからさ。ボクが帰りたいと言わなかったら無理に帰って来いとは言わないよ」
「そうか、それでも僕は学校に行ったほうが良いと思うけどな。その方が経験も積めるし」
「でも実はもう無理そうで…友達も出来ないし、いじめられるしで…」
正直もう学校には行きたくない…地元が嫌でこっちに飛び出して来たわいいものの、慣れない土地で色々あったりもしてもう疲れたし…
「なら無理に学校に行けとは言えないな…まあ元々初対面の相手にそんな事言われる筋合いも無いと思うけどな」
「そんな事はないよ、だってさっき助けてもらったんですから」
ボクは高校生から貰ったりんごジュースを飲みながらその言葉を否定する。ここまでの会話だけでもこの人は悪い人ではないと分かるし、何よりも助けてくれたのが嬉しかった。この地域に来てからはそんな事も無かったからより一層に。
「もし良かったらなんだけどさ、ウチで暮さないか?」
「・・・え…?」
いやいやいや、流石に助けてくれた恩人と言えども2人屋根の下で生活するのはまずいんじゃ無いのだろうか?確かに良いなとは思うが…その…襲われたり…しないとも限らないし…
と、そんな感じでボクが焦った様子で思考を巡らせていると、それを見た高校生は気づいた様子で訂正をする。
「いや、そういう下心とかは一切無いんだ!ただ、行き場が無かったりする奴らでシェアハウスをしてるってだけで。女の子も居る…というか僕以外は全員女の子だけども…」
その言葉を聞き、少し安心したと同時に、何故かがっかりもしてしまう。
なるほど、そういう事か。なんでそんな事をしてるのかは知らないけど、今の生活が続くくらいなら、いっそこの人と一緒に暮らす事にしても良いかもね。
「別に君が嫌ならいいんだ。その時はさっきのいじめ現場の映像を然るべき場所に出していじめてたやつらに制裁を食らわせ…それを眺めつつ僕は颯爽と何処かへ行くから」
「あの…ボクっ…」
ボクはその人に視線を向けながら、勇気を振り絞ってその言葉を言う。
「一緒に暮らしたいですっ!」
その言葉を聞いたその人は、無邪気な笑みを浮かべ、再びボクに手を差し出してくる。
「今更だけど、僕の名前は遠江駿。これからよろしくな」
ボクはその手を握りながら、駿さんと同じ様に自分の名前を名乗る。
「うん、ボクは琉輝。よろしく」
そうしてボクと駿さんは手を握り合う。先程の助けてくれた時とは違い、今度は対等な立ち場での握手を___
「いやぁ、楽しかったな!」
「・・・ん、色々と…回れた…!」
「あ~…足が死にそう…早くベッドにダイブしたい…」
「黎奈ちゃんと、陽向お姉ちゃん、とても楽しそうでした!」
「ボク達も楽しかったよ。ね?駿君」
現在時刻は昼の4時過ぎ、あの後全員で集合して昼飯を食い、最後に色々と街を回っていき、そろそろ帰りの電車が来る時間となっていた。
「そうよしゅん!そういえば琉輝と2人で遊んでたのよね?何普通にデートしてるのよ!」
「いやいや、違うっての!確かにゲーセンで遊んでたけど…な!琉輝!」
「うん、そうだね。普通に遊んでただけ、デートじゃないよ」
「そう、まあ!あんたらがデートしてようが私からすればどうでも良いことだけど」
嘘つけ…お前はめちゃくちゃ気にするだろ…という言葉は口に出さないでおく。
「・・・シュン君は、私以外とは…デートしないもんね?」
「いや、そんな事は…ない…よ?」
あの~黎奈さん。ヤンデレみたいな発言は辞めて頂けませんかね?怖いです。それはそうと前と比べ表情が少しだけ豊かになっていて嬉しいが。
「お兄ちゃんはモテモテですね!」
「ハハハ、やっぱり素質があるんだろうな!」
「あんたは調子乗らないっ!」
陽向にげんこつを食らわせられた。非常に痛い…誠に遺憾だ。
「理不尽だ…」
僕はそう言いながら天を仰ぐのだった___
「おつかれ、琉輝」
「あ、ありがと」
帰りの電車の中、ボクは隣に座っている駿君からりんごジュースを手渡される。
「みんな疲れて寝てるな」
陽向さん、黎奈、結希の3人は疲れていたのか早々に眠ってしまい、起きているのはボクと駿君だけだ。
「あ、これ初めて会った時にくれたやつと同じ…」
「まあな、お揃いだ」
駿君はそう言うと、笑いながらもう一つ同じ物を取り出し、それを飲み始める。
「ボク、あの時勇気を出して駿君に付いて行って良かったと思ってるよ。」
「そうか、僕もあの時琉輝を誘って良かったと思ってるぞ?」
「あの時駿君が誘ってくれなかったらボクはもうこの世には居なかったかもね?」
「おいおい、縁起でもない事言わないでくれよ。でも…まあそれなら尚の事誘っておいて良かったな」
ボクの駿君に対する気持ち…この感情が何なのか、ボクはこれまでずっと考えていた。
そして今朝、夢で見て「駿君と出会った日の事」を思い出し、ようやく結論を出す事が出来た。
「ふぁ~、疲れたな…」
駿君はそう言いながら背伸びをする。
「疲れてるなら寝たら?」
「ああ、そうさせてもらうよ…」
「ねぇ、駿君・・・」
ボクは眠る準備をしている駿君に一つの提案をする。
「膝枕…してあげよっか?」
それを聞いた駿君は一瞬考え込むような素振りを見せた後こう答える。
「ああ、じゃあお言葉に甘えさせて貰うよ…おやすみ」
そう言いながら駿君は横になり、ボクの足の上に頭を乗せる。少し重い駿君の頭に手を置き、少しだけ撫でて見る。
「・・・柔らかいな…」
「そうかな?ありがと」
駿君はその言葉を最後に、小さな寝息を立て始める。どうやら本当に疲れていたようだ。
駿君が眠りに付いたことを確認したボクは、駿君の耳元でこう囁く。
「駿君…駿君はボクの恩人で、家族で、そして何よりも・・・」
ボクの"唯一無二の友達"だよ___
翌日の早朝、僕の部屋にやってきた勝海が話した内容に、僕は思わずそんな声を出してしまう。
「だから、もう仕事はしなくて良いんだってさ。後は街で観光でもして帰れってウチの母さんが言ってたぞ」
「なんでまた…なぁ、勝海。もしかして僕…なんかやらかしたか?」
勝海の母親…つまりこの旅館の女将さんだ、もう仕事をしなくて良いと言っていたということは何か機嫌を損ねるような事をしてしまったのでは無いのだろうか?という不安が頭をよぎる。一応本来なら今日の昼まで働くつもりだったのだが…
「はぁ…駿、お前…」
そんな事を考える僕の様子を見た勝海が、呆れたような声でため息を付きながら言ってくる。
「お前…大分無理してんだろ?入院するくらいの怪我をして次の日にはまた働き出すなんてどうかしてるぜ」
「ハハッ、流石にあの時は三途の川が見えたな」
なるほどな、女将さんは僕に気を利かせてくれたわけだ。この旅館に来てからもそんなに話していた訳じゃ無かったが、変わって無いようで安心したよ。ほんとに…あの人には敵わないなぁ…
「まあ、そういうことだ。今日は琉輝ちゃんと一緒に楽しんでこいよ」
「ん?琉輝もか?」
「ああ、琉輝ちゃんは普段殆ど外に出ないんだろ?そんな子がいきなり働き出したらしんどいに決まってるだろ?」
まあ、確かにそうだな。昨日は色々と大変だったせいで琉輝にあまり気を配れてやれてなかったからな…
「・・・分かった、琉輝と観光でもしてくるよ」
「おう!俺の分も楽しんでこいよ!せっかくあんなに可愛い女の子とデート出来るんだからな」
デートなのかはともかく、琉輝も疲れてるらしいし一緒に街を回って楽しむのもいいかもな。
僕はそんな事を考えながら自分の部屋の掃除に取り掛かり、出発の準備をするのだった。
「よっ!じゃ行くぞ」
「お~う、駿君楽しそうだねぇ」
現在時刻は朝の9時、旅館の入口近くに集合した僕と琉輝は、そんな掛け声を掛け合っていた。
「でもまさか休みにしてくれるなんてねぇ」
「まあ、女将さんの気づかいには感謝しとこうぜ」
どうやら勝海は僕の部屋に行ったあとに、琉輝の部屋にも同じ事を伝えに行ったらしい。にしても、昨夜の風呂での事を琉輝はあまり気にしていない様子なので、少し安心する。あれが原因で避けられでもしたら立ち直れないからな…
「で駿君、どこに行くの?」
琉輝はこちらを見ながらそう聞いてくるが、僕も特に行きたい場所や予定があるわけではない。
「・・・んまぁ、街を歩いてたらなんか面白いものでもあるだろ」
「あ、えと…その…」
僕が琉輝の質問にそう返すと、琉輝は何か言いたげな様子でこちらを見てくる。
「ん?どうした?」
「いや、じゃあさ…ボク、行きたい場所があるんだけど」
「おう、良いぞ。で、どこに行きたいんだ?」
騒がしく、様々な音が全方向から聞こえてくる。そして、そんな音を無視して、僕は目の前で集中している琉輝の視線の先に目を向ける。
琉輝が操作すると、アームが動き出し、ピッタリの位置で止めるとアームは下方向に移動して景品を掴む。そしてそのまま持ち上げて、移動を再開し、景品の獲得を意味する穴まであと少しという所で、アームは掴んでいた景品を落としてしまう。
「ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ!!取れないょ゙ょ゙ょ゙!」
それを見た琉輝は大声で叫び、床に力無く倒れ込む。
UFOキャッチャーでモバイルバッテリーを取ろうとしていた琉輝は5回ほどプレイしたのだが、惜しくも獲得には届かなかった。
「というか、行きたい場所ってゲーセンだったのか」
「うん、そうだよ。ボクも久しぶりに来たけどね」
琉輝が行きたい場所はどうやらゲームセンターだったらしく、僕と琉輝はスマホで近くのゲーセンを探してここまで来た。
「なんでゲーセンなんだ?別に帰ってからでも行けるだろ」
別にゲーセンが嫌な訳では無い。僕自身普通にゲーセンは好きだし、中学時代は良く知り合いと行っていた。しかし、何故琉輝が今ゲーセンに行こうと思ったのかをシンプルに知りたいのだ。
「ん~、まあ…気分?」
「おう、そうか」
気分なら仕方ないな、僕もよく気分で動くことがあるし、まあ琉輝もそういうことなのだろう。僕はそう納得する。
「う~ん、じゃあ次はあっちいこうよ!」
「ハハ、分かったよ」
モバイルバッテリーは諦めたのか、琉輝は某赤い帽子おじさんのレースゲームに指を指して僕の手を引く。
久しぶりに見る琉輝の楽しそうな表情に、思わず笑えてくる。
「僕は昔は"免許返納皇帝"の名で通ってたんだぞ?この僕に勝てるのか?」
「それ…多分バカにされてるよ…」
「え、まじか…普通にショックなんだが…」
と、そんなボケをしつつ、僕と琉輝は100円玉を機械に入れて、ゲームを開始する。
「駿君、弱くない?」
「まあ、免許返納皇帝の名に恥じないプレイだったな」
結果は琉輝が1位の僕が最下位。琉輝に負けるのはともかく、NPC負けるとは思わなかった。
壁に激突を繰り返し、アイテムも取れず、相手のアイテムには引っ掛かる。その結果最下位になってしまった訳だ。
「いや、琉輝。実は僕はまだ本気を出していないんだ」
「ん、それってどういう?」
「僕はまだ進化を2回残しているんだ…」
「いやそれってフリーザじゃん!」
「ふぅ~、楽しかったね!」
「ああ、そうだな」
それから2時間ほど、僕と琉輝はゲーセンで色々なゲームをしていた。琉輝は様々なゲームを網羅しており、素人同然の僕では勝負にならなかった。
「琉輝、なんか上手くないか?」
「まあね、昔かなりやってたし。・・・駿君下手だし…」
なんか失礼な発言がボソッと聞こえてきた気がするが…なるほど、昔やっていたのか。つまりこれがやってた者とやってなかった者の差と言うことか、やはり世の中経験が物を言うな。
「んまあ、ほらこれ」
僕はポケットから取り出したモバイルバッテリーを琉輝に手渡す。
「え?これ、ボクがさっき取れなかったやつじゃん…いつ取ったの?」
「さっき僕がトイレに行ってだだろ?その時にな」
前に黎奈とショッピングモールに行った時にかなりの回数UFOキャッチャーやったからな。そのおかげで多少は上達していたらしく、3回ほどですぐに取ることが出来た。これも経験のおかげだな。
「えへへ、駿君ありがとうっ!」
「ああ、どういたしまして」
琉輝が笑みを浮かべて嬉しそうにお礼を言ってくる。可愛いな。
「琉輝、旅館で働いてみてどうだった?」
時刻は昼前、ゲーセンの近くにあった喫茶店で僕と琉輝は一息ついていた。
目の前でパンケーキを食べている琉輝に僕はそんな質問をする。
「ん、まあ疲れたよね」
「ははっ!そりゃそうだろな」
普段引きこもりの琉輝が働いてたんだ、そりゃ疲れるのは当然だろう。
「でも楽しかったよ?色々させてもらったし」
そう言ってもらえると、僕も嬉しいし、勝海のやつも嬉しがるだろうな。これがきっかけで外に出る頻度が増えたり、学校に行けるようになったら嬉しいのだが。
「いい経験になったようで良かったよ。かなり頑張ってたしな」
「うん、まあ…でもまだ学校には行けないかな」
「まあそこはゆっくりでもいいさ、無理に行こうとしても逆効果だしな。僕も出来る限りの事はするから」
最初は少しだけでも良い、そこからちょっとずつでも進んでいけたら何の問題もない。それに琉輝は動画投稿で稼げているし、もしそれで稼げなくなってもそこで得たノウハウでなんとかなるだろう。だから学校に行けるに越したことはないが、無理する必要は無いんだ。
「駿君駿君」
「ん?何だ?」
急に名前を呼ばれ、目の前の琉輝に視線を合わす。
「あ~ん」
すると琉輝はパンケーキを一切れフォークに刺し、それを僕の目の前に持ってきた。
「お、サンキュ」
僕はそれを口に入れると、柔らかい感触とともに蜂蜜の味が口に広がっていく。
「美味いな」
「えへっ、そうでしょ?」
パンケーキを飲み込んだ僕はコーヒーを飲み、そう感想を伝える。
「ありがとね、駿君」
「ん、ああ」
突然お礼を言われたことで、少々戸惑ってしまうが、とりあえずそう返しておく。
バイトの件か、モバイルバッテリーの件か、僕にはそのお礼が何に対するものなのかは分からないが、琉輝が嬉しそうだからまあいいか…
「っっっ!ぃたっ!」
路地の裏、ボクは相手の同級生にビンタを食らわせられる。その衝撃で壁にぶつかって頭を打ってしまう。
「お前さぁ、調子に乗ってんじゃねぇぞ」
中学になってから2ヶ月、クラスのリーダー格になった女子にボクは目を付けられてしまっていた。周りにはその取り巻きもいて逃げることも出来ない。ここ数週間、様々な嫌がらせを受けてきたが、ここまで直接的なのは今回が初めてだ。
「っ…そもそも何で、ボクをいじめるの?」
そうなのだ、ボクは何故自分がこんな目にあってるのか、その理由を知らない。
「はぁ?それはねぇ…私の好きな先輩がお前の事が好きだからだよ!」
そう言って、女は再びボクの事を殴ろうとしてくる。
「お~い」
「え…?」
「あ?」
しかし、そこで少し離れた所から声が聞こえてきた。声のした方向に目を向けると、男子高校生らしき人がこっちに近づいてきている。
「な~にしてんの?いくらその子が可愛いからって暴力は良くないよ?」
「あ?ただのじゃれあいだっての!」
「んじゃあ"コレ"学校に見せても良いよね?」
高校生はそう言いながらスマホの画面を女に見せる。よく見ると、それはさっきボクが暴力を受けていた所を映した録画だった。
「先輩?だっけにも見せちゃったりして、そしたらもうおしまいなんじゃない?」
「おまっ!それ消しやがれ!」
「いや~だね!じゃあな!」
高校生は女を煽るような口調で捨て台詞を吐き、その場から逃げていく。それを追いかけて、女とその取り巻きも全員路地裏から出ていく。
「助かったぁ…」
壁に持たれれかかりながら、建物の間から垣間見える空を見上げながら息を付く。
「よお、大丈夫か?」
すると隣から声を掛けられて、そちらの方向に視線を向けると、そこには先程の高校生がおり、少し心配そうにこちらに視線を向けている。
「少し痛いけど…大丈夫です。」
「おうそうか、なら良かった」
高校生は安心したように笑みを浮かべ、ボクに手を差し伸べてくる。
「立てるか?」
「うん、立てます」
ボクはその手を掴み、壁にもたれ掛からせていた身体を起こして立ち上がるのだった。
その後、高校生と共に路地裏から出たボクは、近くにあったベンチに座り込んでいた。
「ほら、これやるよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
そんなボクに、高校生は缶のりんごジュースを手渡してくれる。
「敬語じゃなくていいよ。で、お前、いじめられてたんだろ?親とか友達には相談しなかったのか?」
「あ、うん。ボクの親は遠くに住んでるし、友達も居ないから…」
中学に入ると同時に家を出て下宿を初め、一人暮らしをしている。そのため、家族とはあまり会わないし、来たばかりの土地で知り合いも出来てない…そのためボクには頼れる人が居ない。
「最近は学校にもあんまり行けてなくてね…若干不登校気味…」
「それで親に帰って来いって言われないのか?不登校気味なのは学校から親に知らされてるだろ」
「いや、ウチの親は基本放任主義だからさ。ボクが帰りたいと言わなかったら無理に帰って来いとは言わないよ」
「そうか、それでも僕は学校に行ったほうが良いと思うけどな。その方が経験も積めるし」
「でも実はもう無理そうで…友達も出来ないし、いじめられるしで…」
正直もう学校には行きたくない…地元が嫌でこっちに飛び出して来たわいいものの、慣れない土地で色々あったりもしてもう疲れたし…
「なら無理に学校に行けとは言えないな…まあ元々初対面の相手にそんな事言われる筋合いも無いと思うけどな」
「そんな事はないよ、だってさっき助けてもらったんですから」
ボクは高校生から貰ったりんごジュースを飲みながらその言葉を否定する。ここまでの会話だけでもこの人は悪い人ではないと分かるし、何よりも助けてくれたのが嬉しかった。この地域に来てからはそんな事も無かったからより一層に。
「もし良かったらなんだけどさ、ウチで暮さないか?」
「・・・え…?」
いやいやいや、流石に助けてくれた恩人と言えども2人屋根の下で生活するのはまずいんじゃ無いのだろうか?確かに良いなとは思うが…その…襲われたり…しないとも限らないし…
と、そんな感じでボクが焦った様子で思考を巡らせていると、それを見た高校生は気づいた様子で訂正をする。
「いや、そういう下心とかは一切無いんだ!ただ、行き場が無かったりする奴らでシェアハウスをしてるってだけで。女の子も居る…というか僕以外は全員女の子だけども…」
その言葉を聞き、少し安心したと同時に、何故かがっかりもしてしまう。
なるほど、そういう事か。なんでそんな事をしてるのかは知らないけど、今の生活が続くくらいなら、いっそこの人と一緒に暮らす事にしても良いかもね。
「別に君が嫌ならいいんだ。その時はさっきのいじめ現場の映像を然るべき場所に出していじめてたやつらに制裁を食らわせ…それを眺めつつ僕は颯爽と何処かへ行くから」
「あの…ボクっ…」
ボクはその人に視線を向けながら、勇気を振り絞ってその言葉を言う。
「一緒に暮らしたいですっ!」
その言葉を聞いたその人は、無邪気な笑みを浮かべ、再びボクに手を差し出してくる。
「今更だけど、僕の名前は遠江駿。これからよろしくな」
ボクはその手を握りながら、駿さんと同じ様に自分の名前を名乗る。
「うん、ボクは琉輝。よろしく」
そうしてボクと駿さんは手を握り合う。先程の助けてくれた時とは違い、今度は対等な立ち場での握手を___
「いやぁ、楽しかったな!」
「・・・ん、色々と…回れた…!」
「あ~…足が死にそう…早くベッドにダイブしたい…」
「黎奈ちゃんと、陽向お姉ちゃん、とても楽しそうでした!」
「ボク達も楽しかったよ。ね?駿君」
現在時刻は昼の4時過ぎ、あの後全員で集合して昼飯を食い、最後に色々と街を回っていき、そろそろ帰りの電車が来る時間となっていた。
「そうよしゅん!そういえば琉輝と2人で遊んでたのよね?何普通にデートしてるのよ!」
「いやいや、違うっての!確かにゲーセンで遊んでたけど…な!琉輝!」
「うん、そうだね。普通に遊んでただけ、デートじゃないよ」
「そう、まあ!あんたらがデートしてようが私からすればどうでも良いことだけど」
嘘つけ…お前はめちゃくちゃ気にするだろ…という言葉は口に出さないでおく。
「・・・シュン君は、私以外とは…デートしないもんね?」
「いや、そんな事は…ない…よ?」
あの~黎奈さん。ヤンデレみたいな発言は辞めて頂けませんかね?怖いです。それはそうと前と比べ表情が少しだけ豊かになっていて嬉しいが。
「お兄ちゃんはモテモテですね!」
「ハハハ、やっぱり素質があるんだろうな!」
「あんたは調子乗らないっ!」
陽向にげんこつを食らわせられた。非常に痛い…誠に遺憾だ。
「理不尽だ…」
僕はそう言いながら天を仰ぐのだった___
「おつかれ、琉輝」
「あ、ありがと」
帰りの電車の中、ボクは隣に座っている駿君からりんごジュースを手渡される。
「みんな疲れて寝てるな」
陽向さん、黎奈、結希の3人は疲れていたのか早々に眠ってしまい、起きているのはボクと駿君だけだ。
「あ、これ初めて会った時にくれたやつと同じ…」
「まあな、お揃いだ」
駿君はそう言うと、笑いながらもう一つ同じ物を取り出し、それを飲み始める。
「ボク、あの時勇気を出して駿君に付いて行って良かったと思ってるよ。」
「そうか、僕もあの時琉輝を誘って良かったと思ってるぞ?」
「あの時駿君が誘ってくれなかったらボクはもうこの世には居なかったかもね?」
「おいおい、縁起でもない事言わないでくれよ。でも…まあそれなら尚の事誘っておいて良かったな」
ボクの駿君に対する気持ち…この感情が何なのか、ボクはこれまでずっと考えていた。
そして今朝、夢で見て「駿君と出会った日の事」を思い出し、ようやく結論を出す事が出来た。
「ふぁ~、疲れたな…」
駿君はそう言いながら背伸びをする。
「疲れてるなら寝たら?」
「ああ、そうさせてもらうよ…」
「ねぇ、駿君・・・」
ボクは眠る準備をしている駿君に一つの提案をする。
「膝枕…してあげよっか?」
それを聞いた駿君は一瞬考え込むような素振りを見せた後こう答える。
「ああ、じゃあお言葉に甘えさせて貰うよ…おやすみ」
そう言いながら駿君は横になり、ボクの足の上に頭を乗せる。少し重い駿君の頭に手を置き、少しだけ撫でて見る。
「・・・柔らかいな…」
「そうかな?ありがと」
駿君はその言葉を最後に、小さな寝息を立て始める。どうやら本当に疲れていたようだ。
駿君が眠りに付いたことを確認したボクは、駿君の耳元でこう囁く。
「駿君…駿君はボクの恩人で、家族で、そして何よりも・・・」
ボクの"唯一無二の友達"だよ___
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