コリアンモンスター

桐谷 碧

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「それは……」

「あなたの言いたい事はわかる、諸外国でも外国人に選挙権を与えている国は殆どない、理由は国ごと乗っ取られてしまう危険性があるから」

「わかっているなら……」

「昔の概念ね、いまさら在日朝鮮人が選挙権を有しても日本を乗っ取るなんて不可能、分かっているんでしょ? 本当の理由は票が見込める年寄りから反感を買うのが怖い」

 無言でいるのをイエスと解釈した。

「そんな時代じゃないのよ、これからはもっとグローバルな時代になっていくの、インターネットで世界中が繋がって、内輪だけの古臭い政治なんてしていたら先進国に遅れをとるわ、あなたは時期日本のリーダーでしょう、若いうちに革新的な成果を残しなさい、あなたなら出来る、それに」

 チラリと麗娜を見る。

「綺麗になったでしょう? 十八歳、石川さんは確か三十歳よね、あの頃は思いっきり犯罪だけど、今なら歳の離れた恋人でもおかしくないわ、それとも恋人がいらっしゃるかしら?」

「いない! いない! いないです」

 やはり石川はいまだに麗娜を忘れられていないようだ、それもそうだろう、身内から見ても彼女より良い女なんて見たことがない。しかも石川は一度彼女を味わってしまっている。

「お姉ちゃんちょっと」

 麗娜を一睨みして黙らせる。

「在日朝鮮人の日本における立場が上がらないとさ、結婚も出来ないでしょう? 次期総理大臣になるようなお方と」

「いや、僕は麗娜さんと一緒になれるならこの世界から足を洗う覚悟で――」

「だめよ、麗娜は政治家が好きなの」

 目を見開いて呆気に取られている麗娜が視界の端に映る。

「そ、そうなの?」

「ええ、だから結婚するにはあなたが頑張るしかないわね」

「やってみるよ、俺やってみる、みんなが幸せに暮らせる平等な世の中をつくってみせる」

 鼻息荒く語る石川はやはり御し易い男だった、宣美は独立国についてはコチラからタイミングをみて連絡する、選挙権については早々に国会の議題に上げるように指示すると会計もせずに喫茶店を引き上げた。



「くくく、バカ丸出しね」

 当たり前だがいくら総理大臣でも一人の力で法律を変える事など不可能、しかし問題提起をする事で少なからず世論は動き出す、小さくても一歩目を踏み出すことで未来に繋がっていくかも知れない。
 
「オンニ、いい加減にして!」

 しばらく沈黙していた麗娜が口を開いたのは高島平にあるハルボジの家に着いてからだった、今日はここに泊めてもらう予定だ、家主のハルボジは留守にしている、どうせパチンコだろう。

「麗娜、ごめんね、あなたをダシに使うような真似をして」

 鞄を置いてその場で土下座した、自分の過去を見知らぬ人間に暴露され、その張本人を利用するために差し出すような真似をされて、いくら温厚な麗娜でも立腹するのは当然だろう、しかし。

 彼女の過去は利用価値がある、この美貌故のインパクト、人にはそれぞれ与えられる役割、適所が存在する。過去に起きた悲運を不幸な事故であったと蓋をしてしまうよりも、利用できるのであれば最大限に利用するべきだ。

「ちょっと、オンニやめてよ」

 畳に着いた手を無理やり引き剥がされた、その顔には怒りよりも困惑が張り付いている。あっさりと謝られてしまってはそれ以上文句を言うこともできないのだろう。

「麗娜、今が一番大切な時、嫌な思いをさせたと思うけどこれが一番効果的なの、お願い、もう少しだけオンニに力をかして」

「でも……」

 案の定もうなにも言い返せない。

「もちろん、石川なんかにあなたは渡さないわ、日本人なんて騙して利用してやれば良いの」

「……」

 しばらくは無言の時間が支配していたが、静寂を破るように激しく外階段が鳴った、カンカンカンカンと慌ただしく誰か駆け上がってくる。

 次の瞬間ガチャガチャっと玄関のドアノブが揺れるが鍵が閉まっていて開かないようだ、数秒おいて鍵穴に差し込まれる金属音が響くと勢いよく扉が開け放たれた。

「おお、宣美か!」

 もしかして、宣美が帰ってきているのを察して慌てて戻ってきたのかと思いきや、次の瞬間にはリビング傍にあるトイレに駆け込んだ。どうやらトイレを我慢していただけのようだ。

「ぷっ」

 麗娜と顔を見合わせて思わず吹き出した、最近は物騒な計画ばかり立てているせいであまり笑う事もなかったような気がする、やっぱり家族はいいな、素直に思った。

 しかし――。

 その大切な家族をメチャクチャにして奪っていった日本人をやはり許すことはできない。改めて自分の使命を思い出して緊褌した。
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