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一度意識をするとやたらとあの男、子供部屋おじさんの動向が目に付くようになった。ガレージの車はいつもそこに停まっていて、外出している様子はない。にも関わらず私がゴミ出しや買い物に出かけると高確率で遭遇する。
優菜の面倒を見に毎日のように家に来る母は、そんな男は見た事がないと言うから余計に気味が悪かった。
その日は母の家、つまり私の実家に優菜を預けてからウーバーイーツのアルバイトを始めた、すっかり小慣れたこの仕事はまったくと言って良いほど人とのコミュニケーションが必要ないので精神的に楽だった、その代わり肉体的にはかなりキツくて体重は三キロも落ちた。
さっそくアプリから注文が入る。マクドナルドに品物を取りに行ってバックに詰め込んでから『配達開始』のボタンを押すことで初めて配達先が表示される。殆どは自転車で十分以内の近場だ。
二時間ほど配達をして一旦家に戻ろうとした所で配達アプリが鳴った。仕方なく最後にもう一件やっていこうと注文の品を取りに向かう。
品物を受け取り配達開始のボタンを押すと配送先が表示されて心臓がビクッと跳ね上がった。
東京都北区赤羽一丁目ー◯ー◯
藤本マンショ三〇三
そこは私が住んでいるマンションだった。
それだけなら特に気にならない、むしろそのまま直帰できてラッキーなところだ。問題は配達先が三階だという事だった。
とは言え受け取った商品を店に戻すわけにも、その辺に放置するわけにもいかない。そんな事をしたら配達員資格を無くしてしまう。
配達先の名前は藤本となっていたがこれでは男か女かも分からない。せめて置き配の設定になっていればと期待したが玄関先で受取になっていた。
とにかく自宅マンションまで自転車を走らせた。エレベーターで三階に到着すると薄暗い廊下が左右に伸びている。三〇三の扉の前で深呼吸をしてからインターホンを鳴らした。
一秒、二秒、三秒。バクバクと心臓が鳴る。
「はーい」
インターホンから聞こえてきたのが可愛らしい女の子の声でホッと胸を撫で下ろした。
「ウーバーイーツです、お届けに上がりましたー」
「ありがとうございます、今ちょっと手を離せなくて玄関空いてるから中のテーブルに置いといてくれませんか?」
背後から赤ん坊の声が聞こえてより一層安心した。授乳中かも知れない。
「わかりましたー」
玄関の扉は鍵が開いていてアッサリと開いた。自分の家と全く同じ間取りの家に足を踏み入れる。入ってすぐ右手にトイレのドアがありその先にダイニングキッチンがある。
鞄を下ろして中から商品を取り出した、商品をテーブルに置いて奥の部屋に向かって「ありがとうございましたー」と声を掛けた。その返事は無かったけど気にする事なく玄関に向かう。
靴を履いていると背後の扉、トイレのドアが開く気配がした。振り返ろうとした刹那、口元に何かを当てられてカッと目を見開く。
子供部屋おじさんと目が合うと同時に私は意識を失った一一。
優菜の面倒を見に毎日のように家に来る母は、そんな男は見た事がないと言うから余計に気味が悪かった。
その日は母の家、つまり私の実家に優菜を預けてからウーバーイーツのアルバイトを始めた、すっかり小慣れたこの仕事はまったくと言って良いほど人とのコミュニケーションが必要ないので精神的に楽だった、その代わり肉体的にはかなりキツくて体重は三キロも落ちた。
さっそくアプリから注文が入る。マクドナルドに品物を取りに行ってバックに詰め込んでから『配達開始』のボタンを押すことで初めて配達先が表示される。殆どは自転車で十分以内の近場だ。
二時間ほど配達をして一旦家に戻ろうとした所で配達アプリが鳴った。仕方なく最後にもう一件やっていこうと注文の品を取りに向かう。
品物を受け取り配達開始のボタンを押すと配送先が表示されて心臓がビクッと跳ね上がった。
東京都北区赤羽一丁目ー◯ー◯
藤本マンショ三〇三
そこは私が住んでいるマンションだった。
それだけなら特に気にならない、むしろそのまま直帰できてラッキーなところだ。問題は配達先が三階だという事だった。
とは言え受け取った商品を店に戻すわけにも、その辺に放置するわけにもいかない。そんな事をしたら配達員資格を無くしてしまう。
配達先の名前は藤本となっていたがこれでは男か女かも分からない。せめて置き配の設定になっていればと期待したが玄関先で受取になっていた。
とにかく自宅マンションまで自転車を走らせた。エレベーターで三階に到着すると薄暗い廊下が左右に伸びている。三〇三の扉の前で深呼吸をしてからインターホンを鳴らした。
一秒、二秒、三秒。バクバクと心臓が鳴る。
「はーい」
インターホンから聞こえてきたのが可愛らしい女の子の声でホッと胸を撫で下ろした。
「ウーバーイーツです、お届けに上がりましたー」
「ありがとうございます、今ちょっと手を離せなくて玄関空いてるから中のテーブルに置いといてくれませんか?」
背後から赤ん坊の声が聞こえてより一層安心した。授乳中かも知れない。
「わかりましたー」
玄関の扉は鍵が開いていてアッサリと開いた。自分の家と全く同じ間取りの家に足を踏み入れる。入ってすぐ右手にトイレのドアがありその先にダイニングキッチンがある。
鞄を下ろして中から商品を取り出した、商品をテーブルに置いて奥の部屋に向かって「ありがとうございましたー」と声を掛けた。その返事は無かったけど気にする事なく玄関に向かう。
靴を履いていると背後の扉、トイレのドアが開く気配がした。振り返ろうとした刹那、口元に何かを当てられてカッと目を見開く。
子供部屋おじさんと目が合うと同時に私は意識を失った一一。
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