可愛い鮫の聖女は、スパダリ公爵パパの側で健やかに育ちます

天田れおぽん

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第三話 保護者たちの帰還

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 上空の風は強い。
 青を背景に、霞のような雲が湧いては湧いては次から次へと後ろに向かって流されていく。
 その中をガイアン・カスピエル公爵とその執事は、それぞれドラゴンに乗って飛んでいた。
 カスピエル公爵が乗っているのは赤いドラゴン、執事が乗っているのは白いドラゴンだ。

「王城も、国王あにうえも嫌いじゃないが……島を離れると子どものことが気になるな。シャーリンが寂しがっているだろうから、早く帰ろう」
「ホッホッホッ。兄である国王さまの愛人に手を出して島流しにあった、ろくでなし貴族の代名詞のような旦那さまから、そんなことを聞く日が来るとは。長生きはするもんですなぁ。ねぇ、ドラ男?」

 短い白髪をピシッと撫でつけた肌の浅黒い細マッチョな高齢執事は、自分の乗っている白いドラゴンに話しかけた。

「あぁ、ジア。それがしの主よ。生意気な小童こわっぱのガイアンが、子どものことを気にかけるとは笑えるな」

 執事のバディドラゴンであるドラ男に嫌味を言われても、カスピエル公爵は鷹揚に笑って流した。

「ハッハッハッ。ドラ男は容赦ないな。でも人間とは変わるものなのだよ」

 執事はコクコクと頷きながら言う。

「そうですね、旦那さま。島流しにあった当時、あれだけショゲていた旦那さまが、こんな子煩悩な男性に変わられるとは。鮫の卵を拾って帰ってこられた日には、思ってもみませんでした」
「ハッハッハッ。仕方ないじゃないか。鮫の卵から、あんなに可愛い子が生まれてきてしまったのだから」

 主人の言葉に、執事は少々考えてから答えた。

「確かにシャーリンさまは、可愛いですね。頭は鮫ですが」
「だろう? 親馬鹿かもしれないが、養女と言っても我が子は可愛い。良い子になっても欲しいし、幸せにもなって欲しいし。何よりも自慢したい。全世界に向かって自慢したい。うん」
「しかもシャーリンさまは、聖女ですしね」

 執事の言葉に、カスピエル公爵はコクコクと頷いた。
 鮫の卵からかえった子どもは、額に聖女の証を持って生まれてきたのだ。
 
「ハートにツタが絡まったようなピンクの印は、可愛いシャーリンにピッタリだ」
「あの聖女は、われの娘、ドラ美のバディでもある」

 カスピエル公爵が乗っている赤いドラゴンが言った。

「そうだね、ドラ子」

 カスピエル公爵はそう言いながら、赤いドラゴンの背を同意を表すようにトントンと軽く叩いた。
 そして叫んだ。

「あぁ、早くシャーリンに会いたい!」

 白いドラゴンが、コクコクと頷いた。

それがしも、我が娘、ドラ美に早く会いたい。お前もそうだろう? ドラ子。それがしの愛しい妻よ」

 執事を背に乗せて飛んでいる白いドラゴンは、公爵を背中に乗せて隣を飛んでいる赤いドラゴンに顔を向けて話しかけた。
 赤いドラゴンは、頷きながら答える。

われも同じ思いじゃ、愛しい夫よ。ドラ美に早く会いたい」

 カスピエル公爵は、大らかに笑った。

「ハッハッハッ。なら、なるべく早く帰ろうか。さぁ、スピードアップだ、ドラ子!」
「心得た!」

 カスピエル公爵の掛け声に答えた赤いドラゴンは、羽を大きく広げると、風を大きく抱き込むようにして勢いをつけて飛んだ。

「遅れるな、ドラ男!」
「承知っ!」

 執事の掛け声に、白いドラゴンも羽を羽ばたかせて、赤いドラゴンの後を追った。
 スピードを上げた一行の前に、小島はあっという間に現れた。

「島が見えてきたぞ!」
「そうですね、旦那さま」

 体を煽る風をものともせず、美しい飛行姿勢をとる主人と執事は、眼下に広がる青い海の中に目的の小島を見つけて頬を緩めた。
 だが、ドラゴンは揃って異変を聞き取った。

「大変っ!」

 最初に声を上げたのは、赤いドラゴンだった。

「あの鳴き声は、それがしの娘、ドラ美っ!」

 白いドラゴンは、慌てたように声を上げた。
 カスピエル公爵が叫ぶ。

「なに⁉ 島に異変が⁉」

 その隣で異変に気付いた執事も叫んだ。

「旦那さま! 海賊船がっ!」

 執事が指さす先に海賊船を認めたカスピエル公爵は、悲鳴を上げた。

「シャーリン!!!」
「旦那さま、急ぎましょう」

 表情を硬くした執事が促した。
 カスピエル公爵は真顔になって、ドラゴンに命じた。

「娘のことが心配だ! ドラ子、急げっ!」
「心得た!」

 ドラ子の声に重ねるように、ドラ男も叫ぶ。

「主、しっかりつかまってろ!」
「ああ、頼む。ドラ男っ!」

 二頭のドラゴンは揃ってスピードを上げ、二頭の主たちは揃って身を低くして強くなる風の抵抗に備えた。
 
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