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オメガだからって甘く見てるから溺愛する羽目になるんだよっ!

ヒート 1 ※

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「……ッ……あっつィィィ……」

「大丈夫か⁉」

「んんっ……ムリッ……」

 ヒートを起こしたオレは、早々に実家を後にした。
 
 こうなってしまったら魔法薬で抑えることなんて出来ない。

 ルノワールに支えられながら侯爵家に転移した。

 心配そうな表情でオレを見る長兄次兄と、ニヤニヤしている父と義母。

 ちょっと忘れらない顔だ。あの男は実父のはずだが、なんだアレ?

 ムカつくムカつくムカつく。

 一体コレは何なんだ。この茶番なんだよっ。オレは何でこんな目に遭ってんだ?

 ヒートって性欲大爆発って感じじゃないのか?

 熱すぎてムラムラするどころか萎えそうなんだけど。

 体がバラバラに溶けそうなほど、熱い。

 熱くて苦しい。

「クッ……クソっ……ちっ……」

 もう立っていられないオレをルノワールが横抱きにする。

 お姫さまかよ。

 そのままベッドに……と、思っていたが、オレのベッドは通り過ぎてしまった。

「ル……ルノ……ワール?」

「もう少し……耐えてくれ……」

 疑問に思うオレを抱きかかえたまま、自分こそ何かを耐えてるみたいな声を出したルノワールが続きの間への扉を開く。

 そこって夫婦の寝室?

 いままでオレたちに使われなかった部屋で、ルノワールは立ち止まった。

「ルノ……ワール?」

 その部屋は白かった。

 白っぽい壁紙に白い天蓋、白いシーツに白っぽいカーテン。

 白と淡いベージュのなかに金色の刺繍がアクセントとして散らしてあるような部屋だ。

 ヒートを迎えたオレとルノワールがこの部屋でする事なんてひとつしかない。

 それでもオレは疑問形でルノワールの名を呼ぶ。

 ルノワールは何も言わないまま、オレを白いシーツの上にそっとおろした。

 そして、覆いかぶさるようにルノワールの体がオレの体を閉じ込める。

「ミカエル……」

 近付いてくるルノワールの顔が、オレの首筋に埋もれていく。

 グレープフルーツのような柑橘系の匂いがルノワールから沸き立つように放たれた。

「……ァアッ……」

 ラットだ。

 オレのフェロモンにあてられて、ルノワールがラットを起こしかけている。

 もう、逃げられない。

 オレは朦朧としながらも防音の魔法陣を展開した。連動して隣の奥さま部屋に設置してある魔法道具も作動する。

 これでオレが気を失ったって防音の魔法は解けない。

 オレは慎み深いんだ。他人にアレな声を聞かれたくねぇ。

 続けて意識が飛ばないうちに体全体に洗浄の魔法をかけて、その時に備える。

「ミカエル……」

 ルノワールが切なげな声を上げながら、オレの首筋に顔をグイグイ押し付けてくる。

「……ッつ……もうっ、何やってんだよバカっ」

「ミカエル……」

 オレよりも少し大きな体に抱え込まれる。

 縦はオレと大して変わらないのに、厚みのある体。

 筋肉が重たい。

「バカルノワールッ」

「……ミカエル……」
 
 切なげに震えるアルファの体。
 
 それでも、ヤツは動かないし、オレの名前しか呼ばねぇ。

「く……そっ」

 もうとっくに分かってる。

 コイツはオレを抱きたいし、オレはコイツに抱かれたい。

「オレたちっ……くそっ……もう夫婦じゃねぇーかっ」

 オレを抱いていいのは、コイツだけ。

 なのに、ルノワールはバカだからオレの許可を待っている。

「とっととツッコめ! バカやろうっ!」

 獰猛な熱に震える腕を伸ばし、ヤツの頭をひっぺがし。

 近すぎてぼやける顔を抱えて唇を奪ってやった。

 キスってヤツは目を閉じてするもんだし、開けてたってぼやけて見えねぇし。

 それでも今、バカがどんな顔してんのか、すっげぇ見たいと思う。

「ふはぁ……」

「んっ……」

 柔らかな唇を互いに貪り合い、どちらのモノとも分からない味を味わう。

 熱い。
 熱い。
 熱い。

 ベッドの上で上半身を起こしたオレたちは、引き裂く勢いで互いの服を脱がせていく。

「ッ……ちっ。貴族の服ってのは、なんでこんなに脱がせにくいんだっ」

 イラつきながらオレはルノワールの服のボタンに手をかける。

「破れたっていいよ……こんなもの……」

 ルノワールがオレの顔に首に肩にとキスを落としていく。

 キスは着衣を奪われて露出した肌に容赦なく続いていく。

「んっ……ぃあぁ……」

 湿った音に生々しいルノワールの感触。ゾクゾクする。

 熱い。
 熱い。
 熱い。

 火傷しそうに熱いのに、熱を出した時みたいなグッタリ感はない。

 体中が変だ。

 背中はゾクゾクするし、汗は噴き出るし。

 眩暈だって感じるくらいなのに、やたらと元気なこの感じはなんだ?

 渦を巻くように体中を暴れて駆け巡る熱が、答えを求めて叫んでるみたいだ。

 最後の一枚。

 じっとりと湿った下着をはぎ取られる。

「んぁっ」

 その湿り気の元はなんだ?

 一瞬考えて思考を蹴っ飛ばす。

 今更だ。

 下着を汚した液体の正体なんて。

 オレたちは、これからもっとスゴイことをする。

 ブルッと震えたオレにルノワールが反応する。

「ん……怖い? ミカエル」

 まだオレに気を使っているのか。

 ダメダメアルファの癖に生意気なっ!

「ぁあ……どうだっていい……ルノ……ルノワール……」

「ルノでいぃ……」

「んぁっ……バカッ……」

「……ッ……バカはイヤだぁ……」

 ルノの手がオレの肌をまさぐる。

 どこを触られてもゾグゾグするし、熱い。

 ルノのどこを触ってもゾクゾクする。

 終わってる。

 抱き合って、ルノの肌とオレの肌が触れ合う。お互い素っ裸だ。

 オレから湧き上がる濃くて甘い果物のような匂いと、ルノからいが自分から沸き立つ柑橘系の匂いが部屋に満ちながら混ざり合っていく。

「ミカエル……ミカエル……」

 ヒートを迎えているのはオレなのに、ルノの方が熱に浮かされたかのように名前を呼ぶ。

 どちらの体がどう絡み合ってるなんて分からない。

 どこに何を求めているのか目的も分からず、ただまさぐり合う。

 いや、ルノは分かってるんだ。何を求めているのか、なんて。

「いいか?」

「んっ」


 朦朧としてきたオレは、何の許可を求められているのか分からないまま返事をする。

 ルノの指がオレの高ぶりに絡みつき、こすり上げた。

「ぁあぁっ!」

 一瞬で吐き出される欲望。

 濡れた感触。

「んぁ……ルノもっ」

「あぁっ……ッ!」

 オレがそこに触れた瞬間、ルノは欲望を吐き出した。

 熱い。

 熱い。

 熱い。

 まだ熱は引かない。

「ミカエルっ!」
「……っ」

 叫びと共に、オレはベッドに押し倒される。

 ヤツと視線が絡まる。

 覆いかぶさって来るルノの目には狂気すら感じさせる欲望の色。

「いいか?」

 オレの後ろに伸ばされる手。

 まだ許可を求めるのか、という呆れた気持ちと冷静な判断を下す理性が交錯する。

「あぁっ……ちょっ……ちょい待ち……お兄さまに渡された薬が……」

「んっ? コレはローションかな?」

「だと、思う……けど、オレ……よくわかんねぇ……」

 ルノを見上げてつぶやくように言えば。

 一気に表情が喜色に染まった。

 なぜ?

「私に任せて……」

「んっ」

 唇に降って来る熱くねっとりとしたキス。

 ルノにお任せするのは不安しかないが、知識不足につきお任せするしかないだろう。

 そもそも、全身熱くてボーっとしているから何していいか分からない。

「ちょっと冷たいかも……」

 ルノはオレの後ろに、お兄さまから渡されたピンク色したローションをたらりと垂らした。 
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