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つがう
第六話
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「ううっ。兄さまたちへの報告ツライ」
「ハハハッ。大丈夫だよ」
コレはオレの実家であるランバート伯爵家へと出向く前、ルノとの間でかわされた会話である。
ランバート伯爵家とは転移魔法陣で繋がっているから一瞬で来られて楽々。
オレは仕事するために来てもいるから頻繁に行き来している。
けど、正式に番となることを伝えるとなると緊張するし恥ずかしい。
対してルノは余裕を見せていたわけだが。
「そうか、そうか。ついにつがい休暇へ入るのか」
「よかったな、ミカエル」
食堂室で席に着き、ニコニコする兄さまたちを前にして冷や汗をダラダラと流して固まっているルノがココにいます。
なぜだ?
とはいえ、オレだって余裕があるわけじゃない。
消え入るような声で、
「ありがとうございます」
と、言うのが精一杯だ。
ああ、恥ずかしい。
でも、コレは言っておかねば。
「つがい休暇に入るからしばらくは来られないけど心配いらないからね」
前回、ルノがおかしくなってオレを閉じ込めるようになった時、動いてくれたのは兄さまたちだ。
だが今回は事情が違うしキチンとした理由がある。
恥ずかしくても伝えておくべきだろう。
もっと恥ずかしい思いをしないで済むように。
顔を見せなくなったくらいで兄さまたちに乱入されたら、アレなオレを見られてしまう可能性がある。
それだけは避けたい。
「ああ。分かっているよ。だから今日は夕食を一緒に食べようと張り切って準備したよ」
ノイエル兄さまはそう言って執事に目で合図した。
「はは。ミカエル、何を照れているんだい?」
ジョエル兄さまが揶揄うような視線をコチラに向けている。
「そうだな。あ、真っ赤になった」
隣でノイエル兄さまもオレを視線で揶揄ってくる。
「もう、兄さまたちってば。ヤメテ」
オレが声を上げる横でルノは汗を流しながら固まっている。なんでだ。
「ふふ。いいじゃないか。恥ずかしがらなくても。つがい休暇はおめでたいことだよ」
「そうだぞ、ミカエル。それでお前に子どもができたら賑やかになるから楽しみだ」
「でもぉ……」
なんか恥ずかしいんだよ。察しろよ、兄さまたちっ。
確信犯で揶揄ってくる兄さまたちをオレは睨んだ。
でも弟が上目遣いで睨んだところでアルファの兄ふたりが動じるはずもなく。
かえってニヤニヤ笑われた。恥の上塗りだぁ~。
「ふふふ。そんなに恥ずかしがって。ミカエルは初心だな」
「そんなミカエルの結婚が一番最初になってしまうとは。運命とは皮肉だね」
ノイエル兄さまの言葉にうなずきながらジョエル兄さまが揶揄ってくる。
もう、兄さまたちときたら。
これはもう、反撃しないとね。
「もうっ、そんなことを言ってオレを揶揄ってばっかり。それより兄さまたちの縁談はどうなってるの? そっちの方が問題でしょ」
皮肉のつもりでいったのに。
待ってましたとばかりに、兄さまたちの目が煌いた。
「それがな」
「聞いてくれよミカエル」
待たれていたようです。
ノイエル兄さまとジョエル兄さまが先を争うようにして口を開こうとしている。
隣でルノがポカンとしているが、オレはこんな状況にまぁまぁ覚えがある。
うちの三兄弟、年齢差はあれど物事が動くタイミングが重なってしまうことが多々あるのだ。
「私も結婚話がまとまったぞ」
と、ノイエル兄さまが言えば、
「僕は良い感じの相手が見つかったトコだ」
と、ジョエル兄さまも言う。
「はっ……ははっ」
オレの口から漏れるのは乾いた笑い声。
自分のことで緊張しすぎてて気付かなかったけど、今日のコレはオレへのアレじゃないや。
兄さまたちは自分たちのことを話したくてウズウズしてたんだ。
うわぁー、オレ、恥ずかしがり損じゃん。
自分が主役だと思ってたら違った系じゃん。
かえって恥ずかしくなるヤツじゃーん!
「私の相手は商売の関係で知り合ったオメガ男性でね。話すと長くなるけど、商会の仕事でよく一緒になる方で。最初はオメガ男性であることも隠しておられたが、お前の話からオメガの魔法薬の話になって……」
「僕の相手は騎士をしている女性だよ。最初は男だと思ってたんだけど、男装騎士だったんだ。向こうは伯爵家の跡取り娘だから、僕は婿養子に行くかも……」
うんうん。ノイエル兄さまもジョエル兄さまも幸せそうでなにより。
オレの横で固まっていたルノも、いつの間にか柔らかな笑みを浮かべていた。
ルノからしたら、自分のトコのシェリング侯爵家に幸せが訪れたらランバート伯爵家にも春が来た、って感じなのかな。
今はガッツリ冬だけどな。
「ハハハッ。大丈夫だよ」
コレはオレの実家であるランバート伯爵家へと出向く前、ルノとの間でかわされた会話である。
ランバート伯爵家とは転移魔法陣で繋がっているから一瞬で来られて楽々。
オレは仕事するために来てもいるから頻繁に行き来している。
けど、正式に番となることを伝えるとなると緊張するし恥ずかしい。
対してルノは余裕を見せていたわけだが。
「そうか、そうか。ついにつがい休暇へ入るのか」
「よかったな、ミカエル」
食堂室で席に着き、ニコニコする兄さまたちを前にして冷や汗をダラダラと流して固まっているルノがココにいます。
なぜだ?
とはいえ、オレだって余裕があるわけじゃない。
消え入るような声で、
「ありがとうございます」
と、言うのが精一杯だ。
ああ、恥ずかしい。
でも、コレは言っておかねば。
「つがい休暇に入るからしばらくは来られないけど心配いらないからね」
前回、ルノがおかしくなってオレを閉じ込めるようになった時、動いてくれたのは兄さまたちだ。
だが今回は事情が違うしキチンとした理由がある。
恥ずかしくても伝えておくべきだろう。
もっと恥ずかしい思いをしないで済むように。
顔を見せなくなったくらいで兄さまたちに乱入されたら、アレなオレを見られてしまう可能性がある。
それだけは避けたい。
「ああ。分かっているよ。だから今日は夕食を一緒に食べようと張り切って準備したよ」
ノイエル兄さまはそう言って執事に目で合図した。
「はは。ミカエル、何を照れているんだい?」
ジョエル兄さまが揶揄うような視線をコチラに向けている。
「そうだな。あ、真っ赤になった」
隣でノイエル兄さまもオレを視線で揶揄ってくる。
「もう、兄さまたちってば。ヤメテ」
オレが声を上げる横でルノは汗を流しながら固まっている。なんでだ。
「ふふ。いいじゃないか。恥ずかしがらなくても。つがい休暇はおめでたいことだよ」
「そうだぞ、ミカエル。それでお前に子どもができたら賑やかになるから楽しみだ」
「でもぉ……」
なんか恥ずかしいんだよ。察しろよ、兄さまたちっ。
確信犯で揶揄ってくる兄さまたちをオレは睨んだ。
でも弟が上目遣いで睨んだところでアルファの兄ふたりが動じるはずもなく。
かえってニヤニヤ笑われた。恥の上塗りだぁ~。
「ふふふ。そんなに恥ずかしがって。ミカエルは初心だな」
「そんなミカエルの結婚が一番最初になってしまうとは。運命とは皮肉だね」
ノイエル兄さまの言葉にうなずきながらジョエル兄さまが揶揄ってくる。
もう、兄さまたちときたら。
これはもう、反撃しないとね。
「もうっ、そんなことを言ってオレを揶揄ってばっかり。それより兄さまたちの縁談はどうなってるの? そっちの方が問題でしょ」
皮肉のつもりでいったのに。
待ってましたとばかりに、兄さまたちの目が煌いた。
「それがな」
「聞いてくれよミカエル」
待たれていたようです。
ノイエル兄さまとジョエル兄さまが先を争うようにして口を開こうとしている。
隣でルノがポカンとしているが、オレはこんな状況にまぁまぁ覚えがある。
うちの三兄弟、年齢差はあれど物事が動くタイミングが重なってしまうことが多々あるのだ。
「私も結婚話がまとまったぞ」
と、ノイエル兄さまが言えば、
「僕は良い感じの相手が見つかったトコだ」
と、ジョエル兄さまも言う。
「はっ……ははっ」
オレの口から漏れるのは乾いた笑い声。
自分のことで緊張しすぎてて気付かなかったけど、今日のコレはオレへのアレじゃないや。
兄さまたちは自分たちのことを話したくてウズウズしてたんだ。
うわぁー、オレ、恥ずかしがり損じゃん。
自分が主役だと思ってたら違った系じゃん。
かえって恥ずかしくなるヤツじゃーん!
「私の相手は商売の関係で知り合ったオメガ男性でね。話すと長くなるけど、商会の仕事でよく一緒になる方で。最初はオメガ男性であることも隠しておられたが、お前の話からオメガの魔法薬の話になって……」
「僕の相手は騎士をしている女性だよ。最初は男だと思ってたんだけど、男装騎士だったんだ。向こうは伯爵家の跡取り娘だから、僕は婿養子に行くかも……」
うんうん。ノイエル兄さまもジョエル兄さまも幸せそうでなにより。
オレの横で固まっていたルノも、いつの間にか柔らかな笑みを浮かべていた。
ルノからしたら、自分のトコのシェリング侯爵家に幸せが訪れたらランバート伯爵家にも春が来た、って感じなのかな。
今はガッツリ冬だけどな。
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