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努力を踏みにじる婚約破棄 3
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ペドロさまと学園の卒業式典でダンスをして、それが終われば国を挙げての結婚式が待っている。
結婚をすれば王太子妃。王太子妃となれば、次に待っている役目は王妃。国を背負う王を一番側で支える役目だ。
やりがいのある仕事。生きがいのある人生。
アリシアとペドロの結婚は政略的なものだけれど、彼女はそんなものを飛び越えてペドロの事が好きだった。
やりがいのある仕事と愛のある、生きがいのある人生。それがアリシアを待っているはずだった。
だから頑張ったのだ。王妃教育も、勉強も、王太子殿下の手伝いも。いつも、いつも、頑張っていた。
なのに、辿り着いた先がコレなのか?
(そんな残酷な運命を辿るなんて……まさか、わたくしが? いえ、ありえない……)
アリシアは王太子との結婚を夢見ていたし、その夢は覚めてなどいなかった。
少なくとも、深紅に金刺繍のドレスにゴールドのアクセサリーを合わせた、今朝までは。
王太子の色をまとって輝く金髪を結い上げて、褒め称す侍女たちに送り出されたのは幻だったのか。
(そんな……嘘よ……)
シンと静まった広い会場でアリシアに集まる人々の視線。
視線は集まりはするけれど、誰も声をかけてくれる人はいない。
アリシアを庇ってくれる人はここにはいないのだ。
自分が独りだと思い知らされ佇むアリシアに愛しい人は追い打ちをかける。
「私はミラと結婚する」
「そんな……」
見上げるアリシアを、緑に金のブレードをあしらった騎士服をまとった王太子殿下が見下ろしていた。
冷徹な空気をまとったペドロが態度を変える様子はない。
その隣で男爵令嬢は、アリシアの絶望を勝ち誇ったように眺めていた。
「そんな……」
アリシアの唇は戦慄く。いや、全身が戦慄いていた。
私は負けたのだ。
(そんなバカな!)
婚約が決まった10歳から王宮に住まいを移し、未来に向けて努力と勉強の日々を過ごした。
親に甘えるどころか顔を見る機会すら減ってしまったというのに。
アリシアの人生は『王太子殿下の配偶者となる』ためだけに消費されてきたというのに。
(そんなバカな事って、ある⁈)
アリシアは背筋をスッと伸ばし正面からペドロをキッと睨んだ。
「王太子殿下っ! わたくしとの結婚は政略的なものですわっ! 殿下お一人の判断で破棄になどできませんっ!」
「えぇいっ! 忌々しいっ! お前の、そんな生意気な所がっ! 私はっ! 嫌いなんだっ!」
吐き捨てるように言われてアリシアは目を見張った。
「殿下ッ⁈」
「知識をひけらかしおってっ! 自分よりも成績の良い女と結婚したい男などいないっ!」
確かにアリシアの成績は良かった。学年でトップである。トップであるということは、王太子よりも上位であるということだ。
「殿下ッ! わたくしは、殿下のためにっ……」
だが、それは全て未来の王となるペドロを支えるためにした努力である。
(アナタは、わたくしの努力を無駄だった、と、おっしゃりたいの?)
アリシアとて勉学が好きとは言えない。
それでも王太子の婚約者として恥ずかしくないように、と、頑張ってきたのだ。
なのに――――。
「王太子である私よりも賢い女など要らんっ! お前は国を乗っ取る気か⁈」
「そんなことはございませんっ!」
ペドロの横で男爵令嬢がウフフと笑う。
「王妃教育の合間にチャッチャッと学園の勉強も済ませるなどという器用なこと、私には真似できませんわ。ペドロさま」
「ああ、ミラよ。キミには、そんな苦労はかけないよ」
男は愛しげに令嬢を見つめると、ピンク色の髪とバラ色の頬をそっと撫でた。
「はい、ペドロさま」
令嬢は、頬を撫でる手に顔を寄せ、うっとりとした目でペドロを見上げた。
「それに学園の勉強はもう必要ないだろう? なにしろ今日で卒業だ」
「そうでございますわね。ふふっ」
「王妃教育もキミなら難なくこなせるだろう。男爵令嬢だというのに、見事な所作だ」
「ありがとうございます、ペドロさま」
ミラは優雅なカーテシーを披露した。
(確かにミラ・カリアス男爵令嬢は男爵令嬢という地位にあるにも関わらず、高位貴族の令嬢と変わらぬレベルの教養を身につけているわ。……あぁ、そこに気付かないなんて! これは全て計算ずくなのだわ。彼女ひとりの意志ではない。浅はかな男爵令嬢が色仕掛けで王妃の地位を狙ったのではなく……)
もしや、自分は見事にはめられたのではないか? アリシアは悪い予感に包まれた。
結婚をすれば王太子妃。王太子妃となれば、次に待っている役目は王妃。国を背負う王を一番側で支える役目だ。
やりがいのある仕事。生きがいのある人生。
アリシアとペドロの結婚は政略的なものだけれど、彼女はそんなものを飛び越えてペドロの事が好きだった。
やりがいのある仕事と愛のある、生きがいのある人生。それがアリシアを待っているはずだった。
だから頑張ったのだ。王妃教育も、勉強も、王太子殿下の手伝いも。いつも、いつも、頑張っていた。
なのに、辿り着いた先がコレなのか?
(そんな残酷な運命を辿るなんて……まさか、わたくしが? いえ、ありえない……)
アリシアは王太子との結婚を夢見ていたし、その夢は覚めてなどいなかった。
少なくとも、深紅に金刺繍のドレスにゴールドのアクセサリーを合わせた、今朝までは。
王太子の色をまとって輝く金髪を結い上げて、褒め称す侍女たちに送り出されたのは幻だったのか。
(そんな……嘘よ……)
シンと静まった広い会場でアリシアに集まる人々の視線。
視線は集まりはするけれど、誰も声をかけてくれる人はいない。
アリシアを庇ってくれる人はここにはいないのだ。
自分が独りだと思い知らされ佇むアリシアに愛しい人は追い打ちをかける。
「私はミラと結婚する」
「そんな……」
見上げるアリシアを、緑に金のブレードをあしらった騎士服をまとった王太子殿下が見下ろしていた。
冷徹な空気をまとったペドロが態度を変える様子はない。
その隣で男爵令嬢は、アリシアの絶望を勝ち誇ったように眺めていた。
「そんな……」
アリシアの唇は戦慄く。いや、全身が戦慄いていた。
私は負けたのだ。
(そんなバカな!)
婚約が決まった10歳から王宮に住まいを移し、未来に向けて努力と勉強の日々を過ごした。
親に甘えるどころか顔を見る機会すら減ってしまったというのに。
アリシアの人生は『王太子殿下の配偶者となる』ためだけに消費されてきたというのに。
(そんなバカな事って、ある⁈)
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「えぇいっ! 忌々しいっ! お前の、そんな生意気な所がっ! 私はっ! 嫌いなんだっ!」
吐き捨てるように言われてアリシアは目を見張った。
「殿下ッ⁈」
「知識をひけらかしおってっ! 自分よりも成績の良い女と結婚したい男などいないっ!」
確かにアリシアの成績は良かった。学年でトップである。トップであるということは、王太子よりも上位であるということだ。
「殿下ッ! わたくしは、殿下のためにっ……」
だが、それは全て未来の王となるペドロを支えるためにした努力である。
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「そんなことはございませんっ!」
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(確かにミラ・カリアス男爵令嬢は男爵令嬢という地位にあるにも関わらず、高位貴族の令嬢と変わらぬレベルの教養を身につけているわ。……あぁ、そこに気付かないなんて! これは全て計算ずくなのだわ。彼女ひとりの意志ではない。浅はかな男爵令嬢が色仕掛けで王妃の地位を狙ったのではなく……)
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