【完結】あやかしになった腐女子 腐死鳥モエジーヌの爆誕 ~ 刺殺されちゃった私の楽しい妖生活~

天田れおぽん

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茂枝山萌子という女

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 私、茂枝山萌子(もえやまもえこ)32歳。

 気に入らない上司と同僚、どちらを受けにすればスッキリするのかを日常の課題として抱える、どこにでもいる普通の腐女子だ。 

 家族は父と母、あと、年の離れた12歳の弟がいる。

 実っていうの。可愛いのよ、とっても。

 そんな私は、出身女子校では稀代の猛女と言われ、将来を嘱望されていた。

 にも関わらず、今現在はただの社畜。

 ブラック企業に勤める、ただの燃え尽きかけの社員だ。

 腐女子だけど、喪女でも孤女でもない、ただの毒女(独身女)。

 学生の頃はねぇ、どっちかというと、お姉さま気質でねぇ。

 いや、モテたね。上級生、同級生、下級生。年代問わずモテモテだったね。女子に。

 だって女子校だったんだもん。回りは女だらけだよ。

 でもさぁ。モテて悪い気はしないっしょ?

 楽しかったなぁ、学生時代。

 それなのに。あぁ、それなのに。

 何が何してこうなった?

 年明け早々。新年一発目の通勤で刺殺されるって、どういうこと?

 私がどんな悪さをしたというのさ。

 ただの平和なオタク。ただの腐女子。至って穏やかな昼行灯みたいな存在よ? 

 長年推してたラノベのアニメ化がようやく決まってさ。楽しみにしてたってのにさ。

 それを見る前に刺殺されるってどういうこと⁉

 長年追い続けた漫画の続きも気になるし、運よく推しアイドルのコンサートのチケットが取れたってのに見に行けないじゃない。どうしてくれるのよっ! 

 そして、何よりも何よりも。

 なんであんなんに殺されなきゃいけないのよっ!

 納得できないっ!

 百万歩譲って、殺されるにしたってさ。

 もっと美形に殺されるとかさ。

 深い理由があるとかさ。

 なんかさ。

 こう。

 あんじゃんっ!

 複雑でシリアスで美しい殺され方ってもんがさっ。

 それなのに、なんなのさ、アレ。雑。雑過ぎっしょ?

 止めてよ。ホント。マジなんなの。

 責任者ッ出て来いっ!

「呼んだ?」

 神々しい光をしょった白髪頭に白ヒゲの、白い布をずるっと巻いたような簡易な服を着た、お爺さんが現れた。

「……神?」

 あ、責任者って神なんだ。

 なんとなく納得した私であった。
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