【完結】冷遇された瘴気払いの夜伽聖女は、召喚した呪われ王子に溺愛される

天田れおぽん

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第十三話 変わる青い部屋

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 レイチェルが暮らしていた青い部屋は今、王太子の部屋となるべく模様替えの真っ最中だ。

(もともとクロイツさまの部屋だったから。でもヘレンさまが亡くなった場所でもある……)

 レイチェルは部屋の入口で模様替えの様子を眺めていた。
 大きなベッドばかりが目立つ部屋は変わりつつある。

「その絵はそっちへ。書き物机は窓の近くに置いてくれ」

 クロイツの支持に従って、撤去されていた彼の私物や王族関連の品物が運び入れられ、飾られていく。
 彼女は、隣に立って指示を出しながら模様替えの様子を眺めているクロイツを見上げて言う。
 
「本当に、この部屋でよいのですか? クロイツさま」
「ああ。ここがぼくの部屋だからね」

 事も無げにクロイツは言うが、レイチェルは心配していた。

(夜伽聖女であったヘレンさまとクロイツさまは幼馴染で仲がよかったと聞いているわ。そんな方が亡くなった場所で、クロイツさまは平気なのかしら?)

 クロイツの心中を慮って、レイチェルは眉を困ったように下げた。

(思い出の部屋だから、ほかの人に使わせたくないのかも。それならば、わたしは邪魔ね)

 レイチェルは夜伽聖女ではあるが、立場は良くて側妃程度だ。
 しかも両親を亡くした男爵家の娘。
 
(王妃に迎えてもよいのでは? と噂されるほどだったヘレンさまとは立場が違うわ)

「では、わたしが他の部屋へ……」
「ダメだよ」

 レイチェルの提案は言い終わる前にクロイツによって却下された。

「ぼくと一緒に暮らそう、レイチェル。それともレイチェルは、ぼくと暮らすのは嫌?」
「そっ……そんなことはありません」

(一緒に暮らすのが嫌なのではなく、身の丈に合わないというか、居心地が悪いというか、なんというか……)

 冷遇生活に慣れているレイチェルにとって、王太子との生活は違和感があった。
 1人しかいなかったメイドは立ち代わり入れ替わり来て、総勢何名なのか分からない。
 執事や侍従も付けられ、レイチェルには侍女も複数名つけられた。

「ぼくと暮らすより、1人のほうが気楽なのは分かるけど。まだ呪いの危険が去ったわけではないし、正式に王太子として復帰したことで、危険はより増すだろう。だからお願い、そばにいて」

 クロイツにそう言われてしまえば、レイチェルには頷くしか選択肢はない。
 そんなレイチェルをじっと見ていたクロイツは、体をさっと屈めて彼女の耳元でささやいた。

「夜伽も……エッチなのは最低限にするからさ」
「もうっ、クロイツさまってば」

 レイチェルは真っ赤になってクロイツがいるのと反対側を向いた。

「ふふ。真っ赤だ。ぼくの夜伽聖女は純情だね」
「もうっ、やめてくださいっ」

 レイチェルはクロイツの明るい笑い声を聞きながら、真っ赤になった顔を両手で隠した。
 熱くなった顔を両方の手のひらで感じながらレイチェルは思う。

(これからは寂しくない。ささやきの聞こえる距離に、クロイツさまがいてくれる)

 両手で隠した顔をクロイツに向け、指の隙間からチラリと見れば、彼もまたレイチェルを見ていた。
 キラキラ光る長いまつげで縁どられた大きな目にはまっている金色の瞳には、穏やかで優しい笑みが浮かんでいる。

(瘴気払いの夜伽であんなことになっちゃうなんて……相手がホルツさまでなくて本当によかったわ)

 改めてつくづく思うレイチェルなのであった。
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