【完結】冷遇された瘴気払いの夜伽聖女は、召喚した呪われ王子に溺愛される

天田れおぽん

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第十六話 蜜と欲望 1

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 ゆっくりとお昼寝をした後は、改めて使用人たちに部屋を整えさせて、レイチェルとクロイツは軽い夕食を摂った。
 今夜が本格的な初夜だ。

「名実ともに、君はぼくのものだと示さなきゃ」
「もうっ、クロイツさまってば。恥ずかしい」

 クロイツは少し意地悪な感じのセクシーな笑顔を見せ、レイチェルは頬を赤く染めた。
 もちろん、レイチェルもやる気は満々である。

(一応初めてではないし、お昼寝もしたけれど……瘴気払いも充分ではないし。なにより、わたしを未来の国王の夜伽聖女と周りに認めてもらうには、少しでも早く正式な初夜を迎えたほうがいいわ)

 レイチェルは湯舟に使って身を清め、メイドたちの手により磨き立てられて夜に備えた。
 
(わたしが夜伽について知っていることは座学のみだし。昨夜は勢いで実地の経験をしたけれど……初めてで何がなんだか分からなかったし……アレが瘴気払いの夜伽聖女が行う夜伽とは言えないかも。んん~。結局は緊張するぅぅぅぅぅぅ)

 レイチェルは薄衣の白いナイトドレスに身を包みながら、緊張のあまり生唾をゴクリと呑んだ。
 丁寧に整えられたピンク色の髪は艶やかで、睡眠をとって疲れが取れたアメジスト色の瞳はキラキラと輝いている。
 ほんのり上気する白い肌。
 すらりとした手足に豊かな胸、細くくびれたウエストからふっくらとしていながらキュッと締まった形のよいお尻。
 それらが、着たほうがエッチに見えるスケスケのナイトドレスに包まれている。

(わたしの体はクロイツさまの逞しい体に勝るとも劣らない、魅力的な女性の体、よね?)

 大きな姿見の前で自分の姿を確認しながら、レイチェルは自分に言い聞かせた。
 今いるのは、クロイツと過ごす部屋とは違う。

(わたしの使っていた部屋の隣に、夜伽聖女用の部屋があったことに驚きだわ)

 言われてみれば当たり前だが、夜伽聖女は妻というわけではない。
 王妃とも違う役割がある。
 国王もしくは王太子の寝室近くに、私室があるのは当たり前といえば当たり前だ。

(わたしの知らない間に、夜伽聖女用の部屋も整えられていた……もっとも、クロイツさまは身支度意外でここを使わせる気はないみたいだけど)

 可愛らしいピンク色と白とで飾られた部屋は、居心地がよいがベッドがない。
 大きな鏡台やクローゼット、キャビネットやチェストなどが並んでいて、中には女性が身支度に使うあれこれが入っている。
 レイチェルは、侍女やメイドの協力を得ながら、それらを思う存分使った。

(ホルツさまからクロイツさまへ王太子が変わったから、使用人たちのわたしへの態度も変わったわ。以前とは、まるで違う。ホルツさまには罰が当たればいいけど、クロイツさまには恩返ししなくちゃ)

 だから今夜は、夜伽を頑張るとレイチェルは決めている。
 大きな姿見の前でクルッと一周回ると、とびっきりの笑顔を浮かべたレイチェルは、ピンク色の刺繍の散るガウンを軽く羽織り、メイドにリボンのように細い布製のベルトを可愛らしいちょうちょ結びにしてもらった。
 それから静々と、続き部屋になっている2人の部屋へと向かった。
 
 部屋に入っていくと、クロイツは大きなベッドの端に腰かけて、レイチェルの到着を待っていた。
 金色に見えるカーテンはきっちりと閉められ、灯りは絞ってあって明るすぎることはない。
 白いシルクの寝間着を着たクロイツは、昨夜と同じく魅力的に輝いている。

(寝間着姿でも、キラキラの王子さまだわ。素敵。わたしは、この方の夜伽聖女になれたのね)

 レイチェルは改めて浮き立つ心と胸のときめきを覚えつつ、彼のもとへと近付いた。

「お待たせしました、クロイツさま」
「思っていたよりも早かったね」

 レイチェルはクロイツの前に立つと、その足元に跪いて彼を見上げる。

(この角度なら女性として魅力的に見える……はずっ!)

 ウルウルしたアメジスト色の瞳で見上げる自分は色っぽく艶やかだろうと思う一方で、レイチェルはクロイツにうっとりと見とれた。
 全方向キラキラ美形のクロイツは、下から見上げても彫刻のように美しく、それでいて男性的な魅力に溢れている。

(あ、ダメ。わたしのほうがノックアウトされそう)

「うん、綺麗だ。やっぱりレイチェルは見栄えがするね。飾り立てるのが楽しみだ」

 王太子に復帰したクロイツは甘い笑顔を浮かべ、蕩けるような声で言いながらピンク色の髪を撫でる。

「ふふふ。ナイトドレスくらいで喜んでいただけて光栄ですわ」

(胸の谷間とか、いかがですか? キュッと締まった顎から白い喉、そこからつながる胸のライン、わりと自慢なのですけど)

 ムードがぶち壊れるから聞くわけにもいかないが、性的なアピールについての研究は一応やってきたレイチェルである。
 ここ一番のチャンスに活かさないという選択肢はない。

(ホルツさまに冷遇されていた分を取り戻しながら、わたしは幸せになりたいっ。いえ、絶対になるっ)

 レイチェルはにじりよって、さりげなくクロイツの両足の間に収まりながら、両手のひらを彼の左右の太ももの上を滑らせる。
 シルクの寝間着は手触りが心地よい。

「ふふふ。聖女から積極的に来られるの、エロいね」
「お褒めいただき、光栄至極に存じます」

 上を向いたレイチェルの唇に、クロイツのそれがそっと重なる。
 軽くチュッという音がして離れていく唇を名残惜しく思いながら、レイチェルは照れてしまって頬を赤く染めた。

「ふふ。ぼくの夜伽聖女は可愛いね。こんなことくらいで赤くなっちゃって」

 嬉しそうに目を細めるクロイツの右手が、レイチェルの頬を包み込むようにして撫で上げた。

「さて、夜伽聖女さま。この後はどうするの?」

 ちょっと意地悪な口調でからかうように言う王子さまに、レイチェルは一矢報いたくなった。

「さぁ? どうしましょうか」

 レイチェルは右手をそっとクロイツの左太ももの内側から上に向かって撫で上げるように動かした。
 続いて左手が彼の右側の太ももの内側を伝って、レイチェルの両手はさらに上を目指して動いていく。

「ふふ、悪い手だ」

 そう言いながらも、クロイツが止める様子はない。
 金色の瞳がはまった目を細めて、穏やかにレイチェルの様子を窺っている。
 その瞳を動揺させたくて、レイチェルは両手を寝間着の上の中に滑り込ませた。
 一瞬クロイツの目が大きく見開かれた。
 だがその目はすぐに細くなって、彼は微笑む。
 レイチェルは悔しくなって、裸の肌を撫でまわし始めた。

(クロイツさまの体って、筋肉が凄いわ。肌はスベスベなのに……厚みもあるけど、キュッとウエストが締まって……や? 腹筋の割れ方凄いっ)

 レイチェルは手のひらに魔力を通して、クロイツの体の中を探った。

(あぁ、やっぱり呪いが奥のほうにまで根を張っているわ……でも、防護のための魔法陣も……これはヘレンさまが施したものかしら? いえ、違う。こっちは違うわ。しっかりしているけど、これは素人の仕事。ということは、クロエさまが?)

 夢中になってクロイツの体を撫でまわしながら、喘ぐようにレイチェルは呟く。

「あぁ、凄い。凄いわ……」
「えっと、レイチェル?」
「はい、クロイツさま」

 声をかけられてハッと我に返ったレイチェルがクロイツを見上げると、戸惑った金の瞳と目が合った。

「えっと、コレの責任をとるつもりはあるよね?」

 クシャリとした情けない表情を浮かべたクロイツが、自分の下半身を指さして言った。
 寝間着の下、股間のあたりがあり得ないほど盛り上がっていた。
 なんなら先っぽが、ズボンのウエスト辺りからはみ出そうになっている。

「おっ?」

 思わず変な声が出てしまったレイチェルなのであった。

「えっと……もちろん」
「いや君、コレをどうするかなんて、これっぽちも考えてなかったよね?」

 目を逸らしつつ言うレイチェルに向かって、クロイツは軽く責める口調で言った。

「やだなぁ、クロイツさま。そんなことあるわけないじゃないですかぁ~」

 ヘラヘラと笑うレイチェルに、クロイツは不審のまなこを向けた。

(マズい。魔力を通しながら体を触ったから、必要以上にバッキバキになってるぅ~)

 布の下にあっても、そのままでは事故になってしまいそうなクロイツのモノを見つめて、レイチェルはゴクリと喉を動かした。

(ちょっとコレ……多分、上にも下にも入らない……どうすれば……でも昨夜は入ったわよね? ということは、1回出したらなんとかなる?)

 しばし見つめている間にも、なぜかムクリとデカくなるクロイツのクロイツ。
 なぜ? とレイチェルは疑問に思ったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

「えっと……レイチェル? 色々と使えるものは用意してあるからね。適当に使ってね」

 クロイツはそう言いながら、ベッドの端に置いてあったカゴをレイチェルに差し出した。
 カゴのなかには色とりどり大小さまざまな何かが入っている。

(コレをどう使えと?)

 レイチェルは首を傾げた。


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