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第二十二話 宣言
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国王はクロイツとレイチェルを壇上に呼び寄せて宣言した。
「我が息子、クロイツを正式に王太子とする。そして、未来の国王の夜伽聖女であるレイチェル・ミアン男爵令嬢との婚約を正式に発表する。異論は認めない」
大広間に集まった人たちから拍手が上がった。
キラキラと輝く王太子が壇上から手を振ると、キラキラした視線を向ける者もいれば、ギラギラした視線を向ける者もいる。
中にはレイチェルを睨みつけてくる令嬢やその父親と思しき者たちもいた。
(どれが危険で、どれが危険でないか、なんて判断つかないわ)
クロイツの隣に立つレイチェルの肌は、ピキッピキッと飛んでくる嫉妬や呪いに反応している。
(それぞはたいしてものはないから、わたしの魔力の消耗もたいしたことはない。だから大丈夫だけど……先が思いやられるわね)
レイチェルが隣に立つクロイツを見上げると、金色の瞳もこちらを見ていた。
(今日のクロイツさまも綺麗で素敵。わたしには、この人を守るれる力があるのね。ふふ。嬉しいわ。今まで飼い殺しの状態だったから、余計にそう感じるのかしら? まぁ理由なんて、クロイツさまが素敵だからでも今まで活躍できなかったからでも、どっちでもいいわ。お役目を精一杯務めさせていただくわよ)
レイチェルは愛しい婚約者に、ニコッと笑って見せると正面に向き直った。
(ルシアナさまの視線からは、現在の王妃とは思えないほどの嫉妬と憎しみを感じるわ。これはわたしに感じ取る力があるから分かるだけかしら? そうでもないわね。周りにいる高位貴族も引いているもの。やはりルシアナさまは本来、王妃の器なんかじゃない)
レイチェルは自分なりに貴族たちを分析していた。
(ホルツさまが睨んでいるのは当然ね。王太子の地位を失ったのだもの。年齢を考えたら王子の地位も近々手放すことになる。政略結婚のために他国へ出るか、国内で公爵位でも得て生きるか。自分が一番な方だから、反乱でも起こされたら大変ね。注意が必要だわ)
ホルツが凄まじい形相でクロイツを睨むのは当然のことではあるが、王族としても、貴族としても、ふさわしい行為とはいえない。
クロイツを追い落として再びホルツを王太子へ、という動きが起きたとしても大きくはならないだろうとレイチェルは思った。
(ノラさまも、女の嫉妬は見苦しくてよ、って感じね。あれだけホルツさまを持ち上げていたのに、いざとなったクロイツさまに鞍替えしそう。わたしは睨むけど、クロイツさまに向ける視線、アレはなに?)
クロイツをうっとりと見るノラの視線に気付いて、レイチェルは腹を立てた。
(ノラさまってば、クロイツさまの婚約者の座を狙ってるの? ノラさまなんかに婚約者の座は絶対に譲らないわよっ。でもここはポーカーフェイス。貴族の曖昧な微笑みを絶やしてはダメなのよね。知識だけはあるよ、知識だけは。出来てるかどうかは分からないけど!)
目の端に意外な人物の姿を見つけて、ハッとしてレイチェルは我に返った。
(あれは副神官さまよね? なぜ王妃殿下の近くに?)
神殿と王族は協力関係にある。
ルシアナ王妃は夜伽聖女でもあるため、神殿との関係は深い。
それを考えれば意外でもなんでもないのだが、レイチェルはなんとなく違和感を感じた。
(なぜかしらね?)
不思議に思ったものの、クロイツに呼ばれて視線を移したレイチェルは、深く考えることなく忘れてしまった。
だからルシアナ王妃と副神官が似た視線をジッとレイチェルに向けていることに気付くことはなかった。
「我が息子、クロイツを正式に王太子とする。そして、未来の国王の夜伽聖女であるレイチェル・ミアン男爵令嬢との婚約を正式に発表する。異論は認めない」
大広間に集まった人たちから拍手が上がった。
キラキラと輝く王太子が壇上から手を振ると、キラキラした視線を向ける者もいれば、ギラギラした視線を向ける者もいる。
中にはレイチェルを睨みつけてくる令嬢やその父親と思しき者たちもいた。
(どれが危険で、どれが危険でないか、なんて判断つかないわ)
クロイツの隣に立つレイチェルの肌は、ピキッピキッと飛んでくる嫉妬や呪いに反応している。
(それぞはたいしてものはないから、わたしの魔力の消耗もたいしたことはない。だから大丈夫だけど……先が思いやられるわね)
レイチェルが隣に立つクロイツを見上げると、金色の瞳もこちらを見ていた。
(今日のクロイツさまも綺麗で素敵。わたしには、この人を守るれる力があるのね。ふふ。嬉しいわ。今まで飼い殺しの状態だったから、余計にそう感じるのかしら? まぁ理由なんて、クロイツさまが素敵だからでも今まで活躍できなかったからでも、どっちでもいいわ。お役目を精一杯務めさせていただくわよ)
レイチェルは愛しい婚約者に、ニコッと笑って見せると正面に向き直った。
(ルシアナさまの視線からは、現在の王妃とは思えないほどの嫉妬と憎しみを感じるわ。これはわたしに感じ取る力があるから分かるだけかしら? そうでもないわね。周りにいる高位貴族も引いているもの。やはりルシアナさまは本来、王妃の器なんかじゃない)
レイチェルは自分なりに貴族たちを分析していた。
(ホルツさまが睨んでいるのは当然ね。王太子の地位を失ったのだもの。年齢を考えたら王子の地位も近々手放すことになる。政略結婚のために他国へ出るか、国内で公爵位でも得て生きるか。自分が一番な方だから、反乱でも起こされたら大変ね。注意が必要だわ)
ホルツが凄まじい形相でクロイツを睨むのは当然のことではあるが、王族としても、貴族としても、ふさわしい行為とはいえない。
クロイツを追い落として再びホルツを王太子へ、という動きが起きたとしても大きくはならないだろうとレイチェルは思った。
(ノラさまも、女の嫉妬は見苦しくてよ、って感じね。あれだけホルツさまを持ち上げていたのに、いざとなったクロイツさまに鞍替えしそう。わたしは睨むけど、クロイツさまに向ける視線、アレはなに?)
クロイツをうっとりと見るノラの視線に気付いて、レイチェルは腹を立てた。
(ノラさまってば、クロイツさまの婚約者の座を狙ってるの? ノラさまなんかに婚約者の座は絶対に譲らないわよっ。でもここはポーカーフェイス。貴族の曖昧な微笑みを絶やしてはダメなのよね。知識だけはあるよ、知識だけは。出来てるかどうかは分からないけど!)
目の端に意外な人物の姿を見つけて、ハッとしてレイチェルは我に返った。
(あれは副神官さまよね? なぜ王妃殿下の近くに?)
神殿と王族は協力関係にある。
ルシアナ王妃は夜伽聖女でもあるため、神殿との関係は深い。
それを考えれば意外でもなんでもないのだが、レイチェルはなんとなく違和感を感じた。
(なぜかしらね?)
不思議に思ったものの、クロイツに呼ばれて視線を移したレイチェルは、深く考えることなく忘れてしまった。
だからルシアナ王妃と副神官が似た視線をジッとレイチェルに向けていることに気付くことはなかった。
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