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第二十五話 画策
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夜会の翌日。
レイチェルは、なぜか神殿に呼び出された。
神殿相手では王太子であっても、正式な書簡を持った使者を無碍に扱うわけにもいかない。
「ぼくも一緒に行こうか?」
「いえ。わたしだけで来るように、強く言われていますので」
クロイツは表情を曇らせた。
「夜会の翌日とはいえ……午後の時間帯を指定されれば、疲れを理由に断るわけにもいかない。しかも相手は副神官だ。変だと思わないか?」
「確かに妙だとは思いますが……わたしがクロイツさまの夜伽聖女になったことで、何か話があるのではないでしょうか?」
レイチェル自身も不審に思った呼び出しではあるが、相手は副神官である。
未来の国王の夜伽聖女とはいえ、神殿相手となると立場は弱い。
神殿は国をまとめる要であり、王家とは協力関係にある。
しかも相手が副神官となれば、今は国王の夜伽聖女ですらない彼女が容易に断ることができる相手ではなかった。
「ん……でも君は長年、ホルツの夜伽聖女に指名されていたのだ。相手が変わったくらいで……今更だろう?」
「わたしとホルツさまの関係は、神官さまたちもご承知でしたから」
レイチェルは言葉を濁した。
(わたしにホルツさまは指一本触れなかったから。それが結果的にはよかったけれど、わたしが知っていないと困る情報が、何かあるのかもしれない。クロイツさまとわたしの場合は、相性が良すぎて逆に心配だから一応行ってみないと……)
万が一のことを考えて副神官のもとへ行くことにしたレイチェルと、万が一のことがあっては困ると渋るクロイツであった。
「でもどう考えてもおかしい。夜会のあった翌日というのも、タイミングがよすぎるだろう。あの夜会で正式に王太子としてお披露目されたわけだし。君は王太子の婚約者として決まったこともそうだ。せめて、ぼくが一緒に行けたら……安心できるのに」
不安そうなクロイツに、レイチェルは細い腕に力こぶを作って見せた。
「ふふふ。大丈夫ですよ、クロイツさま。わたしは強いのです」
「本当に?」
クロイツは顔ごと動かして、母親が若い頃に着ていたドレスに身を包んだレイチェルの、頭の天辺から足の爪先までをじっくりと眺めた。
「もうクロイツさまってば」
レイチェルはケラケラと笑っているが、クロイツの心配は晴れない。
「今日は聖女の衣装ではないのだね?」
「ええ。もう王太子の婚約者ですから、普通のドレスのほうがよいかと思って」
(ホルツさまに散々な言われ方をしてきた聖衣は、なるべく着たくないわ。今はただの夜伽聖女ではなく、王太子の婚約者なのだから)
今日のドレスは、クロイツの母が若い時に着ていた白地に緑のチェック柄の爽やかなドレスだ。
(これなら清潔感があって若々しいデザインだから、印象もよくなるのではないかしら? 少なくとも娼婦みたいと言われることはないわ。それに前王妃の若い時のドレスだから、残っている魔力もほとんどない。だから、わたしの魔力が染み付いてしまって勿体なかった、なんてことにもならないわ)
だがクロイツには、レイチェルのドレス選びの基準が分かってはいなかった。
魔力量がレイチェルほどないクロイツには、仄かに残存する魔力など感じ取れない。
だから母のドレスであっても【懐かしい品物】という意味しかないのだ。
そんなクロイツには、今日のドレスをレイチェルがどんな選択基準でドレスを選んでいるのかなど分からない。
カジュアルで昼間っぽいデザインだから選んだのか、緑という自然を感じさせる色だから選んだのか、そのドレスを選んだ理由などは分からないし、彼自身は母の物に関しての執着もない。
だがレイチェルが、細身の可憐な女性であることは知っている。
「とても強そうには見えないけどな」
「ふふふ。わたしは聖女ですよ? クロイツさま。見た目とは関係ないのです。では行ってきますね」
レイチェルは、いつものように1人で神殿へと向かおうとした。
「あ。ダメだよ、レイチェル。護衛を付けていかなきゃ」
クロイツは慌ててレイチェルを止めた。
ちょっと首を傾げたレイチェルも、ハッと何かに気付いた様子で立ち止まった。
「ああ、そうでしたね」
「君は、未来の国王の夜伽聖女で、ぼくの妃になる人なのだから。キチンと守られてくれないと困るよ」
「はいはい、分かりました。ふふふ。クロイツさまは心配症ね」
レイチェルは、恐れる様子も見せずに笑った。
(わたしは怖がるようなことなんてないわ。でも……)
「それよりもクロイツさま? わたしがいない間に呪われないように、充分に注意してくださいね?」
「ああ、分かっているよ」
クロイツは、レイチェルに笑顔を返した。
「わたしの加護がかかっている物は、夜伽花と同じ色で、どこかしら光ってますからね。分かりにくかったら、太陽光にあててみれば分かりますよ」
「ああ、わかった」
「では、いってきます」
「いってらっしゃい」
クロイツは心配げな表情を浮かべて、部屋の外までレイチェルを見送った。
「心配しているだけでは仕方ない、か。ぼくも動かないとね」
レイチェルの姿が廊下の角から消えていくと、クロイツは自分に言い聞かせるように呟いた。
クロイツは部屋の中へと戻ると、書き物机の前に座った。
すべきことは沢山ある。
「父上がぼくを後継者として認めても、横槍を入れてくる者はいるからな。また呪われて犬にされても困るし……」
鷹のゴールディは、クロイツとクロイツの支持者の間を何度か往復した。
もたらされた情報によると、やはり現王妃が怪しいらしい。
「息子可愛さによる犯行か、自分可愛さによる犯行か……いずれにせよ、ろくなもんじゃないな」
クロイツは誰に言うともなく呟いた。
「八年か……」
八年は長い。
失われた年月も、失われた命も戻ってはこない。
幼馴染を失った悲しみと、奪われた自分の八年。
そのどちらを、より嘆けばよいのか、クロイツには決めかねる。
彼には呪われた記憶はあったが、犬にされた後の記憶はない。
だが、彼のせいで死んだ人間の記憶はある。
「いずれにせよ、やった奴らには相応の罰を受けてもらう」
それだけは決めている。
だが相手が相手なだけに、確実な証拠が必要だ。
呪われたから呪い返すというのも一興だが、それでは禍根を残す。
クロイツは、もっと賢く、もっと確実に、罪人たちを罰したかった。
「頼れる人たちだから、彼らが証拠をキチンと集めてくれるはずだ」
母の代、いやもっと何代も前からの、母方の家と繋がりのある信用できる者たちの集まりだ。
幸い、寿命を迎えた者以外のほとんどが生き残っていた。
「ぼくは、ぼくでないと出来ないことをしないと」
まずは処理すべき書類仕事を済ませてしまおうと、クロイツはペンを手に取った。
集中して作業をしていると、メイドが入ってきた。
「お茶をお持ちしました」
「ああ、そこに置いておいてくれ」
メイドに指示を出しながら、彼は時計に目をやった。
レイチェルが出ていって、二時間近く経っている。
長いな、と思いながら、ひと息吐こうとメイドが用意したお茶を一口飲んだ。
「ん?」
バサバサという音が響いて、クロイツは窓辺へと視線をやった。
そこには見慣れた金色の目をした鷹がいた。
「やぁ、ゴールディ」
クロイツは椅子から立ち上がって窓辺へと向かった。
鷹は開いた窓から中を覗いて大人しくしている。
「ふふ、ご苦労さま」
クロイツは左腕に乗せたゴールディを撫でながら、鷹の足につけられていた手紙を受け取った。
窓辺にゴールディを戻し、ふかふかした温かな体を撫でながら手紙を読む。
そこには現王妃であるルシアナがクロイツに呪いをかけた証拠を掴んだことと、再び彼を呪う計画があること、主にその二点が簡潔な文章で記されていた。
「協力者は……副神官?」
手紙を読んだクロイツは、ハッとして後ろを振り返り、書き物机の隅に置かれたカップを見た。
「カップが……光ってない?」
クロイツは一瞬で異変を知った。
レイチェルが守護をかけたものは、夜伽花とよく似た七色に輝く。
一部しか光ってない場合もあるが、きちんと見れば分かるのだ。
しっかり見たと思ったが、あの七色は貝の内側の真珠層。
太陽の光にあててみれば違いがわかる。
さっき自分が紅茶を飲んだカップは、レイチェルが守護をかけたカップではなかった。
「しまった……」
クロイツは油断した。
自室で見知ったメイドの手により陥れられるは、思っていなかったのだ。
信じられないようなものを見る目で、クロイツはメイドを見た。
実際、彼女は信用ならない女だった。
メイドは以前からレイチェルの世話をしていたペニーだ。
彼女とクロイツの視線が合う。
ペニーはハッとした表情をうかべ、踵を返して逃げようとした。
そこにレイチェルが返ってきた。
「ただいま……え?」
レイチェルは自分を押し退けるようにして部屋から出ようとしてるペニーに異変を感じ、クロイツと書き物机の隅に置かれたカップを見た。
それを見た瞬間、レイチェルはすべてを察した。
「待ちなさいっ!」
レイチェルは指先から聖女紋の蔓とよく似た七色の光る蔓を飛ばし、自分の横をすり抜けていったメイドを縛り上げてとらえた。
メイドが床にドタンと大きな音を立てて転がり、そこへ護衛たちが飛び込んできた。
「何かありましたか⁉」
「その女をとらえて」
「はっ!」
レイチェルは衛兵たちに命じると、振り返ってクロイツを見た。
そこには黒く渦巻く禍々しい呪いの渦にとらわれたクロイツがいた。
「その女を連れてここから出て!」
「えっ⁉」
「いいから早くっ!」
レイチェルは護衛たちを追い立てるように部屋から出すと、扉にしっかりと鍵をかけた。
レイチェルは、なぜか神殿に呼び出された。
神殿相手では王太子であっても、正式な書簡を持った使者を無碍に扱うわけにもいかない。
「ぼくも一緒に行こうか?」
「いえ。わたしだけで来るように、強く言われていますので」
クロイツは表情を曇らせた。
「夜会の翌日とはいえ……午後の時間帯を指定されれば、疲れを理由に断るわけにもいかない。しかも相手は副神官だ。変だと思わないか?」
「確かに妙だとは思いますが……わたしがクロイツさまの夜伽聖女になったことで、何か話があるのではないでしょうか?」
レイチェル自身も不審に思った呼び出しではあるが、相手は副神官である。
未来の国王の夜伽聖女とはいえ、神殿相手となると立場は弱い。
神殿は国をまとめる要であり、王家とは協力関係にある。
しかも相手が副神官となれば、今は国王の夜伽聖女ですらない彼女が容易に断ることができる相手ではなかった。
「ん……でも君は長年、ホルツの夜伽聖女に指名されていたのだ。相手が変わったくらいで……今更だろう?」
「わたしとホルツさまの関係は、神官さまたちもご承知でしたから」
レイチェルは言葉を濁した。
(わたしにホルツさまは指一本触れなかったから。それが結果的にはよかったけれど、わたしが知っていないと困る情報が、何かあるのかもしれない。クロイツさまとわたしの場合は、相性が良すぎて逆に心配だから一応行ってみないと……)
万が一のことを考えて副神官のもとへ行くことにしたレイチェルと、万が一のことがあっては困ると渋るクロイツであった。
「でもどう考えてもおかしい。夜会のあった翌日というのも、タイミングがよすぎるだろう。あの夜会で正式に王太子としてお披露目されたわけだし。君は王太子の婚約者として決まったこともそうだ。せめて、ぼくが一緒に行けたら……安心できるのに」
不安そうなクロイツに、レイチェルは細い腕に力こぶを作って見せた。
「ふふふ。大丈夫ですよ、クロイツさま。わたしは強いのです」
「本当に?」
クロイツは顔ごと動かして、母親が若い頃に着ていたドレスに身を包んだレイチェルの、頭の天辺から足の爪先までをじっくりと眺めた。
「もうクロイツさまってば」
レイチェルはケラケラと笑っているが、クロイツの心配は晴れない。
「今日は聖女の衣装ではないのだね?」
「ええ。もう王太子の婚約者ですから、普通のドレスのほうがよいかと思って」
(ホルツさまに散々な言われ方をしてきた聖衣は、なるべく着たくないわ。今はただの夜伽聖女ではなく、王太子の婚約者なのだから)
今日のドレスは、クロイツの母が若い時に着ていた白地に緑のチェック柄の爽やかなドレスだ。
(これなら清潔感があって若々しいデザインだから、印象もよくなるのではないかしら? 少なくとも娼婦みたいと言われることはないわ。それに前王妃の若い時のドレスだから、残っている魔力もほとんどない。だから、わたしの魔力が染み付いてしまって勿体なかった、なんてことにもならないわ)
だがクロイツには、レイチェルのドレス選びの基準が分かってはいなかった。
魔力量がレイチェルほどないクロイツには、仄かに残存する魔力など感じ取れない。
だから母のドレスであっても【懐かしい品物】という意味しかないのだ。
そんなクロイツには、今日のドレスをレイチェルがどんな選択基準でドレスを選んでいるのかなど分からない。
カジュアルで昼間っぽいデザインだから選んだのか、緑という自然を感じさせる色だから選んだのか、そのドレスを選んだ理由などは分からないし、彼自身は母の物に関しての執着もない。
だがレイチェルが、細身の可憐な女性であることは知っている。
「とても強そうには見えないけどな」
「ふふふ。わたしは聖女ですよ? クロイツさま。見た目とは関係ないのです。では行ってきますね」
レイチェルは、いつものように1人で神殿へと向かおうとした。
「あ。ダメだよ、レイチェル。護衛を付けていかなきゃ」
クロイツは慌ててレイチェルを止めた。
ちょっと首を傾げたレイチェルも、ハッと何かに気付いた様子で立ち止まった。
「ああ、そうでしたね」
「君は、未来の国王の夜伽聖女で、ぼくの妃になる人なのだから。キチンと守られてくれないと困るよ」
「はいはい、分かりました。ふふふ。クロイツさまは心配症ね」
レイチェルは、恐れる様子も見せずに笑った。
(わたしは怖がるようなことなんてないわ。でも……)
「それよりもクロイツさま? わたしがいない間に呪われないように、充分に注意してくださいね?」
「ああ、分かっているよ」
クロイツは、レイチェルに笑顔を返した。
「わたしの加護がかかっている物は、夜伽花と同じ色で、どこかしら光ってますからね。分かりにくかったら、太陽光にあててみれば分かりますよ」
「ああ、わかった」
「では、いってきます」
「いってらっしゃい」
クロイツは心配げな表情を浮かべて、部屋の外までレイチェルを見送った。
「心配しているだけでは仕方ない、か。ぼくも動かないとね」
レイチェルの姿が廊下の角から消えていくと、クロイツは自分に言い聞かせるように呟いた。
クロイツは部屋の中へと戻ると、書き物机の前に座った。
すべきことは沢山ある。
「父上がぼくを後継者として認めても、横槍を入れてくる者はいるからな。また呪われて犬にされても困るし……」
鷹のゴールディは、クロイツとクロイツの支持者の間を何度か往復した。
もたらされた情報によると、やはり現王妃が怪しいらしい。
「息子可愛さによる犯行か、自分可愛さによる犯行か……いずれにせよ、ろくなもんじゃないな」
クロイツは誰に言うともなく呟いた。
「八年か……」
八年は長い。
失われた年月も、失われた命も戻ってはこない。
幼馴染を失った悲しみと、奪われた自分の八年。
そのどちらを、より嘆けばよいのか、クロイツには決めかねる。
彼には呪われた記憶はあったが、犬にされた後の記憶はない。
だが、彼のせいで死んだ人間の記憶はある。
「いずれにせよ、やった奴らには相応の罰を受けてもらう」
それだけは決めている。
だが相手が相手なだけに、確実な証拠が必要だ。
呪われたから呪い返すというのも一興だが、それでは禍根を残す。
クロイツは、もっと賢く、もっと確実に、罪人たちを罰したかった。
「頼れる人たちだから、彼らが証拠をキチンと集めてくれるはずだ」
母の代、いやもっと何代も前からの、母方の家と繋がりのある信用できる者たちの集まりだ。
幸い、寿命を迎えた者以外のほとんどが生き残っていた。
「ぼくは、ぼくでないと出来ないことをしないと」
まずは処理すべき書類仕事を済ませてしまおうと、クロイツはペンを手に取った。
集中して作業をしていると、メイドが入ってきた。
「お茶をお持ちしました」
「ああ、そこに置いておいてくれ」
メイドに指示を出しながら、彼は時計に目をやった。
レイチェルが出ていって、二時間近く経っている。
長いな、と思いながら、ひと息吐こうとメイドが用意したお茶を一口飲んだ。
「ん?」
バサバサという音が響いて、クロイツは窓辺へと視線をやった。
そこには見慣れた金色の目をした鷹がいた。
「やぁ、ゴールディ」
クロイツは椅子から立ち上がって窓辺へと向かった。
鷹は開いた窓から中を覗いて大人しくしている。
「ふふ、ご苦労さま」
クロイツは左腕に乗せたゴールディを撫でながら、鷹の足につけられていた手紙を受け取った。
窓辺にゴールディを戻し、ふかふかした温かな体を撫でながら手紙を読む。
そこには現王妃であるルシアナがクロイツに呪いをかけた証拠を掴んだことと、再び彼を呪う計画があること、主にその二点が簡潔な文章で記されていた。
「協力者は……副神官?」
手紙を読んだクロイツは、ハッとして後ろを振り返り、書き物机の隅に置かれたカップを見た。
「カップが……光ってない?」
クロイツは一瞬で異変を知った。
レイチェルが守護をかけたものは、夜伽花とよく似た七色に輝く。
一部しか光ってない場合もあるが、きちんと見れば分かるのだ。
しっかり見たと思ったが、あの七色は貝の内側の真珠層。
太陽の光にあててみれば違いがわかる。
さっき自分が紅茶を飲んだカップは、レイチェルが守護をかけたカップではなかった。
「しまった……」
クロイツは油断した。
自室で見知ったメイドの手により陥れられるは、思っていなかったのだ。
信じられないようなものを見る目で、クロイツはメイドを見た。
実際、彼女は信用ならない女だった。
メイドは以前からレイチェルの世話をしていたペニーだ。
彼女とクロイツの視線が合う。
ペニーはハッとした表情をうかべ、踵を返して逃げようとした。
そこにレイチェルが返ってきた。
「ただいま……え?」
レイチェルは自分を押し退けるようにして部屋から出ようとしてるペニーに異変を感じ、クロイツと書き物机の隅に置かれたカップを見た。
それを見た瞬間、レイチェルはすべてを察した。
「待ちなさいっ!」
レイチェルは指先から聖女紋の蔓とよく似た七色の光る蔓を飛ばし、自分の横をすり抜けていったメイドを縛り上げてとらえた。
メイドが床にドタンと大きな音を立てて転がり、そこへ護衛たちが飛び込んできた。
「何かありましたか⁉」
「その女をとらえて」
「はっ!」
レイチェルは衛兵たちに命じると、振り返ってクロイツを見た。
そこには黒く渦巻く禍々しい呪いの渦にとらわれたクロイツがいた。
「その女を連れてここから出て!」
「えっ⁉」
「いいから早くっ!」
レイチェルは護衛たちを追い立てるように部屋から出すと、扉にしっかりと鍵をかけた。
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