28 / 33
第二十八話 癒し
しおりを挟む
レイチェルはドロドロの眠りから目を覚ました。
悪い夢を見たような気がする。
けれど、あれは夢ではないだろう。
目をしばたたかせてみたが、あたりは真っ暗で何も見えない。
(あぁ、終わって……疲れて眠ってしまったのね。ん、まだ起き上がる気がしない。魔力は回復してるわ。よかった。カーテンは開いたままだろうから、遮蔽を解かずに灯りを付けましょう)
レイチェルは魔法で部屋を明るくした。
すると大きな男の背中が、ベッドの端のほうに見えた。
(え? クロイツさま?)
クロイツは裸のままベッドの端に力なく座り、自らが切り裂いた亡き母のドレスを抱きしめ、涙を流していた。
金色の瞳がはまった大きな目からは、大きな雫が次から次へと零れて落ちる。
(クロイツさま……あぁ、あなたが悪いわけではないのに……)
レイチェルは寝そべったまま小さな声で、そっと声をかけた。
「クロイツさま」
クロイツの大きな体が、ビクリと大きく跳ねた。
先ほどまでの嵐のような凶暴さは消え去っていて、その姿は小さな子供のように見える。
こちらに背中を向けたまま、クロイツは力なく言う。
「ぼくは……なんてことを……君に……なんてことを……」
「いいのですよ、クロイツさま。あなたに責任はありません」
優しく語り掛けるけれど、彼は振り返ることもなくボロ切れとなり果てたドレスをしっかりと抱きしめて、独り言のように呟いている。
「愛している。愛しているのに……ぼくは君を、愛しているのに……」
小さな声は涙で震えている。
いつもの立派な王子さまの姿はそこにはない。
部屋のなかは暴れまわった衝撃で荒れたままだ。
クロイツは部屋の状態にすら怯えているように背中を丸め、小さく体を震わせている。
レイチェルは起き上がろうとして小さく呻いた。
怪我はしていないが、それなりにダメージはあったようだ。
(あぁ、このままでは起き上がることもままならない)
レイチェルは自分の体に浄化と回復をかけた。
体のあちこちを動かしてみて動けることを確認した彼女は、裸のままムクリと起き上がる。
そしてベッドの端へとにじり寄ると、クロイツの背中へもたれ掛かるようにして寄り添った。
一瞬だけビクンと跳ねた大きな背中は、レイチェルの体温に安堵したかのように力を抜いた。
レイチェルは無言のまま白く細い指先で、大きな背中をなだめるように撫でる。
「ぼくは……弱い……」
クロイツが罪を告白するかのように呟くのを聞きながら、レイチェルは彼の肌の感触を楽しんだ。
裸の肌と肌とが触れ合うのが心地よい。
ベッドの回りには、最初の時と同じように夜伽花が咲いている。
茎を真っ直ぐに伸ばしたバラの花は七色にきらめいていて、この世のものとは思えないほど綺麗だ。
夜伽花は初めて結ばれた夜にも咲くし、大量の瘴気を払った朝にも咲く。
何かあった時には咲く、実に分かりやすい花だ。
レイチェルは静かに口を開いた。
「弱いことは、悪いことですか? クロイツさま。わたしは、そうは思いません」
「レイチェル……」
この七色に輝く花たちは、レイチェルがクロイツを守ることができた証だ。
「わたしは、あなたを守れたことが誇らしい」
「レイチェル……」
クロイツは驚いたように目を見開いてレイチェルを見た。
その金色の瞳は、まだ涙で潤んでいる。
レイチェルは彼の頬を白い指先で辿りながら、教えるようにささやく。
「独りで抱え込む必要などありません。そのために、わたしが側に控えているのですから」
にっこり笑いかければ、クロイツの見開いた目からは大粒の涙が一粒、流れ落ちた。
「……レイチェル」
クロイツは涙で滲む七色に光る花を眺めながら、ポツリポツリと話す。
「ぼくは……理由も分からないまま母を亡くして……幼馴染のヘレンを守ることもできず……いや、違う。ぼくを守らせて死なせてしまった男なのだ」
「クロイツさま……」
傷つき弱った男の姿に衝撃を覚えるべきなのだろうか。
国を背負う男の弱っている姿を責めるべきなのだろうか。
いや違う。
レイチェルには確信があった。
だが――――
(クロイツさま自身が、わたしに守られたり、寄り添われたりするのが、お嫌なのかしら?)
レイチェルの心に不安が一気に押し寄せた。
(もしかして……わたしの存在は、クロイツさまにとって負担なの?)
ホルツに冷遇された日々を思い返して、レイチェルの心は恐れに震えた。
人の感情は、その人だけの物。
いくらレイチェルが役に立つと売り込んだところで、拒否されれば入り込む隙間はない。
クロイツの気持ちが分からなくて、レイチェルは不安に揺れた。
(わたしの居場所は、クロイツさまの隣ではないの?)
不安な気持ちのまま、レイチェルはクロイツの広い背中にそっと細い指を滑らせる。
(わたしは、クロイツさまに守られて甘えるだけではなくて……この背中にかかる重圧を少しでも軽くして差し上げたい)
レイチェルの気持ちに合わせるように夜伽花が七色の光を放ちながら揺れている。
まるでレイチェルを応援するように揺れている。
「ぼくは弱い。弱くて、情けない男だ」
「クロイツさま……」
違うというのが正解なのか、そうだというのが正解なのか。
答えに悩んでレイチェルは揺れた。
「ぼくは……君に酷いことをしてしまった……」
「大丈夫。大丈夫ですよ……」
レイチェルはクロイツの広い背中を撫でた。
子どもにするように慈悲深く、優しく、愛をこめて。
クロイツは、それを嫌がることもなく受け入れている。
甘えるように胸に顔を埋められて、レイチェルの中にあった憂いが解け去っていく。
(呪いがなに? 瘴気払いがなに? 払い終えてしまえば、ただ綺麗な花が咲くだけよ。わたしは……国を背負って生きるクロイツさまの側にいて、彼を支えながら生きていたいだけ。だってわたしには、それができるのだから)
パッと顔を上げたクロイツは、レイチェルに聞いた。
「ねぇ、レイチェル。こんな弱いぼくに、君は寄り添ってくれるの?」
「はい。クロイツさま。わたしはあなたのお側にいます」
「犬にされてしまうような間抜けでも?」
真剣に聞くクロイツを見ながら、レイチェルは噴出した。
「ふふ。ええ。ええ、わたしは、あなたの側にいます」
「君は優しいね……そして強い」
「あなたがそれを望むのなら、わたしはそれを叶えたい。ただ、それだけです……」
レイチェルはクロイツの頭をそっと抱きしめた。
あなたは呪いであり祝福。
祝福であり、呪い。
時に呪いは欲望となって牙をむいて荒れ狂う。
だけどそれすら、わたしには甘い。
だからお願い、逃げないで。
時にわたしを抉るほど、荒ぶり猛り荒れ狂う、あなたの節度を知らぬ欲望で。
わたしを呑み込んでも構わないから。
渦巻くあなたの運命に、わたしを巻き込んで構わないから。
時にその願いは毒。
時にその望みは毒。
だからといって逃げられないのなら、いっそ。
あなたのその欲望に、善悪つけることなく、全てをわたしに教えて。
狂気にそそり立ち、うねり山なす、あなたのなかの激情にわたしを巻き込んで、お願い。
襲い掛かり、揺さぶり、翻弄されても。
押し流されて消えゆくほど、わたしは弱くなどないから。
狂って吠えて。
絶叫くらい受け止める。
流失したりしない。
わたしは、ここにいる。
ここにいる。
だからどうぞ、あなた。
遠慮なく、わたしを呑み込んで。
そして嵐が過ぎたなら。
どうぞ、そっとささやいて。
あなたの思う幸せが、わたしの心へ落ちるように。
遠慮しないでささやいて。
容赦のない願望を、どうぞわたしにささやいて。
あなたの願いが、わたしの願いとなるように。
あなたの望みをささやいて。
クロイツはレイチェルの腕の中、小さな声で望みを呟いた。
「レイチェル。ぼくは君に、側にいてほしい」
「ええ、クロイツさま。わたしもあなたの側にいたいです」
白くて細い腕がギュッと金色の頭を抱きしめる。
「ぼくはきっと、1人では生きていけない」
「わたしがいます。独りになどさせません」
腕のなかのクロイツが笑う。
「ふふ。ぼくは欲張りだから……こんな呪われた体でも、幸せになりたい」
「ええ。幸せになりましょう。わたしも幸せていたいもの」
レイチェルもフフフと笑った。
「でもぼくは、国を率いていかなきゃならない」
「ええ。そうですね。わたしもお手伝いします」
クロイツは縋るようにレイチェルの体を抱きしめて、絞り出すような震える声で告げる。
「……ねぇ……だからお願い、そばにいて。ねぇ、レイチェル」
「はい。はい、はぃ……」
レイチェルの声は涙にかすれた。
クロイツは彼女の腕をそっと外し、すっと背筋を伸ばした。
そして2人は、目と目を合わせて見つめ合う。
レイチェルの額から全身へと蔓を巻いていた七色に輝く聖女紋は、サァァァァッと光のなかに溶けるように消えていく。
今日の夜伽聖女としてのお役目は終わり。
これより先は、ただ2人が愛を確認しあうだけの時。
「レイチェル、愛してる」
「わたしも愛していますわ、クロイツさま」
レイチェルとクロイツは見つめ合い、どちらからともなく抱き合って、柔らかく唇を重ねた。
感情の求めるまま、熱を与えあうような、熱を分け合うようなキスをして、時間の許すかぎり互いに愛を確かめ合ったのだった。
悪い夢を見たような気がする。
けれど、あれは夢ではないだろう。
目をしばたたかせてみたが、あたりは真っ暗で何も見えない。
(あぁ、終わって……疲れて眠ってしまったのね。ん、まだ起き上がる気がしない。魔力は回復してるわ。よかった。カーテンは開いたままだろうから、遮蔽を解かずに灯りを付けましょう)
レイチェルは魔法で部屋を明るくした。
すると大きな男の背中が、ベッドの端のほうに見えた。
(え? クロイツさま?)
クロイツは裸のままベッドの端に力なく座り、自らが切り裂いた亡き母のドレスを抱きしめ、涙を流していた。
金色の瞳がはまった大きな目からは、大きな雫が次から次へと零れて落ちる。
(クロイツさま……あぁ、あなたが悪いわけではないのに……)
レイチェルは寝そべったまま小さな声で、そっと声をかけた。
「クロイツさま」
クロイツの大きな体が、ビクリと大きく跳ねた。
先ほどまでの嵐のような凶暴さは消え去っていて、その姿は小さな子供のように見える。
こちらに背中を向けたまま、クロイツは力なく言う。
「ぼくは……なんてことを……君に……なんてことを……」
「いいのですよ、クロイツさま。あなたに責任はありません」
優しく語り掛けるけれど、彼は振り返ることもなくボロ切れとなり果てたドレスをしっかりと抱きしめて、独り言のように呟いている。
「愛している。愛しているのに……ぼくは君を、愛しているのに……」
小さな声は涙で震えている。
いつもの立派な王子さまの姿はそこにはない。
部屋のなかは暴れまわった衝撃で荒れたままだ。
クロイツは部屋の状態にすら怯えているように背中を丸め、小さく体を震わせている。
レイチェルは起き上がろうとして小さく呻いた。
怪我はしていないが、それなりにダメージはあったようだ。
(あぁ、このままでは起き上がることもままならない)
レイチェルは自分の体に浄化と回復をかけた。
体のあちこちを動かしてみて動けることを確認した彼女は、裸のままムクリと起き上がる。
そしてベッドの端へとにじり寄ると、クロイツの背中へもたれ掛かるようにして寄り添った。
一瞬だけビクンと跳ねた大きな背中は、レイチェルの体温に安堵したかのように力を抜いた。
レイチェルは無言のまま白く細い指先で、大きな背中をなだめるように撫でる。
「ぼくは……弱い……」
クロイツが罪を告白するかのように呟くのを聞きながら、レイチェルは彼の肌の感触を楽しんだ。
裸の肌と肌とが触れ合うのが心地よい。
ベッドの回りには、最初の時と同じように夜伽花が咲いている。
茎を真っ直ぐに伸ばしたバラの花は七色にきらめいていて、この世のものとは思えないほど綺麗だ。
夜伽花は初めて結ばれた夜にも咲くし、大量の瘴気を払った朝にも咲く。
何かあった時には咲く、実に分かりやすい花だ。
レイチェルは静かに口を開いた。
「弱いことは、悪いことですか? クロイツさま。わたしは、そうは思いません」
「レイチェル……」
この七色に輝く花たちは、レイチェルがクロイツを守ることができた証だ。
「わたしは、あなたを守れたことが誇らしい」
「レイチェル……」
クロイツは驚いたように目を見開いてレイチェルを見た。
その金色の瞳は、まだ涙で潤んでいる。
レイチェルは彼の頬を白い指先で辿りながら、教えるようにささやく。
「独りで抱え込む必要などありません。そのために、わたしが側に控えているのですから」
にっこり笑いかければ、クロイツの見開いた目からは大粒の涙が一粒、流れ落ちた。
「……レイチェル」
クロイツは涙で滲む七色に光る花を眺めながら、ポツリポツリと話す。
「ぼくは……理由も分からないまま母を亡くして……幼馴染のヘレンを守ることもできず……いや、違う。ぼくを守らせて死なせてしまった男なのだ」
「クロイツさま……」
傷つき弱った男の姿に衝撃を覚えるべきなのだろうか。
国を背負う男の弱っている姿を責めるべきなのだろうか。
いや違う。
レイチェルには確信があった。
だが――――
(クロイツさま自身が、わたしに守られたり、寄り添われたりするのが、お嫌なのかしら?)
レイチェルの心に不安が一気に押し寄せた。
(もしかして……わたしの存在は、クロイツさまにとって負担なの?)
ホルツに冷遇された日々を思い返して、レイチェルの心は恐れに震えた。
人の感情は、その人だけの物。
いくらレイチェルが役に立つと売り込んだところで、拒否されれば入り込む隙間はない。
クロイツの気持ちが分からなくて、レイチェルは不安に揺れた。
(わたしの居場所は、クロイツさまの隣ではないの?)
不安な気持ちのまま、レイチェルはクロイツの広い背中にそっと細い指を滑らせる。
(わたしは、クロイツさまに守られて甘えるだけではなくて……この背中にかかる重圧を少しでも軽くして差し上げたい)
レイチェルの気持ちに合わせるように夜伽花が七色の光を放ちながら揺れている。
まるでレイチェルを応援するように揺れている。
「ぼくは弱い。弱くて、情けない男だ」
「クロイツさま……」
違うというのが正解なのか、そうだというのが正解なのか。
答えに悩んでレイチェルは揺れた。
「ぼくは……君に酷いことをしてしまった……」
「大丈夫。大丈夫ですよ……」
レイチェルはクロイツの広い背中を撫でた。
子どもにするように慈悲深く、優しく、愛をこめて。
クロイツは、それを嫌がることもなく受け入れている。
甘えるように胸に顔を埋められて、レイチェルの中にあった憂いが解け去っていく。
(呪いがなに? 瘴気払いがなに? 払い終えてしまえば、ただ綺麗な花が咲くだけよ。わたしは……国を背負って生きるクロイツさまの側にいて、彼を支えながら生きていたいだけ。だってわたしには、それができるのだから)
パッと顔を上げたクロイツは、レイチェルに聞いた。
「ねぇ、レイチェル。こんな弱いぼくに、君は寄り添ってくれるの?」
「はい。クロイツさま。わたしはあなたのお側にいます」
「犬にされてしまうような間抜けでも?」
真剣に聞くクロイツを見ながら、レイチェルは噴出した。
「ふふ。ええ。ええ、わたしは、あなたの側にいます」
「君は優しいね……そして強い」
「あなたがそれを望むのなら、わたしはそれを叶えたい。ただ、それだけです……」
レイチェルはクロイツの頭をそっと抱きしめた。
あなたは呪いであり祝福。
祝福であり、呪い。
時に呪いは欲望となって牙をむいて荒れ狂う。
だけどそれすら、わたしには甘い。
だからお願い、逃げないで。
時にわたしを抉るほど、荒ぶり猛り荒れ狂う、あなたの節度を知らぬ欲望で。
わたしを呑み込んでも構わないから。
渦巻くあなたの運命に、わたしを巻き込んで構わないから。
時にその願いは毒。
時にその望みは毒。
だからといって逃げられないのなら、いっそ。
あなたのその欲望に、善悪つけることなく、全てをわたしに教えて。
狂気にそそり立ち、うねり山なす、あなたのなかの激情にわたしを巻き込んで、お願い。
襲い掛かり、揺さぶり、翻弄されても。
押し流されて消えゆくほど、わたしは弱くなどないから。
狂って吠えて。
絶叫くらい受け止める。
流失したりしない。
わたしは、ここにいる。
ここにいる。
だからどうぞ、あなた。
遠慮なく、わたしを呑み込んで。
そして嵐が過ぎたなら。
どうぞ、そっとささやいて。
あなたの思う幸せが、わたしの心へ落ちるように。
遠慮しないでささやいて。
容赦のない願望を、どうぞわたしにささやいて。
あなたの願いが、わたしの願いとなるように。
あなたの望みをささやいて。
クロイツはレイチェルの腕の中、小さな声で望みを呟いた。
「レイチェル。ぼくは君に、側にいてほしい」
「ええ、クロイツさま。わたしもあなたの側にいたいです」
白くて細い腕がギュッと金色の頭を抱きしめる。
「ぼくはきっと、1人では生きていけない」
「わたしがいます。独りになどさせません」
腕のなかのクロイツが笑う。
「ふふ。ぼくは欲張りだから……こんな呪われた体でも、幸せになりたい」
「ええ。幸せになりましょう。わたしも幸せていたいもの」
レイチェルもフフフと笑った。
「でもぼくは、国を率いていかなきゃならない」
「ええ。そうですね。わたしもお手伝いします」
クロイツは縋るようにレイチェルの体を抱きしめて、絞り出すような震える声で告げる。
「……ねぇ……だからお願い、そばにいて。ねぇ、レイチェル」
「はい。はい、はぃ……」
レイチェルの声は涙にかすれた。
クロイツは彼女の腕をそっと外し、すっと背筋を伸ばした。
そして2人は、目と目を合わせて見つめ合う。
レイチェルの額から全身へと蔓を巻いていた七色に輝く聖女紋は、サァァァァッと光のなかに溶けるように消えていく。
今日の夜伽聖女としてのお役目は終わり。
これより先は、ただ2人が愛を確認しあうだけの時。
「レイチェル、愛してる」
「わたしも愛していますわ、クロイツさま」
レイチェルとクロイツは見つめ合い、どちらからともなく抱き合って、柔らかく唇を重ねた。
感情の求めるまま、熱を与えあうような、熱を分け合うようなキスをして、時間の許すかぎり互いに愛を確かめ合ったのだった。
30
あなたにおすすめの小説
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
『完璧な王太子』アトレインの婚約者パメラは、自分が小説の悪役令嬢に転生していると気づく。
このままでは破滅まっしぐら。アトレインとは破局する。でも最推しは別にいる!
それは、悪役教授ネクロセフ。
顔が良くて、知性紳士で、献身的で愛情深い人物だ。
「アトレイン殿下とは円満に別れて、推し活して幸せになります!」
……のはずが。
「夢小説とは何だ?」
「殿下、私の夢小説を読まないでください!」
完璧を演じ続けてきた王太子×悪役を押し付けられた推し活令嬢。
破滅回避から始まる、魔法学園・溺愛・逆転ラブコメディ!
小説家になろうでも同時更新しています(https://ncode.syosetu.com/n5963lh/)。
氷の公爵は、捨てられた私を離さない
空月そらら
恋愛
「魔力がないから不要だ」――長年尽くした王太子にそう告げられ、侯爵令嬢アリアは理不尽に婚約破棄された。
すべてを失い、社交界からも追放同然となった彼女を拾ったのは、「氷の公爵」と畏れられる辺境伯レオルド。
彼は戦の呪いに蝕まれ、常に激痛に苦しんでいたが、偶然触れたアリアにだけ痛みが和らぐことに気づく。
アリアには魔力とは違う、稀有な『浄化の力』が秘められていたのだ。
「君の力が、私には必要だ」
冷徹なはずの公爵は、アリアの価値を見抜き、傍に置くことを決める。
彼の元で力を発揮し、呪いを癒やしていくアリア。
レオルドはいつしか彼女に深く執着し、不器用に溺愛し始める。「お前を誰にも渡さない」と。
一方、アリアを捨てた王太子は聖女に振り回され、国を傾かせ、初めて自分が手放したものの大きさに気づき始める。
「アリア、戻ってきてくれ!」と見苦しく縋る元婚約者に、アリアは毅然と告げる。「もう遅いのです」と。
これは、捨てられた令嬢が、冷徹な公爵の唯一無二の存在となり、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転溺愛ストーリー。
聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる