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第三十二話 聖女は甘く溶けていく 1
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支度を終えたレイチェルが隣室から一歩踏み出せば、そこは2人の青い部屋。
(ああぁぁぁぁぁ、緊張するうぅぅぅぅ)
今夜は国王と王妃の、初めての夜だ。
(正式には、ってことだけど。もう初めてでもないし……いえ、避妊紋を取ってからは初めてだから、初めてってことでいいのかしら?)
賑やか過ぎるお披露目を終えた、2人だけのお楽しみ。
(住み慣れている自室なのに。全然違って見えるのは何故かしら?)
いつも使っている青い部屋は、一晩留守にしただけで随分とロマンティックに見えた。
金色のカーテンが閉じられた青い部屋の明かりは既に絞られていて、あちらこちらに飾られた夜伽花は七色に輝いている。
ピンク色をベースに光る七色は、貝の内側にある真珠層のように美しく魅力的だ。
「ふふ、来たね」
そして何よりも魅力的なのは。
銀色のガウン姿でソファに腰を下ろし、こちらを見上げて甘く微笑む王子さまだ。
妖しく光る奇跡の花と言われている夜伽花よりも、ずっと明るく魅力的に輝いている。
キラキラと輝く金髪はサラサラと揺れて。
美しく整った顔には極上の笑み。
ふふふと笑うクロイツの、金の瞳は真っ直ぐにレイチェルを見ている。
「おいで、ぼくの可愛い女性」
「ええ、行くわ。わたしの愛しい男性」
クロイツに両手を差し出されて、レイチェルはその手を取った。
するとクルッと抱き込まれて、あっという間に彼の膝の上にポスンと置かれ、後ろから抱きしめられてしまった。
「あらっ?」
(背中にクロイツさまの胸板を感じるわ。本当に逞しい。背中に当たる胸板も、腰に回る腕も、お尻の下にある太ももも、全部固いのね……それに熱い)
そんな風にレイチェルがクロイツを感じていると、彼はレイチェルの肩のあたりに顔を埋めた。
「ふふふ、ぼくのレイチェル」
髪と髪とが触れ合う感触が心地よい。
肩口あたりでうっとりと話すクロイツの男性にしては少し高めの声が、レイチェルの耳に甘く響いてくる。
「今日は大変だったね。疲れた?」
「いえ大丈夫よ。わたしは自分で回復が使えるから」
「ふふ。ぼくの奥さんは、美しくて、可愛くて、有能だ」
レイチェルが後ろへ振り返ると、こちらを愛しげに見つめる金色の瞳と目があった。
(わたしのアメジスト色の瞳が映り込みそうなほど、キラキラした瞳)
吸い込まれそうな金色の瞳に誘われて、そっと唇を寄せたのはレイチェルの方だった。
クロイツの唇の上を自分の唇で優しくゆっくりと辿って、彼の耳元でささやく。
「クロイツさま……いえ、クロイツ。わたしは、あなたが欲しい」
「ふふふ。君から求められるなんて、嬉しいね」
クロイツは、本当に心の底から楽しそうに笑った。
レイチェルは、左手の細くて白い指を使って、彼の頬を包み込むように撫でた。
(なんてセクシーな笑顔なのかしら。こんな素敵な人がわたしの伴侶なんて。ホルツさまから飼い殺しにすると冷遇されていた時には、想像することすらなかったわ)
この国の王子であり、クロイツの弟でもあるホルツは、結婚式にも、戴冠式にも列席していた。
苦々しい表情でこちらを睨みつけてくる彼を、怖いとも思わなかったし、憎いとも思わなかった。
(ホルツさまは、わたしの前から消えていく人でしかない。わたしは、わたしの側にいてくれる人たちを大事にすればよいだけよ)
レイチェルは、愛しい夫の額にキスをした。
思いのほか凛々しい眉毛や、長いまつげが彩る大きな目。
唇で辿れば、眉毛の固さや瞼の柔らかさが生々しい。
近くで見れば、男性であるクロイツの肌は、女性のものとは違う。
唇で触れれば、もっと違いがよく分かる。
滑らかに見えてもスベスベとは言えない、男性の肌。
(クロイツのなかには、この女性的な美しい見た目とは違う世界が広がっている。その世界は残酷で冷徹だから、わたしは彼を恐れるべきなのかもしれない。でもわたしは、それを承知したうえで、すべてを受け入れて彼に寄り添いたい)
呪いの魔法陣も、守護の魔法陣も、変わらず彼のなかにある。
また暴走することもあるだろう。
敵は簡単に人を呪う。
結果の及ぶ先まで考えない。
だからこそ彼の判断は、感情で決まることはなく、冷静に先のことまで見通して、容赦なく下される。
優しげに見えても、情け深くはない。
(クロイツが暴走したら、わたしがまた治めればいい。政治的な駆け引きを手伝うのは難しいものがあるけれど、わたしで出来ることがあるのなら、なるべくしてあげたい)
愛しい。
まるで宝物のような存在に、レイチェルは口付ける。
額に、こめかみに、頬に。
彼がここにいることを神に感謝するように、唇を滑らせながら、クロイツの姿を辿っていく。
クロイツは、彼女に辿って欲しい場所を、まるで捧げもののように差し出す。
そして自分の差し出した部分へ素直にキスをするレイチェルに、クロイツは嬉しそうに笑った。
「ふふふ。今日の君は、積極的でエロいね」
「ええ。初夜ですもの。求めても不思議はないでしょ?」
レイチェルは自分の柔らかな頬を、クロイツのそれに押し付けて、撫でるように左右へ振った。
「ふふふ。そうだね、初夜だからね」
クロイツの嬉しそうな笑い声が、頬から振動してレイチェルに伝わってくる。
レイチェルはパッと顔を離すと、クロイツを覗き込んで聞く。
「あなたは、わたしを求めてくれる?」
「もちろん」
そう言いながらクロイツは、レイチェルを横抱きにしながら立ち上がった。
「キャッ」
レイチェルは小さな悲鳴を上げながら、慌ててクロイツの思いのほか太い首に手を回した。
「ソファを汚すのは避けたいからね。ベッドへ行こう」
レイチェルは、クロイツの厚い胸板に甘えるように顔を寄せながら、花のように笑う。
「ふふふ。わたしは浄化を使えるから、気にする必要はないのに」
「ああ、そうだったね。では、ソファでやっちゃう?」
「ふふふ。いえ、今夜はベッドに行きましょう」
クロイツはチュッチュッと軽い音を立てながらレイチェルの頬や額に沢山のキスを降らせながら、ベッドへと向かった。
レイチェルはくすぐったくて、クスクスと笑う。
「本当に君は、甘くてよい匂いがする」
「ふふふ。メイドたちが香油をたっぷり塗り込んでくれたからよ」
「違うよ、これは。君の匂いだ」
クロイツはベッドの端にレイチェルを座らせると、その前にかがんだ。
そして彼女のアメジスト色の瞳を覗き込んで言う。
「今夜は2人で高いところへ、イこうか」
「ふふ、いいわね。お互いに高め合うなんて、エロいわ」
2人は共犯のように悪戯な笑みを交わして、唇を重ねた。
柔らかく唇を食まれ、舌を絡めて淫猥な音ごと楽しむようなキスをして。
唇が糸を引きながら離れていくと、クロイツがフェロモン全開でニヤリと笑った。
「さて、使用人たちの力作を拝見しようか」
クロイツの長くしなやかだが、思いのほか力強い指先が、ツツーとレイチェルのガウンの襟元を下りていく。
「ンッ」
敏感なレイチェルの体の反応を楽しみながら下りていく悪戯な男の手が、濃いピンクをした布のベルトの端をとらえた。
股の間からクロイツがレイチェルを見上げ、妖艶に意地悪く笑う。
「ふふ、解き甲斐のある綺麗な結び目だね」
シュルッと布の擦れる音がしてリボンのようなベルトが解ける。
縛るものがなくなったガウンは、はらりと2つに割れていく。
揺れる豊かな乳房が薄絹の向こうからクロイツを誘う。
豊かな乳房の天蓋から垂れ下がるカーテンのように開いたガウンの下からは、薄絹の淡いピンク色したナイトドレスが現れた。
それ以上何もつけていない上半身はもちろん、防御力の低い下着も透けている。
クロイツの喉がゴクリと鳴った。
「何も着ていないより、エッチだね」
まじまじと眺めながら真顔で言うクロイツに、レイチェルは赤くなった顔を両手で覆った。
クロイツは恥ずかしがるレイチェルを含めて、ガウンの隙間から現れた【着ている方がエッチ】という状態を、しばし堪能した。
(いつまで見ているつもりかしら? クロイツの、なんだかスケベでフェロモンたっぷりな表情が見ているだけで恥ずかしい。これが噂に聞く視姦というものなの? どっちにしても恥ずかしいわ)
既に男の体を知っているレイチェルのすぼまりは、本人の意思とは関係なく緩く濡れていく。
(あんっ……なんだか下腹あたりが変な感じだわ)
クロイツは、まるでそのことを知っているかのように、余裕のある淫猥な笑みを浮かべた。
そして、ゆっくりとガウンを脱がしにかかる。
長く形のよい指をガウンの下に入れてシルクとレイチェルの両方の手触りを楽しんでいた彼は、ゆっくりとその手を引いた。
「スベスベしていて気持ちがいいね。しかもほら見て。スルッと脱げてしまうよ」
レイチェルには大き目のガウンは、少しずらしてやっただけで自らの重みでスルリと滑って落ちていく。
まずは右肩。
続いて左肩が空気にさらされて、レイチェルはブルリと震えた。
「ふふ。寒いの? なら、このナイトドレスを脱がせてしまうのは可哀想だね。どうしようか?」
そう言いながら男の手は、淡いピンク色をした薄絹の上を彷徨った。
「あぁ……ん」
衣類としての防御力すら最弱な布切れの上を漂う男の手の感触に、女の体は緩く戦慄く。
「このエッチな体をどうしてくれようか」
クロイツは喉の奥で笑いながら、レイチェルの太ももの間に収まって、彼女を見上げる。
膝立ちになった彼の目線には、たわわに実った2つの大きな乳房があった。
クロイツはそれに顔を寄せて、唇を使って小さく食む。
「あンッ」
小さく声を上げたレイチェルは、反射的に胸元へと自分の手を伸ばして守ろうとした。
「ふふふ。悪い手だ」
クロイツは自分の行く先を邪魔する小さな手に自分の指を絡めると、ベッドの上に縫い留めた。
そしてさっきの続きとばかりに、唇で豊かな胸を小さく食む。
両手を男の手にとらえられ、胸を突き出すような姿勢になったレイチェルは、逃げ場をなくして小さく喘いだ。
クロイツの唾液で薄絹は透けてレイチェルの肌へ張りついていく。
「我ながらコレは……エロいな?」
「あぁん」
クロイツの呟きが聞こえたかと思えば、次には胸の先を唇で軽く食まれて、レイチェルは声を上げた。
「君は胸が弱いようだね」
クロイツは自分の顔を、レイチェルの胸を揉みしだくようにして動かした。
「ンッ」
(ちょっ、ちょっと……一方的にやられ放題になると、ちょっとわたし持つか分からないわ……)
そうは思ったが、反撃の隙がない。
手も、足も、動かせないなか、クロイツの顔は胸からどんどん下に向かっているからだ。
舌や唇も使って行われる行軍は、肋骨から腹、へそを通ってさらに下を目指している。
「ちょっ……クロイツ?」
レイチェルが呼びかけながら身じろぎすれば、絡められているクロイツの手にギュッと力が込められた。
足の間に挟まっている体から逃れることもできず、レイチェルは徐々に荒くなっていく喘ぎ声を上げ続きた。
「んんっ」
彼の舌は、侍女たちが丁寧にはかせた小さな下着のあるあたりまで辿り着いた。
「薄絹は薄絹を重ねても、やはり透けるのか……エロいね……」
しばしの鑑賞タイムにレイチェルの心臓はドキドキと踊った。
(もうっ、もうっ、そんなところをじっくり見ないでっ)
恥ずかしがるレイチェルだが、足を閉じればクロイツをギュウギュウと締め付けてしまうことになるし、足を広げれば彼女の奥がよく見えてしまう。
両手を抑え込まれている状態ではベッドの上へ逃げることもできない。
「あっ」
不意にそこへと唇を寄せられて、レイチェルは背中を仰け反らせた。
「ふふ、可愛い」
(そっ、そんなところで喋らないでぇ~)
レイチェルは羞恥でパンパンになって弾けてしまいそうだ。
股間から顔を上げたクロイツは、さっきまで自分の舌が彷徨っていたあたりを眺めた。
「まだ脱がせてもいないのに……こんなに濡れてスケスケじゃないか。なんてエッチなんだ」
「わ……わざわざ言わないで下さい」
「んーどうしようかな……」
膝立ちしたクロイツは股間を眺めながら、悩まし気な声を出している。
「色香をふりまくスケスケのナイトドレスと下着をそのままにしておくか、それとも脱がせてしまうか……」
クロイツがナイトドレスの肩ひもに歯を引っかけて、上げたり下げたりしている。
「や……」
「ん? やなの?」
淫蕩な雰囲気をまとった声に、レイチェルは耐えきれなくなって叫ぶ。
「変態っぽくて嫌ですっ!」
「……は?」
クロイツはポカンとしてレイチェルを見る。
「いくらクロイツが美しくてキラキラでも、やらしくなりすぎるとオジサン臭いです」
「オジサン臭い……」
16歳で犬になったクロイツは現在24歳。
気分だけは16歳のクロイツは『オジサン臭い』という言葉に、地味にダメージを与えた。
「えーと、ではどうすれば……」
「もうっ、クロイツばかりズルいです」
「ん?」
首を傾げるクロイツを、レイチェルは睨むようにして見ながら立ち上がった。
自分の手にクロイツの手が絡みついているが、それは構わない。
「わたしもクロイツさまを脱がせたいっ。脱がせます」
「脱がせるといっても、私はガウンしか羽織ってないが?」
クロイツは困ったように眉を下げたが、レイチェルは譲らない。
「分かってます。でも脱がせます」
レイチェルを見上げていたクロイツがフッと笑って言う。
「なら、2人で脱がせ合う?」
「そうですね、それがいいです」
(なんだか分かんないけど乗っちゃった)
恥ずかしさと意味の分からなさに戸惑いながらレイチェルが手を前に持ってくると、クロイツは繋いだ手の指を組みなおした。
指を絡めたままのクロイツは、レイチェルがやりたいことを邪魔しないように従う。
クロイツを裸にするのは簡単だ。
腰に巻き付いている布のベルトを解けばいい。
レイチェルはツルツルの紐の端を両手の親指と人差し指でつまむ。
レイチェルの中指と薬指、小指にはクロイツの指が軽く絡まっている。
シュルリと解けていく布ベルトから手を離せば、それは勝手に落ちていく。
締めるものを失くしたクロイツのガウンの合わせ目を、熱く立ち上がる高ぶりが開いた。
(うわっ、大きい! 知ってたけど)
固く立ち上がったクロイツのクロイツは、色は淡いがバッキバキに出来上がっていた。
(いつも思うけど……コレって入るの?)
レイチェルはゴクリと生唾を飲み込んだ。
ふふ、とクロイツの笑う気配がする。
(負けないんだからっ。ここは、まず脱がせないとっ)
レイチェルがクロイツの肩に手を伸ばせば、彼の手もそれに器用についてくる。
2人の手がクロイツの羽織っているガウンに滑り込むと、それは簡単にはらりと床へと落ちた。
「ふふふ。じゃ、今度はぼくの番だよ」
クロイツは楽しそうにエロティックな笑みを浮かべると、膝立ちのままレイチェルと繋いだ手をナイトドレスの肩紐へと持ってきた。
両手の人差し指の先で軽く肩紐を引っかけると、手をレイチェルの肩に滑らせながら下ろす。
指先からこぼれていく肩紐と一緒に、ナイトドレスは足元へと滑り落ちていった。
後に残ったのは、可愛らしく両サイドをちょうちょ結びにされた、防御力ゼロの小さな布切れだけだ。
クロイツは、そのリボンも器用にスルリと解いた。
はらりと落ちるかと思われた布切れは、レイチェルの股間との別れを惜しむようにヒラヒラとくっついている。
レイチェルは羞恥に全身を主に染めて叫ぶ。
「もう、やだっ!」
「ふふ、エロいね」
クロイツは、真っ赤になるレイチェルへ見せつけるように、奥のすぼまりから糸を引きながら離れていく、小さなその布切れを取り除いた。
指は絡められたままだったので、その感触はレイチェルへと生々しく伝わった。
(え? これは……どういうこと? わたしの愛液ということなの? それともクロイツの唾液?)
レイチェルが妙なところにこだわっている間に、ヒョイと持ち上げられてベッドの上に乗せられた。
クロイツが前から四つん這いでにじり寄る。
「レイチェル、しっかりして。これからが本番だよ?」
「あ……あぁ、そうですね」
(雰囲気に呑まれているだけじゃダメ! がんばれ、わたし!)
正面に胡坐をかいて座にったクロイツのクロイツを見ながら、レイチェルは両手に魔力をまとわせた。
それを見たクロイツは慌ててレイチェルを止めた。
「えっと……レイチェル? それはもうやめてくれるかな?」
「どうしてですか? 1回出さないと入らないのでは?」
レイチェルは可愛らしく首を傾げた。
「え? でもそれはちょっと……瘴気払いは、今日はいいかな、と思って……」
(あぁー……あの時にコレで出しまくったから……もしかして、トラウマになっちゃったのかしら?)
レイチェルは両手を見ながら悩み、魔力を消した。
あからさまにクロイツがホッとした表情を見せる。
今日のところは止めておいて正解のようだ。
(でも、わたしからも何かしたい)
両手を見ていたレイチェルは、ふと胸元に目を落とした。
(こっちを使えばよいのでは?)
レイチェルは夜伽聖女向けの指導書の内容を思い返しながら考えた。
「……ちょっと、レイチェル? 何をしようとして……」
「大丈夫です、わたしの胸を使ってこう……」
「ちょ、待って! 待って! レイチェル⁉」
焦るクロイツのクロイツを、レイチェルは白い乳房の間に挟んだ。
その姿はチャーミングで、クロイツは熱い欲望をあっという間に爆発させた。
「あっ⁉……ウッ!」
「ふはぁ~」
レイチェルは満足げな溜息を吐きながら、胸の間に挟んだそれをまじまじと眺めている。
(あ、本当だったわ。聖女紋があった時とは色が違う。もちろん瘴気払いした時とも違うわ。ちゃんと白いし……というか、キラキラしている気がする。これが子種なの? 不思議な感じね。特に匂いとか味とか気にならないけど、それはクロイツのものだからかしら?)
ぬるっとしたそれが、1回果ててもバッキバキなクロイツの高ぶりを、ぬらりと伝い落ちていく。
(このような行為をすると男性はもちろん、女性のほうも、むらむらっとするらしいけど……それはどうかしら?)
レイチェルは首を傾げてしばし考えた。
そしてそのまま上目遣いでクロイツをみる。
アメジスト色の瞳に、赤面して息の荒い彼の姿が映った。
ピンク色の髪がサラサラと音を立てて揺れる。
レイチェルの可愛らしい顔や髪には、クロイツの放ったモノが飛び散っていた。
「……もう君って人は……」
荒い息の合間から苦情のような、照れているような、呆れているような、不思議な響きの言葉が漏れた。
「お嫌でしたか?」
「もう辛抱たまらんっ!」
クロイツはレイチェルをギュッと抱きしめてから、自分の下に組み敷いた。
(ああぁぁぁぁぁ、緊張するうぅぅぅぅ)
今夜は国王と王妃の、初めての夜だ。
(正式には、ってことだけど。もう初めてでもないし……いえ、避妊紋を取ってからは初めてだから、初めてってことでいいのかしら?)
賑やか過ぎるお披露目を終えた、2人だけのお楽しみ。
(住み慣れている自室なのに。全然違って見えるのは何故かしら?)
いつも使っている青い部屋は、一晩留守にしただけで随分とロマンティックに見えた。
金色のカーテンが閉じられた青い部屋の明かりは既に絞られていて、あちらこちらに飾られた夜伽花は七色に輝いている。
ピンク色をベースに光る七色は、貝の内側にある真珠層のように美しく魅力的だ。
「ふふ、来たね」
そして何よりも魅力的なのは。
銀色のガウン姿でソファに腰を下ろし、こちらを見上げて甘く微笑む王子さまだ。
妖しく光る奇跡の花と言われている夜伽花よりも、ずっと明るく魅力的に輝いている。
キラキラと輝く金髪はサラサラと揺れて。
美しく整った顔には極上の笑み。
ふふふと笑うクロイツの、金の瞳は真っ直ぐにレイチェルを見ている。
「おいで、ぼくの可愛い女性」
「ええ、行くわ。わたしの愛しい男性」
クロイツに両手を差し出されて、レイチェルはその手を取った。
するとクルッと抱き込まれて、あっという間に彼の膝の上にポスンと置かれ、後ろから抱きしめられてしまった。
「あらっ?」
(背中にクロイツさまの胸板を感じるわ。本当に逞しい。背中に当たる胸板も、腰に回る腕も、お尻の下にある太ももも、全部固いのね……それに熱い)
そんな風にレイチェルがクロイツを感じていると、彼はレイチェルの肩のあたりに顔を埋めた。
「ふふふ、ぼくのレイチェル」
髪と髪とが触れ合う感触が心地よい。
肩口あたりでうっとりと話すクロイツの男性にしては少し高めの声が、レイチェルの耳に甘く響いてくる。
「今日は大変だったね。疲れた?」
「いえ大丈夫よ。わたしは自分で回復が使えるから」
「ふふ。ぼくの奥さんは、美しくて、可愛くて、有能だ」
レイチェルが後ろへ振り返ると、こちらを愛しげに見つめる金色の瞳と目があった。
(わたしのアメジスト色の瞳が映り込みそうなほど、キラキラした瞳)
吸い込まれそうな金色の瞳に誘われて、そっと唇を寄せたのはレイチェルの方だった。
クロイツの唇の上を自分の唇で優しくゆっくりと辿って、彼の耳元でささやく。
「クロイツさま……いえ、クロイツ。わたしは、あなたが欲しい」
「ふふふ。君から求められるなんて、嬉しいね」
クロイツは、本当に心の底から楽しそうに笑った。
レイチェルは、左手の細くて白い指を使って、彼の頬を包み込むように撫でた。
(なんてセクシーな笑顔なのかしら。こんな素敵な人がわたしの伴侶なんて。ホルツさまから飼い殺しにすると冷遇されていた時には、想像することすらなかったわ)
この国の王子であり、クロイツの弟でもあるホルツは、結婚式にも、戴冠式にも列席していた。
苦々しい表情でこちらを睨みつけてくる彼を、怖いとも思わなかったし、憎いとも思わなかった。
(ホルツさまは、わたしの前から消えていく人でしかない。わたしは、わたしの側にいてくれる人たちを大事にすればよいだけよ)
レイチェルは、愛しい夫の額にキスをした。
思いのほか凛々しい眉毛や、長いまつげが彩る大きな目。
唇で辿れば、眉毛の固さや瞼の柔らかさが生々しい。
近くで見れば、男性であるクロイツの肌は、女性のものとは違う。
唇で触れれば、もっと違いがよく分かる。
滑らかに見えてもスベスベとは言えない、男性の肌。
(クロイツのなかには、この女性的な美しい見た目とは違う世界が広がっている。その世界は残酷で冷徹だから、わたしは彼を恐れるべきなのかもしれない。でもわたしは、それを承知したうえで、すべてを受け入れて彼に寄り添いたい)
呪いの魔法陣も、守護の魔法陣も、変わらず彼のなかにある。
また暴走することもあるだろう。
敵は簡単に人を呪う。
結果の及ぶ先まで考えない。
だからこそ彼の判断は、感情で決まることはなく、冷静に先のことまで見通して、容赦なく下される。
優しげに見えても、情け深くはない。
(クロイツが暴走したら、わたしがまた治めればいい。政治的な駆け引きを手伝うのは難しいものがあるけれど、わたしで出来ることがあるのなら、なるべくしてあげたい)
愛しい。
まるで宝物のような存在に、レイチェルは口付ける。
額に、こめかみに、頬に。
彼がここにいることを神に感謝するように、唇を滑らせながら、クロイツの姿を辿っていく。
クロイツは、彼女に辿って欲しい場所を、まるで捧げもののように差し出す。
そして自分の差し出した部分へ素直にキスをするレイチェルに、クロイツは嬉しそうに笑った。
「ふふふ。今日の君は、積極的でエロいね」
「ええ。初夜ですもの。求めても不思議はないでしょ?」
レイチェルは自分の柔らかな頬を、クロイツのそれに押し付けて、撫でるように左右へ振った。
「ふふふ。そうだね、初夜だからね」
クロイツの嬉しそうな笑い声が、頬から振動してレイチェルに伝わってくる。
レイチェルはパッと顔を離すと、クロイツを覗き込んで聞く。
「あなたは、わたしを求めてくれる?」
「もちろん」
そう言いながらクロイツは、レイチェルを横抱きにしながら立ち上がった。
「キャッ」
レイチェルは小さな悲鳴を上げながら、慌ててクロイツの思いのほか太い首に手を回した。
「ソファを汚すのは避けたいからね。ベッドへ行こう」
レイチェルは、クロイツの厚い胸板に甘えるように顔を寄せながら、花のように笑う。
「ふふふ。わたしは浄化を使えるから、気にする必要はないのに」
「ああ、そうだったね。では、ソファでやっちゃう?」
「ふふふ。いえ、今夜はベッドに行きましょう」
クロイツはチュッチュッと軽い音を立てながらレイチェルの頬や額に沢山のキスを降らせながら、ベッドへと向かった。
レイチェルはくすぐったくて、クスクスと笑う。
「本当に君は、甘くてよい匂いがする」
「ふふふ。メイドたちが香油をたっぷり塗り込んでくれたからよ」
「違うよ、これは。君の匂いだ」
クロイツはベッドの端にレイチェルを座らせると、その前にかがんだ。
そして彼女のアメジスト色の瞳を覗き込んで言う。
「今夜は2人で高いところへ、イこうか」
「ふふ、いいわね。お互いに高め合うなんて、エロいわ」
2人は共犯のように悪戯な笑みを交わして、唇を重ねた。
柔らかく唇を食まれ、舌を絡めて淫猥な音ごと楽しむようなキスをして。
唇が糸を引きながら離れていくと、クロイツがフェロモン全開でニヤリと笑った。
「さて、使用人たちの力作を拝見しようか」
クロイツの長くしなやかだが、思いのほか力強い指先が、ツツーとレイチェルのガウンの襟元を下りていく。
「ンッ」
敏感なレイチェルの体の反応を楽しみながら下りていく悪戯な男の手が、濃いピンクをした布のベルトの端をとらえた。
股の間からクロイツがレイチェルを見上げ、妖艶に意地悪く笑う。
「ふふ、解き甲斐のある綺麗な結び目だね」
シュルッと布の擦れる音がしてリボンのようなベルトが解ける。
縛るものがなくなったガウンは、はらりと2つに割れていく。
揺れる豊かな乳房が薄絹の向こうからクロイツを誘う。
豊かな乳房の天蓋から垂れ下がるカーテンのように開いたガウンの下からは、薄絹の淡いピンク色したナイトドレスが現れた。
それ以上何もつけていない上半身はもちろん、防御力の低い下着も透けている。
クロイツの喉がゴクリと鳴った。
「何も着ていないより、エッチだね」
まじまじと眺めながら真顔で言うクロイツに、レイチェルは赤くなった顔を両手で覆った。
クロイツは恥ずかしがるレイチェルを含めて、ガウンの隙間から現れた【着ている方がエッチ】という状態を、しばし堪能した。
(いつまで見ているつもりかしら? クロイツの、なんだかスケベでフェロモンたっぷりな表情が見ているだけで恥ずかしい。これが噂に聞く視姦というものなの? どっちにしても恥ずかしいわ)
既に男の体を知っているレイチェルのすぼまりは、本人の意思とは関係なく緩く濡れていく。
(あんっ……なんだか下腹あたりが変な感じだわ)
クロイツは、まるでそのことを知っているかのように、余裕のある淫猥な笑みを浮かべた。
そして、ゆっくりとガウンを脱がしにかかる。
長く形のよい指をガウンの下に入れてシルクとレイチェルの両方の手触りを楽しんでいた彼は、ゆっくりとその手を引いた。
「スベスベしていて気持ちがいいね。しかもほら見て。スルッと脱げてしまうよ」
レイチェルには大き目のガウンは、少しずらしてやっただけで自らの重みでスルリと滑って落ちていく。
まずは右肩。
続いて左肩が空気にさらされて、レイチェルはブルリと震えた。
「ふふ。寒いの? なら、このナイトドレスを脱がせてしまうのは可哀想だね。どうしようか?」
そう言いながら男の手は、淡いピンク色をした薄絹の上を彷徨った。
「あぁ……ん」
衣類としての防御力すら最弱な布切れの上を漂う男の手の感触に、女の体は緩く戦慄く。
「このエッチな体をどうしてくれようか」
クロイツは喉の奥で笑いながら、レイチェルの太ももの間に収まって、彼女を見上げる。
膝立ちになった彼の目線には、たわわに実った2つの大きな乳房があった。
クロイツはそれに顔を寄せて、唇を使って小さく食む。
「あンッ」
小さく声を上げたレイチェルは、反射的に胸元へと自分の手を伸ばして守ろうとした。
「ふふふ。悪い手だ」
クロイツは自分の行く先を邪魔する小さな手に自分の指を絡めると、ベッドの上に縫い留めた。
そしてさっきの続きとばかりに、唇で豊かな胸を小さく食む。
両手を男の手にとらえられ、胸を突き出すような姿勢になったレイチェルは、逃げ場をなくして小さく喘いだ。
クロイツの唾液で薄絹は透けてレイチェルの肌へ張りついていく。
「我ながらコレは……エロいな?」
「あぁん」
クロイツの呟きが聞こえたかと思えば、次には胸の先を唇で軽く食まれて、レイチェルは声を上げた。
「君は胸が弱いようだね」
クロイツは自分の顔を、レイチェルの胸を揉みしだくようにして動かした。
「ンッ」
(ちょっ、ちょっと……一方的にやられ放題になると、ちょっとわたし持つか分からないわ……)
そうは思ったが、反撃の隙がない。
手も、足も、動かせないなか、クロイツの顔は胸からどんどん下に向かっているからだ。
舌や唇も使って行われる行軍は、肋骨から腹、へそを通ってさらに下を目指している。
「ちょっ……クロイツ?」
レイチェルが呼びかけながら身じろぎすれば、絡められているクロイツの手にギュッと力が込められた。
足の間に挟まっている体から逃れることもできず、レイチェルは徐々に荒くなっていく喘ぎ声を上げ続きた。
「んんっ」
彼の舌は、侍女たちが丁寧にはかせた小さな下着のあるあたりまで辿り着いた。
「薄絹は薄絹を重ねても、やはり透けるのか……エロいね……」
しばしの鑑賞タイムにレイチェルの心臓はドキドキと踊った。
(もうっ、もうっ、そんなところをじっくり見ないでっ)
恥ずかしがるレイチェルだが、足を閉じればクロイツをギュウギュウと締め付けてしまうことになるし、足を広げれば彼女の奥がよく見えてしまう。
両手を抑え込まれている状態ではベッドの上へ逃げることもできない。
「あっ」
不意にそこへと唇を寄せられて、レイチェルは背中を仰け反らせた。
「ふふ、可愛い」
(そっ、そんなところで喋らないでぇ~)
レイチェルは羞恥でパンパンになって弾けてしまいそうだ。
股間から顔を上げたクロイツは、さっきまで自分の舌が彷徨っていたあたりを眺めた。
「まだ脱がせてもいないのに……こんなに濡れてスケスケじゃないか。なんてエッチなんだ」
「わ……わざわざ言わないで下さい」
「んーどうしようかな……」
膝立ちしたクロイツは股間を眺めながら、悩まし気な声を出している。
「色香をふりまくスケスケのナイトドレスと下着をそのままにしておくか、それとも脱がせてしまうか……」
クロイツがナイトドレスの肩ひもに歯を引っかけて、上げたり下げたりしている。
「や……」
「ん? やなの?」
淫蕩な雰囲気をまとった声に、レイチェルは耐えきれなくなって叫ぶ。
「変態っぽくて嫌ですっ!」
「……は?」
クロイツはポカンとしてレイチェルを見る。
「いくらクロイツが美しくてキラキラでも、やらしくなりすぎるとオジサン臭いです」
「オジサン臭い……」
16歳で犬になったクロイツは現在24歳。
気分だけは16歳のクロイツは『オジサン臭い』という言葉に、地味にダメージを与えた。
「えーと、ではどうすれば……」
「もうっ、クロイツばかりズルいです」
「ん?」
首を傾げるクロイツを、レイチェルは睨むようにして見ながら立ち上がった。
自分の手にクロイツの手が絡みついているが、それは構わない。
「わたしもクロイツさまを脱がせたいっ。脱がせます」
「脱がせるといっても、私はガウンしか羽織ってないが?」
クロイツは困ったように眉を下げたが、レイチェルは譲らない。
「分かってます。でも脱がせます」
レイチェルを見上げていたクロイツがフッと笑って言う。
「なら、2人で脱がせ合う?」
「そうですね、それがいいです」
(なんだか分かんないけど乗っちゃった)
恥ずかしさと意味の分からなさに戸惑いながらレイチェルが手を前に持ってくると、クロイツは繋いだ手の指を組みなおした。
指を絡めたままのクロイツは、レイチェルがやりたいことを邪魔しないように従う。
クロイツを裸にするのは簡単だ。
腰に巻き付いている布のベルトを解けばいい。
レイチェルはツルツルの紐の端を両手の親指と人差し指でつまむ。
レイチェルの中指と薬指、小指にはクロイツの指が軽く絡まっている。
シュルリと解けていく布ベルトから手を離せば、それは勝手に落ちていく。
締めるものを失くしたクロイツのガウンの合わせ目を、熱く立ち上がる高ぶりが開いた。
(うわっ、大きい! 知ってたけど)
固く立ち上がったクロイツのクロイツは、色は淡いがバッキバキに出来上がっていた。
(いつも思うけど……コレって入るの?)
レイチェルはゴクリと生唾を飲み込んだ。
ふふ、とクロイツの笑う気配がする。
(負けないんだからっ。ここは、まず脱がせないとっ)
レイチェルがクロイツの肩に手を伸ばせば、彼の手もそれに器用についてくる。
2人の手がクロイツの羽織っているガウンに滑り込むと、それは簡単にはらりと床へと落ちた。
「ふふふ。じゃ、今度はぼくの番だよ」
クロイツは楽しそうにエロティックな笑みを浮かべると、膝立ちのままレイチェルと繋いだ手をナイトドレスの肩紐へと持ってきた。
両手の人差し指の先で軽く肩紐を引っかけると、手をレイチェルの肩に滑らせながら下ろす。
指先からこぼれていく肩紐と一緒に、ナイトドレスは足元へと滑り落ちていった。
後に残ったのは、可愛らしく両サイドをちょうちょ結びにされた、防御力ゼロの小さな布切れだけだ。
クロイツは、そのリボンも器用にスルリと解いた。
はらりと落ちるかと思われた布切れは、レイチェルの股間との別れを惜しむようにヒラヒラとくっついている。
レイチェルは羞恥に全身を主に染めて叫ぶ。
「もう、やだっ!」
「ふふ、エロいね」
クロイツは、真っ赤になるレイチェルへ見せつけるように、奥のすぼまりから糸を引きながら離れていく、小さなその布切れを取り除いた。
指は絡められたままだったので、その感触はレイチェルへと生々しく伝わった。
(え? これは……どういうこと? わたしの愛液ということなの? それともクロイツの唾液?)
レイチェルが妙なところにこだわっている間に、ヒョイと持ち上げられてベッドの上に乗せられた。
クロイツが前から四つん這いでにじり寄る。
「レイチェル、しっかりして。これからが本番だよ?」
「あ……あぁ、そうですね」
(雰囲気に呑まれているだけじゃダメ! がんばれ、わたし!)
正面に胡坐をかいて座にったクロイツのクロイツを見ながら、レイチェルは両手に魔力をまとわせた。
それを見たクロイツは慌ててレイチェルを止めた。
「えっと……レイチェル? それはもうやめてくれるかな?」
「どうしてですか? 1回出さないと入らないのでは?」
レイチェルは可愛らしく首を傾げた。
「え? でもそれはちょっと……瘴気払いは、今日はいいかな、と思って……」
(あぁー……あの時にコレで出しまくったから……もしかして、トラウマになっちゃったのかしら?)
レイチェルは両手を見ながら悩み、魔力を消した。
あからさまにクロイツがホッとした表情を見せる。
今日のところは止めておいて正解のようだ。
(でも、わたしからも何かしたい)
両手を見ていたレイチェルは、ふと胸元に目を落とした。
(こっちを使えばよいのでは?)
レイチェルは夜伽聖女向けの指導書の内容を思い返しながら考えた。
「……ちょっと、レイチェル? 何をしようとして……」
「大丈夫です、わたしの胸を使ってこう……」
「ちょ、待って! 待って! レイチェル⁉」
焦るクロイツのクロイツを、レイチェルは白い乳房の間に挟んだ。
その姿はチャーミングで、クロイツは熱い欲望をあっという間に爆発させた。
「あっ⁉……ウッ!」
「ふはぁ~」
レイチェルは満足げな溜息を吐きながら、胸の間に挟んだそれをまじまじと眺めている。
(あ、本当だったわ。聖女紋があった時とは色が違う。もちろん瘴気払いした時とも違うわ。ちゃんと白いし……というか、キラキラしている気がする。これが子種なの? 不思議な感じね。特に匂いとか味とか気にならないけど、それはクロイツのものだからかしら?)
ぬるっとしたそれが、1回果ててもバッキバキなクロイツの高ぶりを、ぬらりと伝い落ちていく。
(このような行為をすると男性はもちろん、女性のほうも、むらむらっとするらしいけど……それはどうかしら?)
レイチェルは首を傾げてしばし考えた。
そしてそのまま上目遣いでクロイツをみる。
アメジスト色の瞳に、赤面して息の荒い彼の姿が映った。
ピンク色の髪がサラサラと音を立てて揺れる。
レイチェルの可愛らしい顔や髪には、クロイツの放ったモノが飛び散っていた。
「……もう君って人は……」
荒い息の合間から苦情のような、照れているような、呆れているような、不思議な響きの言葉が漏れた。
「お嫌でしたか?」
「もう辛抱たまらんっ!」
クロイツはレイチェルをギュッと抱きしめてから、自分の下に組み敷いた。
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