【完結】煌めくままに恋しよう

天田れおぽん

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第37話 意外と壮大な茶番~

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「なんだよ、この宇宙人が来そうな音楽はっ」
「真城、俺もわからんっ」
「そりゃそうだよ、黒江。おれたち、この学園の初心者なんだから……」

 テルミンの音が不穏に響き渡るなか、パンッと照明が落ちた。
 客席がざわつく。
 3人も当然のように動揺し、椅子から半分腰を浮かせた状態でキョロキョロと舞台と客席とを見比べていた。

「なんだなんだ⁉」
「なにがおきた⁉」
「えっ⁉ えっ⁉」

 校庭を不穏な空気が漂うなか、パンッとスポットライトが舞台へと当たった。

「眩しいっ!」
「なにがおきた⁉」
「意味わからんっ!」

 客席のざわめきも3人とほぼ同意だろう。
 檀上のスポットライトのなかには、銀色の衣装をまとった宇宙人のような杉田が現れた。
 ただでさえキラキラしている銀色の衣装が、スポットライトを浴びてキラキラと輝いている。
 
「まぶしいぃぃぃっ」
「なにやってんだ、アイツはっ⁉」
「意味わからんっ!」

 客席がザワザワしていると、杉田はセリフらしきものを喋りだした。

『わたしは、生徒会星からやってきた生徒会の精だ。生徒会を内申書目的で利用しようとはけしからんっ』

 杉田は両手を横に広げて立っていて、銀色の衣装はスポットライトの光を浴びてキラキラしている。
 声には妙なエコーがかかっていたりなど無駄に手間がかかっていた。

 黒江は完全に引いていて椅子のうえに腰を浮かせたまま固まっている。

「なんだなんだ、何が始まるんだっ」

 真城は目を丸くして舞台上を見つめる。
 坂下が両手を拳にして振り回しながら前に身を乗り出して真城の顔の横で叫ぶ。

「おおっ、これが噂の茶番劇かっ!」
「マジで壮大な無駄~」

 真城が嘆くように言ったのを合図に、3人はゲラゲラと笑いながら椅子に腰を下ろした。

「しょーがないなー。杉田が出てるしぃ、見てやるか」

 真城が言うと黒江と坂下も頷いた。

 杉田が身に着けている全身を覆う銀色の衣装は、顔の部分だけ出ていた。

「全身タイツというには緩々だな?」

 黒江があまりに冷静に言うので、真城と坂下は噴き出した。
 真城がケラケラ笑いながら言う。

「アレじゃね? 歴代の一年生が着ている衣装とか?」
「おお、伝統の衣装ってか?」
「そうそう」

 黒江が真顔のまま、右手で拳を作って左手のひらを打ちながら言うのを見て、真城はコクコクと頷きながら笑った。
 坂下に至っては、椅子の上に寝転がるようにしながら「腹イテェ」とか言いながら笑い転げている。

 客席が騒めいている間にも、舞台上では淡々と劇が続けられていた。
 杉田がエコーの効きすぎた声で言う。

『次期生徒会長となる御菩薩池みぞろけ正輝、別名菩薩先輩っ!』

 キラキラと銀色に光る腕が菩薩先輩を指さす。

『お前は生徒会を内申書目的で利用としている。生徒会星からやってきた生徒会の精としては許せん行為だ。君は生徒会長として相応しくないっ』
「それは誤解です、生徒会の精さまっ」

 凛とした菩薩先輩の声が響いた。
 真城が感動したように言う。

「すげっ、菩薩先輩。よく笑わずにセリフ言えるよな? オレ、無理~」

 真城本人はケラケラ笑っている。
 黒江は真顔のまま言う。

「そうだな、真城。俺だったら無理だ」

 坂下は、そんな黒江を後ろの席から覗き込んだ。

「そうか? 黒江だったら真顔で返しそうだけど」
「んなわけあるか、坂下。君のなかの俺ってどんななの?」

 ケケケッと笑う真城と坂下に、黒江は不満げだ。
 客席の反応などどこ吹く風と気にする様子もなく、杉田は淡々とセリフを言う。

『どこが誤解だというのだ、菩薩先輩。生徒会長をやったというのは内申書でポイントが高い。進学の気になるお年ごろの高校二年生には魅力的な点ではないか』
「いえ、そこがそもそも間違いなのです。私は海外で飛び級して、既に大学は卒業してます。ですから進学先が必要ないのです」
『な、なんだって?』

 セリフは棒読みのまま、動揺を全身で表現してみました、という動きを繰り広げる杉田に対して、客席の反応は意外と冷静だ。

 真城は菩薩先輩を指さして言う。

「菩薩先輩が、スキップして大学卒業しているって話は、有名だよね?」

 黒江はウンウンと頷きながら言う。

「そうだな、真城。菩薩先輩はギフテッドだから。むしろこの学校へは普通の学生としての体験をするために入学したと聞いたことがある」
「ん~、この学校で普通を体験?」

 黒江の言葉に坂下は首を傾げた。

 菩薩先輩は真面目な顔をしてセリフを言っている。
 難易度で言えば、キラキラ衣装を身に着けている杉田に比べると菩薩先輩の方が上だ。

「私は純粋に生徒会を愛してますし、生徒会長として真面目に取り組むつもりです」

 なのに笑いだすことなくセリフをしっかり言っている。
 杉田をキラキラした目で見つめるという演技付きだ。

「やー。やっぱ菩薩先輩、半端ない」

 真城はそう言いながら、両手のひらを合わせて菩薩先輩を拝み始めた。

「あーありがたい感じだな?」

 黒江もそう言いながら菩薩先輩を拝む。
 坂下に至っては問答無用で拝んでいた。

『ならば仕方ない、生徒会星からやってきた生徒会の精として、お前を生徒会長として認めようっ!』
「ありがとうございますっ!」

 菩薩先輩がそのセリフを言った途端、ドーンとバズーガのようなものが打ち上げられて白煙と共に金色のキラキラが打ちあがり、周辺に金色の紙吹雪がまき散らされた。
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