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11 獣医師免許
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その後、無駄にへこたれない赤髪の騎士はアルベルトさんに首根っこを掴まれて回収され、ズルズルと引きずられながら去って行った。
私は客室に運んでもらった白磁器の皿に盛られた赤色のカットトマトやチーズ、パセリが入ったスクランブルエッグや黄金色のハチミツをかけたヨーグルトと大粒の紫ブドウ、キツネ色に焼けた芳ばしいパンと具だくさんの野菜スープという朝食を美味しく頂いた後、ロゼッタに入れてもらった熱い湯気を立てる琥珀色のハーブティーがたゆたう白磁器のティーカップを口元で傾けた。
「それにしても、何しに来てたのかしらね。ヴィットリオさんとアルベルトさんは……」
まさか、本当に私に目覚めのキスをする為だけにやって来て、ヴィットリオさんを回収する為にアルベルトさんも来てたのだろうかと首をひねっていると、ロゼッタは申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「すいません。私のせいなんです」
「え?」
「実家にいる父の体調が思わしくないようで、そのことについて兄と二人で話をしていたんです。そしたら、少し目を離した隙にヴィットリオ様が、マリナ様の客室に忍び込んでしまって」
「そうだったのね……。それにしてもロゼッタのお父さんって、そんなに具合が悪いの?」
「お医者様からは『今すぐ命に関わるような状態ではない』と言われているんですが慢性的な腹痛と体調不良の原因が分からない上、徐々に症状が悪くなっているようなので」
「それは心配ね」
「はい」
憂いを帯びた表情を浮かべるプラチナブロンドの侍女、ロゼッタを見ていると胸が締め付けられる。
「私……。一応、獣医師免許なら持ってるんだけど」
「獣医師免許?」
「動物のお医者さんってこと。でも、獣人の場合は身体の構造が動物寄りなのか人間寄りなのか、両方の性質をあわせ持ってるのか、具体的な詳細がよく分からないわね……。私がロゼッタのお父さんを診て、何か分かれば良いんだけど」
見た目は人間の姿がベースだが獣耳がついているし、第一王子の瞳は瞳孔が縦に細かった。獣の要素が入っているのは間違いなさそうだ。
もし、私がいた世界の獣に関する症状がロゼッタの父にも出ているなら、力になれるかも知れない。そう考えたけど最先端の医療器具がある訳でもなく、この世界に持ち込めたのは茶色いダンボール箱がただ一つ。
あのダンボール箱の中に入っているのは、祖父の形見となった聴診器やペンライト、お得な業務用のマスクや使い捨て手袋といった消耗品がメインだ。
ほかにゴムチューブなどもあったが到底、原因不明の病が特定できそうな医療器具ではない。そこまで考えて私はガックリと肩を落とした。私の心中を察したのか、ロゼッタは寂しそうに微笑を浮かべる。
「マリナ様はお医者様でしたか……。ですが、父はお医者様をあまり信用してないみたいなので……」
「そうなの?」
「何度かお医者様に診てもらってるんですが、一向に良くなることがなく症状が悪化しているので医者不信になってしまったようなんです」
「そうなんだ……」
確かに医者にかかっているのに病気の原因がはっきりせず、症状が悪化する一方では医者に対する不信感も募るだろう。何とか力になりたいけど医者嫌いという相手に対して、獣人の身体に詳しくない私が下手な診断をして余計に医者への心証を悪化させれば、今後の治療に悪影響を及ぼすのは間違いない。私は自分のこめかみをおさえて、しばらく考え込んだが一向に妙案は浮かばなかった。
私は客室に運んでもらった白磁器の皿に盛られた赤色のカットトマトやチーズ、パセリが入ったスクランブルエッグや黄金色のハチミツをかけたヨーグルトと大粒の紫ブドウ、キツネ色に焼けた芳ばしいパンと具だくさんの野菜スープという朝食を美味しく頂いた後、ロゼッタに入れてもらった熱い湯気を立てる琥珀色のハーブティーがたゆたう白磁器のティーカップを口元で傾けた。
「それにしても、何しに来てたのかしらね。ヴィットリオさんとアルベルトさんは……」
まさか、本当に私に目覚めのキスをする為だけにやって来て、ヴィットリオさんを回収する為にアルベルトさんも来てたのだろうかと首をひねっていると、ロゼッタは申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「すいません。私のせいなんです」
「え?」
「実家にいる父の体調が思わしくないようで、そのことについて兄と二人で話をしていたんです。そしたら、少し目を離した隙にヴィットリオ様が、マリナ様の客室に忍び込んでしまって」
「そうだったのね……。それにしてもロゼッタのお父さんって、そんなに具合が悪いの?」
「お医者様からは『今すぐ命に関わるような状態ではない』と言われているんですが慢性的な腹痛と体調不良の原因が分からない上、徐々に症状が悪くなっているようなので」
「それは心配ね」
「はい」
憂いを帯びた表情を浮かべるプラチナブロンドの侍女、ロゼッタを見ていると胸が締め付けられる。
「私……。一応、獣医師免許なら持ってるんだけど」
「獣医師免許?」
「動物のお医者さんってこと。でも、獣人の場合は身体の構造が動物寄りなのか人間寄りなのか、両方の性質をあわせ持ってるのか、具体的な詳細がよく分からないわね……。私がロゼッタのお父さんを診て、何か分かれば良いんだけど」
見た目は人間の姿がベースだが獣耳がついているし、第一王子の瞳は瞳孔が縦に細かった。獣の要素が入っているのは間違いなさそうだ。
もし、私がいた世界の獣に関する症状がロゼッタの父にも出ているなら、力になれるかも知れない。そう考えたけど最先端の医療器具がある訳でもなく、この世界に持ち込めたのは茶色いダンボール箱がただ一つ。
あのダンボール箱の中に入っているのは、祖父の形見となった聴診器やペンライト、お得な業務用のマスクや使い捨て手袋といった消耗品がメインだ。
ほかにゴムチューブなどもあったが到底、原因不明の病が特定できそうな医療器具ではない。そこまで考えて私はガックリと肩を落とした。私の心中を察したのか、ロゼッタは寂しそうに微笑を浮かべる。
「マリナ様はお医者様でしたか……。ですが、父はお医者様をあまり信用してないみたいなので……」
「そうなの?」
「何度かお医者様に診てもらってるんですが、一向に良くなることがなく症状が悪化しているので医者不信になってしまったようなんです」
「そうなんだ……」
確かに医者にかかっているのに病気の原因がはっきりせず、症状が悪化する一方では医者に対する不信感も募るだろう。何とか力になりたいけど医者嫌いという相手に対して、獣人の身体に詳しくない私が下手な診断をして余計に医者への心証を悪化させれば、今後の治療に悪影響を及ぼすのは間違いない。私は自分のこめかみをおさえて、しばらく考え込んだが一向に妙案は浮かばなかった。
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