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18 伯爵令嬢
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その後、客室に戻った私が布張りのソファに座れば、ロゼッタは白磁器のポットから対のティーカップに琥珀色の熱いハーブティーを入れてくれた。
「マリナ様……。先ほどはフィオーレが失礼な物言いをしてしまって、申し訳ございません」
「ロゼッタが悪い訳じゃないから謝らないで。それにしてもフィオーレって、公爵令嬢リリアンヌの侍女?」
「はい。フィオーレは私と同じ時期に侍女になった上、私も彼女も実家は伯爵家ということで……。どうやらライバル視されているようで」
「え、ロゼッタって伯爵令嬢だったの!?」
私がここに来て出会ってからロゼッタは実にかいがいしく、私の世話をしてくれていたので彼女が貴族令嬢だとは思っていなかった。
言われてみればロゼッタには貴族令嬢の気品があるし、今はシンプルで地味な服装だけど華やかなドレスで着飾れば伯爵令嬢として申し分ない美貌である。改めて眼前にいるプラチナブロンドの侍女をまじまじと眺めれば、ロゼッタは控えめに苦笑いした。
「一応、そういうことになりますが。伯爵家の令嬢と言いましても、私の場合は曾祖父が平民でして……。祖父の代で周辺を騒がせていた魔物退治の功績が認められて貴族の称号を頂き、そこから政略結婚を重ねて伯爵家となったという家系ですので」
「へぇ、そうなんだ……。もしかして、さっきのフィオーレって侍女は先祖代々、貴族の家系とか?」
「その通りです。そういう考えの王侯貴族ばかりではないですが……。やはりフィオーレのように先祖代々、伯爵家の家系だった生粋の貴族令嬢からすれば、私のような者が同じ貴族令嬢として肩を並べるのは面白くないようですね」
「なるほど。フィオーレって、選民意識が強い人なのねぇ」
「最近は、第二王子の婚約者である公爵令嬢リリアンヌ様の侍女になったことで、いずれ王妃付き女官長になると言っていましたが……。公爵令嬢リリアンヌ様も貴族の身分や血統を重要視する方ですから、マリナ様はあまり関わらない方が無難かと」
そういえば黒縁眼鏡の魔術師グラウクスさんは私が召還されてこの世界に来た時、ロゼッタを私の世話係にすることを「ちょうどいい」と言っていた。
あの時は偶然、私と年齢が近い侍女が通りかかったから「ちょうどいい」と言っていたのかと思っていたけど、実はロゼッタの曾祖父が平民だったことも関係していたりするのだろうか。
「それにしても、私の方こそ何だかごめんなさいね?」
「え?」
「私がこちらの文字が分からないせいで、ロゼッタに気をつかわせてしまって」
「いえ。それこそ、マリナ様のせいではありませんから」
ロゼッタが穏やかに微笑んだ時、客間のドアが外からノックされた。誰が来訪したのかとロゼッタが茶褐色のドアを開けると、そこには大輪の赤ユリを一本、手に持ち豪奢な深紅のドレスに身を包んだ公爵令嬢リリアンヌがいた。
「マリナ様……。先ほどはフィオーレが失礼な物言いをしてしまって、申し訳ございません」
「ロゼッタが悪い訳じゃないから謝らないで。それにしてもフィオーレって、公爵令嬢リリアンヌの侍女?」
「はい。フィオーレは私と同じ時期に侍女になった上、私も彼女も実家は伯爵家ということで……。どうやらライバル視されているようで」
「え、ロゼッタって伯爵令嬢だったの!?」
私がここに来て出会ってからロゼッタは実にかいがいしく、私の世話をしてくれていたので彼女が貴族令嬢だとは思っていなかった。
言われてみればロゼッタには貴族令嬢の気品があるし、今はシンプルで地味な服装だけど華やかなドレスで着飾れば伯爵令嬢として申し分ない美貌である。改めて眼前にいるプラチナブロンドの侍女をまじまじと眺めれば、ロゼッタは控えめに苦笑いした。
「一応、そういうことになりますが。伯爵家の令嬢と言いましても、私の場合は曾祖父が平民でして……。祖父の代で周辺を騒がせていた魔物退治の功績が認められて貴族の称号を頂き、そこから政略結婚を重ねて伯爵家となったという家系ですので」
「へぇ、そうなんだ……。もしかして、さっきのフィオーレって侍女は先祖代々、貴族の家系とか?」
「その通りです。そういう考えの王侯貴族ばかりではないですが……。やはりフィオーレのように先祖代々、伯爵家の家系だった生粋の貴族令嬢からすれば、私のような者が同じ貴族令嬢として肩を並べるのは面白くないようですね」
「なるほど。フィオーレって、選民意識が強い人なのねぇ」
「最近は、第二王子の婚約者である公爵令嬢リリアンヌ様の侍女になったことで、いずれ王妃付き女官長になると言っていましたが……。公爵令嬢リリアンヌ様も貴族の身分や血統を重要視する方ですから、マリナ様はあまり関わらない方が無難かと」
そういえば黒縁眼鏡の魔術師グラウクスさんは私が召還されてこの世界に来た時、ロゼッタを私の世話係にすることを「ちょうどいい」と言っていた。
あの時は偶然、私と年齢が近い侍女が通りかかったから「ちょうどいい」と言っていたのかと思っていたけど、実はロゼッタの曾祖父が平民だったことも関係していたりするのだろうか。
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「え?」
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「いえ。それこそ、マリナ様のせいではありませんから」
ロゼッタが穏やかに微笑んだ時、客間のドアが外からノックされた。誰が来訪したのかとロゼッタが茶褐色のドアを開けると、そこには大輪の赤ユリを一本、手に持ち豪奢な深紅のドレスに身を包んだ公爵令嬢リリアンヌがいた。
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