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「マリナちゃんは医者なんだろう?」
助けを求めるかのような真剣な瞳で見つめられ、私は閉じようとしていたドアを開いた。
「正確には獣医ですが……。ヴィットリオさん。どこが悪いんですか?」
「胸が締め付けられるようで、食事もロクにノドを通らないんだ……」
「食欲不振? 胃腸でしょうか?」
「原因は分かってる……」
「え?」
「恋の病に間違いない! この病を癒やせるのはマリナちゃんの愛だげっ!」
満面の笑みで私に抱きつこうとした赤髪の騎士を背後から羽交い締めにした上、両手でヴィットリオさんの後頭部を押し曲げ圧迫することで関節技を決める形にしたのは銀髪の騎士アルベルトさんだった。
「貴様という奴は! 油断も隙も無いなっ!」
「痛い、痛い、痛い!」
「今日も大皿で、たっぷり三人前は食事をたべていた分際で、よくも『食事もロクにノドを通らない』などと言えた物だなっ!」
「ちょっ! マジでそれ以上は! ぐああっ!」
「アルベルトさん……! 首関節技はハマり過ぎると危険なので、その位で……!」
「取り込み中か? 客室に入れて欲しいのだが……」
うめき声を上げる赤髪の騎士と、関節技を仕掛けている銀髪の騎士をそろそろ止めようと思っていた時、声をかけてきたのは何と金髪碧眼の第二王子だった。
「えっ! 何で、レナード王子がここに?」
「少し、ロゼッタと話がしたいのだ……。会わせてくれ」
第二王子が思い詰めたような表情でそう言った時、ドアを隔てた隣の部屋から何かが砕けるような高い音が響いた。
「何だ?」
「ロゼッタ!? 大丈夫?」
陶器製のティーカップか何かを床に落としたのだろうかと控えの部屋に繋がるドアを開ると、まず木製テーブルの上にたっぷりと水が入った、透明ガラス製の水差しとお茶を入れるためだろう。陶器製のポットとティーカップが置かれているのが目に入った。
下に視線を向けると、床の上にはこぼれた水と粉々に砕けたガラスグラスの破片が散らばっている。そして、プラチナブロンドの侍女は床の上でぐったりと倒れていた。
「う、うっ……!」
「どうしたのロゼッタ!? 何があったの?」
駆け寄って顔を見ると白磁器のような肌からは血の気が完全に失せて苦しげに眉根が寄せられていた。尋常じゃ無い雰囲気を感じながら、割れたガラスグラスの破片で身体をケガした痕跡がないか確認する。
さいわい身体のどこも出血はしていないようだが、だったら何故ロゼッタが倒れていたのか。いまだに立ち上がることが出来ないのか理由が分かない。貧血なら、ここまで苦しそうな状態にはならないはずだ。当惑しているとプラチナブロンドの侍女はうっすらと、まぶたを開いて細く息を吐いた。
「いつも通り、水を毒味したら……」
「毒味!? そんなことやってたの!?」
何かと世話を焼いてくれてありがたいとは思っていたけれど、まさかロゼッタが毒味までしていたとは夢にも思わず私は愕然とした。
助けを求めるかのような真剣な瞳で見つめられ、私は閉じようとしていたドアを開いた。
「正確には獣医ですが……。ヴィットリオさん。どこが悪いんですか?」
「胸が締め付けられるようで、食事もロクにノドを通らないんだ……」
「食欲不振? 胃腸でしょうか?」
「原因は分かってる……」
「え?」
「恋の病に間違いない! この病を癒やせるのはマリナちゃんの愛だげっ!」
満面の笑みで私に抱きつこうとした赤髪の騎士を背後から羽交い締めにした上、両手でヴィットリオさんの後頭部を押し曲げ圧迫することで関節技を決める形にしたのは銀髪の騎士アルベルトさんだった。
「貴様という奴は! 油断も隙も無いなっ!」
「痛い、痛い、痛い!」
「今日も大皿で、たっぷり三人前は食事をたべていた分際で、よくも『食事もロクにノドを通らない』などと言えた物だなっ!」
「ちょっ! マジでそれ以上は! ぐああっ!」
「アルベルトさん……! 首関節技はハマり過ぎると危険なので、その位で……!」
「取り込み中か? 客室に入れて欲しいのだが……」
うめき声を上げる赤髪の騎士と、関節技を仕掛けている銀髪の騎士をそろそろ止めようと思っていた時、声をかけてきたのは何と金髪碧眼の第二王子だった。
「えっ! 何で、レナード王子がここに?」
「少し、ロゼッタと話がしたいのだ……。会わせてくれ」
第二王子が思い詰めたような表情でそう言った時、ドアを隔てた隣の部屋から何かが砕けるような高い音が響いた。
「何だ?」
「ロゼッタ!? 大丈夫?」
陶器製のティーカップか何かを床に落としたのだろうかと控えの部屋に繋がるドアを開ると、まず木製テーブルの上にたっぷりと水が入った、透明ガラス製の水差しとお茶を入れるためだろう。陶器製のポットとティーカップが置かれているのが目に入った。
下に視線を向けると、床の上にはこぼれた水と粉々に砕けたガラスグラスの破片が散らばっている。そして、プラチナブロンドの侍女は床の上でぐったりと倒れていた。
「う、うっ……!」
「どうしたのロゼッタ!? 何があったの?」
駆け寄って顔を見ると白磁器のような肌からは血の気が完全に失せて苦しげに眉根が寄せられていた。尋常じゃ無い雰囲気を感じながら、割れたガラスグラスの破片で身体をケガした痕跡がないか確認する。
さいわい身体のどこも出血はしていないようだが、だったら何故ロゼッタが倒れていたのか。いまだに立ち上がることが出来ないのか理由が分かない。貧血なら、ここまで苦しそうな状態にはならないはずだ。当惑しているとプラチナブロンドの侍女はうっすらと、まぶたを開いて細く息を吐いた。
「いつも通り、水を毒味したら……」
「毒味!? そんなことやってたの!?」
何かと世話を焼いてくれてありがたいとは思っていたけれど、まさかロゼッタが毒味までしていたとは夢にも思わず私は愕然とした。
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