34 / 61
34 小雨
しおりを挟む
「それにしても何故、ロゼッタはこんなことになったのだ?」
「私とロゼッタが客室に戻る前、この部屋から出てきたのは公爵令嬢リリアンヌの侍女フィオーレです」
「そういえば、リリアンヌは客室にユリを持っていくよう茶髪の侍女に指示していたな……」
「状況的に、この客室にユリを持ち込んだ侍女フィオーレが控えの部屋に置いてある水差しにユリの茎を浸けたあと、客室にユリの花を生けた可能性が高いですね」
第二王子の疑問に答えれば、レナード王子は銀髪の騎士と赤髪の騎士に視線を向けた。
「アルベルト、ヴィットリオ! 公爵令嬢リリアンヌの侍女フィオーレを発見次第、拘束しろ!」
「はっ!」
「了解しました」
二人の騎士が客室を後にしていく。その姿を見送った後、金髪碧眼の王子は握っていたロゼッタの白い手を離して立ち上がった。
「私も公爵令嬢リリアンヌのところへ行ってくる……。わざわざ控えの部屋に置かれている水差しに『ユリ毒』を混入させたということは、猫獣人であるロゼッタの命を害そうとしていたのは間違いないだろう。これがリリアンヌの指示なら私も黙ってはいられない」
「レナード王子……」
蒼玉色の瞳に並々ならぬ決意が見て取れた。ロゼッタの命が脅かされたことで第二王子が内心、憤っているのは間違いない。
「グラウクス殿」
「なんでしょうか。レナード殿下」
「リリアンヌの侍女フィオーレが拘束されるまで多少、時間がかかるだろう。念の為、しばらくロゼッタの側についていてもらえないだろうか?」
「承知いたしました」
「ロゼッタ……。そなたを害そうとした犯人は必ず捕らえて罪を償わせる……!」
そう告げると金髪碧眼の王子は青色のマントをひるがえして客室を後にした。第二王子が立ち去った後、黒縁眼鏡の魔術師は窓の外に視線を向けた。
「公爵令嬢リリアンヌの侍女が毒物混入の容疑者ですか……」
「水差しの周辺にユリの花粉が落ちていたこと。水差しの水にユリの茎をつけたことは犬獣人のヴィットリオさんが証言して下さってますし、侍女フィオーレに公爵令嬢リリアンヌがユリの花を持っていくよう指示していたことは、第二王子もご存じのことですから」
正直、あの茶髪の侍女フィオーレ以外に実行犯は考えられないという状況だ。問題は公爵令嬢リリアンヌがロゼッタにユリ毒を盛ることを指示していたかだろう。第二王子も特に言及はしていなかったが、その辺りは明確にしたいに違いない。
「犯人が拘束されて速やかに事件が解決すれば良いのですが……。おや、空模様が怪しくなってきましたねぇ」
長髪の魔術師が言った通り、空は濃い灰色雲に覆われていき小雨がパラついてきた。そして、それはやがて土砂降りの雨に変わっていった。
「私とロゼッタが客室に戻る前、この部屋から出てきたのは公爵令嬢リリアンヌの侍女フィオーレです」
「そういえば、リリアンヌは客室にユリを持っていくよう茶髪の侍女に指示していたな……」
「状況的に、この客室にユリを持ち込んだ侍女フィオーレが控えの部屋に置いてある水差しにユリの茎を浸けたあと、客室にユリの花を生けた可能性が高いですね」
第二王子の疑問に答えれば、レナード王子は銀髪の騎士と赤髪の騎士に視線を向けた。
「アルベルト、ヴィットリオ! 公爵令嬢リリアンヌの侍女フィオーレを発見次第、拘束しろ!」
「はっ!」
「了解しました」
二人の騎士が客室を後にしていく。その姿を見送った後、金髪碧眼の王子は握っていたロゼッタの白い手を離して立ち上がった。
「私も公爵令嬢リリアンヌのところへ行ってくる……。わざわざ控えの部屋に置かれている水差しに『ユリ毒』を混入させたということは、猫獣人であるロゼッタの命を害そうとしていたのは間違いないだろう。これがリリアンヌの指示なら私も黙ってはいられない」
「レナード王子……」
蒼玉色の瞳に並々ならぬ決意が見て取れた。ロゼッタの命が脅かされたことで第二王子が内心、憤っているのは間違いない。
「グラウクス殿」
「なんでしょうか。レナード殿下」
「リリアンヌの侍女フィオーレが拘束されるまで多少、時間がかかるだろう。念の為、しばらくロゼッタの側についていてもらえないだろうか?」
「承知いたしました」
「ロゼッタ……。そなたを害そうとした犯人は必ず捕らえて罪を償わせる……!」
そう告げると金髪碧眼の王子は青色のマントをひるがえして客室を後にした。第二王子が立ち去った後、黒縁眼鏡の魔術師は窓の外に視線を向けた。
「公爵令嬢リリアンヌの侍女が毒物混入の容疑者ですか……」
「水差しの周辺にユリの花粉が落ちていたこと。水差しの水にユリの茎をつけたことは犬獣人のヴィットリオさんが証言して下さってますし、侍女フィオーレに公爵令嬢リリアンヌがユリの花を持っていくよう指示していたことは、第二王子もご存じのことですから」
正直、あの茶髪の侍女フィオーレ以外に実行犯は考えられないという状況だ。問題は公爵令嬢リリアンヌがロゼッタにユリ毒を盛ることを指示していたかだろう。第二王子も特に言及はしていなかったが、その辺りは明確にしたいに違いない。
「犯人が拘束されて速やかに事件が解決すれば良いのですが……。おや、空模様が怪しくなってきましたねぇ」
長髪の魔術師が言った通り、空は濃い灰色雲に覆われていき小雨がパラついてきた。そして、それはやがて土砂降りの雨に変わっていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
乙女ゲームの世界に転移したら、推しではない王子に溺愛されています
砂月美乃
恋愛
繭(まゆ)、26歳。気がついたら、乙女ゲームのヒロイン、フェリシア(17歳)になっていた。そして横には、超絶イケメン王子のリュシアンが……。推しでもないリュシアンに、ひょんなことからベタベタにに溺愛されまくることになるお話です。
「ヒミツの恋愛遊戯」シリーズその①、リュシアン編です。
ムーンライトノベルズさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる