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侍女見習いローザ
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自室に戻る途中の通路で、黒髪の女官ミランダ様とジョアンナを見かけた。
「ミランダ様。あの……」
「ローザ。私は女官長ゾフィー様に呼ばれて、今から後宮へ参ります。急ぎの用でないなら後で話を聞きます」
「あ、はい。失礼いたしました」
ミランダ様とジョアンナは靴音を鳴らしながら、足早に後宮の方へと向かって行った。私は弟からもらった箱を両手で持ちながら一人、途方に暮れる。
「ケーキ、どうしよう……」
自室に戻った私は、ひとまずお茶の用意をしながら木製テーブルの上に箱を置いて改めて中のケーキを見つめる。色とりどりのケーキは、とっても美味しそうだ。
「さっきアップルパイを食べたし。私の胃袋だと、せいぜいあと一個が限界な気がする。……でも生のカットフルーツとか入ってるし、早く食べないと傷んでしまうわよね。……ん、これは何かしら?」
ケーキの入った箱の中に小袋が入れられてるのを発見して、つまんでみると小袋はほんのりと冷たかった。そして小袋には赤色のインクで文字が記されている。
「なになに『この袋は保冷袋です。食べることはできません』なるほど。ケーキが痛まないように保冷用の袋が入れられてたのね」
わざわざ保冷されているということは、冷やしておかないと痛みが早い食品であるのは間違いない。しかし、この保冷袋はすでに冷やす効力が失われつつあるようだし、やっぱり一刻も早く食べてしまった方が良いと感じる。
「ミランダ様とジョアンナに食べてもらいたかったけど。二人とも女官長に呼び出されて後宮に行ってしまったから、いつ帰って来るか分からないし……。困ったわね」
いっそ、他の召使いに声をかけてみようかと考えた時だった。自室の外でバタバタと大きな音が聞こえた。何事かと木扉の方に視線を向けた瞬間、勢いよく扉が開かれた。
そして私の部屋に、青い宮廷服を着た金髪の男性が入ってきて後ろ手で扉を閉めた。突然のことに唖然として言葉を失っていると金髪の男性は眉間に皺を寄せながら、琥珀色の瞳で私を見つめた。
「匿え……!」
「はい?」
意味が分からず呆然としていると、また扉の外から騒がしい靴音と誰かを探す声が聞こえてきた。
「殿下~! レオン殿下~! どちらに行かれたのですか~!?」
「あの声は……。フローラ?」
私が口元を押さえながら小さく呟いた言葉は扉の外まで届かなかったようで、フローラらしき女性の靴音はそのまま遠ざかっていった。
「ふぅ……。あの赤い髪の伯爵令嬢、やっと行ったか」
「あ、貴方はもしかして……」
「ん? 私の顔を知らないとは、新人の召使いか?」
輝く黄金の髪に琥珀色の瞳。金獅子国の王族の証とも言える髪色と瞳。そして今朝も遠目から、ぼんやりとその姿を見た。自室に突然入ってきた方は王太子レオン様だと気づき、私は愕然とした。
「ミランダ様。あの……」
「ローザ。私は女官長ゾフィー様に呼ばれて、今から後宮へ参ります。急ぎの用でないなら後で話を聞きます」
「あ、はい。失礼いたしました」
ミランダ様とジョアンナは靴音を鳴らしながら、足早に後宮の方へと向かって行った。私は弟からもらった箱を両手で持ちながら一人、途方に暮れる。
「ケーキ、どうしよう……」
自室に戻った私は、ひとまずお茶の用意をしながら木製テーブルの上に箱を置いて改めて中のケーキを見つめる。色とりどりのケーキは、とっても美味しそうだ。
「さっきアップルパイを食べたし。私の胃袋だと、せいぜいあと一個が限界な気がする。……でも生のカットフルーツとか入ってるし、早く食べないと傷んでしまうわよね。……ん、これは何かしら?」
ケーキの入った箱の中に小袋が入れられてるのを発見して、つまんでみると小袋はほんのりと冷たかった。そして小袋には赤色のインクで文字が記されている。
「なになに『この袋は保冷袋です。食べることはできません』なるほど。ケーキが痛まないように保冷用の袋が入れられてたのね」
わざわざ保冷されているということは、冷やしておかないと痛みが早い食品であるのは間違いない。しかし、この保冷袋はすでに冷やす効力が失われつつあるようだし、やっぱり一刻も早く食べてしまった方が良いと感じる。
「ミランダ様とジョアンナに食べてもらいたかったけど。二人とも女官長に呼び出されて後宮に行ってしまったから、いつ帰って来るか分からないし……。困ったわね」
いっそ、他の召使いに声をかけてみようかと考えた時だった。自室の外でバタバタと大きな音が聞こえた。何事かと木扉の方に視線を向けた瞬間、勢いよく扉が開かれた。
そして私の部屋に、青い宮廷服を着た金髪の男性が入ってきて後ろ手で扉を閉めた。突然のことに唖然として言葉を失っていると金髪の男性は眉間に皺を寄せながら、琥珀色の瞳で私を見つめた。
「匿え……!」
「はい?」
意味が分からず呆然としていると、また扉の外から騒がしい靴音と誰かを探す声が聞こえてきた。
「殿下~! レオン殿下~! どちらに行かれたのですか~!?」
「あの声は……。フローラ?」
私が口元を押さえながら小さく呟いた言葉は扉の外まで届かなかったようで、フローラらしき女性の靴音はそのまま遠ざかっていった。
「ふぅ……。あの赤い髪の伯爵令嬢、やっと行ったか」
「あ、貴方はもしかして……」
「ん? 私の顔を知らないとは、新人の召使いか?」
輝く黄金の髪に琥珀色の瞳。金獅子国の王族の証とも言える髪色と瞳。そして今朝も遠目から、ぼんやりとその姿を見た。自室に突然入ってきた方は王太子レオン様だと気づき、私は愕然とした。
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