秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!

中野莉央

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クマ的に譲れない戦いがそこにあった。

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「あー。その、誤解があったとはいえ一方的に勘違いして申し訳ないから、今日の所は俺に蜂蜜ケーキの代金を出させてくれないか?」

「何だと……?」

 蜂蜜ケーキという単語に反応して狼獣人をにらみつければ、俺の殺気を感じたヴォルフは狼耳をピンと立てながら慌てて首を横に振った。

「ああ、いや! 俺が代金を出すから、蜂蜜ケーキはベルントに持って帰って欲しいんだ。無駄なケンカを売ってしまった詫びだ。そうさせてくれ」

 自分の非を認めた銀狼ヴォルフはこうして蜂蜜ケーキの代金を支払ってくれる事となった。セリナから簡単な治療を受けた俺は、こうして無事に黄金色の蜂蜜ケーキを入手して久しぶりに極上の甘味にありつくことが出来た。

「惜しげもなく蜂蜜が使われることによって風味豊かでしっとりとしたケーキに、香りの良い酒が染み込んだレーズン、そしてクルミの芳ばしさがアクセントとなって噛むほどに味わい深い……」

 蜂蜜ケーキを味わうと同時に幸せを噛みしめた俺は、ほぼ一か月ぶりの甘味を堪能した。そして、翌日もパティスリー・セリナで他のケーキを購入しようと心に誓った。



 その後、銀狼ヴォルフはギルドで俺の顔を見ると話しかけるようになった。おかげで周囲の冒険者たちがヒソヒソと話す噂の内容が若干、変わりつつある。

「銀狼ヴォルフと黒熊ベルントは仲が良いようだ」

「どうやら二人は友人同士らしいぞ」

 などという声が聞こえてくる。まぁ、知人には間違いないし実際、食事に誘われて何となく一緒に食べることもあるのでザックリと言えば友人と言えるのかも知れない。



 今日も食事処でハーブが入ったキツネ色のソーセージや白色と黒色のソーセージが盛りつけられた皿や炙りサーモン、チーズの盛り合わせをつまみに銀狼と同じテーブルで飲んでいるのだが、銀狼ヴォルフは深酒するとちょっと絡み酒になると言うか愚痴が多くなるのが難点だろう。

「にしても、何でおまえとセリナが恋人同士って噂が立ってるんだ!」

「それについては、前に説明があっただろう……」

「セリナもゴロツキに絡まれたくないって理由なら、別に相手がベルントってことにしなくても良いじゃないか!?」

「噂に関しては、セリナも俺も不可抗力なんだから、こっちに言われてもな……」


 麦酒をあおりながら顔を赤くした銀狼ヴォルフに返事をするが、狼耳がペタッとたれた泥酔気味の狼獣人に俺の言葉が届いているかどうか怪しいものだ。

 その後、テーブルに突っ伏して酔いつぶれ前後不覚になった銀狼を仕方なく宿まで送った。問題は翌日だった。いつものようにギルドで依頼を受けている時、俺を見ながら声を潜めて話をする冒険者たちの話が耳に入ってきた。

「昨晩、銀狼ヴォルフと黒熊ベルントが抱き合って宿に入っているのを見たんだ……」

「えっ!? あいつらデキてるのか?」

 このままだと銀狼ヴォルフと黒熊ベルントが恋人同士だという噂が立ってしまう! これには流石に黙っていられず、即座に全力で否定した。
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