秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!

中野莉央

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第二王子ライガ

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 伯爵令嬢フローラはハイヒールの靴音を高らかに鳴らしながら上機嫌で後宮に帰っていった。その後ろ姿を見送った後、長い髪を後ろで一つに束ねている侍従に視線を向けた。

「トーランス」

「はい」

「レオン兄上は思ったより長引いているが、もう間もなく崩御されるのは間違いない。兄上が崩御された際には火葬にするから、そのつもりで今から国葬の準備をしておけ」

「火葬ですか? 金獅子国の慣例では王の遺体は土葬ですが……」

 侍従トーランスが切れ長の瞳に戸惑いを浮かべて難色を示す。

「それは分かっている。だが今回、レオン兄上は原因不明の麻痺症状にかかっておられるのだ。兄上の遺体を土葬した場合、そこから謎の奇病が蔓延する可能性が少しでもあるなら、今回ばかりは火葬にするのもやむを得まい」

「……分かりました。火葬の手配をしておきます」

「うむ。頼んだぞトーランス」

 侍従が部屋から出て行った後、客間に置いてあるワインボトルを開けて真っ赤な葡萄酒をワイングラスに並々と注いだ。透明なグラスの中で血のような赤い葡萄酒がゆらゆらと揺れるのを見た後、口元でワイングラスを傾けゆっくりと芳醇な香りの美酒を味わう。

 パーティの時、レオン兄上に対して海外視察の土産として贈った青色の布に金糸で刺繍が施された見事なマントを贈り、その際に玉紐の耳飾りもレオン兄上にプレゼントしたが、玉紐の耳飾りには白虎王国の孤島にのみ生息している『魔ダニ』を附着させていた。

 身近にいる魔力の高い者に寄生し、身体に取りついてから数日後に麻痺症状があらわれて、相手から魔力を奪いながら成長し寄生した『魔ダニ』は奪った養分で身体を大きくさせながら、やがて体内に魔ダニの卵をたくわえる。

 魔ダニに寄生された宿主は、麻痺症状の進行による呼吸不全で最終的に死亡する。宿主が息を引き取ると魔ダニはいびつに膨れた身体の中に蓄えた数千個の卵を、今度は宿主の遺体に産みつける。そして遺体から生まれた魔ダニの子供は遺体を栄養分に育ち、また新しい宿主を探し始める。

 土葬ではレオン兄上の遺体から、金獅子国に恐ろしい『魔ダニ』が蔓延してしまう恐れがある。不用意に肌を晒さないなどで、ある程度ダニを防いだり付着されても、ちゃんと入浴していれば麻痺症状が出るほど長期に渡って寄生される可能性は低いはずだが、兄上のように耳の奥に入り込まれでもしたら面倒なことになる。

 ここは遺体ごと死因の原因となった魔ダニを焼却処分して、兄上の身体に産み付けられる魔ダニの卵も死滅させておくべきだろう。そうすれば麻痺症状の真相は永遠に闇の中だ。後は寵妃ローザにレオン国王毒殺の容疑をかけた後、処刑しておけば『新王ライガ』を疑う者は誰もいないだろう。
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