秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!

中野莉央

文字の大きさ
354 / 450
第二王子ライガ

354

しおりを挟む
 怒りのまま叫んだが長髪の侍従は切れ長の瞳で冷ややかにこちらを一瞥した後、慇懃に一礼した。

「私の主はレオン国王、ただお一人。主の命令に従ったまででございます」

「貴様っ!」

 あれから何度か国王の寝室に容態を見に行こうとしたが、そのたびにトーランスが何かと理由をつけて引き留めていたのはこういう事だったのかと、今さらながら気づき歯ぎしりしていると国王は右手で金髪をかき上げた。

「すでに三日前の晩には動けるようになっていたのだが、さすがに万全では無かったのでな……。麻痺症状から回復した事実は伏せていたのだ。余がじゅうぶん動けぬ内に回復しつつあると聞けば、そなたはすぐ止めを刺しに来ただろう?」

「くっ!」

「話はすべて、そこにいるセレニテス子爵家の令嬢から聞いた。余を麻痺症状による呼吸不全で亡き者にしようと画策し、第三王子ブランシュ、および第四王子ダークを手にかけたそうだな」

「……ブランシュが殺害された時、室内には私とダークと三人しかいなかったのだ! 私がブランシュを殺害したという証拠は無い!」

「この後に及んで、まだそのような言い逃れを!」

 侍従トーランスが声を荒げたが下級貴族の娘、一人の言葉だけで王弟を処分するなどありえぬ。

「言い逃れではない! それとも何か? 国王陛下は決定的な証拠もなく、子爵令嬢の証言のみで王弟に罪を着せると言うのか?」

「証拠ならあります」

「なに?」

「ダーク王子から私が預かった宝刀。これが証拠です」

 子爵令嬢セリナが大粒のエメラルドがはめ込まれた三日月型の宝刀を見せつければ、金髪の国王は刀身に血糊がついたそれを見た後、こちらに視線を向けた。

「子爵令嬢セリナが持ってきてくれた三日月型の宝刀。この曲線の刃と第二王子ブランシュが咽喉を刺された時の創傷は完全に一致している」

「創傷……」

 第三王子ブランシュが死んだ後、遺体は地下の遺体安置室に保管されていた。国王が病床に臥せっている為、王弟の葬儀が出来なかったからだ。国王の命令で侍従トーランスが密かに動き、咽喉の傷痕と三日月型の宝剣が完全に一致するか、すでに調べ終わっていたのだろう。

「ブランシュが殺害された直後、殺害現場である国王執務室に入った近衛兵二人が、ブランシュ殺害の凶器である三日月形の宝刀はライガが手にしていた事を証言してくれた。そうだな?」

「はい」

「確かに我々が執務室に入った時、三日月型の宝刀はライガ殿下が所持しておられました」

「貴様たちは、あの時の近衛兵!」

 国王の側に控えていた二人の近衛兵はブランシュを殺害した時に、国王執務室の前を警護していた者だった。この者たちからも話を聞いて裏付けを取っていたのかと愕然とする。
しおりを挟む
感想 445

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...