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セリナ、謁見の間へ
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地下牢に連行される途中、ローザを殺害しようとした第二王子が国王に倒されて一週間が経った。王弟たちの葬儀も終わり一段落ついた頃、馬車でパティスリーにやって来た黒髪の女官長ミランダさんから後日、王宮に来るようにと告げられた。
いつも通りローザにケーキを届けるのだと思った私は指定日、普通にケーキを持参して王宮に行ったのだが第一の庭で出迎えてくれたニコニコ顔のローザや茶髪の侍女ジョアンナによって、何故か色とりどりの美しいドレスや大きな姿見鏡が並べられている衣裳部屋に拉致された。
「ローザ! 何なの、こんな所に連れ込んで!?」
「何を言ってるのセリナ? これから謁見の間でレオン陛下にお会いするのよ」
「は?」
「謁見の間にはリオネーラ王太后や宰相閣下、重臣の方達もいらっしゃるんだから、相応の格好でないといけないわ」
「ふぁ!? 聞いてないんですけど?」
唖然とする私に、ローザは美しいプラチナブロンドの髪を揺らして小首を傾げた。
「あら、伝わってなかったのかしら? レオン陛下がセリナに直接、謝辞を述べたいとおっしゃっていたから女官長に日程を伝えておいてって言ったんだけど……」
「国王陛下からと言うのは、あえて伏せておいたのです」
「ミランダさん!」
いつの間にか衣裳部屋のドア付近にいた黒髪の女官長が、落ち着き払った様子で私を見すえた。
「宰相閣下や王太后様も列席の元、国王陛下からお言葉を賜るなど、またとない名誉な機会ですが公の場にはあまり出たくない様子でしたから」
「私が公の場に出たくないって分かってたのに、何でこんな騙し討ちみたいに連れて来たんですか!?」
そう。私はレオン陛下が麻痺症状から回復した時、たいした事はしてないから大げさにして欲しくない。回復魔法もコルニクスさんという腕の良い魔道具職人さんが作ってくれた魔力増強剤が無かったら使えなかったんだから決して私だけの手柄じゃないし、アレをまた期待されても無理だから口外しないで欲しいと、ローザやミランダさんには口止めしたと言うのに!
私が心の中で叫んでいた疑問を見透かしたような黒髪の女官長は、憮然とした表情でズイと私の前に出て来た。
「いいですか? あなたは国王陛下を麻痺症状から救った恩人なのです。その恩人に対して国王陛下が公に謝辞の一つも伝えないなど大問題です」
「べ、別に私はローザに頼まれただけで……。わざわざ謁見の間でなんて……。まして陛下だけでなく、宰相や王太后様まで列席する場なんて……」
「ここまで来たら四の五の言わずに覚悟をお決めなさい。どうせ逃げることは出来ませんよ?」
「ぐぬぬ……」
黒髪の女官長に最後通告を突きつけられたような形になり歯がみしながら、うなっていると横にいたローザが苦笑した。
「セリナ。心配しなくても国王陛下はちゃんとした場でセリナに感謝の気持ちをお伝えしたいだけだから、そんなに心配しなくても大丈夫よ?」
「う、うん……」
こうして私は強引な黒髪の女官長と、やんわりとした物腰ながらいつになく積極的なローザや茶髪の侍女によって有無を言わせずドレスから髪型、化粧までを完璧に仕上げられた。
いつも通りローザにケーキを届けるのだと思った私は指定日、普通にケーキを持参して王宮に行ったのだが第一の庭で出迎えてくれたニコニコ顔のローザや茶髪の侍女ジョアンナによって、何故か色とりどりの美しいドレスや大きな姿見鏡が並べられている衣裳部屋に拉致された。
「ローザ! 何なの、こんな所に連れ込んで!?」
「何を言ってるのセリナ? これから謁見の間でレオン陛下にお会いするのよ」
「は?」
「謁見の間にはリオネーラ王太后や宰相閣下、重臣の方達もいらっしゃるんだから、相応の格好でないといけないわ」
「ふぁ!? 聞いてないんですけど?」
唖然とする私に、ローザは美しいプラチナブロンドの髪を揺らして小首を傾げた。
「あら、伝わってなかったのかしら? レオン陛下がセリナに直接、謝辞を述べたいとおっしゃっていたから女官長に日程を伝えておいてって言ったんだけど……」
「国王陛下からと言うのは、あえて伏せておいたのです」
「ミランダさん!」
いつの間にか衣裳部屋のドア付近にいた黒髪の女官長が、落ち着き払った様子で私を見すえた。
「宰相閣下や王太后様も列席の元、国王陛下からお言葉を賜るなど、またとない名誉な機会ですが公の場にはあまり出たくない様子でしたから」
「私が公の場に出たくないって分かってたのに、何でこんな騙し討ちみたいに連れて来たんですか!?」
そう。私はレオン陛下が麻痺症状から回復した時、たいした事はしてないから大げさにして欲しくない。回復魔法もコルニクスさんという腕の良い魔道具職人さんが作ってくれた魔力増強剤が無かったら使えなかったんだから決して私だけの手柄じゃないし、アレをまた期待されても無理だから口外しないで欲しいと、ローザやミランダさんには口止めしたと言うのに!
私が心の中で叫んでいた疑問を見透かしたような黒髪の女官長は、憮然とした表情でズイと私の前に出て来た。
「いいですか? あなたは国王陛下を麻痺症状から救った恩人なのです。その恩人に対して国王陛下が公に謝辞の一つも伝えないなど大問題です」
「べ、別に私はローザに頼まれただけで……。わざわざ謁見の間でなんて……。まして陛下だけでなく、宰相や王太后様まで列席する場なんて……」
「ここまで来たら四の五の言わずに覚悟をお決めなさい。どうせ逃げることは出来ませんよ?」
「ぐぬぬ……」
黒髪の女官長に最後通告を突きつけられたような形になり歯がみしながら、うなっていると横にいたローザが苦笑した。
「セリナ。心配しなくても国王陛下はちゃんとした場でセリナに感謝の気持ちをお伝えしたいだけだから、そんなに心配しなくても大丈夫よ?」
「う、うん……」
こうして私は強引な黒髪の女官長と、やんわりとした物腰ながらいつになく積極的なローザや茶髪の侍女によって有無を言わせずドレスから髪型、化粧までを完璧に仕上げられた。
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