秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!

中野莉央

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セリナ、謁見の間へ

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「承知いたしました。ではそのように通達を出しましょう。国王陛下、今日の話は以上で?」

「いや、もう一つある」

 銀髪の宰相に問われた国王は傍で控えている侍従へ視線を向けた。国王の意向を察した様子の侍従は、切れ長の瞳でこちらを見据えた。

「セレニテス子爵家の息女は前へ出よ!」

「は、はい」

 突然、名指しで呼ばれドキドキしながら玉座に座る、国王陛下の前に出て一礼する。

「セレニテス子爵家の息女、セリナ。そなたには世話になったな」

「どういうことです?」

 レオン国王が私にねぎらいの言葉をかける意図が分からず、リオネーラ王太后が怪訝そうに眉をひそめれば金髪の国王は表情をゆるめた。

「母上。余の麻痺症状の原因となっていた物を、このセリナが取りのぞいて回復させてくれたのです」

「まぁ、そうなのですか?」

 金髪金眼の王太后が感心した声で尋ねてきた。しかし、ここで何もかも首をタテに振って肯定する訳にはいかない。

「いえ……。違います」

「む? だが、ローザは『セリナのおかげだった』と申していたが?」

「私はその……。偶然、麻痺症状の原因となっていた物を発見する手助けをしましたが、国王陛下から麻痺の原因となっていた物を実際に取りのぞいたのはローザです」

「寵妃ローザが?」

 思いがけない事だったのだろう。リオネーラ王太后は目を丸くし、宰相や重臣たちも唖然としている。

「あの時、陛下の手を握りしめてローザが最後まであきらめなかったから、陛下の髪が揺れて原因となっていた物が分かったんです。陛下が回復されたのはローザがいたからこそです」

「なんと……!」

「寵妃ローザが侍医でも原因不明と言っていた病を……」

「国王陛下の麻痺症状が回復したのは、寵妃ローザのおかげだったのか」

 広間にいる重臣たちが寵妃のお手柄を口々に感嘆している。複数の宮廷医師たちが診ても原因不明でお手上げ状態だった国王陛下の麻痺症状をローザが回復させたとなれば、重臣たちにとって『ただの寵妃』であったローザの心証も『国王陛下の命を救った恩人』として、かなり良い物になるに違いない。

 本音を言えば、ローザのおかげで麻痺症状の原因だったマダニが発見できたというのは半分は本当だけど、半分はウソだ。具体的に言うと、私はどういう訳か国王陛下の寝室に行く前の晩、夢でレオン陛下の耳に何か丸い物があるというのをぼんやり見ていたので、それの正体は分からなかったが気になっていたいた。

 そしてローザが国王陛下の手を握り、ひとすじの涙を流した時。ローザが現実で夢と全く同じ行動をした瞬間、おぼろげだった夢を思い出して国王陛下の金髪をかきあげ耳を確認した所、耳の奥にマダニが寄生しているのを発見した。

 つまり、ローザのおかげで麻痺症状の原因だったマダニを発見するきっかけになったけど、これを全部つつみ隠さず説明すると私の夢まで説明しなければならず、それを話すと大変めんどうな事になるのが容易に予測できる為、適当に誤魔化しながら『ローザのお手柄』という方向で主張しようと思ったのだ。
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