秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!

中野莉央

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値段の高いケーキ

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 窓から差し込む朝の日差しを感じながら私はベッドから起き、カーテンを開いた。窓を開けると澄み渡った朝焼けの空に広がった白い羊雲が、朝日を浴びて美しい彩雲になっていた。

 身だしなみを整えて階段を下り、調理場に入った私はいつものように大きな銅製ボウルに複数の卵を割り入れ風魔法でかき混ぜてメレンゲにし、段取りよくスポンジケーキの生地を作りながら考える。

 昨日は国王陛下から公園広場での営業許可を頂いた上でオープンカフェを始めた記念すべき一日目だった訳だが、城下で『寵妃ローザは悪女』などという根も葉もないウワサが流れていると知り唖然とした。

 その後、ウワサを流していたのは伯爵令嬢フローラの実家であるフルオライト伯爵家のメイドだと分かったけど、私が注意してもメイドは聞く耳を持たなかった。この件は国王陛下のお耳に入れて警告なりしてもらわないといけない。

「なにしろケヴィン君が王立学園の同級生から、いわれのない誹謗中傷を受けていたんだもの……。一刻も早く対処しないといけない案件だわ」

 ローザの弟であるケヴィン君が同級生から中傷されているという状況は子供同士の事だからと楽観視できる物ではない。

「ケヴィン君やローザを悪く言ってた上級貴族の少年たちが悔い改めないようだと、状況さえ許せばケヴィン君が完全犯罪を狙う可能性があるのよね……。いくら口の減らない上級貴族の子息とはいえ、母校の少年たちが殺害されたなんてニュースは聞きたくないわ……。それにケヴィン君を殺人犯にしたくないし」

 ゲンナリしながらスポンジケーキの生地を銅製のケーキ型に流し入れてトントンと大きな気泡をつぶしたあと、鉄板に乗せて火魔法で熱しておいた窯に入れ甘い香りを漂わせながら程よいキツネ色になるまで焼き上げていく。

 こうして次々とケーキやタルトを作り、ショーケースに入れ最後にスコーンを焼いて出来上がった色とりどりのスコーンを店頭に並べているとメイド服姿に着替えた双子がやって来た。

「おはようございますセリナ様~」

「おはよう。ちょうどスコーンが焼きたてだから一緒に朝食にしましょうか?」

「はい! 私、お茶の用意します!」

 ルルとララが猫耳をピンと立てながら嬉しそうにダイニングへ行き、白磁器のティーポットとカップを出してお茶の用意を始めた。

「そういえば昨日はすごかったですね~」

「栗のケーキあっと言う間に完売でしたもんね~」

「そうねぇ……。あれは驚いたわ」

 ケヴィン君と話をした後、手押し車を押しながらパティスリーに帰ってみると小金持ちそうな中高年のご婦人や若い女性がオープンカフェで談笑しながら、ケーキセットを頼んでいたのだ。

 黄金色の甘露煮が乗っかった栗のタルトに舌鼓を打ちながら、楽しそうにおしゃべりしているお客様の姿を見た私は胸がいっぱいになった。

 まぁお客的には偶然、通りかかった噴水広場でテーブルやイスが置いてあるし、そこらで立ち話もなんだからと懐に余裕のある人が利用したに過ぎないと思うけれど、それでもありがたかった。
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