秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!

中野莉央

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セリナが見た終幕

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 前世の知識がある私は、ごく自然にこの発想に至ったけれど顕微鏡で調べないと見ることが出来ないような細かい細胞一つ一つから身体が構成されていて、さらに目に見えないウイルスや細菌が身体に侵入することで病気になるケースがあるという事実を把握していない、この世界の人たちに私の考えを言った所で理解してもらえるとは思えないので誰にも言ったことが無い仮説なのだけど……。そんなことを考えているとローザの水宝玉色の瞳に影が落ち、ぼんやりと広い庭園の向こうを見つめた。

「私は聖女では無いと否定しても、聖女じゃなくても構わないから一度、我が国へ遊びに来てほしいとか。病の相談に乗ってほしいって他国の王侯貴族から申し出もあったりして。正直、それに関しては困っているわ」

「そんな申し出まであるんだ……」

 口では聖女ではなくても構わないと建前を言いながら、本音ではローザが聖女だという確信の元、話を進めているのが透けて見えて私は内心、ドン引きした。

「ええ。出来る事なら力になりたいけど……。下手に同情して会ったら、他国に誘拐されるかも知れないからレオン陛下は絶対に、軽々しく他国の者とは接触しない方が良いと言っているし……。そもそも他国の方から話を聞いた所で、私じゃあ何の力にもなれないんだけど」

「そっか。そうよね……。レオン陛下の麻痺症状が回復したのは、耳の中に魔ダニがいたのを発見して取りのぞけたからだし。あんな生物に寄生されるなんて、かなり珍しいケースでしょうから他国の王侯貴族に、あれと同じことを期待されても無理だものねぇ」

「うん」

 フルオライト伯爵家の工作で悪女の濡れ衣を着せられたと思えば、今度は他国から聖女と確信されて困るなんて世の中、上手くいかないものだ。それにしても、聖女だと思われると誘拐されるなんて恐ろしい。

 レオン陛下がいくら金獅子国の王とは言え、国外に誘拐されたら足取りを追うのは難しいだろうから軽々しく他国の者と接触させたくないという気持ちは理解できる。

「まぁ、人のウワサも七十五日って言うし……。しばらくすればウワサも、収束するわよ」

「そうね……。そうだと良いんだけど」

 力無くローザが微笑を返した時、前方で誰かが口論している姿が見えた。長い髪を後ろで束ねた切れ長の瞳の男性。あれはレオン国王の侍従トーランスともう一人のスラリとした長身男性は見たことがないが、長い白銀の髪に獣耳がついていることから獣人である事と、見事な銀糸の刺繍がほどこされた宮廷服を着用している身なりから上級貴族であろう事がうかがえた。
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