秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!

中野莉央

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パティスリーにて

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 王宮へケーキを届けに行った日。帰宅して就寝した晩、私は久しぶりに前世の夢を見た。何ということはない。コタツに入ってヒザの上に飼っている猫を乗せ、テレビを見ながらミカンの皮をむいて食べているという、ごくありふれた日本家庭における冬の光景だ。そして夢の中で、私がミカンの皮をむいた時。飼っていた猫が嫌そうな顔をしながら私の側を離れていった。

「そういえば……」




 前世の夢を見ようが、見まいがいつもと同じように朝はやって来る。今日も早朝からパティスリーで販売するケーキを作り、店頭のショーケースに並べていく。

 さらに複数種のスコーンを焼き上げパティスリーで販売する商品の準備を整え終えた頃、メイド服に着替えた猫耳の双子が上階から降りてきた。

「おはようございます。セリナ様」

「ルル、ララ。おはよう。今日もよろしくね」

「はい! あ、朝食まだですよね? 用意します!」

「うん。お願い」

 ダイニングルームに向かうと双子が手際よく、朝食とお茶の用意に取りかかった。ふと木製テーブルの上に乗っているオレンジ色の果実が入った網カゴに視線を向ければ先日、購入して山盛りに積み上げていたマンダリンという名のミカンがずいぶん減っていた。

「二人ともマンダリン、食べてくれたのね。口に合った?」

「はい! 美味しかったです!」

「ちょっとした休憩時間とかに手軽に食べることができるし。美味しくて、つい二つ、三つ食べちゃうんですよね~」

 双子は朝食の用意をしながら笑顔で答えてくれた。

「ルルとララが気に入ってくれて良かったわ」

「あと、セリナ様に言われた通りマンダリンを食べた後、外側の皮は網ザルに入れてます」

「お、結構たまってるわね」

 窓際の風通しが良い場所に設置している網ザルには果肉が取り除かれ若干、ひからびたマンダリンの皮がいくつも入っていた。

「セリナ様。マンダリンの皮を集めてどうするんですか?」

「これは、よ~く乾燥させると薬として使えると思うから作ってみようと思ってるの」

「この皮が薬になるんですか!?」

 双子が驚いて目を見開き、乾きかけているマンダリンの皮を凝視したので私は苦笑した。

「まぁ、上手くいくか分からないけど試してみる価値はあると思うのよ……。でも、ルルとララはマンダリンの皮を材料にした薬ができても口にしない方が良いかもしれないわね」

「どうしてですか?」

「一般的に猫がミカン……。じゃなくてマンダリンの『果肉』を食べる分には問題ないけど、マンダリンみたいな柑橘類の外皮には『リモネン』っていう香りの成分が含まれてるのよ」

「リモネン?」
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