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誰でもわかる民法
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序論
本書は法学部生が初めて民法を学ぶのに参考となり、理解がしやすくなるようにするための民法解説書である。きっとあなたの民法への得意意識に繋がり単位も取りやすくなると思う。民法は、私人間の権利関係の取り決めについて規定している法律である。遡ると歴史は古くローマ法などに遡る。ドイツやフランスなど外国にも独自の体系で存在する。我が国では、明治から大正にかけてボアソナーロらによって起草された。はじめ我が国では、フランス民法に倣って作られそうだったが、日本の風土に合わない事を理由に廃止され、ドイツ民法に倣って作られる運びとなった。以下、本記事では民法と呼ぶ。民法は、大きく分類すると総則、物権、債権、及び親族相続法に分かれる。本記事では、これらの主要な項目を平易に解説するものである。
総則
総則では、私人や法人の権利能力について規定している。例えば、制限行為能力者制度や宗教法人、社会福祉法人などの法律で権利を与えられた権利能力者である。その他、任意後見制度や私権は出生にはじまるという言葉に表せられる権利関係などである。以下、簡単に説明する。制限行為能力者とは、事理弁識能力が通常の人に比べてわずかな自然人に、法律上特別な権利を与えて保護するものである。例えば、後見、保佐、補助などの支援である。これらの支援を受ける人をそれぞれ被後見人、被保佐人、被補助人といい契約を取り消したり不利な契約をしないようにできる。法人とは、株式会社など登記して、届け出ることによって、権利能力が与えられた財団などをさす。任意後見制度とは、著しく事理弁識能力が低下した高齢者などに、任意で法定代理人となれる後見人を選任する制度のことをいう。権利関係とは、例えば、胎児には遺産を相続したり贈与を受けたり損害賠償請求をする権利があるかどうかという取り決めのことである。結論としては、胎児にはこれらの権利が与えられている。これにより胎児は、遺産相続権や損害賠償請求をする権利が与えられている。例えば、胎内にある間に父親が死亡したり殺害されたりした場合である。これらの場合に備えて、生まれたものとみなすのである。ここで登場したみなすという言い方は、法律では度々用いられるがその意味は、そうであると確定したものと考えるという意味である。それに対し、推定するという言い方もあるが、こちらは確定したものとは考えずにそうであるだろう程度に考えることであり、反証があれば覆される性質のものをいう。また、総則の中で重要なものの一つに時効というものがある。時効は、一定の期間、他人のものを占有した場合に所有権を取得する制度である。例えば、他人の土地の一部を公然と使っていた場合に、善意の場合は10年悪意の場合は20年で所有権を取得できるなどである。ここでいう善意と悪意とは、事情を知らないのを善意といい、事情を知っているのを悪意という。この時効制度の存在する理由は、ある一定の間続いた状態を尊重して法律状態を安定させようとする趣旨である。もう一つ重要な項目として代理制度がある。代理とは、他人に代理権を与えることにより、その代理人と相手方と契約を結んだ場合、自分にその契約の法律効果が発生する制度である。この代理の態様の一つに表見代理というものがあるが、簡単に説明すると、表見代理とは、自分が表見代理人に代理権を与えていないにもかかわらず、その人が第三者とあたかも自分との間に外観状、代理権があるかのように契約を結んだ場合、相手方が善意かつ無過失の場合には、自分との間に契約が成立してしまうことである。
物権法
物権に代表される考え方には、所有権や占有権、抵当権や質権などの担保物権がある。所有権は、動産と不動産に分かれる。動産とは、バッグやサイフなどの動かせる財産をいい、所有権の対抗要件は引き渡しとなっている。引き渡しには簡易の引き渡しと言われるものや占有改定と言われる方式などもある。占有改定とは、自己が占有している他人の動産を所有権者が所有権を譲る意思表示をした場合にその所有権を取得することをいう。不動産は家や土地などの動かない財産のことをいい、対抗要件は登記である。登記とは登記所に行って登記官に申請することでできる。登記簿の権利欄に記されている人は、その不動産の所有権がある。尚、登記は登記義務者と共にか、登記義務者の承諾書があれば単独でできる。ここでいう対抗要件とは、第三者などの所有権を主張するものに対して自分の所有物であることを主張する条件や根拠のことをいう。所有権とは、これらの財産を自由に使用したり、処分したり、売却したり、収益をえたりすることができる権利のことをいう。つまり、財産を支配できる権利のことである。占有権は、例えば、預かっているお金やサイフなど、自分では自由に処分する権利がないが所持する権利のことをいう。代表的な占有権には、盗人の所持している盗んだバッグなどである。これは所有権はないが便宜上占有権が認められている。これらの権利の考え方には、一物一権主義というものがある。どういうことかというと、自分が持っているサイフやバッグには、自分の所有権という一つの権利しか認めないという考え方である。だから、盗人が他人から盗んだバッグやサイフには、盗人にしか占有権は認められず、所有権は真実の所有権者にしかないのである。なぜこういう考え方をするのかというと、それは一つの物の客体に対して、いくつもの権利を認めると、法律関係が複雑になり、いったいその物の真の権利者は誰なのかが分からなくなるのを避けるためである。もう一つ所有権の態様として共有があるが、共有とは一つの財産に対して、他人と共に持ち分を分けて所有することである。例えば、同じ建物を共有者どうしで利用するなどである。この場合、通常は各共有者は持ち分にかかわらず共有物全体を利用することができる。ただし、売却する際などは、持ち分に応じて収益を分けることになる。また、共有相手の持ち分に相当する価額の金銭を共有者に提供することで共有物を自己所有物にすることもできる。一見すると、この共有は一物一権主義に反するようにみえるが、持ち分として所有するにすぎないので問題はない。地上権は、他人の土地の利用をすることができる権利である。法定地上権とは、抵当権が設定されたときに建物が建っていた場合に、土地の所有者と建物の所有者が同一である場合に、土地が競落されて他人の所有物となった場合に、建物の所有権者に地上権を認める制度のことをいう。この制度のある理由は、土地競落後の建物の所有権者に地上権を認めないと、極めて不安定な状態になってしまうからである。抵当権や質権などの担保物権とは、金銭の融資を受ける際に担保として、抵当権は土地や建物に、質権ならスマホや腕時計などの動産に設定して、もしも期日までに返済されなかった場合、これらの財産を差し押さえる事により弁済をうけられる。これらの担保があれば、他の債権者に優先して弁済を受ける権利がある。抵当権は、一つの土地などの不動産に対して、何人ものひとが登記することで設定できる。その先順位にしたがって、第一順位、第二順位などといわれる。通常の場合、第一順位者から優先して弁済をうけられるので、先順位者は後順位者に対して金銭の対価を得るなどして譲ることができる。質権の特徴としては、債権者は、債務者から弁済を受けれない場合は、質物の所有権を取得できることである。これを質流れという。又質というものもあるが、これは預かっている質物の占有権を第三者に譲渡することである。物権のなかに先取特権という権利が規定されているが、先取特権とは、特定の債務に対して有する複数の債権がある場合に、他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利のことである。例えば、雇用関係から生じる給料や葬儀代などについて、他の債権者に優先して所有権を得られるための権利である。これらの権利が与えられる理由は、一般の債権者よりも、より必要性の高い事物にかかる債権だからである。他にも、不動産の賃料や宿泊客の所持品に対する先取特権などがあるが、これらも債権として回収する必要性が高く、一般の債権者よりも優先して弁済を受けるのが妥当だからである。
債権法
債権とは、売買の場合において目的物を相手方に引き渡した場合に相手方に金銭を支払うように請求する権利のことをいう。請求する場合は、金銭による場合と種類債権と言って、米など特別な目的物にすることもできる。その場合、もしも品質を示さなかったら中等の品を用意しなければならない。債権は物権と違い相対的であり、特定な債務者に特定の債務を負わせ、請求できるものにすぎない。債権者は債務者が有する給料や売買の金銭などの債権を、債務者に代わって請求することができるが、その権利のことを債権者代位権という。ただし、その債務者の年金や身体への傷害などによる損害賠償請求権などの、一身上の債権には代わることはできない。通常は、債務者は債務の履行をして債権者に弁済しなければならないが、わざと債権者を害する意思を持って第三者に金銭や土地や貴金属などの担保となる資産を譲渡したり、処分する場合があるが、その場合には、債権者はその取引を取り消す権利があり、それを詐害行為取消権という。債権において重要なものに、複数の人が関わる債権債務関係がある。それには、それぞれ連帯債権、連帯債務がある。連帯債権は、債務者に対して複数の人が同じ債権を有する場合に、債務者はその中の誰にでも弁済でき、債権者たちは、誰でも債務者に履行の請求をする権利がある。連帯債務は、複数の人が分けられる性質の債務を共に有している場合に、債権者は一部でも全体でも、一人にでも複数人にでも、あるいは全員にでも、債務の履行を請求できる債務である。重要なものに保証があるが、これは、連帯保証と保証の二種類がある。それぞれ保証人と連帯保証人に分かれる。保証の場合は、債権者は保証人に債務の履行を請求する場合に、保証人はまず主たる債務者に請求させたり、弁済に資する財産を持っていることを主張できるが、連帯保証人にはそれらの権利はなく、債権者に債務の履行を迫られたら弁済する義務がある。債権がなくなる要因はいくつかあり、通常の場合は弁済によるが、ほかにも別の債務に置き換える更改や、お互いに持っている異なる債権債務を打ち消し合う相殺や、債務を免れさせる免除や、相手の持っている債権を自分が取得した場合の混同がある。債権で必須の概念に契約がある。例えば、売買や贈与などである。重要な契約に消費貸借契約、使用貸借契約、賃貸借契約がある。消費貸借契約は、金銭や食料品など消費できるものを、貸付け後に同等の目的物を引き渡す契約であり、現実に消費物を提供したときに効果が生ずる。使用貸借契約は、図書館の本や知り合いから無料で借りた漫画などの、金銭を介さずに無償で使用させる目的で貸す契約をいう。返す時は現状のままで、相当の期間使用したら貸し手に引き渡す。賃貸借契約は、車や建物などの財産を、借り手が貸主に金銭を交付して利用することを約束する契約であり、大きく分けると動産と不動産に分かれる。不動産の場合は、借地借家法が適用される。借り主は、登記をして対抗要件を具備したり、建物に造作を加えたり、貸主に修繕させたり、所有者の第三者による不法占拠などの妨害をやめさせたりする権利を行使したりできる。借りるときに払う敷金とは、あらかじめ家賃の滞納や故意又は過失による損傷を賠償する担保として払う金銭のことである。他の契約に雇用、請負、委任がある。雇用は、コンビニなどで働く際の契約であり、請負は、大工さんが建物を建てるのに対して、金銭を払う契約であり、委任は弁護士などに訴訟代理を任せる場合がこれに当たる。債権の最後に出てくる不当利得と不法行為がある。不当利得は、法律効果がないのに利得することで、お釣りを多く貰う事などがある。不法行為は、故意か過失により他人の法律上保護されている権利を侵害することで、例えば、自動車でぶつかり怪我を負わせるなどである。
親族法
親族は血族、配偶者、姻族に分類されている。血族とは、血の繋がりがある親族をいい、配偶者は婚姻した相手のことで、姻族とは婚姻により親族となった血の繋がりがない親族のことである。親族法には、二親等や三親等という数え方があるが、これはどの程度血の繋がりなどの親近性があるかを示す指標として用いられるが、数え方は夫婦の間や、一つ子から親などに遡ったり、一つ親から子へ降りたりする際に、一つと数えてその数に親等をつける。例えば、自分から見ていとこは自分から親で一、親からまたその親で二、そこから自分の親の兄弟に一つ降りて三、そこからまた自分のいとこに一つ降りて四となり、自分から見ていとこは四親等内の血族となる。ちなみに三親等内の血族とは婚姻できないので四親等内のいとことは結婚できる。これは、それなりに血が離れているからであり、近親婚を避けるためである。現行法では男は18歳、女は16歳にならなければ結婚できず、結婚して配偶者がいる者も重ねて他の人と結婚することはできない。未成年者は、親の同意がなければ結婚できないが、父が母一方のみの同意があれば結婚できる。未成年で結婚した場合は、成年に達したものとみなされる。ただし、飲酒やタバコは20歳にならなければ許されない。結婚した者は結婚相手と話し合いのうえで離婚することができる。その場合、子のために養育する者を定める。また、相手に財産を分けるように請求することができる。姓名は前の氏に戻すことができる。以下の事情がある場合は裁判所に訴える方式で離婚を請求することができる。
配偶者に不貞な行為があったとき、配偶者から悪意で遺棄されたとき、配偶者の生死が三年以上明らかでないとき、配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。婚姻中に生まれた子は嫡出と推定されるが、父は否認することができる。嫡出とは婚姻している者との間に生まれた子のことである。子が成年するまでに父は認知をすることができ、そのことにより子は嫡出の身分を得る。成年に達した者は養子ができるが、自分より年上のものや親等が上の者は養子にできない。配偶者がいる場合は同意がいる。親には子に対して親権があり、養育し教育する必要がある。話し合いや裁判で離婚する場合は、親の一方を親権者に定める。利益相反行為といって、親権を行う者と子の利益が相対立する行為をする場合は、親権者は特別な代理人を裁判所に請求しなければならない。例えば、子の所有する土地などを親権者が買い取る場合などである。親権者は子の職業を許可したり、住む場所を定めたり、財産を管理したりする。ただし子の利益を考えて、不適切な場合は親権を失ったり、停止される場合がある。子に親権を行うものがいない場合や、審判があった場合は、後見人が選任される。後見人は、子の財産を管理し代表して事務をとる義務がある。最後に親権を行なっていた者は、遺言で後見人を監督する者を指定できる。保佐や補助なども家庭裁判所の審判によって、それぞれ保佐人と補助人が指定され、それぞれ保佐人と補助人を監督する監督人も必要に応じて家庭裁判所により指定される。それぞれ被保佐人や被補助人がする特定の法律行為の代理権を与えられる。例えば、土地などの高額な財産の売買や賃貸契約や金銭消費貸借契約がこれにあたる。扶養といって親子の直系血族や兄弟姉妹には助け合う義務がある。また、三親等内の親族にも、場合によっては家庭裁判所の審判により扶養義務があたえられる。
相続法
相続は、死亡によって開始し、場所は被相続人の住所において開始する。先ほども述べたが、胎児は、相続については、既に生まれたものとみなされる。ただし、胎児が死体で生まれてしまったときは、適用されない。ここで言う被相続人とは、亡くなって、その財産を相続人に承継させる者のことである。被相続人の子は、相続人となる権利がある。被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人となるが、これを代襲相続という。もしも子もいなかったら、被相続人の親が、親もいない場合は、兄弟姉妹が相続されるべき人となる。被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合、被相続人の子がいた場合にも、配偶者はその子と同じ順位に扱われる。つまり子たちが受ける相続分と等しくなる。次に挙げる人は、相続人となることができない。わざと被相続人と自分より先に相続を受ける権利のある者か、自分と等しい相続権を持つものを亡くならせようとした者は相続する権利を奪われる。被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者や、親子などの場合を除き先に挙げた者たちを死に至らせようとした者を告発しない場合も相続できない。また、詐欺又は強迫によって相続人に遺言を改変させたり、遺言を改変させた者も相続できなくなる。また、相続を受けるべき者が、被相続人に対して虐待をしたり、これに重大な侮辱を加えたときや、その人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その相続を受けるべき者の廃除を家庭裁判所に請求することができる。被相続人が遺言で相続を受けるべき者を廃除する意思を表示したときは、遺言を執行する者は、その遺言が効力を生じた後、すぐにその相続を受けるべき者の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合に、その相続を受けるべき者の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずるが、被相続人は、いつでも、相続を受けるべき者の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の年金などの本人自身に帰属する権利は除かれる。相続されるべき人が数人あるときは、相続されるべき財産は、その共有に属する。それぞれの相続を受けるべき人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。同じ順位の相続を受けるべき者が競合した場合は、以下のように分ける。子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。配偶者及び被相続人の親が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、親の相続分は、三分の一とする。配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。子、両親又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。代襲して相続人となる子の相続分は、その親が受けるべきであったものと同じとする。ただし、子が数人あるときは、その各自の親が受けるべきであった相続分と同じとする。被相続人は、以上の代襲相続の規定にかかわらず遺言で、代襲して相続を受ける者の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。相続を受ける者の中に、被相続人から、生前贈与などを受けていた場合、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、先ほど述べた相続分を算定した相続分の中から贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。この場合、贈与の価額が、相続分の価額に等しいか、これを超えるときは、その相続分を受けることができない。相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から相続人たちの協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、先ほど述べた規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、以下に述べる単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。この場合相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。承認は、単純承認と限定承認に分かれる。相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の債権などの権利と債務などの義務を承継する。次の場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなされる。相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときや、相続が開始してから三ヶ月を過ぎても限定承認や放棄をしなかった場合や、相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を勝手に使ったときなど。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は除く。相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ、被相続人の債務や相続財産を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。相続人が数人あるときは、限定承認は、相続を受ける者達の全員が共同してのみこれをすることができる。相続人は、限定承認をしようとするときは、先ほど述べた三ヶ月の期間が過ぎる前に相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる。続いて遺言を説明していく。
十五歳になれば遺言をすることができる。遺言する者は、遺言をする時に、その能力がなければならない。遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってする。自筆証書によって遺言をするには、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。証人二人以上の立会いがあること。遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すことの五つである。秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すことの五つである。秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、自筆証書遺言で定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。未成年者、相続されるべき人や、遺言で相続されるべき人とこれらの配偶者と、その血が繋がる親子関係にある者や、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人。遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、遺留分を算定するための財産の価額に、自身が被相続人の両親である場合はその三分の一、自身が被相続人の配偶者や子の場合など、それ以外の場合は二分の一を掛けた分の相続財産を受ける権利がある。相続人が数人ある場合には、この割合を先ほど述べた法定相続分に掛けた分となる。
おわりに
以上民法について要所を解説してみた。少し自己紹介すると、私は特に法律の専門家ではなく、宅建士の受験を契機に民法を本格的に勉強しているものである。大学では、少し法律の授業をかじったぐらいだが、現在は日本大学の通信教育で法律を学んでいる。将来は、弁護士になりたいと考えている。改正前の箇所も含まれた点もあるかと思うが、民法の考え方に則り、説明したつもりである。民法をわかりやすく説明する趣旨で書いたので、初学者の方には読んで損はない内容だと思う。本書の責任は筆者にあるので、批評は歓迎である。最後まで読んでいただき感謝したい。
本書は法学部生が初めて民法を学ぶのに参考となり、理解がしやすくなるようにするための民法解説書である。きっとあなたの民法への得意意識に繋がり単位も取りやすくなると思う。民法は、私人間の権利関係の取り決めについて規定している法律である。遡ると歴史は古くローマ法などに遡る。ドイツやフランスなど外国にも独自の体系で存在する。我が国では、明治から大正にかけてボアソナーロらによって起草された。はじめ我が国では、フランス民法に倣って作られそうだったが、日本の風土に合わない事を理由に廃止され、ドイツ民法に倣って作られる運びとなった。以下、本記事では民法と呼ぶ。民法は、大きく分類すると総則、物権、債権、及び親族相続法に分かれる。本記事では、これらの主要な項目を平易に解説するものである。
総則
総則では、私人や法人の権利能力について規定している。例えば、制限行為能力者制度や宗教法人、社会福祉法人などの法律で権利を与えられた権利能力者である。その他、任意後見制度や私権は出生にはじまるという言葉に表せられる権利関係などである。以下、簡単に説明する。制限行為能力者とは、事理弁識能力が通常の人に比べてわずかな自然人に、法律上特別な権利を与えて保護するものである。例えば、後見、保佐、補助などの支援である。これらの支援を受ける人をそれぞれ被後見人、被保佐人、被補助人といい契約を取り消したり不利な契約をしないようにできる。法人とは、株式会社など登記して、届け出ることによって、権利能力が与えられた財団などをさす。任意後見制度とは、著しく事理弁識能力が低下した高齢者などに、任意で法定代理人となれる後見人を選任する制度のことをいう。権利関係とは、例えば、胎児には遺産を相続したり贈与を受けたり損害賠償請求をする権利があるかどうかという取り決めのことである。結論としては、胎児にはこれらの権利が与えられている。これにより胎児は、遺産相続権や損害賠償請求をする権利が与えられている。例えば、胎内にある間に父親が死亡したり殺害されたりした場合である。これらの場合に備えて、生まれたものとみなすのである。ここで登場したみなすという言い方は、法律では度々用いられるがその意味は、そうであると確定したものと考えるという意味である。それに対し、推定するという言い方もあるが、こちらは確定したものとは考えずにそうであるだろう程度に考えることであり、反証があれば覆される性質のものをいう。また、総則の中で重要なものの一つに時効というものがある。時効は、一定の期間、他人のものを占有した場合に所有権を取得する制度である。例えば、他人の土地の一部を公然と使っていた場合に、善意の場合は10年悪意の場合は20年で所有権を取得できるなどである。ここでいう善意と悪意とは、事情を知らないのを善意といい、事情を知っているのを悪意という。この時効制度の存在する理由は、ある一定の間続いた状態を尊重して法律状態を安定させようとする趣旨である。もう一つ重要な項目として代理制度がある。代理とは、他人に代理権を与えることにより、その代理人と相手方と契約を結んだ場合、自分にその契約の法律効果が発生する制度である。この代理の態様の一つに表見代理というものがあるが、簡単に説明すると、表見代理とは、自分が表見代理人に代理権を与えていないにもかかわらず、その人が第三者とあたかも自分との間に外観状、代理権があるかのように契約を結んだ場合、相手方が善意かつ無過失の場合には、自分との間に契約が成立してしまうことである。
物権法
物権に代表される考え方には、所有権や占有権、抵当権や質権などの担保物権がある。所有権は、動産と不動産に分かれる。動産とは、バッグやサイフなどの動かせる財産をいい、所有権の対抗要件は引き渡しとなっている。引き渡しには簡易の引き渡しと言われるものや占有改定と言われる方式などもある。占有改定とは、自己が占有している他人の動産を所有権者が所有権を譲る意思表示をした場合にその所有権を取得することをいう。不動産は家や土地などの動かない財産のことをいい、対抗要件は登記である。登記とは登記所に行って登記官に申請することでできる。登記簿の権利欄に記されている人は、その不動産の所有権がある。尚、登記は登記義務者と共にか、登記義務者の承諾書があれば単独でできる。ここでいう対抗要件とは、第三者などの所有権を主張するものに対して自分の所有物であることを主張する条件や根拠のことをいう。所有権とは、これらの財産を自由に使用したり、処分したり、売却したり、収益をえたりすることができる権利のことをいう。つまり、財産を支配できる権利のことである。占有権は、例えば、預かっているお金やサイフなど、自分では自由に処分する権利がないが所持する権利のことをいう。代表的な占有権には、盗人の所持している盗んだバッグなどである。これは所有権はないが便宜上占有権が認められている。これらの権利の考え方には、一物一権主義というものがある。どういうことかというと、自分が持っているサイフやバッグには、自分の所有権という一つの権利しか認めないという考え方である。だから、盗人が他人から盗んだバッグやサイフには、盗人にしか占有権は認められず、所有権は真実の所有権者にしかないのである。なぜこういう考え方をするのかというと、それは一つの物の客体に対して、いくつもの権利を認めると、法律関係が複雑になり、いったいその物の真の権利者は誰なのかが分からなくなるのを避けるためである。もう一つ所有権の態様として共有があるが、共有とは一つの財産に対して、他人と共に持ち分を分けて所有することである。例えば、同じ建物を共有者どうしで利用するなどである。この場合、通常は各共有者は持ち分にかかわらず共有物全体を利用することができる。ただし、売却する際などは、持ち分に応じて収益を分けることになる。また、共有相手の持ち分に相当する価額の金銭を共有者に提供することで共有物を自己所有物にすることもできる。一見すると、この共有は一物一権主義に反するようにみえるが、持ち分として所有するにすぎないので問題はない。地上権は、他人の土地の利用をすることができる権利である。法定地上権とは、抵当権が設定されたときに建物が建っていた場合に、土地の所有者と建物の所有者が同一である場合に、土地が競落されて他人の所有物となった場合に、建物の所有権者に地上権を認める制度のことをいう。この制度のある理由は、土地競落後の建物の所有権者に地上権を認めないと、極めて不安定な状態になってしまうからである。抵当権や質権などの担保物権とは、金銭の融資を受ける際に担保として、抵当権は土地や建物に、質権ならスマホや腕時計などの動産に設定して、もしも期日までに返済されなかった場合、これらの財産を差し押さえる事により弁済をうけられる。これらの担保があれば、他の債権者に優先して弁済を受ける権利がある。抵当権は、一つの土地などの不動産に対して、何人ものひとが登記することで設定できる。その先順位にしたがって、第一順位、第二順位などといわれる。通常の場合、第一順位者から優先して弁済をうけられるので、先順位者は後順位者に対して金銭の対価を得るなどして譲ることができる。質権の特徴としては、債権者は、債務者から弁済を受けれない場合は、質物の所有権を取得できることである。これを質流れという。又質というものもあるが、これは預かっている質物の占有権を第三者に譲渡することである。物権のなかに先取特権という権利が規定されているが、先取特権とは、特定の債務に対して有する複数の債権がある場合に、他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利のことである。例えば、雇用関係から生じる給料や葬儀代などについて、他の債権者に優先して所有権を得られるための権利である。これらの権利が与えられる理由は、一般の債権者よりも、より必要性の高い事物にかかる債権だからである。他にも、不動産の賃料や宿泊客の所持品に対する先取特権などがあるが、これらも債権として回収する必要性が高く、一般の債権者よりも優先して弁済を受けるのが妥当だからである。
債権法
債権とは、売買の場合において目的物を相手方に引き渡した場合に相手方に金銭を支払うように請求する権利のことをいう。請求する場合は、金銭による場合と種類債権と言って、米など特別な目的物にすることもできる。その場合、もしも品質を示さなかったら中等の品を用意しなければならない。債権は物権と違い相対的であり、特定な債務者に特定の債務を負わせ、請求できるものにすぎない。債権者は債務者が有する給料や売買の金銭などの債権を、債務者に代わって請求することができるが、その権利のことを債権者代位権という。ただし、その債務者の年金や身体への傷害などによる損害賠償請求権などの、一身上の債権には代わることはできない。通常は、債務者は債務の履行をして債権者に弁済しなければならないが、わざと債権者を害する意思を持って第三者に金銭や土地や貴金属などの担保となる資産を譲渡したり、処分する場合があるが、その場合には、債権者はその取引を取り消す権利があり、それを詐害行為取消権という。債権において重要なものに、複数の人が関わる債権債務関係がある。それには、それぞれ連帯債権、連帯債務がある。連帯債権は、債務者に対して複数の人が同じ債権を有する場合に、債務者はその中の誰にでも弁済でき、債権者たちは、誰でも債務者に履行の請求をする権利がある。連帯債務は、複数の人が分けられる性質の債務を共に有している場合に、債権者は一部でも全体でも、一人にでも複数人にでも、あるいは全員にでも、債務の履行を請求できる債務である。重要なものに保証があるが、これは、連帯保証と保証の二種類がある。それぞれ保証人と連帯保証人に分かれる。保証の場合は、債権者は保証人に債務の履行を請求する場合に、保証人はまず主たる債務者に請求させたり、弁済に資する財産を持っていることを主張できるが、連帯保証人にはそれらの権利はなく、債権者に債務の履行を迫られたら弁済する義務がある。債権がなくなる要因はいくつかあり、通常の場合は弁済によるが、ほかにも別の債務に置き換える更改や、お互いに持っている異なる債権債務を打ち消し合う相殺や、債務を免れさせる免除や、相手の持っている債権を自分が取得した場合の混同がある。債権で必須の概念に契約がある。例えば、売買や贈与などである。重要な契約に消費貸借契約、使用貸借契約、賃貸借契約がある。消費貸借契約は、金銭や食料品など消費できるものを、貸付け後に同等の目的物を引き渡す契約であり、現実に消費物を提供したときに効果が生ずる。使用貸借契約は、図書館の本や知り合いから無料で借りた漫画などの、金銭を介さずに無償で使用させる目的で貸す契約をいう。返す時は現状のままで、相当の期間使用したら貸し手に引き渡す。賃貸借契約は、車や建物などの財産を、借り手が貸主に金銭を交付して利用することを約束する契約であり、大きく分けると動産と不動産に分かれる。不動産の場合は、借地借家法が適用される。借り主は、登記をして対抗要件を具備したり、建物に造作を加えたり、貸主に修繕させたり、所有者の第三者による不法占拠などの妨害をやめさせたりする権利を行使したりできる。借りるときに払う敷金とは、あらかじめ家賃の滞納や故意又は過失による損傷を賠償する担保として払う金銭のことである。他の契約に雇用、請負、委任がある。雇用は、コンビニなどで働く際の契約であり、請負は、大工さんが建物を建てるのに対して、金銭を払う契約であり、委任は弁護士などに訴訟代理を任せる場合がこれに当たる。債権の最後に出てくる不当利得と不法行為がある。不当利得は、法律効果がないのに利得することで、お釣りを多く貰う事などがある。不法行為は、故意か過失により他人の法律上保護されている権利を侵害することで、例えば、自動車でぶつかり怪我を負わせるなどである。
親族法
親族は血族、配偶者、姻族に分類されている。血族とは、血の繋がりがある親族をいい、配偶者は婚姻した相手のことで、姻族とは婚姻により親族となった血の繋がりがない親族のことである。親族法には、二親等や三親等という数え方があるが、これはどの程度血の繋がりなどの親近性があるかを示す指標として用いられるが、数え方は夫婦の間や、一つ子から親などに遡ったり、一つ親から子へ降りたりする際に、一つと数えてその数に親等をつける。例えば、自分から見ていとこは自分から親で一、親からまたその親で二、そこから自分の親の兄弟に一つ降りて三、そこからまた自分のいとこに一つ降りて四となり、自分から見ていとこは四親等内の血族となる。ちなみに三親等内の血族とは婚姻できないので四親等内のいとことは結婚できる。これは、それなりに血が離れているからであり、近親婚を避けるためである。現行法では男は18歳、女は16歳にならなければ結婚できず、結婚して配偶者がいる者も重ねて他の人と結婚することはできない。未成年者は、親の同意がなければ結婚できないが、父が母一方のみの同意があれば結婚できる。未成年で結婚した場合は、成年に達したものとみなされる。ただし、飲酒やタバコは20歳にならなければ許されない。結婚した者は結婚相手と話し合いのうえで離婚することができる。その場合、子のために養育する者を定める。また、相手に財産を分けるように請求することができる。姓名は前の氏に戻すことができる。以下の事情がある場合は裁判所に訴える方式で離婚を請求することができる。
配偶者に不貞な行為があったとき、配偶者から悪意で遺棄されたとき、配偶者の生死が三年以上明らかでないとき、配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。婚姻中に生まれた子は嫡出と推定されるが、父は否認することができる。嫡出とは婚姻している者との間に生まれた子のことである。子が成年するまでに父は認知をすることができ、そのことにより子は嫡出の身分を得る。成年に達した者は養子ができるが、自分より年上のものや親等が上の者は養子にできない。配偶者がいる場合は同意がいる。親には子に対して親権があり、養育し教育する必要がある。話し合いや裁判で離婚する場合は、親の一方を親権者に定める。利益相反行為といって、親権を行う者と子の利益が相対立する行為をする場合は、親権者は特別な代理人を裁判所に請求しなければならない。例えば、子の所有する土地などを親権者が買い取る場合などである。親権者は子の職業を許可したり、住む場所を定めたり、財産を管理したりする。ただし子の利益を考えて、不適切な場合は親権を失ったり、停止される場合がある。子に親権を行うものがいない場合や、審判があった場合は、後見人が選任される。後見人は、子の財産を管理し代表して事務をとる義務がある。最後に親権を行なっていた者は、遺言で後見人を監督する者を指定できる。保佐や補助なども家庭裁判所の審判によって、それぞれ保佐人と補助人が指定され、それぞれ保佐人と補助人を監督する監督人も必要に応じて家庭裁判所により指定される。それぞれ被保佐人や被補助人がする特定の法律行為の代理権を与えられる。例えば、土地などの高額な財産の売買や賃貸契約や金銭消費貸借契約がこれにあたる。扶養といって親子の直系血族や兄弟姉妹には助け合う義務がある。また、三親等内の親族にも、場合によっては家庭裁判所の審判により扶養義務があたえられる。
相続法
相続は、死亡によって開始し、場所は被相続人の住所において開始する。先ほども述べたが、胎児は、相続については、既に生まれたものとみなされる。ただし、胎児が死体で生まれてしまったときは、適用されない。ここで言う被相続人とは、亡くなって、その財産を相続人に承継させる者のことである。被相続人の子は、相続人となる権利がある。被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人となるが、これを代襲相続という。もしも子もいなかったら、被相続人の親が、親もいない場合は、兄弟姉妹が相続されるべき人となる。被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合、被相続人の子がいた場合にも、配偶者はその子と同じ順位に扱われる。つまり子たちが受ける相続分と等しくなる。次に挙げる人は、相続人となることができない。わざと被相続人と自分より先に相続を受ける権利のある者か、自分と等しい相続権を持つものを亡くならせようとした者は相続する権利を奪われる。被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者や、親子などの場合を除き先に挙げた者たちを死に至らせようとした者を告発しない場合も相続できない。また、詐欺又は強迫によって相続人に遺言を改変させたり、遺言を改変させた者も相続できなくなる。また、相続を受けるべき者が、被相続人に対して虐待をしたり、これに重大な侮辱を加えたときや、その人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その相続を受けるべき者の廃除を家庭裁判所に請求することができる。被相続人が遺言で相続を受けるべき者を廃除する意思を表示したときは、遺言を執行する者は、その遺言が効力を生じた後、すぐにその相続を受けるべき者の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合に、その相続を受けるべき者の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずるが、被相続人は、いつでも、相続を受けるべき者の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の年金などの本人自身に帰属する権利は除かれる。相続されるべき人が数人あるときは、相続されるべき財産は、その共有に属する。それぞれの相続を受けるべき人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。同じ順位の相続を受けるべき者が競合した場合は、以下のように分ける。子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。配偶者及び被相続人の親が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、親の相続分は、三分の一とする。配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。子、両親又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。代襲して相続人となる子の相続分は、その親が受けるべきであったものと同じとする。ただし、子が数人あるときは、その各自の親が受けるべきであった相続分と同じとする。被相続人は、以上の代襲相続の規定にかかわらず遺言で、代襲して相続を受ける者の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。相続を受ける者の中に、被相続人から、生前贈与などを受けていた場合、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、先ほど述べた相続分を算定した相続分の中から贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。この場合、贈与の価額が、相続分の価額に等しいか、これを超えるときは、その相続分を受けることができない。相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から相続人たちの協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、先ほど述べた規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、以下に述べる単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。この場合相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。承認は、単純承認と限定承認に分かれる。相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の債権などの権利と債務などの義務を承継する。次の場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなされる。相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときや、相続が開始してから三ヶ月を過ぎても限定承認や放棄をしなかった場合や、相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を勝手に使ったときなど。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は除く。相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ、被相続人の債務や相続財産を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。相続人が数人あるときは、限定承認は、相続を受ける者達の全員が共同してのみこれをすることができる。相続人は、限定承認をしようとするときは、先ほど述べた三ヶ月の期間が過ぎる前に相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる。続いて遺言を説明していく。
十五歳になれば遺言をすることができる。遺言する者は、遺言をする時に、その能力がなければならない。遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってする。自筆証書によって遺言をするには、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。証人二人以上の立会いがあること。遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すことの五つである。秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すことの五つである。秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、自筆証書遺言で定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。未成年者、相続されるべき人や、遺言で相続されるべき人とこれらの配偶者と、その血が繋がる親子関係にある者や、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人。遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、遺留分を算定するための財産の価額に、自身が被相続人の両親である場合はその三分の一、自身が被相続人の配偶者や子の場合など、それ以外の場合は二分の一を掛けた分の相続財産を受ける権利がある。相続人が数人ある場合には、この割合を先ほど述べた法定相続分に掛けた分となる。
おわりに
以上民法について要所を解説してみた。少し自己紹介すると、私は特に法律の専門家ではなく、宅建士の受験を契機に民法を本格的に勉強しているものである。大学では、少し法律の授業をかじったぐらいだが、現在は日本大学の通信教育で法律を学んでいる。将来は、弁護士になりたいと考えている。改正前の箇所も含まれた点もあるかと思うが、民法の考え方に則り、説明したつもりである。民法をわかりやすく説明する趣旨で書いたので、初学者の方には読んで損はない内容だと思う。本書の責任は筆者にあるので、批評は歓迎である。最後まで読んでいただき感謝したい。
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