感動伝記集

zukitaishi

文字の大きさ
12 / 14

医者の道

しおりを挟む
 野間口は、自分の火傷により、くっついてしまった手をあざけてくる意地悪な村の人達と父の自棄酒には嫌気が差していた。やがて父は家を出ていったが、英は良かったと思った。それにしても自分には素晴らしい夢があって、家は貧しくとも幸福な人間だとつくづく思う。彼が尋常小学校初等科の時に受けた手術は功を奏した。将来は医者となって病気に苦しむ人達を救うと誓った。やがて尋常小学校高等科に進学すると、努力のかいもあり先生に抜擢されたりした。尋常小学校を出る頃には医学を学ぶ素地は身についていた。
 医学受験を志して東京にでると勉強に身が入った。狭い下宿では、先輩から善意で譲ってもらった医学書を朝早くから夜遅くまで机に向かい片っ端から勉強した。そして独学で、国家資格である医術開業試験に合格した。縁あって南里博士と出会い、師と仰いで知識の吸収に励んだ。研究室での修行は厳しかったが、生まれ持った精神力と観音信仰により何度も挫けそうになりながらも得意の語学を活かし、数々の洋医学書を注釈しながら翻訳した功績を認められ、コロンビア大学への研修も勝ち取った。   
 そこでの医学論文も好評だった。彼は中学の時に、英語は必要だと思い習得に励んできたから困ることはなかった。関東大震災が起きた時には、今すぐにでも東京に帰って被災した人々を治療したいと思ったが、まだまだ研究課題が多かったのでやむなく手紙と救援金を送るにとどめて、研究を優先した。アメリカで名を馳せたのとロックフェラー研究所の推薦で賞を取ったりしたが、彼はそんな名誉はどうでもよかった。ただ最近アフリカ南部で流行している黄熱病を治療したかった。やがて意を決し同僚の制止を振り切り、妻に別れを告げると単身アフリカ大陸へと旅立った。
 最先端の医学水準を持ってしても打開策は見つからなかった。だが彼は未知の細菌とばかり思っていたが敵はウイルスであった。ウイルスとは思いもよらない彼は敵に背を向けることなく戦い抜いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...