歴史人物烈伝

鈴の甘寧凌統と鬻ぐ

　孫呉には良将豪傑と言われる人材の宝庫であったが中でも甘寧と淩統の二人は群を抜いていた。彼らは皆和やかで仲が良かった。ところがある日こんな話が持ち上がった。
　甘寧と淩統は初めて出会った時からお互いをライバル視していたが、ついにはこの度決闘の申し入れが甘寧より淩統に差し出されたのである。
　果たして甘寧と淩統の武はどちらのほうが本当に優れているのか決めることになったのである。そしてその決闘の場は大武道修練所の一角にある小競技場が選ばれた。そこには話を聞きつけて興味を持った友人たちや家族親戚が物見席に連なっていた。特にその中でも淩統の彼女は心配そうに見つめていた。
　だがその心配はよそに淩統は甘寧の腕には到底及ばなかった。だがその心配はよそに淩統は甘寧の腕には到底及ばなかった。ことの顛末はこうである。実はこの競技の勝敗は先に相手を地べたに張り倒したほうが勝ちというなんとも斬新かつシンプルな競技であったのである。しかも武器はなしである。しかも武器はない。はたして淩統は得意の棍棒を使えなかったのでたやすく無装備では腕勝る甘寧に一瞬にして張り倒されてしまったのである。だが淩統は冷静であった。なぜならもともと乗り気でもなく渋々甘寧のいいがかりを受け付けただけだったからである。だがそれを見ていた淩統の父が後に甘寧の家に押しかけてひと悶着あったのはしかたがない。
この噂は町全体に広まり一時は将軍府までもこの話でもちきりであった。そこで噂を耳にした孫堅は正式にどちらの武が秀でているか試したいと言ってしまいにはおおげさな話にまで発展してしまった。
かくして甘寧と淩統とは大衆の見守る大競技場でどちらが先に上等兵10人を倒して彼らの守る兜をさきにとれるかという競技に参加した。これはルールではどんな武装でもよいため淩統は得意の棍棒、甘寧は大ナタという装備でかかった。
　結果は歴然であった。甘寧の圧勝であった。甘寧の大ナタを見た兵士たちは皆退散してしまったのである。淩統はというとたやすく１０人とも倒したのではあるがクタクタであった。こんなことなら腕相撲でよかったのではないかと淩統は思った。この成り行きを見ていた孫堅は甘寧には勝利の旗を差し出したが、淩統には健闘賞の褒美を差し出した。