花言葉を俺は知らない

李林檎

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ロイスの行方

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少ししたら、スカーレットがやってきた…浮かない顔からして結果は変わらないようだ。

「…お兄さん、ロイスは?」

「ごめんね」

「お兄さんには手伝ってもらったんだし、ありがとうございます」

「寮の部屋にいるかもしれないよ、それか実家に帰ってるとか」

「うーん、ロイスは大型の休み以外は実家に帰らないからなぁ…とりあえず行き違いで戻ってるかもしれないから帰るよ」

そう言ってロイスは元気なく手を振って帰っていった。
役に立たなくて申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
そう上手くはいかないって事なのかもしれない。

イノリも最後にロイスはいないだろうかと周りを見ながら家に向かって歩き出した。
店ではなく、住んでいる部屋に入って買った本を見つめる。

布団に座り、本を開いてぺらぺらとページをめくった。

強くなる本、試し読みをした時は武器の紹介から…どう扱えばいいのか載っていた。
それを眺めて、もし…護身用の武器を持つならなにがいいだろうか考える。

重い武器は振り回す体力がないから、もっと軽い武器がいい。
剣もいろいろと重さがあり、威力も当然違う。
重ければ重いほど、威力が上がるのは当然だが扱いはその分難しい。

ハイドの武器もかなり重かった、瞬の時にハイドの身の回りの世話をしようとして腰に下げていた剣の鞘を渡してもらった。
結果、ちょっとしか上がらなくて…渋々断念した。
ハイドがずっとそんな重いものを腰に下げているなんて驚いた。

自分の力にあった武器はないだろうか、自分でもよく分からない。
武器屋に行って、実際に持たせてもらえば重さが分かるかもしれない。

イノリは、自分の力を誰かを守るために使いたいと思っている。
生まれ変わって良かったと、そう心から思うために…

まだ夕方にもなっていないから、ロイス探しをもう一度しようかと思って立ち上がった。

すると、ドンドンと店の方からドアを叩く音が聞こえた。

店の方に出ると、さっき会っていたスカーレットが顔を青くして必死にドアを叩いていた。
慌てて、ドアを開けると飛び込むようにしてスカーレットが入ってきた。
走ってきたのか、息が荒く…とても苦しそうだ。

「はぁっ、はぁ…」

「大丈夫?お茶出すから座って」

「そんな暇はないんです!!」

スカーレットはイノリの腕にしがみつくように掴んで、イノリは驚いていた。
さっきはロイスが見つからない事に落ち込んでいたのに、短時間でいったいなにがあったのか。
痛いくらいにスカーレットの指に力が入っている。

スカーレットがこうなるのはロイスが見つかった事しかないだろうと思った。

そして、やはりイノリの考えは当たっていた……最悪のカタチで…
ロイスは話すために、少しだけ深呼吸して話してくれた。

「…ロイスの居場所を知っている人がいたんです…俺とロイスのクラス担任です」

「そうだったんだ、じゃあその子は」

「試験をしに魔物山に行ったって」

スカーレットの話によると、ロイスはスカーレットと喧嘩して部屋から飛び出した後…クラス担任がいる教員寮まで行ったらしい。
そして、早く試験に行かせてくれと言ってきた。

本来なら前の組が魔物山に入って三日したら次の組が入る事になっている。
しかし、前の組が意外と早くて二日で帰ってきたからクラス担任は許可した。
ロイスは優秀な生徒だから早く試験をしたいのかと、クラス担任は何も疑わなかった。

そして、てっきり一緒に組んでいるスカーレットと行ったと思っていたそうだ。
教師は結果だけを聞くから魔物山まで生徒と同行しない。
魔物山に向かう道も試験の一つになっているからだろう。

それに、ロイスとスカーレット達は厳しい訓練に耐え抜いた生徒達だから教師は信頼している。

「確かにロイスは凄いけど、でも…魔物山だけは一人で無理だ」

「そんなに危険な場所なのか?」

「…だってあそこには」

スカーレットはロイスを強いと言うが、強くてもどうしようもない時がある。

それは、どうしても苦手なものがある場合だ。

魔物山の魔物は鬼の姿や獣の姿など様々な魔物がいる。
しかし一番多い姿をしている魔物は、虫の姿をしているそうだ。

ロイスは大の虫嫌いで、小さなハエのような虫でさえ寮内で騒いで小さな事件になった事もしばしばあるとスカーレットは話してくれた。
確かに強くても虫嫌いなら倒せるか心配なのは分かる。
だとしたら早く助けにいかないと大変な事になる。

ロイスを最後に見たのは寮の管理人で、朝早くから他の生徒を連れて出ていったらしい。
朝早くなら、時間が結構経っている…スカーレットは慌てていた。

「もしかして、その子は他の子と一緒に試験を?」

「いや、それはない…ソイツは寮で他のやつといるのを見たし、聞いたら入り口だけでいいから来てくれって頼まれたらしい………ロイスのあの顔で頼まれたら誰も断れねぇよ」

スカーレットは別のところでなんだか悔しそうだった。

なんで入り口までなんだろう、イノリの疑問はすぐに分かった。

魔物山はとても危険な場所で、決して一人では入ってはいけないという掟があるそうだ。
だから魔物山に行くための入り口の扉は二人いないと開かないようになっている。
だからロイスは誰でもいいから扉を開ける手伝いをさせたのだろう。

そして、誰の力も借りず試験を終わらせようと魔物山に入っていった。

一人で行かせてしまった…スカーレットは罪悪感で押し潰されそうになっていた。
それが、この世で一番大好きな人なら尚更だろう。

スカーレットはイノリに向かって深々と頭を下げた。

「お願いしますお兄さん、魔物山の扉を開けるために一緒に来て下さい」

「……」

「他の人にも頼んだけど、ロイスみたいな魅力はないし…皆面倒がって…俺」

「スカーレットくん、頭を上げて….こんな事してる時間はないよ」

スカーレットの肩をポンポンと軽く叩いて、顔を上げさせた。
そんな事しなくても、ロイスを見つける手助けをした…だから付き合う気だ。

「行こう」と手を差し伸ばすと、スカーレットは涙を流して感謝しながらイノリの手を掴んだ。

とりあえず魔物山まで行く道で魔物に出会わない保証はない。
イノリは精霊の森には行っているが、街の抜け道から行くから魔物には会った事がない。
街を出るのはこれが初めてになるだろうけど、今の状況でワクワクなんて出来ない。

一人で魔物山に行ったロイスの無事だけを二人はただ願っている。

「お兄さん、これ持ってて」

「…これは?」

「一応身を守るためにね、接近武器は危ないしお兄さん体力なさそうだから…この小型銃は撃っても反動は弱いから」

そう言ってロイスは手のひらくらいのサイズの銃を渡してくれた。
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