花言葉を俺は知らない

李林檎

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過去を背負って

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瞬はまだハイドを愛していた…けど、もうハイドには会わないと心に決めていた。
今のこの姿を見ても、ハイドは瞬だと分からない。

それにきっと婚約者の人と結婚しただろうし…そんな姿を見たら瞬は今度こそ心が壊れていく気がした。
新しい人生を歩むために、この姿になったのかもしれない。

だから…早川瞬という名も捨てようと決めた。

名付けた親に謝りながらちゃぶ台のテーブルとクローゼットと布団と洗面所と出口の扉しかないたたみの自室に入る。
自室とは別に店にはもう一つ扉があったから後にするとしてまずは濡れた服を着替えようとクローゼットを開けたら何着か服が入っていた。
クローゼットの引き出しにはタオルがあり、それで濡れた髪や身体を拭きテーブルに置かれた新聞を見た。

これは今日の新聞だろうか、だとしたら今日は一年後の……瞬が死んだあの日となる。

この家にあるのは、生まれ変わった瞬のための物が揃っていた。

瞬は洗面所に向かい、洗面台の鏡を覗き込んだ。
茶色い髪に黒い目…瞬の時は黒髪黒目だった。
これならまず瞬だと気付かれないだろう。

…けど、瞬は不思議だった。

この身体の本当の持ち主は今何処にいるのだろうか。
…もしいたらごめんなさいと、伝わっていないかもしれないが謝った。
また、生まれてきてしまって…ごめんなさい。

店のもう一つの扉は厨房で、やっぱりケーキ屋だったのかなと思い瞬は決めた。
趣味を活かしてお菓子屋さんにしよう。
新しい事を始めるには時間が掛かるから、今出来る仕事がいい。
もう少し内装を綺麗にして買うものを紙に書く。

自分の名を捨てて、イノリと名乗る事を決めた。
この名は元の世界で飼っていた愛犬の名前だったりする。
茶色いところがそっくりだからだ。

名前の由来はイノシンにそっくりな愛犬で、そのまま使うのはアレだけど名前を少し変えた。
それを人間の名前にするのはどうかと思うが、他に思い付かなかった。

お店の名前をどうするか考える。

ーショコラ・フロマージュー

ふとその名前が頭に入ってきた。
それはハイドに初めて渡したカップケーキの名前だった。
ハイドを思うとまた暗くなりそうだから頭を振り、名前を決めた。

…このくらいなら許してくれるかな?と思いながら…

半日かけてのショコラ・フロマージュの開店準備をして…次の日、無事開店した。
城下町にはお菓子屋さんはなく、瞬の店は大繁盛した。
特に甘いもの好きの男性や、可愛いデコレーション目当ての女性で溢れていた。

瞬はお菓子を買い笑う人達を見て、自分のお菓子でこんなに人を幸せに出来るのかと嬉しかった。
見知った騎士も何人か訪れてびっくりしたが相手は瞬に気付いてなくてホッとした。
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