子育てママは突然の異世界に、ワクワクしかありません

イトウ 

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日曜大工

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「冷たい」

 目を開いて、自分の姿を見なくても分かる。全身がびっしょりだ。

「…………あ」

 しまったという顔をリンクがしていて、あきらかに失敗だろうが、やみくもに怒ってはいけないの。冷静に聞いてみよう。

「……これは、成功なの?」
「ううん。、魔力が大きすぎちゃったみたい」

 やっぱり。

「じゃ、外の大きい迷惑かけない所で、練習してからまたママに見せてくれるかな?」
「はい」
「あと、他人に向けてはしない。……約束できる?」
「うん」
「じゃ、指きり」

私は小指を、目の前に出すと楽しそうに歌い出す。

「……ニラ千本食べる! 指きった!」
「針千本じゃないの?」
「出来ないことは、約束しちゃいけないって。ママが前に言ってたよ」

 誇らしげに言われても……。確かに言ったが、ニラだと約束の効力は弱まった気がする。
 けれど、ノルドによく似ている顔が眉をハの字にして泣きそうになってると、あまり強く怒れない。もともと、しちゃいけないと分かったことは注意する子ではある。これくらいで、説教をするのはおしまいで良いだろう。
 すると、サーシャが風魔法で本棚に向けて温風をかけ乾燥をさせながら、音に負けないくらいの大きな声で私に謝る。

「サクラ様! 私の指導不足で、申し訳ありませーんっ!」
「サーシャ。……リンク、魔法を使えるのね」
「はいっ! 教えられてもいないのに、ここまで使えるのはさすがです」
「でも、火でなかっただけ良かったわ」

その判断だけは褒めてあげたい。

「そうですね。でも、今後のために、防火魔法を強めておきましょうか」
「防火魔法?」
「はい。この世界には木材の家具がありませんので、念の為」

 そうなんだ。ノルドが置いてくれた日本らしい家具は、めずらしいらしい。
 ……ということは、木材よりも性能の良い他の素材があるということなのだろう。少し気になる。


「……私も、知識を増やさなきゃいけないわね」
「ちなみに、この本棚はノルド様がお作りになられたんですよ。他にも、木材の家具は全て。設置などは私とウイルがしましたが……」
「ノルドが?」

 そんな才能があったなんて。部屋の中にある家具を、どんな気持ちで作ったんだろう。何だかトンカチと釘を使ってる姿が想像できなくて、クスリと笑う。

「ママ、笑った」

 様子を伺っていたリンクが、私の怒りが溶けたと思ったのか小さなジャンプをする。

「パパは優しいね。家具を作ってくれたんだって」
「うん! ママもだよ」
「えー? リンクに、こんなに怒ったのに?」
「僕が悪いもん。……でね、お願いがあるんだ」

 嫌な予感がする。でも、話はちゃんと聞こう。サーシャは、逃げるように部屋の窓を開けに行ってしまったのが、さらに不安にさせるが。

「これから、ウイルと剣の練習をする約束をしてるんだ。行っても良い?」

 …………無鉄砲で、気持ちの切替が早い。何で、この部分は私に似てしまったんだろう。

「危なくない……わけないわよね」
「ぼくは、勇者になるのが夢なんだ」
「知ってる。…………私も、一緒に行くっていう条件なら良いわよ」
「やった!」

 きっと、この世界では、剣と魔法は必須なのだろう。なら、安全にちゃんと教育してもらったほうが良い。

「でも、言うことを聞かなかったら、ニラ千本食べてもらうわよ」

 この世界に、ニラが栽培されているのか分からないけれど。

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