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一時帰宅
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「ねぇ、サーシャ。家庭菜園ってどう思う?」
「良いと思いますよー。庭の裏には、小さいですけど使ってない畑もありますし」
ベランダなどで育てるプランターを想像していたけど、憧れていた畑があるとは。なら、果物とか色々育ててみたい。
「そうなんだ。なら、その場所を使わせてもらっても良い?」
「もちろん、賛成です。早く収穫できるように、魔法で何種類か育てておきましょうか?」
「うーん、……それは、ごめんなさい。自分で育てたいかなぁ」
とても楽だけど、それじゃ家庭菜園の意味がない。
リンクの情操教育のためにも、食べ物を育てる苦労を知って欲しいという親心。何でも魔法で解決してしまうのは、さすがに今までの価値観もあるし、最後の手段でありたい。
「育てる、となると。残念ですが私には農業の知識がありませんね。……あっ、そうです。隣にある農家に相談してみたらいかがでしょうか? 詳しいはずです」
「その農家さんは、魔法で育てないの? 」
「ええ。人により魔力には差が大きいですし、消耗してしまうものなので使いませんねぇ。王都ならまだしも、田舎だと珍しいものでしょう」
……なるほど、理解した。なら、魔力のない私もここで暮らせそうだ。
それに、さっき挨拶を交わした感じだと優しく教えてくれそうな人だった。うん、良いかもしれない。
「ねー、ママー。まだ?」
「はいはい。ウイルを探すのよね」
話し込んでしまったら、リンクが待ちきれなくなったらしい。
早く剣技の練習をしたいらしく、ドアノブをガチャガチャまわしている。……これも、私の住んでいた少し古いアパートと同じ丸い形状のノブだ。
「はやくはやくー」
「分かったから、……あれ」
ドアを開けると、さっき出ていったばかりのノルドがウイルと立ち話をしている。もしかして、仕事に行かなかったのだろうか。
「どうしたの? 何かあった?」
「サクラ!……やっぱり、リンクのことが気になって。急ぎの用事だけ終わらせてから、すぐに戻ってきちゃった」
そう言って、ノルドは嬉しそうに苦笑する。
……だというのに、パパに会えない事を気にしていない、とは言えない。確かに、ノルドのまわりをクルクルと楽しそうに回っているが、手には棚にあった玩具の刀を握って、ウキウキと勇者気分だ。
「パパ、おはよー」
「おはよう、リンク。会いたかった」
「うん、ぼくも。でね、今からウイルと訓練するんだ」
サラッと返事をする。もっとパパに会えたことを嬉しがって……。
心の中で伝えるが、残念ながら届かなかったらしい。そのまま、後ろに控えていたウイルの手を取り、外へと走りてしまった。
「……そうか。行ってらっしゃい」
その振られている手は、どこか少し元気がない。
ウイルも、約束ですからといって、軽く会釈をしてリンクに続いて行ってしまった。
「ねぇ。リンクは新しいこと覚えるのが、楽しいみたいなの」
「そうみたいだね。……何か、打ち込めることが出来て良かった」
さみしいよりも、喜びのほうが勝ったらしい。
「そうだ。近くに、ノルドの仕事場があるの?」
「いや、遠いよ。だから、この家といくつかの場所の空間をつないで固定して、いつでも行き来ができるようにしたんだ。それで、帰ってきた」
「……それも魔法? 瞬間移動が出来るってことだよね。なんだか、夢みたいな話」
……理論はまったく分からないが。
隣ではサーシャが大きく髪が揺れるくらいうなずいているから、特別なことなのだろう。
「そのとおりです! 常に作動し続けられる空間魔法。それはノルド様しか出来ない、特殊魔法なのです!」
「そっか、すごいね」
サーシャの話す熱量で、どれだけのものかは分かった気がする。
「ウイルもサーシャも、頻繁につなげるより固定させたほうが楽だと思って。サクラとリンクの側に、誰か一人はついていてあげたいから」
「あっ。そうか、そうだよね。本来の仕事もあるもんね。……私達の事、考えてくれて嬉しいけど。来てくれるのは、たまにでもいいのに」
「…………駄目だ! 僕が守るのは、当然だよ」
普段は聞かない口調は、反論はできないくらい強い。ノルドは言い方を後悔したのか、口もとを指で隠し、私を真っ直ぐに見ていた目を伏せる。
こういう時、彼は心の内を完全に見せてくれない。
私はノルドの全てを信用してるのに、彼はそうじゃないと分かる瞬間。
「ノルド様は心配なのです。誰かが、サクラ様の護衛として側に居ないと……、」
「サーシャ!」
「……いえ、申し訳ありません」
今までが、急ぎすぎたから仕方ない。これから一緒にいられるんだから気にしない。そう思って、明るく話をそらす。
「リンク、訓練して戻ってきたら絶対にお腹空かせてるよ。ノルドも朝ご飯食べてから、仕事に戻らない?」
「良いと思いますよー。庭の裏には、小さいですけど使ってない畑もありますし」
ベランダなどで育てるプランターを想像していたけど、憧れていた畑があるとは。なら、果物とか色々育ててみたい。
「そうなんだ。なら、その場所を使わせてもらっても良い?」
「もちろん、賛成です。早く収穫できるように、魔法で何種類か育てておきましょうか?」
「うーん、……それは、ごめんなさい。自分で育てたいかなぁ」
とても楽だけど、それじゃ家庭菜園の意味がない。
リンクの情操教育のためにも、食べ物を育てる苦労を知って欲しいという親心。何でも魔法で解決してしまうのは、さすがに今までの価値観もあるし、最後の手段でありたい。
「育てる、となると。残念ですが私には農業の知識がありませんね。……あっ、そうです。隣にある農家に相談してみたらいかがでしょうか? 詳しいはずです」
「その農家さんは、魔法で育てないの? 」
「ええ。人により魔力には差が大きいですし、消耗してしまうものなので使いませんねぇ。王都ならまだしも、田舎だと珍しいものでしょう」
……なるほど、理解した。なら、魔力のない私もここで暮らせそうだ。
それに、さっき挨拶を交わした感じだと優しく教えてくれそうな人だった。うん、良いかもしれない。
「ねー、ママー。まだ?」
「はいはい。ウイルを探すのよね」
話し込んでしまったら、リンクが待ちきれなくなったらしい。
早く剣技の練習をしたいらしく、ドアノブをガチャガチャまわしている。……これも、私の住んでいた少し古いアパートと同じ丸い形状のノブだ。
「はやくはやくー」
「分かったから、……あれ」
ドアを開けると、さっき出ていったばかりのノルドがウイルと立ち話をしている。もしかして、仕事に行かなかったのだろうか。
「どうしたの? 何かあった?」
「サクラ!……やっぱり、リンクのことが気になって。急ぎの用事だけ終わらせてから、すぐに戻ってきちゃった」
そう言って、ノルドは嬉しそうに苦笑する。
……だというのに、パパに会えない事を気にしていない、とは言えない。確かに、ノルドのまわりをクルクルと楽しそうに回っているが、手には棚にあった玩具の刀を握って、ウキウキと勇者気分だ。
「パパ、おはよー」
「おはよう、リンク。会いたかった」
「うん、ぼくも。でね、今からウイルと訓練するんだ」
サラッと返事をする。もっとパパに会えたことを嬉しがって……。
心の中で伝えるが、残念ながら届かなかったらしい。そのまま、後ろに控えていたウイルの手を取り、外へと走りてしまった。
「……そうか。行ってらっしゃい」
その振られている手は、どこか少し元気がない。
ウイルも、約束ですからといって、軽く会釈をしてリンクに続いて行ってしまった。
「ねぇ。リンクは新しいこと覚えるのが、楽しいみたいなの」
「そうみたいだね。……何か、打ち込めることが出来て良かった」
さみしいよりも、喜びのほうが勝ったらしい。
「そうだ。近くに、ノルドの仕事場があるの?」
「いや、遠いよ。だから、この家といくつかの場所の空間をつないで固定して、いつでも行き来ができるようにしたんだ。それで、帰ってきた」
「……それも魔法? 瞬間移動が出来るってことだよね。なんだか、夢みたいな話」
……理論はまったく分からないが。
隣ではサーシャが大きく髪が揺れるくらいうなずいているから、特別なことなのだろう。
「そのとおりです! 常に作動し続けられる空間魔法。それはノルド様しか出来ない、特殊魔法なのです!」
「そっか、すごいね」
サーシャの話す熱量で、どれだけのものかは分かった気がする。
「ウイルもサーシャも、頻繁につなげるより固定させたほうが楽だと思って。サクラとリンクの側に、誰か一人はついていてあげたいから」
「あっ。そうか、そうだよね。本来の仕事もあるもんね。……私達の事、考えてくれて嬉しいけど。来てくれるのは、たまにでもいいのに」
「…………駄目だ! 僕が守るのは、当然だよ」
普段は聞かない口調は、反論はできないくらい強い。ノルドは言い方を後悔したのか、口もとを指で隠し、私を真っ直ぐに見ていた目を伏せる。
こういう時、彼は心の内を完全に見せてくれない。
私はノルドの全てを信用してるのに、彼はそうじゃないと分かる瞬間。
「ノルド様は心配なのです。誰かが、サクラ様の護衛として側に居ないと……、」
「サーシャ!」
「……いえ、申し訳ありません」
今までが、急ぎすぎたから仕方ない。これから一緒にいられるんだから気にしない。そう思って、明るく話をそらす。
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