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二十三:覇者
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「とりあえず、部屋に入ってゆっくりしよう? しばらく留守にしてたから、埃だらけかもしれないけど」
ゆっくり出来ると思ったら、急に疲労感が出てきた。自分で思っているよりも、疲れているのかもしれない。こんな時は、栄養を取るに限る。
「お腹すいた」
「そうだよね。もう、昼過ぎておやつの時間だし。多分、部屋に冷凍食品ならあるよ。グラタンとか、パスタとか。あー……こんな展開になるなら、もっと奏採の好きなものとか用意しておけば良かったな」
「俺の好きなもの、知らないだろ」
「……だね」
陽尊は軽く会話を流して、慣れた手つきで鍵を解除していく。部屋は、最上階の端らしい。
30階以上ある駅前の高層マンションは、俺も存在は知っていたが、どんな人が住んでいるのだろうと疑問に思っていた。
こういう種類の人間なのか。
「医者、良いな……。あ、でも、6年間の通学に、それからの研修医期間が耐えられる気がしない」
「うーん。向いてるとは思うけど。確かに実習も多いし、忙しいかも」
「そっか。今は、大学は春休み?」
「そうだね。長期になりそうな時は、休み期間ををねらって仕事してるから」
軽めな「ポン、ピン」という二段階の上がる音と共に、エレベーターが到着する。
部屋の前につくと、陽尊が3度目の鍵を開けた。
セキュリティが万全過ぎて、毎日の事だと面倒そうに思える。そんなこと思いながら、一緒に中にはいっていくと、まず大きな窓が目に入った。
「すっご。天空の覇者じゃん!」
「覇者?」
「窓の事。すごい、景色が良すぎる」
「見慣れちゃったら、何とも思わないよ」
「あー、それ。俺、僻んじゃうな」
「……訂正。夜景は綺麗だと思うよ。海に映る光が反射して、キラキラして。見てみたい?」
「見る!」
動いている小さな人間を目で追いながら、元気良く答えると「分かった」と、心地よい声で返事が来た。
ここからの夜景を見ながら飲む酒は、美味しいだろう。やっぱり、日本酒かな。
「景色を楽しんでいるところ、ごめんね。少し確かめたいことがあるんだ」
「んー? なに?」
その深刻そうな声を不思議に思って、陽尊の方を振り返る。すると、右手を前に出し、七支刀を浮かび上がらせていた。
「……変だな、とは思っていたんだ」
「え、何が?」
「うん。奏採の剣も、見せてくれる?」
「分かった。そっか。体内に入っているものは持ってこられるんだっけ?」
「そう。多分、想像は合ってる気がする」
陽尊の言っていることは分からないが、言われるがまま剣を出そうとする。
使い方は、建速に教えてもらった。まずは体内に吸収されている剣に集中する。そして、何か感覚をつかんだら、針に糸を通すように手のひらに向かわせていく。
慣れていないから時間はかかってしまうが、体が慣れてくると一瞬で出せるようになるらしい。
「きて」
そう言って気持ちを込めると、手のひらから鋭利な刃先が見えてきた。そこからは、悩むことはない。いきおいをつけて手を下に引く。
最後に出てきた柄の部分が、右手の中でしっくりと収まり全体像が見える。
白く光り輝いていて、霊力がよどんでいない。
「……キレイだな。やっぱり」
「うん。奏採、少し見せて」
陽尊は剣の刃に顔を近づけ、眉をひそめて考えている。
そして、ポツリと言った。
「この世界でも、戦いが始まるかもしれない」
ゆっくり出来ると思ったら、急に疲労感が出てきた。自分で思っているよりも、疲れているのかもしれない。こんな時は、栄養を取るに限る。
「お腹すいた」
「そうだよね。もう、昼過ぎておやつの時間だし。多分、部屋に冷凍食品ならあるよ。グラタンとか、パスタとか。あー……こんな展開になるなら、もっと奏採の好きなものとか用意しておけば良かったな」
「俺の好きなもの、知らないだろ」
「……だね」
陽尊は軽く会話を流して、慣れた手つきで鍵を解除していく。部屋は、最上階の端らしい。
30階以上ある駅前の高層マンションは、俺も存在は知っていたが、どんな人が住んでいるのだろうと疑問に思っていた。
こういう種類の人間なのか。
「医者、良いな……。あ、でも、6年間の通学に、それからの研修医期間が耐えられる気がしない」
「うーん。向いてるとは思うけど。確かに実習も多いし、忙しいかも」
「そっか。今は、大学は春休み?」
「そうだね。長期になりそうな時は、休み期間ををねらって仕事してるから」
軽めな「ポン、ピン」という二段階の上がる音と共に、エレベーターが到着する。
部屋の前につくと、陽尊が3度目の鍵を開けた。
セキュリティが万全過ぎて、毎日の事だと面倒そうに思える。そんなこと思いながら、一緒に中にはいっていくと、まず大きな窓が目に入った。
「すっご。天空の覇者じゃん!」
「覇者?」
「窓の事。すごい、景色が良すぎる」
「見慣れちゃったら、何とも思わないよ」
「あー、それ。俺、僻んじゃうな」
「……訂正。夜景は綺麗だと思うよ。海に映る光が反射して、キラキラして。見てみたい?」
「見る!」
動いている小さな人間を目で追いながら、元気良く答えると「分かった」と、心地よい声で返事が来た。
ここからの夜景を見ながら飲む酒は、美味しいだろう。やっぱり、日本酒かな。
「景色を楽しんでいるところ、ごめんね。少し確かめたいことがあるんだ」
「んー? なに?」
その深刻そうな声を不思議に思って、陽尊の方を振り返る。すると、右手を前に出し、七支刀を浮かび上がらせていた。
「……変だな、とは思っていたんだ」
「え、何が?」
「うん。奏採の剣も、見せてくれる?」
「分かった。そっか。体内に入っているものは持ってこられるんだっけ?」
「そう。多分、想像は合ってる気がする」
陽尊の言っていることは分からないが、言われるがまま剣を出そうとする。
使い方は、建速に教えてもらった。まずは体内に吸収されている剣に集中する。そして、何か感覚をつかんだら、針に糸を通すように手のひらに向かわせていく。
慣れていないから時間はかかってしまうが、体が慣れてくると一瞬で出せるようになるらしい。
「きて」
そう言って気持ちを込めると、手のひらから鋭利な刃先が見えてきた。そこからは、悩むことはない。いきおいをつけて手を下に引く。
最後に出てきた柄の部分が、右手の中でしっくりと収まり全体像が見える。
白く光り輝いていて、霊力がよどんでいない。
「……キレイだな。やっぱり」
「うん。奏採、少し見せて」
陽尊は剣の刃に顔を近づけ、眉をひそめて考えている。
そして、ポツリと言った。
「この世界でも、戦いが始まるかもしれない」
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