9 / 38
食事
しおりを挟む
「はい。近藤丈一郎です。俺のこと知って頂けて嬉しいです。補習授業を希望してないから、こうやって話すのは初めてですね!」
爽やかな笑顔と、煌めく白い歯を見せながら、握手をしてくる。
自分より、いくぶん大きい身長の丈一郎を見上げ、出された大きな手を強く握りしめた。
少し、陽のオーラに圧倒されたが、想像どおり人当たりがとても良く仲良くやれそうだ。
あれ、そういえば、近藤って。
「同じ名字じゃないですか!近藤さん!」
慌てて振り向いて近藤さんに聞く。
「お互いに、知っていたなら言っておけば良かったですね。丈一郎は兄の孫です」
このタイミングで会えるとは運が良い。
「会えて嬉しい!この前、鎌倉の情報誌で丈一郎の記事を読んだよ。とても、丁寧に書かれていて、素晴らしかった。」
「恥ずかしいですね。でも、嬉しいです」
丈一郎は頭をかいて照れている。
そんな話をしていたら、食堂の方から丈一郎の母親が笑顔で現れた。
手に持っているおぼんには、釜揚げしらす丼とけんちん汁、あと土産物屋で販売している饅頭が2つ置いてある。
「いつも、丈一郎がお世話になっております。ありあわせですけど、召し上がって下さいね」
そう言って、まだ片付けが終わっていないのか、店の方へ戻っていく。
「母のけんちん汁は最高ですから、お代わりしてください」
昼から何も給べていない腹に、とてもありがたい言葉だ。
真っ白なしらすに、湯気がたっているけんちん汁。
そして、疲れた心を癒してくれる甘いお饅頭……。
桃夢のお腹は待ちきれず鳴り始めた。
何だか。
凪夜と春人の言ってた、丈一郎のイメージと違うな。
噂は信じるなって事だろうか。
しかし、考えるよりも食欲が勝ち、行儀は悪いが我慢できず、丼を左手に持ち勢いよく食べ始める。
米一粒も残さず完食した。
パンパンのお腹をさすり満足する。
最後に、別腹を作り、少し冷めてしまったお茶と、お饅頭を1つだけ食べ一息つく。
あぁ、幸せだ。
両手を、後ろにつき、リラックスをした格好で食べ物に感謝をした。
すると、良い頃合いだと思ったのか、席を外していた丈一郎が冊子を持ってやってきた。
「あの、桃夢先生。勤務してる塾にこれ、置いてくれませんか?」
それは渡瀬からもらった駅で配っていたという冊子と一緒のものだった。
「良いよ。うちは中学受験の子もいるから、その子達なんか喜ぶんじゃないか?実際に歩きに行ったら鎌倉時代の勉強にもなるだろう」
そう言って、端が折れないように丁寧にカバンに入れる。
ズシッと重くなったが、桃夢の自宅はここからなら徒歩30分くらいだから問題ない。
「では、近藤さん、俺は帰ります。丈一郎、お母さんに美味しかったと伝えておいてくれ」
食べすぎて重たい体をよっこいしょ、と言いながら持ち上げ、立ち上がる。
「先生、車で送っていきましょうか?私も帰りますし。」
近藤さんが気を遣ってくれる。
「いえ、腹ごなしに歩いていきます。家も近いので大丈夫です。ありがとうございます」
さすがに、それは申し訳ない。
そのまま勝手口から出て、夜道を歩きながら、ご飯、美味しかったな、と思い返す。
店の食堂で、同じメニューを出してると言っていたので、たまに来よう。
表通りに向かって歩き、昼間では考えられない、夜のひっそりとした通りを、のんびりと歩いて行く。
空には、月がキレイに出ていて、暗すぎず安心して歩ける。
桃夢はひとつ余った饅頭を優しく握りしめ、海に向かって歩いていった。
爽やかな笑顔と、煌めく白い歯を見せながら、握手をしてくる。
自分より、いくぶん大きい身長の丈一郎を見上げ、出された大きな手を強く握りしめた。
少し、陽のオーラに圧倒されたが、想像どおり人当たりがとても良く仲良くやれそうだ。
あれ、そういえば、近藤って。
「同じ名字じゃないですか!近藤さん!」
慌てて振り向いて近藤さんに聞く。
「お互いに、知っていたなら言っておけば良かったですね。丈一郎は兄の孫です」
このタイミングで会えるとは運が良い。
「会えて嬉しい!この前、鎌倉の情報誌で丈一郎の記事を読んだよ。とても、丁寧に書かれていて、素晴らしかった。」
「恥ずかしいですね。でも、嬉しいです」
丈一郎は頭をかいて照れている。
そんな話をしていたら、食堂の方から丈一郎の母親が笑顔で現れた。
手に持っているおぼんには、釜揚げしらす丼とけんちん汁、あと土産物屋で販売している饅頭が2つ置いてある。
「いつも、丈一郎がお世話になっております。ありあわせですけど、召し上がって下さいね」
そう言って、まだ片付けが終わっていないのか、店の方へ戻っていく。
「母のけんちん汁は最高ですから、お代わりしてください」
昼から何も給べていない腹に、とてもありがたい言葉だ。
真っ白なしらすに、湯気がたっているけんちん汁。
そして、疲れた心を癒してくれる甘いお饅頭……。
桃夢のお腹は待ちきれず鳴り始めた。
何だか。
凪夜と春人の言ってた、丈一郎のイメージと違うな。
噂は信じるなって事だろうか。
しかし、考えるよりも食欲が勝ち、行儀は悪いが我慢できず、丼を左手に持ち勢いよく食べ始める。
米一粒も残さず完食した。
パンパンのお腹をさすり満足する。
最後に、別腹を作り、少し冷めてしまったお茶と、お饅頭を1つだけ食べ一息つく。
あぁ、幸せだ。
両手を、後ろにつき、リラックスをした格好で食べ物に感謝をした。
すると、良い頃合いだと思ったのか、席を外していた丈一郎が冊子を持ってやってきた。
「あの、桃夢先生。勤務してる塾にこれ、置いてくれませんか?」
それは渡瀬からもらった駅で配っていたという冊子と一緒のものだった。
「良いよ。うちは中学受験の子もいるから、その子達なんか喜ぶんじゃないか?実際に歩きに行ったら鎌倉時代の勉強にもなるだろう」
そう言って、端が折れないように丁寧にカバンに入れる。
ズシッと重くなったが、桃夢の自宅はここからなら徒歩30分くらいだから問題ない。
「では、近藤さん、俺は帰ります。丈一郎、お母さんに美味しかったと伝えておいてくれ」
食べすぎて重たい体をよっこいしょ、と言いながら持ち上げ、立ち上がる。
「先生、車で送っていきましょうか?私も帰りますし。」
近藤さんが気を遣ってくれる。
「いえ、腹ごなしに歩いていきます。家も近いので大丈夫です。ありがとうございます」
さすがに、それは申し訳ない。
そのまま勝手口から出て、夜道を歩きながら、ご飯、美味しかったな、と思い返す。
店の食堂で、同じメニューを出してると言っていたので、たまに来よう。
表通りに向かって歩き、昼間では考えられない、夜のひっそりとした通りを、のんびりと歩いて行く。
空には、月がキレイに出ていて、暗すぎず安心して歩ける。
桃夢はひとつ余った饅頭を優しく握りしめ、海に向かって歩いていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
【完結】知られてはいけない
ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
(第二回きずな児童書大賞で奨励賞を受賞しました)
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる