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食事
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「はい。近藤丈一郎です。俺のこと知って頂けて嬉しいです。補習授業を希望してないから、こうやって話すのは初めてですね!」
爽やかな笑顔と、煌めく白い歯を見せながら、握手をしてくる。
自分より、いくぶん大きい身長の丈一郎を見上げ、出された大きな手を強く握りしめた。
少し、陽のオーラに圧倒されたが、想像どおり人当たりがとても良く仲良くやれそうだ。
あれ、そういえば、近藤って。
「同じ名字じゃないですか!近藤さん!」
慌てて振り向いて近藤さんに聞く。
「お互いに、知っていたなら言っておけば良かったですね。丈一郎は兄の孫です」
このタイミングで会えるとは運が良い。
「会えて嬉しい!この前、鎌倉の情報誌で丈一郎の記事を読んだよ。とても、丁寧に書かれていて、素晴らしかった。」
「恥ずかしいですね。でも、嬉しいです」
丈一郎は頭をかいて照れている。
そんな話をしていたら、食堂の方から丈一郎の母親が笑顔で現れた。
手に持っているおぼんには、釜揚げしらす丼とけんちん汁、あと土産物屋で販売している饅頭が2つ置いてある。
「いつも、丈一郎がお世話になっております。ありあわせですけど、召し上がって下さいね」
そう言って、まだ片付けが終わっていないのか、店の方へ戻っていく。
「母のけんちん汁は最高ですから、お代わりしてください」
昼から何も給べていない腹に、とてもありがたい言葉だ。
真っ白なしらすに、湯気がたっているけんちん汁。
そして、疲れた心を癒してくれる甘いお饅頭……。
桃夢のお腹は待ちきれず鳴り始めた。
何だか。
凪夜と春人の言ってた、丈一郎のイメージと違うな。
噂は信じるなって事だろうか。
しかし、考えるよりも食欲が勝ち、行儀は悪いが我慢できず、丼を左手に持ち勢いよく食べ始める。
米一粒も残さず完食した。
パンパンのお腹をさすり満足する。
最後に、別腹を作り、少し冷めてしまったお茶と、お饅頭を1つだけ食べ一息つく。
あぁ、幸せだ。
両手を、後ろにつき、リラックスをした格好で食べ物に感謝をした。
すると、良い頃合いだと思ったのか、席を外していた丈一郎が冊子を持ってやってきた。
「あの、桃夢先生。勤務してる塾にこれ、置いてくれませんか?」
それは渡瀬からもらった駅で配っていたという冊子と一緒のものだった。
「良いよ。うちは中学受験の子もいるから、その子達なんか喜ぶんじゃないか?実際に歩きに行ったら鎌倉時代の勉強にもなるだろう」
そう言って、端が折れないように丁寧にカバンに入れる。
ズシッと重くなったが、桃夢の自宅はここからなら徒歩30分くらいだから問題ない。
「では、近藤さん、俺は帰ります。丈一郎、お母さんに美味しかったと伝えておいてくれ」
食べすぎて重たい体をよっこいしょ、と言いながら持ち上げ、立ち上がる。
「先生、車で送っていきましょうか?私も帰りますし。」
近藤さんが気を遣ってくれる。
「いえ、腹ごなしに歩いていきます。家も近いので大丈夫です。ありがとうございます」
さすがに、それは申し訳ない。
そのまま勝手口から出て、夜道を歩きながら、ご飯、美味しかったな、と思い返す。
店の食堂で、同じメニューを出してると言っていたので、たまに来よう。
表通りに向かって歩き、昼間では考えられない、夜のひっそりとした通りを、のんびりと歩いて行く。
空には、月がキレイに出ていて、暗すぎず安心して歩ける。
桃夢はひとつ余った饅頭を優しく握りしめ、海に向かって歩いていった。
爽やかな笑顔と、煌めく白い歯を見せながら、握手をしてくる。
自分より、いくぶん大きい身長の丈一郎を見上げ、出された大きな手を強く握りしめた。
少し、陽のオーラに圧倒されたが、想像どおり人当たりがとても良く仲良くやれそうだ。
あれ、そういえば、近藤って。
「同じ名字じゃないですか!近藤さん!」
慌てて振り向いて近藤さんに聞く。
「お互いに、知っていたなら言っておけば良かったですね。丈一郎は兄の孫です」
このタイミングで会えるとは運が良い。
「会えて嬉しい!この前、鎌倉の情報誌で丈一郎の記事を読んだよ。とても、丁寧に書かれていて、素晴らしかった。」
「恥ずかしいですね。でも、嬉しいです」
丈一郎は頭をかいて照れている。
そんな話をしていたら、食堂の方から丈一郎の母親が笑顔で現れた。
手に持っているおぼんには、釜揚げしらす丼とけんちん汁、あと土産物屋で販売している饅頭が2つ置いてある。
「いつも、丈一郎がお世話になっております。ありあわせですけど、召し上がって下さいね」
そう言って、まだ片付けが終わっていないのか、店の方へ戻っていく。
「母のけんちん汁は最高ですから、お代わりしてください」
昼から何も給べていない腹に、とてもありがたい言葉だ。
真っ白なしらすに、湯気がたっているけんちん汁。
そして、疲れた心を癒してくれる甘いお饅頭……。
桃夢のお腹は待ちきれず鳴り始めた。
何だか。
凪夜と春人の言ってた、丈一郎のイメージと違うな。
噂は信じるなって事だろうか。
しかし、考えるよりも食欲が勝ち、行儀は悪いが我慢できず、丼を左手に持ち勢いよく食べ始める。
米一粒も残さず完食した。
パンパンのお腹をさすり満足する。
最後に、別腹を作り、少し冷めてしまったお茶と、お饅頭を1つだけ食べ一息つく。
あぁ、幸せだ。
両手を、後ろにつき、リラックスをした格好で食べ物に感謝をした。
すると、良い頃合いだと思ったのか、席を外していた丈一郎が冊子を持ってやってきた。
「あの、桃夢先生。勤務してる塾にこれ、置いてくれませんか?」
それは渡瀬からもらった駅で配っていたという冊子と一緒のものだった。
「良いよ。うちは中学受験の子もいるから、その子達なんか喜ぶんじゃないか?実際に歩きに行ったら鎌倉時代の勉強にもなるだろう」
そう言って、端が折れないように丁寧にカバンに入れる。
ズシッと重くなったが、桃夢の自宅はここからなら徒歩30分くらいだから問題ない。
「では、近藤さん、俺は帰ります。丈一郎、お母さんに美味しかったと伝えておいてくれ」
食べすぎて重たい体をよっこいしょ、と言いながら持ち上げ、立ち上がる。
「先生、車で送っていきましょうか?私も帰りますし。」
近藤さんが気を遣ってくれる。
「いえ、腹ごなしに歩いていきます。家も近いので大丈夫です。ありがとうございます」
さすがに、それは申し訳ない。
そのまま勝手口から出て、夜道を歩きながら、ご飯、美味しかったな、と思い返す。
店の食堂で、同じメニューを出してると言っていたので、たまに来よう。
表通りに向かって歩き、昼間では考えられない、夜のひっそりとした通りを、のんびりと歩いて行く。
空には、月がキレイに出ていて、暗すぎず安心して歩ける。
桃夢はひとつ余った饅頭を優しく握りしめ、海に向かって歩いていった。
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