36 / 38
大エプ④ 刑事のはりこみ
しおりを挟む
そろそろ時間だ。
電信柱の後ろに隠れながら、広場にある時計をチェックする。
隠れる必要は一切ないのだが、さっき見ていた刑事ドラマの影響が出ている。
近所の人達の目は多少気にはなるが。
あ、あの人影はもしかして!
半開きの口のぼんやりした顔は間違いなく桃夢先生だ。
香苗は、腕を組みながらゆっくりと前へ歩いていく。
「待ちましたよ。桃夢先生。話を聞いて貰いましょうか」
「うわっ。あー、驚いた。……香苗さんじゃないですか。いつも、美味しいご飯ありがとうございます」
心臓に手を当てながら慌ててペコリと頭を下げていて、思っていたより驚かせてしまった事に、心が痛む。
だが、調査のためには仕方ない。
「ここだと、話を聞かれる可能性が……こちらへ」
小声で広場の端まで連れていく。
広場の中の茂みへ入り、良いアイデアがないか聞こうとした時、中央から大きな声が響く。
「桃夢ーーー!何してるの?仕事はこれから?隣の方は誰ー?」
はっ、誰かに知られたらしい。
声の方を向くと、優しい顔立ちをした女性がこっちへ向かってきている。
「あ、母さん。こちらは隣の店で働いている香苗さん」
お母さま?これは刑事ごっこはやめて、ちゃんと挨拶をせねばならない。
深々と頭を下げて挨拶する。
「こ、こんにちは」
「こんにちは!桃夢が最近、食事させてもらってる所ね。私が夕食を用意しなくても良くなったから楽ちんさせてもらってるわー。ありがとう」
にこにこと笑う。
実際に、夕食を作っているのは叔母さんなのだが、昼間来た時は作ってるので訂正しなくても良いだろう。
「笑い方、桃夢先生と一緒ですね」
なんだか安心する雰囲気だ。
「そお?あ、先生と呼ぶって事はやっぱり学校関係で知り合ったの?」
「はい。生徒たちが呼んでいるから、うつってしまって」
ほがらかにしゃべっていたら、しまった!と大きな声が横からした。
「ごめん。母さん。遅刻しそうだから行く。香苗さん、話はまた今度で良いかなぁ。すみません」と言って、走り去ってしまった。
「何か桃夢に話があったんでしょう?私が話しかけてしまったからよね。ごめんなさいね。手伝えることなら手伝うわよ。一応、顔は広いから!」
何でも話してしまいそうな優しい声に、ついつい今回の相談事を話してしまった。
それが、後々、大変なことになるとは思わずに。
電信柱の後ろに隠れながら、広場にある時計をチェックする。
隠れる必要は一切ないのだが、さっき見ていた刑事ドラマの影響が出ている。
近所の人達の目は多少気にはなるが。
あ、あの人影はもしかして!
半開きの口のぼんやりした顔は間違いなく桃夢先生だ。
香苗は、腕を組みながらゆっくりと前へ歩いていく。
「待ちましたよ。桃夢先生。話を聞いて貰いましょうか」
「うわっ。あー、驚いた。……香苗さんじゃないですか。いつも、美味しいご飯ありがとうございます」
心臓に手を当てながら慌ててペコリと頭を下げていて、思っていたより驚かせてしまった事に、心が痛む。
だが、調査のためには仕方ない。
「ここだと、話を聞かれる可能性が……こちらへ」
小声で広場の端まで連れていく。
広場の中の茂みへ入り、良いアイデアがないか聞こうとした時、中央から大きな声が響く。
「桃夢ーーー!何してるの?仕事はこれから?隣の方は誰ー?」
はっ、誰かに知られたらしい。
声の方を向くと、優しい顔立ちをした女性がこっちへ向かってきている。
「あ、母さん。こちらは隣の店で働いている香苗さん」
お母さま?これは刑事ごっこはやめて、ちゃんと挨拶をせねばならない。
深々と頭を下げて挨拶する。
「こ、こんにちは」
「こんにちは!桃夢が最近、食事させてもらってる所ね。私が夕食を用意しなくても良くなったから楽ちんさせてもらってるわー。ありがとう」
にこにこと笑う。
実際に、夕食を作っているのは叔母さんなのだが、昼間来た時は作ってるので訂正しなくても良いだろう。
「笑い方、桃夢先生と一緒ですね」
なんだか安心する雰囲気だ。
「そお?あ、先生と呼ぶって事はやっぱり学校関係で知り合ったの?」
「はい。生徒たちが呼んでいるから、うつってしまって」
ほがらかにしゃべっていたら、しまった!と大きな声が横からした。
「ごめん。母さん。遅刻しそうだから行く。香苗さん、話はまた今度で良いかなぁ。すみません」と言って、走り去ってしまった。
「何か桃夢に話があったんでしょう?私が話しかけてしまったからよね。ごめんなさいね。手伝えることなら手伝うわよ。一応、顔は広いから!」
何でも話してしまいそうな優しい声に、ついつい今回の相談事を話してしまった。
それが、後々、大変なことになるとは思わずに。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
【完結】知られてはいけない
ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
(第二回きずな児童書大賞で奨励賞を受賞しました)
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる