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大エプ⑤ 完
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私は火曜日の定休日の他に、水曜日も子供の学校が早いので休みにしている。
ちなみに土日は必要に応じてその都度、相談だ。
だから、水曜にあった騒動に全く気付くことがなかった。
全ては木曜日に判明する。
木曜日に店に行くと叔母さんが少し疲れた様子だった。
だから軽い気持ちで聞いてみた。
「昨日は、お客様きました?忙しかったですか?」
「それが、たくさんいらして大変だったのよー」
「そうなんですか、すみません。お休み頂いてしまって」
「いいのいいの。でも、丈一郎が香苗さんに用事があるみたいだから、後で聞いてやってね?」
叔母さんはそう笑ってレジの準備をしている。
その時は水曜日はそんなに人が来ない曜日だから、おかしいなと思ったけれど、ありえないことではないので、すっかり忘れてしまっていた。
だから学校から帰ってきたばかりの丈一郎くんに呼び止められた時、きっと新しいレシピの事だろうと思ったのだ。
「あの、ちょっと話があるのですが」
丈一郎が、深刻そうな顔をしている。
これは何か言いたそうだ。
「ごめんなさい。まだレシピが考えられていなくて」
先手必勝で先に謝ることにした。
「あの、そのことですけど、香苗さん。何が火曜日にあったんですか?」
「何もなかったと、思うけど……」
ただ、広場に行き井戸端会議に参加して帰ってきただけだ。
何かしてしまったのだろうか。弱きになって答える。
「説明するのも、あれなんで、これ見てもらえますか?」
「なにこれ。巻物?」
丈一郎は手に長い巻物と、ファイルを手に持っている。
香苗は手にとってクルクルと回しながら中を見てみると、そこには大量の料理名が書かれていた。
その1、醤油ラーメン
その2、板わさ
その3、もろきゅう
その………
50くらいまで続いている。
と言う事は、もう1つのファイルの方はもしや。
香苗は、震える手で開く。
そこには、広場の設計図や利用時間など事細かく計画予定が記載されていた。もちろん、ちゃっかりと書いた本人たちが不便にならないように。
「昨日、桃夢先生のお母様がいらしていました。隣の自治会の民生委員をされているそうです」
「そ、それで?」
「商工会メンバーの幹部とこのあたりの自治会メンバーで、この店のコンセプトやレシピを入念に話し合いをされたそうです」
「はあ」
「もう、断ることは出来ませんよね。しかも、何も俺は聞かされていません。いったい、何があったのか。どうして良いのか分からないです。香苗さん。何したんですか?」
少し泣いている丈一郎くんに同情する。
「まぁ、協力者が多いほうが良いし、ね?」
椅子に座り、下を向きながら泣いている丈一郎の肩に手を置く。
最後のページには、この地域で一番権力がある人のサインまで書かれていた。
その名前を見て、プレッシャーで心が折れたらしい。
確かに高校生にはつらいだろう。
「………一緒に頑張ろう?その内容、全部やれってことじゃないから。多分」
コクリと丈一郎は、力なくうなずく。
どうやら、私は賢者どころか、大賢者を召喚してしまったらしい。
香苗は、どう収拾したら良いのか見つからず天を仰いだ。
1人は天井を見上げて、1人は地面を見るという異常な状況は、夕方の食事ラッシュで叔母さんが呼びに来るまで続いたのであった。
そんな、うなだれた丈一郎を残し、これからの騒動を予測し震えながら香苗は帰宅の準備をする。
そして帰りながら必死に考える。
そうだ!
あきらめて逃げて桃夢先生を召喚しよう。
そうしよう。
ちなみに土日は必要に応じてその都度、相談だ。
だから、水曜にあった騒動に全く気付くことがなかった。
全ては木曜日に判明する。
木曜日に店に行くと叔母さんが少し疲れた様子だった。
だから軽い気持ちで聞いてみた。
「昨日は、お客様きました?忙しかったですか?」
「それが、たくさんいらして大変だったのよー」
「そうなんですか、すみません。お休み頂いてしまって」
「いいのいいの。でも、丈一郎が香苗さんに用事があるみたいだから、後で聞いてやってね?」
叔母さんはそう笑ってレジの準備をしている。
その時は水曜日はそんなに人が来ない曜日だから、おかしいなと思ったけれど、ありえないことではないので、すっかり忘れてしまっていた。
だから学校から帰ってきたばかりの丈一郎くんに呼び止められた時、きっと新しいレシピの事だろうと思ったのだ。
「あの、ちょっと話があるのですが」
丈一郎が、深刻そうな顔をしている。
これは何か言いたそうだ。
「ごめんなさい。まだレシピが考えられていなくて」
先手必勝で先に謝ることにした。
「あの、そのことですけど、香苗さん。何が火曜日にあったんですか?」
「何もなかったと、思うけど……」
ただ、広場に行き井戸端会議に参加して帰ってきただけだ。
何かしてしまったのだろうか。弱きになって答える。
「説明するのも、あれなんで、これ見てもらえますか?」
「なにこれ。巻物?」
丈一郎は手に長い巻物と、ファイルを手に持っている。
香苗は手にとってクルクルと回しながら中を見てみると、そこには大量の料理名が書かれていた。
その1、醤油ラーメン
その2、板わさ
その3、もろきゅう
その………
50くらいまで続いている。
と言う事は、もう1つのファイルの方はもしや。
香苗は、震える手で開く。
そこには、広場の設計図や利用時間など事細かく計画予定が記載されていた。もちろん、ちゃっかりと書いた本人たちが不便にならないように。
「昨日、桃夢先生のお母様がいらしていました。隣の自治会の民生委員をされているそうです」
「そ、それで?」
「商工会メンバーの幹部とこのあたりの自治会メンバーで、この店のコンセプトやレシピを入念に話し合いをされたそうです」
「はあ」
「もう、断ることは出来ませんよね。しかも、何も俺は聞かされていません。いったい、何があったのか。どうして良いのか分からないです。香苗さん。何したんですか?」
少し泣いている丈一郎くんに同情する。
「まぁ、協力者が多いほうが良いし、ね?」
椅子に座り、下を向きながら泣いている丈一郎の肩に手を置く。
最後のページには、この地域で一番権力がある人のサインまで書かれていた。
その名前を見て、プレッシャーで心が折れたらしい。
確かに高校生にはつらいだろう。
「………一緒に頑張ろう?その内容、全部やれってことじゃないから。多分」
コクリと丈一郎は、力なくうなずく。
どうやら、私は賢者どころか、大賢者を召喚してしまったらしい。
香苗は、どう収拾したら良いのか見つからず天を仰いだ。
1人は天井を見上げて、1人は地面を見るという異常な状況は、夕方の食事ラッシュで叔母さんが呼びに来るまで続いたのであった。
そんな、うなだれた丈一郎を残し、これからの騒動を予測し震えながら香苗は帰宅の準備をする。
そして帰りながら必死に考える。
そうだ!
あきらめて逃げて桃夢先生を召喚しよう。
そうしよう。
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