何でもない日の、謎な日常

さようなら、こんにちは

　丈一郎に頼み、店を貸し切りにして渡瀬の卒業おめでとうパーティーならぬ、追い出し会を行うことになった。

「み、みなさん！！自分のためにお集まり頂き、大変ありがとうございました！！今まで、たいへんお世話をしました。だから、みなさんの感謝は尽きないと思います。そして、どんなに悲しかろうとは存じますが、付属の大学は側にありますので、なんら寂しがることはございません。ちょくちょく顔を…………」


　話が長い。

　ありがとうございました、まではちゃんと聞いていたのだが。
　あとは、蛇足だ。

「この筑前煮、美味しい！」
「また、香苗さん！腕を上げましたね」
「ふふふ。客も増えたので、ご飯も良いのにしたのよぉー。炊きたてのご飯も食べて」
「本当だ！甘くて、もちもちで、ふっくらしてる！！最高です！」

　おーい、そろそろ、渡瀬の言葉を聞いてやれー、と自分のことは棚に上げ、桃夢は立ち上がり、声を張り上げる。
　しかたないので、渡瀬とバトンタッチして桃夢が、立ち上がり、話し始める。

「はい！これから、お別れをしないお別れ会をしたいと思います！」

　わー、パチパチーっと、香苗さんだけが、盛大にしてくれる。

「渡瀬とは、色々と思うところがありましたが、なんとか楽しく過ごせました」

　桃夢は、みんなが、聞いているのか聞いていないのか分からないが、続ける。

「俺も、これからも補習講師を続けるので、安心して下さい。もちろんミス研にも行きます。あと、藤森先生がたまに、勝手に自称オカルト研究会を創設して顧問として参加してくれるそうです」

　夏葉が、筑前煮の蓮の穴に箸を入れるのをやめた。

「えっっ！？本当ですか、やったぁ！」

　夏葉は、何気に藤森ファンである。

「落ち着け、夏葉。ついでに、その日は、来られる時はオカルト研究家としての南沢も来るそうだ」

　次は、凪夜と春人が唐揚げの最後の取り合いっこをしてるのをやめて、こっちを見る。

「嬉しい！楽しいよね。話題が豊富だし」
「まぁ、悪い人じゃ、ないよね」

　凪夜も、いつの間にか仲良くなったようだ。

　ガラリと、食堂の引き戸が開く音がする。

「みなさん！楽しんでますかー？この店も軌道に乗り始めましたんで、ぜひぜひ、外活動の帰りは休憩にでも使ってくださいね」

　ちゃっかりと営業をしつつ、大量の一色団子を、持ってきた丈一郎が戻ってきた。

「えっと、これは、何かな？」

　顧問として、大切な質問をしてみる。
　三色ならぬ、色は3つとも白色だが何故だろうか。
　丈一郎には試作品を食べさせられている毎日なので、大いに警戒する。

「すぅーーーーっぱい、梅干しにドッキリさ！団子です」

　一同、昔ながらの駄菓子を、思い出す。
　少し、違う名前だが、趣旨は一緒だろう。

「６名なので２本ですね」

　自分の分は入っていないらしい。

「とうぞ！召し上がってください。自信作です！！！」

　なぜか光属性に、少しだけ闇が潜んでしまったらしい。
　逃げられないと察した６人は、おそるおそる、手を出した。