5 / 24
五話 握られた弱味
しおりを挟む
「じゃあ、明日は学校来いよな」
と言う声を、匠は熱が上がって何も考えられずに聞いたが、簡単な言葉すら理解出来ずに意識を失った。
目を覚ますと、身体は綺麗になっており、ベッドの上にいた。部屋には母親がおり、夜ご飯を部屋に運んでいるところだった。
「匠、大丈夫なの? どうして病院行かなかったの?」
「動きたくなかったから?」
「どうして疑問形よ。明日、お母さん休み取ったから、一緒に行こうね」
「別にいいよ。寝てれば治るし」
「悪化してるんじゃない」
それは、鬼畜な同級生のせいだと言いかけそうになって、匠は口を噤んだ。
「そういえば、藤倉君ってカッコイイお友達が、あなたを介抱してくれてたわよ」
母親の言葉を理解しかねた。日本語なのに、別の国の言語に聞こえたかのように、素っ頓狂な顔をする。
「は?」
「だから、藤倉君よ。プリント届けに来てくれたでしょう? あなた、汗かいてシャワー浴びたけど、倒れたって聞いたわ。
あなたの身体拭いて、パジャマ着させて、ベッドに運んだそうじゃない?」
「……王子が?」
「王子君っていうの? 確かに王子様みたいに格好良かったけど……」
「王子はあだ名」
「そうなの。いい子なのね。あんなお友達がいて、お母さん安心したわ」
母親は皇樹への賞賛を述べた後、「ちゃんと寝てなさい」と言って部屋を出ていった。
匠は、鬼畜な男が介抱してくれた事に驚愕を隠せない。
「この部屋……見られたのか……」
ピンクの布団に、枕元に並べられている様々な種類の動物のぬいぐるみ、壁には推しのアイドルの写真が数枚飾られている。
律にしか見せた事のない部屋を、よりにもよって皇樹に見られた事は、少なからず匠にダメージを与えた。
翌日は母親と病院へ行き、一日安静にして、その翌日に学校に登校した。
もう金曜日なので、一日休めば二連休だ。
多少のイジメは我慢しようと、いつもよりは機嫌良く学校へと足を運んだ。
教室に着くと、佐藤と山城が「おはよう」と笑顔で近付いてきた。
「おはよう」
最近は表情が重かった二人も、久々に明るい笑顔を浮かべているのでホッとしながら自分の席に着く。まず異変に気付いた。
机の上に油性ペンで書かれた、悪口は消えていた。アルコール液じゃないと消えないと言われていたので、面倒だと思っていたが、勝手に消えてくれている事に喜んだ。
「これ、二人が消してくれたの?」
と、二人に問いかけると、首を横に振った。
「匠をいじめてた女子達。どういうわけか、急にイタズラ書きしたの消してさ。あと、これ……」
佐藤が匠に新品の体操着、上下とも渡してきた。
「これは?」
「あいつらから預かった。謝るのは嫌なんだって。でも、体操着破いたのは弁償するって」
「一体何事?」
「知らん。王子がやめるように言ったんだって」
「それだけ?」
「そうらしい」
匠が女子グループに目を向けると、リーダー格の女子と目が合った。だが、すぐにプイと顔を逸らしてしまった。
他二人も、匠に気付くとバツの悪そうな顔をしていた。
「謝りに来ないのは不満だけど、これ以上匠が被害受ける事はないってさ」
「それは良かっ……」
「おはよう、匠君」
安心したのも束の間。諸悪の根源が匠の横にやってきた。
「げっ……王子」
皇樹はニッと爽やかな笑顔を向けてくる。匠はゾワッと鳥肌が立った。
彼が笑っている時は、ロクなことがないのだ。
気を失って介抱したそうだが、匠の家族にレイプを知られない為に証拠を隠滅したのだと匠は考えている。
卑怯な男に怒りしか感じない。
「もう体調は良いの?」
「良いから登校したんだろ」
「冷たいな。気を失った君を、運ぶのがどれだけ大変だったか」
「……証拠隠滅ご苦労様。これでお前が僕にした事は水に流れたわけだ?」
「分かってるじゃねぇか……なーんて。なんの事?」
皇樹は一瞬だけ本性を見せて、すぐにいつもの良い子に戻った。
この表ヅラに騙される人ばかりなのだ。警戒心は解かないように睨み返した。
「はぁ、もう君の仕返しは終わったでしょ。そろそろ僕につきまとうのやめてよ」
「何言ってんの? 誰がイジメを止めたと思ってるんだ? また再開させる事も出来るんだぜ。
俺の言う事聞かないと、次は川中さんを標的にしてやろうか?」
「こんの、ゲス野郎」
「分かったなら、放課後、生徒会室来いよ」
皇樹はニヤリと嫌な笑みを浮かべて、自分の席に戻っていった。もう彼を遠くから眺める事など出来ず、出来るだけ視界に入れないようにしたのだった。
と言う声を、匠は熱が上がって何も考えられずに聞いたが、簡単な言葉すら理解出来ずに意識を失った。
目を覚ますと、身体は綺麗になっており、ベッドの上にいた。部屋には母親がおり、夜ご飯を部屋に運んでいるところだった。
「匠、大丈夫なの? どうして病院行かなかったの?」
「動きたくなかったから?」
「どうして疑問形よ。明日、お母さん休み取ったから、一緒に行こうね」
「別にいいよ。寝てれば治るし」
「悪化してるんじゃない」
それは、鬼畜な同級生のせいだと言いかけそうになって、匠は口を噤んだ。
「そういえば、藤倉君ってカッコイイお友達が、あなたを介抱してくれてたわよ」
母親の言葉を理解しかねた。日本語なのに、別の国の言語に聞こえたかのように、素っ頓狂な顔をする。
「は?」
「だから、藤倉君よ。プリント届けに来てくれたでしょう? あなた、汗かいてシャワー浴びたけど、倒れたって聞いたわ。
あなたの身体拭いて、パジャマ着させて、ベッドに運んだそうじゃない?」
「……王子が?」
「王子君っていうの? 確かに王子様みたいに格好良かったけど……」
「王子はあだ名」
「そうなの。いい子なのね。あんなお友達がいて、お母さん安心したわ」
母親は皇樹への賞賛を述べた後、「ちゃんと寝てなさい」と言って部屋を出ていった。
匠は、鬼畜な男が介抱してくれた事に驚愕を隠せない。
「この部屋……見られたのか……」
ピンクの布団に、枕元に並べられている様々な種類の動物のぬいぐるみ、壁には推しのアイドルの写真が数枚飾られている。
律にしか見せた事のない部屋を、よりにもよって皇樹に見られた事は、少なからず匠にダメージを与えた。
翌日は母親と病院へ行き、一日安静にして、その翌日に学校に登校した。
もう金曜日なので、一日休めば二連休だ。
多少のイジメは我慢しようと、いつもよりは機嫌良く学校へと足を運んだ。
教室に着くと、佐藤と山城が「おはよう」と笑顔で近付いてきた。
「おはよう」
最近は表情が重かった二人も、久々に明るい笑顔を浮かべているのでホッとしながら自分の席に着く。まず異変に気付いた。
机の上に油性ペンで書かれた、悪口は消えていた。アルコール液じゃないと消えないと言われていたので、面倒だと思っていたが、勝手に消えてくれている事に喜んだ。
「これ、二人が消してくれたの?」
と、二人に問いかけると、首を横に振った。
「匠をいじめてた女子達。どういうわけか、急にイタズラ書きしたの消してさ。あと、これ……」
佐藤が匠に新品の体操着、上下とも渡してきた。
「これは?」
「あいつらから預かった。謝るのは嫌なんだって。でも、体操着破いたのは弁償するって」
「一体何事?」
「知らん。王子がやめるように言ったんだって」
「それだけ?」
「そうらしい」
匠が女子グループに目を向けると、リーダー格の女子と目が合った。だが、すぐにプイと顔を逸らしてしまった。
他二人も、匠に気付くとバツの悪そうな顔をしていた。
「謝りに来ないのは不満だけど、これ以上匠が被害受ける事はないってさ」
「それは良かっ……」
「おはよう、匠君」
安心したのも束の間。諸悪の根源が匠の横にやってきた。
「げっ……王子」
皇樹はニッと爽やかな笑顔を向けてくる。匠はゾワッと鳥肌が立った。
彼が笑っている時は、ロクなことがないのだ。
気を失って介抱したそうだが、匠の家族にレイプを知られない為に証拠を隠滅したのだと匠は考えている。
卑怯な男に怒りしか感じない。
「もう体調は良いの?」
「良いから登校したんだろ」
「冷たいな。気を失った君を、運ぶのがどれだけ大変だったか」
「……証拠隠滅ご苦労様。これでお前が僕にした事は水に流れたわけだ?」
「分かってるじゃねぇか……なーんて。なんの事?」
皇樹は一瞬だけ本性を見せて、すぐにいつもの良い子に戻った。
この表ヅラに騙される人ばかりなのだ。警戒心は解かないように睨み返した。
「はぁ、もう君の仕返しは終わったでしょ。そろそろ僕につきまとうのやめてよ」
「何言ってんの? 誰がイジメを止めたと思ってるんだ? また再開させる事も出来るんだぜ。
俺の言う事聞かないと、次は川中さんを標的にしてやろうか?」
「こんの、ゲス野郎」
「分かったなら、放課後、生徒会室来いよ」
皇樹はニヤリと嫌な笑みを浮かべて、自分の席に戻っていった。もう彼を遠くから眺める事など出来ず、出来るだけ視界に入れないようにしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる