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眠りん

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十二話 キスがしたい

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 一緒に街を歩き、メンズのアパレルショップや雑貨屋、カフェなどブラブラと過ごしていると、本当に恋人のように思えてきた皇樹は、事ある毎に匠にキスをしようとするが、毎回失敗している。

 二人きりでエレベーターに乗った時も、皇樹が匠に顔を近付けた瞬間、他の人が入ってきたり。

 「匠」と呼び、振り向いたところをキスしようとしたら、匠が身体ごと振り向いた為、鞄が皇樹の胴体にクリティカルヒットしたり。

 命令すれば匠は言う事を聞くだろうが、皇樹としてはもう少しロマンチックなキスがしたいのだ。
 だが、今まで相手の自由を奪い、無理矢理犯してきた皇樹にとって、自然にロマンチックなキスというのはハードルが高い。

 最終手段と、カラオケ店の個室に二人で入り、隣に座った匠の顎を掴んで上を向かせてキスをしようと思ったのだが……。

「イェーイ! 上げてくぜ!!」

 マイクを手にした途端、匠の人格が変わったようにテンションが上がり、立ったままアイドルのテンションの高い歌を歌い、皇樹が歌っている間も踊ったりタンバリンを鳴らしているのでキスをする間がなかった。

 試しにバラードを歌ってみるが、匠は座ってはいるもののバラード曲に合わせて大人しくタンバリンを振っていた。キスする隙はなかった。
 匠の新たな一面が見れた事は喜ばしい事ではあるが、目的は果たせていないので落ち込む。

 夜も近付いてきたので、解散する事となり、何も収穫がないまま終わったかに思えたが、匠が帰ろうとする直前に皇樹はある事を閃いたのだ。

「そ、そういえばさ! 匠って誕生日もうすぐだったよな?」

「はい。それがどうかしましたか?」

「今週の金曜日だよな?」

「はい」

「俺と……過ごさないか?」

 勇気を出して誘った。真面目な顔になっているし、断られたらと思うだけで悲しくなる程、匠を愛おしく感じている。

「すみません。誕生日は両親と出掛ける予定になっておりまして……」

 流石の皇樹でも、家族との約束を反故にさせてまで自分を優先させようとする事はしない。
 ショックで寝込みたくなるが、諦めずに別の日を提案。

「じゃあ、土曜は?」

「空いてますよ」

「日曜は?」

「日曜も空いてます」

「じゃあ、誕生日一緒にいられない分、土日の二日、お前の時間を俺にくれよ。泊まりでさ、ヤリまくろうぜ!」

「はい。勿論です。皇樹様のご命令とあらば、僕が出来る事はなんでも致しますから」

「……それもなくなるといいけど」

「……? それ……ですか? 言っていただけたら直します」

「まだいい。匠がやめようと思ったらやめてくれたらいい」

「やめるって何をですか?」

「なんでもない。今はいいよ」

 恋人になったらまず敬語をやめさせようと思っている。自分から敬語を使えと言った手前、やめろと言えなくなってしまったが、対等な関係になれたら匠からやめてくれるだろうと信じている。

「分かりました。僕に至らないところがあったらなんなりと仰って下さい。皇樹様」

「ああ」

 至らないところなど一つもありはしない、そう言いたい。恋人になってもらえたら、素直に自分の気持ちを全て話そう。そう心に決めた。

 金曜日は「誕生日おめでとう」と言って、普通の一日が終わったが、皇樹は一日中ソワソワして落ち着きがなかった。
 なにせ、明日は匠とお泊まりデートだ。どこに連れて行こうか、悩むところから始まり、どの服で出掛けようか、頭がいっぱいなのだ。

 放課後になり、帰ったら明日の準備をするつもりで早く帰ろうと思った矢先だった。

「ねぇ、藤倉君」

 と、呼び掛けられた。そこには真面目な顔をした川中がおり、皇樹は怪訝な顔をしつつも返事をする。

「なんだよ?」

「話があるの。来てもらえる?」

「いいけど」

 匠の方を見ると、席に座ったままの匠が、顔だけ振り向かせて皇樹を見ていた。
 顔が少し強ばっている。川中が皇樹を連れて行くのが不思議だとでも言うように。

 そんな匠に大丈夫だと笑顔を向けてから、川中の後をついていった。
 向かった先は、裏庭にある体育倉庫だ。体育の時に使う予備の道具がしまわれている。
 昼休みに体を動かしたい人は、この倉庫からボール等を使っているのだ。

「こんなところに何の……ぐあっ!!」

 頭に衝撃が走り、皇樹は倒れた。

「あ……た、たく……み」

 皇樹は愛する彼の名前を呟いて気を失ったのだった。
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