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第六章 真実
カミサマ面談最終回・後編~会いに来た彼女
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<カミサマ面談最終回・後編>
「……大丈夫ですか?さっきから驚きすぎて喋れていませんね?……でも、これからが大事なんで続けますね。
そう、悲劇的な人生が私のせいだということは『あなたが作り出した神は、私のおかげ』だということです。そうですよね?ここに論理的な破綻はないですよね?だってあなたはきっと、そのまま幸せに成長していたら、自分の神様なんて作り出さなかったでしょうから」
「…………うるさい」
「まぁ、聞いて下さい。あなたが10余年間、ずっとずっと信じ続けてきた宗教は、つまり、私あってのものだったのです。あなたの『神様』の上には、『カミサマ』がいるのです。あなたの信じる光り輝く絶対存在の上に君臨するのは、この私です」
「……違う……!」
「違いません。そして、私があなたの信仰心の強さについて知りたいことが、最後に一つだけあります。それは『幸せなあなたが自分の神様をどうするか』です。神様に頼る必要がない状態のあなたがどうなるかを、私は知らない。だから、私はあなたに幸せになってほしいんですよ。
……どうです?乗らない手はないでしょう?幸せになれるんですよ?利害の一致ってやつじゃないですか?」
「お前が何を言おうと……僕の考えは変わらない。少なくとも、お前のやっていることや頭の中は汚れきっている。そんなものを僕は愛さない」
「……ここまで言って駄目ですか?あなたの欲しいものを何でも用意すると言っているのに……。
まぁ、いいでしょう。せいぜい最後の3日間を楽しんでください。あなたが私の提案に乗らないなら乗らないでいいんです。あなたが死んでから次の手を考えますから。
でもね、気が変わったならいつでも言ってください。私は心が広いので、延期したいといえばいつだって受け入れます。もちろん、死刑が執行されるまでの話ですが。
……それでは3日後に会いましょう。ごきげんよう」
***
自室に戻った僕はベッドにうつ伏せで突っ伏していた。
僕の悲劇は、カミサマによって引き起こされたものだった。
……やつに目をつけられていなかったら、僕はごく普通の人生を歩んでいた?週末には父と母と外食でもして、中学生か高校生で初めての彼女ができて、初めての彼女とは大学進学前に別れて、大学生になって好きな人ができて……。悩み事を相談できる友達がいて、気の合う仲間がいて、気にかけてくれる教師がいる。……そんな人生?
そこに『神様』がいるところは、どうしても想像できない。きっと僕は、僕の人生を満喫していただろう。
たまに傷ついて、でもその後の楽しいことで傷ついたことなんて忘れて、それを繰り返す。神様がいなくても、僕は周りの力を借りて、僕の傷を癒やすことができる。
でも……でも、この人生には何かが足りないような気もする。一つ一つのイベントが、全体的に漠然としているような。これは、僕がそういう幸せな人生を生きてこなかったからそう思うのだろうか。
『なんとなく』誰かとわかりあって、『なんとなく』幸せを感じて、『なんとなく』人生ってこういうものだと思う。全てがなんとなく過ぎていくような、そんな感じ。
……ごく普通の幸せな人生の中にも、魂を震わせるような、このために人生を捧げたいと思うような、そういうものに出会えるのかな。死んでもいいから手に入れたいとか、自分の命よりも確実に大事だと思えるものとかに。
それにきっと、この人生に火置さんはいない。僕は彼女の存在を知らずに、一生を過ごす。意地っ張りで、勉強家で、感受性が豊かな魔法使いに会うことなく、僕は就職して結婚して子供でも授かって、そして死んでいくんだ。
僕が誰かと愛し合っている間に、彼女は世界を飛び回って、時空の歪みを直している。その合間で……彼女も他の誰かと愛し合っているかもしれない。
コンコン
終わりの見えない考え事を中断させたのはノックの音。僕は静かにドアを開ける。
「やっぱりあいさつがしたくなった」
久しぶりの火置さんの声に、僕の心臓は高鳴る。ああ、やっぱり僕は喜んでいるんだ。
「……嬉しいよ」
僕は素直に返事をする。
あの夜、彼女を部屋から追い出してからというもの、僕達は一言も口を聞いていなかった。たまにフロアで彼女を見かけた時、彼女は僕に話したそうな様子を見せていたけど僕の方から彼女を避けるようにしていた。
それから僕はあまり部屋から出なくなったから、彼女がどのように一日を過ごしているか知るすべもなかった。
「ね、ヤミ。……やっぱりまだ死にたい?」
以前と変わらない口調で、君は僕に話しかける。
どうして君は僕に拒絶されてもめげないんだ?昔からの友人さながらに、接してくれようとするんだろう。
「……火置さん。なんで諦めないの?」
「え?」
「もう、僕のこと諦めてもいいのに。……僕、そうやって仲良くしてくれればしてくれるほどつらくなるよ」
「これからも仲良くすればいいじゃない。死なないでよ」
「簡単に言うけどさ……」
あまりにも軽い火置さんの口調に、言い争う意思が削がれていく。元々僕は気持ちを隠すのが得意じゃないし、本当は全部話してしまいたい。死ぬことを迷い始めていることも、カミサマから言われたことも全部。
……でも、君のことを好きになったかもとだけは言えないかな。自分がよくわからないんだ。違うかもしれないから、まだ伝えたくない。
「……私は、あなたが気に入っている。あなたがおかしい人でも、ちょっとネジが外れちゃってても、それでも気に入っているの」
うーんと、ちょっとじゃなくてだいぶかな、と笑いながら火置さんは言う。……ほら、そうやって君は、どんどん僕を『死にたくなくならせる』。
「………はは」
「……本気よ」
「僕なんかを気に入らないほうがいい。悲劇に巻き込まれるよ」
「でも、一緒になんとかすれば悲劇にならないかも。だって私は強い。世界を救う魔法使いだよ?事故とか事件なら、魔法で解決できるよ」
……どこまで本気で言っているんだろう。全くの嘘ではないだろう、それはわかる。でも、一生一緒にいるわけじゃないだろ?
彼女がいなくなった後の僕はまた、一寸先が闇の悲劇的な人生を孤独の中で歩んでいくしかない。
……あまりにも残酷な提案だ。彼女はそれを分かって言っているんだろうか?
「……ヤミ。私はあなたの決断を尊重する。……あなたがそれでも死にたいというなら、私は止められない。でも、これだけは伝えたい。私はあなたに生きてほしいし、あなたがもういいよというまであなたを手伝いたい」
そう言いながら火置さんは、彼女が肌身離さず持っていた魔法書を僕に手渡した。
「……あなたのことを巻末に書いたの。ヤミ、前に言ってたでしょ?『僕のことをその魔法書に書いてほしい』って。ちゃんと書いた。だから、私のお願いも聞いてよね」
「…………ありがとう」
魔法書を開こうとした僕を、彼女が制する。
「あ、待って。恥ずかしいから私が帰ってからにして。静かに、こっそり読んでね。感想もなにも言わなくていいから!」
そういうと、彼女はそそくさと立ち去ろうとする。そして、扉の手前で、僕の目を見ながら静かな声で「……私、信じてるから」と言った。
僕は彼女が出ていくのを、部屋の中から見送った。足音が聞こえなくなって初めて、僕は魔法書の栞が挟まった箇所を開く。
そこには……彼女から僕への伝言が綴られていた。
「……大丈夫ですか?さっきから驚きすぎて喋れていませんね?……でも、これからが大事なんで続けますね。
そう、悲劇的な人生が私のせいだということは『あなたが作り出した神は、私のおかげ』だということです。そうですよね?ここに論理的な破綻はないですよね?だってあなたはきっと、そのまま幸せに成長していたら、自分の神様なんて作り出さなかったでしょうから」
「…………うるさい」
「まぁ、聞いて下さい。あなたが10余年間、ずっとずっと信じ続けてきた宗教は、つまり、私あってのものだったのです。あなたの『神様』の上には、『カミサマ』がいるのです。あなたの信じる光り輝く絶対存在の上に君臨するのは、この私です」
「……違う……!」
「違いません。そして、私があなたの信仰心の強さについて知りたいことが、最後に一つだけあります。それは『幸せなあなたが自分の神様をどうするか』です。神様に頼る必要がない状態のあなたがどうなるかを、私は知らない。だから、私はあなたに幸せになってほしいんですよ。
……どうです?乗らない手はないでしょう?幸せになれるんですよ?利害の一致ってやつじゃないですか?」
「お前が何を言おうと……僕の考えは変わらない。少なくとも、お前のやっていることや頭の中は汚れきっている。そんなものを僕は愛さない」
「……ここまで言って駄目ですか?あなたの欲しいものを何でも用意すると言っているのに……。
まぁ、いいでしょう。せいぜい最後の3日間を楽しんでください。あなたが私の提案に乗らないなら乗らないでいいんです。あなたが死んでから次の手を考えますから。
でもね、気が変わったならいつでも言ってください。私は心が広いので、延期したいといえばいつだって受け入れます。もちろん、死刑が執行されるまでの話ですが。
……それでは3日後に会いましょう。ごきげんよう」
***
自室に戻った僕はベッドにうつ伏せで突っ伏していた。
僕の悲劇は、カミサマによって引き起こされたものだった。
……やつに目をつけられていなかったら、僕はごく普通の人生を歩んでいた?週末には父と母と外食でもして、中学生か高校生で初めての彼女ができて、初めての彼女とは大学進学前に別れて、大学生になって好きな人ができて……。悩み事を相談できる友達がいて、気の合う仲間がいて、気にかけてくれる教師がいる。……そんな人生?
そこに『神様』がいるところは、どうしても想像できない。きっと僕は、僕の人生を満喫していただろう。
たまに傷ついて、でもその後の楽しいことで傷ついたことなんて忘れて、それを繰り返す。神様がいなくても、僕は周りの力を借りて、僕の傷を癒やすことができる。
でも……でも、この人生には何かが足りないような気もする。一つ一つのイベントが、全体的に漠然としているような。これは、僕がそういう幸せな人生を生きてこなかったからそう思うのだろうか。
『なんとなく』誰かとわかりあって、『なんとなく』幸せを感じて、『なんとなく』人生ってこういうものだと思う。全てがなんとなく過ぎていくような、そんな感じ。
……ごく普通の幸せな人生の中にも、魂を震わせるような、このために人生を捧げたいと思うような、そういうものに出会えるのかな。死んでもいいから手に入れたいとか、自分の命よりも確実に大事だと思えるものとかに。
それにきっと、この人生に火置さんはいない。僕は彼女の存在を知らずに、一生を過ごす。意地っ張りで、勉強家で、感受性が豊かな魔法使いに会うことなく、僕は就職して結婚して子供でも授かって、そして死んでいくんだ。
僕が誰かと愛し合っている間に、彼女は世界を飛び回って、時空の歪みを直している。その合間で……彼女も他の誰かと愛し合っているかもしれない。
コンコン
終わりの見えない考え事を中断させたのはノックの音。僕は静かにドアを開ける。
「やっぱりあいさつがしたくなった」
久しぶりの火置さんの声に、僕の心臓は高鳴る。ああ、やっぱり僕は喜んでいるんだ。
「……嬉しいよ」
僕は素直に返事をする。
あの夜、彼女を部屋から追い出してからというもの、僕達は一言も口を聞いていなかった。たまにフロアで彼女を見かけた時、彼女は僕に話したそうな様子を見せていたけど僕の方から彼女を避けるようにしていた。
それから僕はあまり部屋から出なくなったから、彼女がどのように一日を過ごしているか知るすべもなかった。
「ね、ヤミ。……やっぱりまだ死にたい?」
以前と変わらない口調で、君は僕に話しかける。
どうして君は僕に拒絶されてもめげないんだ?昔からの友人さながらに、接してくれようとするんだろう。
「……火置さん。なんで諦めないの?」
「え?」
「もう、僕のこと諦めてもいいのに。……僕、そうやって仲良くしてくれればしてくれるほどつらくなるよ」
「これからも仲良くすればいいじゃない。死なないでよ」
「簡単に言うけどさ……」
あまりにも軽い火置さんの口調に、言い争う意思が削がれていく。元々僕は気持ちを隠すのが得意じゃないし、本当は全部話してしまいたい。死ぬことを迷い始めていることも、カミサマから言われたことも全部。
……でも、君のことを好きになったかもとだけは言えないかな。自分がよくわからないんだ。違うかもしれないから、まだ伝えたくない。
「……私は、あなたが気に入っている。あなたがおかしい人でも、ちょっとネジが外れちゃってても、それでも気に入っているの」
うーんと、ちょっとじゃなくてだいぶかな、と笑いながら火置さんは言う。……ほら、そうやって君は、どんどん僕を『死にたくなくならせる』。
「………はは」
「……本気よ」
「僕なんかを気に入らないほうがいい。悲劇に巻き込まれるよ」
「でも、一緒になんとかすれば悲劇にならないかも。だって私は強い。世界を救う魔法使いだよ?事故とか事件なら、魔法で解決できるよ」
……どこまで本気で言っているんだろう。全くの嘘ではないだろう、それはわかる。でも、一生一緒にいるわけじゃないだろ?
彼女がいなくなった後の僕はまた、一寸先が闇の悲劇的な人生を孤独の中で歩んでいくしかない。
……あまりにも残酷な提案だ。彼女はそれを分かって言っているんだろうか?
「……ヤミ。私はあなたの決断を尊重する。……あなたがそれでも死にたいというなら、私は止められない。でも、これだけは伝えたい。私はあなたに生きてほしいし、あなたがもういいよというまであなたを手伝いたい」
そう言いながら火置さんは、彼女が肌身離さず持っていた魔法書を僕に手渡した。
「……あなたのことを巻末に書いたの。ヤミ、前に言ってたでしょ?『僕のことをその魔法書に書いてほしい』って。ちゃんと書いた。だから、私のお願いも聞いてよね」
「…………ありがとう」
魔法書を開こうとした僕を、彼女が制する。
「あ、待って。恥ずかしいから私が帰ってからにして。静かに、こっそり読んでね。感想もなにも言わなくていいから!」
そういうと、彼女はそそくさと立ち去ろうとする。そして、扉の手前で、僕の目を見ながら静かな声で「……私、信じてるから」と言った。
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