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社交パーティー
しおりを挟むついに社交パーティーがやってきた。俺の水球はというと、相変わらず俺の横に浮いている。
いや、もう水球と呼ぶのは違うかもしれない。
そう。俺は消すことを諦めて薄く広げて服の中に隠すことにしたのだ。
もしパーティーの最中に突然弾けたら......とか考えてしまうが、しょうがないと割り切ることにした。
「アラン、そろそろ行く時間よ。」
「はい。母上。」
俺は馬車に乗って会場へ向かった。
「おぇぇぇぇえ」
「アラン大丈夫?」
俺は忘れていた。馬車に乗るのは初めてだということを。俺は忘れていた。会場まで片道4時間かかることを。
「だ、大丈夫です。」
最悪だ。気持ち悪い。
「あと半分よ。頑張って!」
は、あと半分もあるのか。終わった。
ああ神様。俺をもう一度生まれ変わらせてくださるのなら、絶対に酔わない体にしてくださいぃぃぃい。
「おぇぇぇぇ。」
「神に祈るような顔して。大丈夫?」
ああ、気持ち悪くて......死にそう。
「ほら、着いたわよ」
ようやく着いたか。食べたもの全部でちまったぜ。
「うっぷ」
「大丈夫?もうすぐ夕飯食べるんだから早く元気になんなさいよ。」
なんだと。これから夕飯だと。
お腹がすいているどころか食欲皆無だし、吐き気が酷すぎけ絶対食べれないんだけど。
「ほら、会場に行くわよ。」
会場に入るとドレスで着飾った貴婦人たちと、それに連れられた子供たちがいた。
するとお母さんがその中の一際目立つ子を指さして小さな声で
「あの子がポール公爵の娘さんのステラ様よ。」
控えめに言ってとても可愛いな。
「あとで挨拶にいってらっしゃい。名前を言ってお願いしますって言うだけでいいわ。」
「はい。母上。」
そうだ。ここは貴族社会だ。そして俺はその中で立場の弱い男爵家。
こういう挨拶が大事なんだな。
「それではお子様方はこちらへお集まりください。」
司会っぽい人からのアナウンスが入った。
「それじゃ、行ってらっしゃい。」
「はい。」
よし、行くか。これで俺も貴族デビューだ。
俺が呼ばれた所へ行くと、きらびやかな格好をした子供が10人ほど集まっていた。
良かったー。ちゃんとおしゃれしてきて。
あ、そうだ挨拶しなきゃ。
えっと、あの子は......ってみんなあの子の周りに集まってるじゃないか。
でも行くしかないか。
「あのー。」
あ、みんな一瞬こっちみてすぐにステラさんの方に視線を戻した。
肝心のステラさんはというと俺の方を見すらしなかった。
なんだよ!男爵風情に構ってる暇はないとでもいうのか。
でも腹を立てたからと言って、何かが変わる訳でもない。
粘り強く話しかけ続ける。
「あのー。」
あ、ようやくステラさんこっちみてくれた。
あれ、やべぇ。家名わかんねえ。そういえば一度も耳にしたことがない。
どうしよ。お母さんに聞きに行くか。嫌でもそれは恥ずかしすぎる。
「おい、お前。ティヌール男爵家のやつだな。」
あ、俺ティヌールって家名だったのか。誰か知らんけどナイス!
「俺はヘルマン子爵家のクルトだ。男爵家ごときがなにステラ様に話しかけてるんだ!どっか行け。」
うわっ。めんどくさいのに絡まれたな。どうしよ。
「挨拶だけしたいんですけど......」
「話しかけるな。ステラ様に迷惑だ。」
あ、こいつめんどくさいタイプだ。
どうしよう。
まて、まず状況を整理しよう。
まず、俺はステラさんに挨拶がしたい。
あいつは何かしらの理由から俺に挨拶をさせたくない。
なぜさせたくないか。
あ、わかった。あいつステラさんのことが好きなのか。
それで自分以外の男を寄せ付けまいとしてるわけか。
じゃあそんなクルトを追い払うにはどうすればいいのか。
そう、クルトがステラさんに嫌われるようにすればいい。
しゃーねぇ。これは禁じ手だと思ってたが練習の成果だ。
まず服の中にしまってある水球をほんのちょっとちぎる。
そしてそれを床を伝って見られないように移動させ、相手の股間に到達したら...
「うわ!」
こうなるわけだ。
「どうしました?」
近くにいた貴族のひとりが言う。
「なぁ、あいつ漏らしてね?」
周りの視線がクルトの股間に向かう。当然ステラさんも。
「お、覚えてろよ。」
おお、顔が真っ赤にして逃げてった。ちょっと離れたら水を回収してっと。
これで完璧。
これで挨拶ができる。
「お初にお目にかかります。ステラ様。ティヌール男爵家のアランです。お見知り置きを。」
「ポール公爵家のステラです。こちらこそよろしく。」
ふぅ。終わった。
挨拶ってこんな大変だったっけ。
こうして俺の初の社交パーティーは幕を閉じた。
ーーーーーーーーー
帰り道
俺「おぇぇぇぇ」
母「大丈夫?あと3時間よ。頑張って。」
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