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魔石の使い道
しおりを挟む俺は一旦家に帰ることにした。このまま王都にいるとライルとレストに徹夜で実験に付き合わされるはめになるからな。それは何としても避けなければならない。
「アラン。もう帰るのか?」
「はい。少し疲れが溜まってきたので。」
「そうか。健康が1番だよな。また王都に来たら声をかけてくれ。あ、水球の新しい性質を見つけたら教えてくれよな。」
「あ、はい。」
「あ、そうそう。そこにある本好きなだけ借りていっていいぞ。」
「え!あ、ありがとうございます。」
なんと!お金を一円も使わずに目標を達成出来てしまった......
俺は面白そうな本を十冊ほど選び、馬車に積んだ。
「それでは、さようなら。」
「ああ。また今度な。」
「いい報告待ってるよ。」
ライルとレストが手を振って見送ってくれている。
報告ってもしかして実験の報告のことか?
なんで俺が家でも実験をすること前提になってるんだよ。
まぁ、でも実際一つだけ試したいことがあるからな。
俺の予想通りの結果になれば......
「あっ。」
「おぇぇぇぇ。」
そうだ。馬車は酔うんだった。
大人しく寝ていよう。うん。
こうして、俺の濃密で楽しい、王都への買い物は終わった。
おかしいな。三日しか経ってないのに一ヶ月分くらいの密度があったんだけど......まぁいっか。
ーーーーーーーー
「おい。俺は今から自分の部屋で実験をするから入ってくるなよ。」
メイドに俺はそう言って、誰にも実験を見られないようにする。
はっきりいって、俺が今からすることを他人が見たら、明らかに頭がおかしい奴だからだ。
「えーと。」
先ずは、石臼で貰った魔石を砕いて砕いて砕いて砕いて、粉にする。
「よし。」
どこに王様に貰ったばっかりの超お高い魔石を粉々にする馬鹿がいるんだろうね。
あ、ここか。
そんな茶番は置いておいて、別に俺の頭がおかしくなった訳では無い。
これはある仮説に基づいた行動なのだ。
え、とそしてこの神秘的な粉を......俺の水球に溶かす。
お、溶けてく溶けてく。
あとは結果だけだが......
「お!」
突然水球が光出した。
「これは何かが起きているに違いない!」
水球の中を見ると、謎の黄色い光が回転している。
そしてその光はどんどん増え、黄色以外も、赤、青、紫の光も混じっている。
そして......なかなか回転はおさまらない。
「うん。長いな。」
果たしてどれくらいの時間がたっただろうか。
水球が今までとは比べ物にならない程の明るさで輝き、光は消えた。
え、もしかして失敗?
『おい。小僧。』
「ん?」
水球の中を見ると、1人の可愛い女の人がいた。18歳くらいか?プラモデルみたいだ。
......ということは。
「実験成功だ!」
『おい。人の話を聞け。』
なんかもしかしてテレパシーみたいなので話しかけられてる?
「なんですか?」
『お前が私の復元に成功したのか。』
「復元?復元かどうかは分かりませんけど、もしかしたらそうかもしれません。」
『ここはどこだ?見たところ透明な丸い物体のようだが。』
「ああ、僕の魔法の中ですよ。」
『おお!ついにやったのか。20歳で病に倒れ、それでもまだまだ魔法の研究がしたくて死ぬ間際に自分の全てを魔石にし、きっと将来は復元の技術も発達してるんだろうと思い自分も復元して貰えことを期待していたが....今は私が死んでから何年くらいがたった?』
「多分700年くらいって王様が言ってましたよ。」
『なに!700年もたったのか!それは......どんな新しい魔法が生まれているのか楽しみだ!』
あぁ。可愛いプラモデルが動いてるのを見るのってこんなに癒されるんだな。
『おい、何か失礼なことを考えていないか?』
「いや、1ミリたりともそんなことは考えていません。」
『そうか。ならいい。ところでだ。どんな魔法を使って私を復元しているのだ?さっきからそれが気になって仕方がないんだ。』
いや、そんなキラキラした目で見られても。
「ただの魔法で作った水の塊ですよ。」
『なに!こんなに小さいのはとても複雑な魔法だからじゃないのか。』
「あ、はい。ただ僕の魔力が少ないだけです。申し訳ありません。」
『じゃ、じゃあどうやって呼び出したのだ。』
「あなたの魔石を砕いて粉にして水球の中に溶かしました。」
『な!私のことを砕いたのか!』
「いや、あなたの事を砕いたって言うか......はいそうです。すみません。」
『そんな簡単なことで私を復元できたのか。ところでこの魔法はすぐに消えてしまうということはないよな?』
「あ、はい。そこだけは安心してください。この水球。2年ものなんで。っていうかむしろ消せないんですよ。魔力が少なすぎて。」
『消えないならいいだろう。それじゃあ......早速私にこの世界の魔法がどのくらい発展しているのか教えてくれ!』
いやそう言われてもな。俺なんも知らんよ?
ライルとレストが居ればきっと説明してくれたんだろうが......
あ、丁度いいのがあった。
「あの、僕はまだ若造なのでそんなに魔法のことはよく分からないんですが、この国の第一人者(多分)から借りてきた本が10冊ほどあるので見てみますか?」
『わかった。ところでもう一つだけお願いがあるのだが......この水球の操作権を私にくれないか?』
え?
『い、今だけでいいんだ。渡してもお前が返して欲しいと思えばすぐに帰ってくるから。な?』
「どうやるんですか?」
『おお。やってくれるか。心の中で操作権を私に渡すと思うだけだ。よし。できたな。』
そういうと、急に水球の形が変わり始め......膨らみ始めた。
そして......人の形になった。
「いやー、久しぶりの体だな。あ、意識がなかったからそんな久しぶりでもないか。」
え、なんででかくなったん?
しかも色ついてんの?なんかインク混ぜた?
「あの、どうして大きくなったんですか?」
「ん?中を空洞にしただけだ。別に大したことじゃないだろう。」
中を空洞にしただけだと?
そんな発想があるとは......
「ところで、まだ名を名乗っていなかったな。私はネミルだ。700年前は大魔道士と呼ばれていたぞ。よろしくな。」
ちょっと待って。ツッコミどころが多すぎてどこから突っ込めばいいのか分からない。
まず、なんで色づいてんの?
しかも大魔道士って何?超大物じゃん。通りで宝物庫にあるわけだ。
しかも見た目なんて完全に人間なんだけど。
マジで何が起きてんの?
「どうしたそんな顔をして。お前の名はなんだ。」
「アラン・ティヌールです。」
「そうか。私のことは気軽にネミルと呼んでいいぞ。あと敬語はもどかしいから敬語は使うなよ。」
もう癖で敬語使っちゃうんだよなー。
「敬語はやめろよ?」
はい。圧がすごいので敬語はやめます。
「分かったよ。ネミル。これでいい?」
「ああ。なんと言っても、私の宿り主だからな。」
宿り主ってなんだよ。お前は寄生虫かよ。あ、でも確かに俺の水球に寄生してるか。
「何やら失礼なことを考えていそうだが、許そう。ところで、本はどこだ?早く読みたくて仕方がないんだが。」
「そこの本棚に入ってるよ。」
「そうか。じゃあこれから読むから話しかけるなよ。」
「うん。」
そういうと、ネミルは黙々と本を読み始めた。
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