リドル・ストーリーズ!~riddle stories~

魔法組

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第21話 眠り病(Sleeping Beauty)

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 朝。いつものように学校に行って、昇降口で上履うわばきに履き替えるため自分の靴入れを開けると、中には果物の皮や魚の骨など、大量の生ごみが詰まっていた。

(……またか)

 あたしははあとため息をこぼし、再び靴入れのフタを閉めた。多分こうなるだろうと思っていたので、スペアの上履きはカバンの中にしまってある。その上履きを取り出し、代わりに履いていたスニーカーを鞄の中にしまってから、あたしはゆっくりと校舎の中に入っていく。

 気が重い。これまでのパターンから推測するに、教室に入ったあたしは自分の机に油性マジックで『死ね』だの『ブス』だのといった悪口が大きく書かれていたり、接着剤でゴキブリの死体が貼り付けられていたりといった素晴らしいデコレーションがほどこされているのを確認することとなるのはもはや確実であろうからだ。

 まったく!

 さげすむようなニヤニヤわらいを浮かべながらあたしの顔を見やってくるクラスメートたちの顔を思い浮かべると、げんなりとした思いを抱かずにはいられない。

 連中はあたしに嫌な思いをさせるというそれだけのために、毎日あたしが登校するよりも早く学校に来て、これら嫌がらせの種をせっせと仕込んでいるらしい。ヒマと言うかマメと言うか……。どうせならその時間と労力をもう少し有意義なことに使えばいいのにと心底思う。

 あたしがクラスメートからこれらの嫌がらせを受けるようになったのは、夏休みがあけて少し経ってからのことだっただろうか。

 原因は、よく分からない。

 仲間内のSNSで返事を出すのが面倒になって、ついつい既読きどく無視が多くなってしまったせいか。それともクラスのリーダー格である女子に宿題を写させてほしいと頼まれた時に断ったためか。はたまた林間学校に行った際に仲良しグループでおそろいで買ったストラップをうっかりなくしてしまったからか……。

 あるいはそれら全部が重なってのことか、それとも他に自分では気づかないうちにやらかしてしまったことがあるのか。

 いまになっては知るよしもないことだ。確かなのはある日突然、それまであまり交流のなかった女子はもちろん、仲のよかった友人たちまでもが一斉いっせいにあたしを無視するようになり。さらには教科書や体操着をハサミで切り刻まれたり、牛乳をたっぷり含んだ雑巾ぞうきんを後ろからぶつけられたりといった、イタズラと呼ぶにはほんの少し悪意のこもり過ぎた感のある仕打ちを受けるようにまでなったということである。

 さらにはそれを見た男子たちも面白がって便乗びんじょうして、あたしに嫌がらせをするようになったし。事なかれ主義の先生たちは見て見ぬふり。あたし自身も学力や体力は人並み以下のくせにプライドだけは高いから、自分から誰かに助けを求めることも出来ず。結局現在進行形でこの状況は続いているという次第だ。

 それでも学校を休むことは出来ない。一度休んでしまえばそのままずるずると不登校が続いてしまうであろうことは目に見えていたから。そうなれば高校進学どころか、中学卒業も危ぶまれる。

 なに、もう少しだけの辛抱しんぼうだ。

 放っておけばそのうちみんなあたしへのいやがらせに飽きて、元通り普通に接してくるようになるかもしれないし。そうでなくても進級してクラス替えになれば、こんなことは自然消滅するだろう。

 自分自身にそう言い聞かせながら、あたしは重い心と足を引きずるようにして階段を上がり、四階にある自分の教室へと歩いていった。

 あたしが教室の扉を開けると、それまでにぎわっていたクラスが一瞬しんと静まり返ったけれど、すぐになにごともなかったかのように再びざわめきが広がっていく。

「おはよう」

 教室の中に、以前仲のよかった友人たちの顔を見つけると、あたしは一応そのように挨拶の声をあげる。もちろん誰一人として返事をしてくれなかった。分かっていたことだけど、結構辛い。内心の思いを顔に出さないよう、あたしは出来るだけ表情を殺して自分の席にと向かう。

「……あれ?」

 さぞかし机はひどいことになっているだろうなと予想して窓際一番後ろの自分の席へと足を向けたあたしだったけれど、そこであたしが目にしたのはそんな予想をはるかに超える光景だった。

 いや『目にした』という表現は正確ではない。正しくは『目にしなかった』あるいは『目に出来なかった』と言うべきか。

 というのも、そこには……あるべき場所に、あたしの机が存在していなかったのである。

 思わず周囲を見回すと、クラスメートたちは誰も彼も馬鹿にしきったような表情を浮かべ、口唇くちびるゆがめてくすくす嗤って見せていた。

 どうやら連中はあたしの机や椅子にいたずらするだけでは飽き足らず、机や椅子そのものをどこかに隠してしまったらしい。

 さらに。あたしの机があった場所には『みかん』と書かれた段ボール箱が一つぽつねん、と置かれている。

 つまりこのダンボール箱を机の代わりに使用しろということか。これにはさすがにあたしもかあっと頭に血が昇るのを抑えることが出来なかった。

「……誰がやったの!? あたしの机はどこ!?」

 あたしは思わず感情的になって声を荒げてしまったけれど。当然のようにその声に応える者は誰もいない。

 仕方がない。まさか本当に段ボール箱を机の代わりにすることなど出来っこないし。予備の机は一階の用具室においてあるから、それを取ってくるしかないだろう。

 出来ればカバンは教室に置いておきたいところだったけれど、そんなことをしたらまたどんないたずらをされるか分かったものではない。なのであたしはカバンを持ったまま、ゆっくりと教室を出ていく。

 とは言え、のんびりしてはいられない。何故なら予鈴よれいが鳴るまではあと五分足らず。それまでに一階に降りて用具室に向かい、重いカバンと机と椅子を持って四階の教室まで戻らなくてはならないのだ。

 じわりと目尻に涙が浮かびそうになるのを必死にこらえながら、あたしは少し早足になって教室を出た。

「本当。ムカつくよねえ、あの娘。クラス全員に嫌われてるのは分かってるんだから、もう学校に来なければいいのにさ。空気読めって言うんだよ。バーカ」

「いっそ眠り病にでもかかって、ババアになるまで病院で眠り続けていればいいのにねえ」

「そりゃいいや。あはは」

 そんなあたしの背中に向けて、聞こえよがしの嘲笑ちょうしょうと悪意のこもった言葉が投げつけられてくる。それらの声全てに聞こえないふりをして、あたしは教室の扉をゆっくりと閉めていく。



 先程クラスメートの一人が言った眠り病とは、近年急激に増加してきたという病気のことである。

 原因不明治療法不明といった奇病であり、これにかかると身体にはなんの異常もない……少なくとも医学的には健康そのものであるとしか判断されないのに、最低でも一年以上昏睡こんすい状態が続いて、その間なにをしても全く目が覚めなくなってしまうらしい。

 若い人……特に思春期である十代の少年少女に罹患りかんすることが多く。そのため肉体的と言うより精神的な病気であると主張する医学者も多いようだけど。どちらにせよどうやって治療すればいいのかまるで分からないので、この病気にかかったら点滴で栄養を補給しながら、ただひたすら自然に目覚めるまで待ち続けるしかないのだ。

 親御さんたちにとっては、悪夢のような話だろう。息子や娘がいつ目覚めるか……いや、本当に目覚めるかどうかも分からないのに、なにもせずなにも出来ず、ただ目覚めてくれるよう祈るしかないのだから。精神的にはもちろん、金銭的にも相当負担がかかるだろうことは想像に難くない。

 ちなみにこの病気の患者の脳波を調べてみたところ、ほぼ例外なく深い眠りであるノンレム睡眠状態だったらしい。つまり夢などは見ておらず、ぐっすり眠っているということか。

 寝ている本人たちは全く夢を見ることなく、起きている家族たちのほうが悪夢を見ているというのは、皮肉な話だとしか言いようがない。

 そういうわけで……つまり、近年急激に罹患者が増えてきたため話題性が高いということと、患者の多くが十代の少年少女であることなどから小中学生の間に『お前なんか眠り病になっちまえ』という悪口が自然発生的に生まれてまたたく間に広がっていったのだった。

 最大級の悪意がこもった侮辱ぶじょく的表現として。



「ただいま」

 針のむしろに座らされ続けていたかのような授業時間がようやく終わって、公営団地の三階にある自宅のドアを開けると、あたしはようやくほっと安堵の息をつくことが出来た。

 地獄のごとき一日は終わったのだ。もっとも明日になればまた新たな地獄が待っているのだけれど、いまだけはそんな辛い現実は忘れたっていいだろう。

「お帰り」

「お帰り、お姉ちゃん!」

 キッチンからは今日の夕食であろう焼き魚の香ばしい匂いと共にお父さんの優しい声があたしを出迎えてくれて、リビングのほうからは小学校低学年の妹がパタパタと嬉しそうな足音を立てながら駆けて来て、嬉しそうな笑顔を浮かべながらあたしの胸に飛びこんで来る。

「こーら。そんなにくっついてたら、お姉ちゃん靴が脱げないでしょ? はーなーれーて」

「えへへー。やーだもん!」

 あたしはゲンコツを振り上げるふりをして怒ったように言ったけれど、妹は離れるどころかますますきつくあたしにしがみついてくる。

 我が家にはお母さんがいない。妹が物心つくかつかないかのころ、突如神隠しにでもあったかのように姿を消してしまったからだ。もちろん警察にも捜索願いを出し、探偵までやとって必死に探したけれど、いまもってその消息は……生きているのか死んでいるのかさえも、定かではない。

 そのせいか妹は姉であるあたしにお母さんの代わりを求めているらしく、しょっちゅうこうして甘えてくるのである。

「……あ、そう。どうしても離れてくれないんだったら靴が脱げなくてお姉ちゃんおうちに入れないから、どっか他の所に行くしかないかなあ」

 あたしがそう言ってわざとらしくきびすを返し家を出て行こうとする素振りを見せると、妹は『やだー!』と叫んで慌てて身体を離した。こういうところが可愛いんだよねえと、あたしは口唇がふっとゆるむのを感じる。

「お帰り。今日は少し遅かったね」

 そうこうしているうちに、エプロン姿で手にお玉を持ったお父さんも玄関口まで出てきて、おっとりとした口ぶりで声をかけてくる。

「うん。ちょっと委員会の仕事が長引いちゃってね」

 あたしはニッコリほほえみながら嘘をつく。本当は、体育の授業で使ったバレーボールや白線引きラインカーなどの片付けを全て押し付けられた上、それらをようやく終えて着替えるために教室に戻ったら制服を隠されるという嫌がらせを受けたため、それらを探して取り戻すのに少し時間がかかったせいだ。

 ちなみに、制服があったのは男子トイレの個室の中だった。何故そこに隠されているのが分かったかと言うと、クラスメートの女子(まず間違いなく、制服を隠した犯人のうちの一人だろうけど)がそこにあるよと教えてくれたからである。

 もちろん、親切心からではない。男子が誰も中にいないタイミングを狙ってこそこそ男子トイレの中に入るあたしの様子をこっそり撮影して『男子トイレに侵入する痴女』みたいなあおりをつけた上で動画投稿サイトにでも送りつけるつもりだろう。

 いや。さすがにそれだと問題になりかねないから、先生抜きのクラスSNSの共有動画にアップして、男子トイレに入るあたしの姿を学校中にさらすことで笑いものにするのが目的か。

 どちらにせよげんなりする話だけれど、だからと言って制服を取り返さないわけにもいかない。

 まあ、以前などは制服を便器の中に放り込まれたこともあるわけだし。それに比べればいくらかマシだと思ってあきらめるしかない……と自分をなぐさめた上で覚悟して男子トイレに入ったら、今度も制服は上下まとめてちょこんと便器の中に収まっていましたという笑い話にもならないオチが待っていたのだけれど。

 だけどそんなこと、お父さんには言えない。

 以前、お父さんは結構大きめの企業に勤める管理職だったのだけれど。お母さんが蒸発してからはあたしや妹の面倒を見るため在宅勤務テレワークが出来る会社に転職して、家事全般をこなしながら仕事をしている。

 転職した会社は小さいため給料も少ない。そのくせ仕事の量だけは増えたため、お父さんは寝る間も惜しんで一生懸命働いているのだ。

 近所の人や親戚からは『奥さんに逃げられた男』などと陰口を叩かれ、精神的にもかなり辛い思いをしているだろうに。あたしや妹の前ではそんなことはおくびにも出さず、いつもニコニコ微笑んでいる。

 そんなお父さんの心労をこれ以上増やすことなんて、出来るわけがない。

 なので、

「それで。最近学校はどうだ? 楽しいか?」

 と尋ねてくるお父さんにあたしは、

「うん。とっても楽しいよ」

 と、満面の笑みと共に応えるのだった。



 そこはミルク色の霧がうっすらと辺りをおおい、前も後ろも……それどころか上も下もはっきりしない曖昧模糊あいまいもことした空間の中。気がつくとあたしは立っているでもなく寝そべっているでもなく、あたかも無重力空間を漂う宇宙飛行士のごとく、ふわふわ浮かんでいたのである。

 そんな状況にあるにも関わらず、あたしはとても心地よい幸福な気分だった。ここは寒くも暑くもなく、飢えもかわきも感じることはなく、まるで肉体という狭いおりから解き放たれたかのような、爽快そうかい感と満足感でいっぱいだったのだ。

 これは、夢なのだろうか? 一瞬そのように思ったあたしだけれど、次の瞬間には何故だかそうではないと確信していた。

 夢などではない。これはあたしの魂だけがなんらかのきっかけで肉体を離れて、この世とは違う別次元の空間へと迷い出てしまったのである。まるでではなく、あたしの魂は本当に肉体から離れていったのだと。

 死んだ、という意味ではない。あたしの身体は身体としていまも元の世界の自分の部屋のベッドで横になっているはずだ。恐らくはたから見ればぐっすり眠っているようにしか思えないだろう。

 何故確信出来る? そんなふうに自問したあたしだけれど、その答えはすぐに返って来た。教えてもらったからだ。

 誰に?

 再びそう自問する前に、答えはフラッシュのようにあたしの頭の中に広がった。

 そうだ、思い出した! ここ数日ほどあたしは眠りに落ちる度に魂だけが肉体を離れてこの不思議な世界を訪れていたのだ。だが朝になると魂は肉体へと戻り、同時にこの世界を訪れていたことはすっかり忘れて普通に日常生活を送り。次の夜にまたこの世界へ……ということを繰り返しし続けていたのだった。

 そしてこの世界であたしは毎夜ある人と会って、話をしていたのである。そのある人とは、

「……お母さん!」

 あたしが声をあげると、いつの間に現れたのだろうか。そこには数年前にいなくなってしまったお母さんが当時のままの姿で、当時のままの穏やかな笑みを浮かべながらたたずんでいたのだった。

 あたしは思わず、お母さんに抱きついていった。そんなあたしの身体を、お母さんは甘えん坊ねえと言わんばかりの苦笑を浮かべながらも受け止めて、両手でぎゅっと強く抱きしめてくれる。

 そうだ。お母さんは数年前にふとしたことが原因でこの不思議な世界に迷い込んで帰れなくなってしまったのだ。だけどあたしたちのことを忘れたことは一瞬たりともなく、何度も何度もあたしや妹やお父さんにまた会いたいと強く願い想い続けていたという。

 その甲斐かいあってか、はたまたただの偶然か。何日か前からあたしは夜になって眠るごとに魂だけがこの世界にやって来ることが出来るようになり、お母さんと再会して話したり触れ合ったり出来るようになっていたのだ。

「……お母さん。あたし、もう帰りたくないよ」

 お母さんの胸に顔をうずめながら、あたしはぽつりと呟いた。

 目を覚ましても、この世界でお母さんと会って話したことはまたすぐ忘れてしまう。そうして学校ではまたクラスメートたちに総出で嫌がらせをされ続けているのに、家に帰ったらお父さんや妹に心配をかけないよう明るく振る舞わなければならない。

 我慢出来ると思っていた。そうしなければならないと思っていた。だけどこうして魂だけの存在になってしまうと嫌でも分かってしまう。あたしはもう限界だ。このままだと遠からず心か身体のどちらかが完膚かんぷなきまで徹底的に壊れてしまうだろうと。

 それなら魂だけになってもいいから、この世界でずっとお母さんと一緒に過ごしていたい。

 そのように思い声に出そうとした瞬間。どこか遠くのほうでベルに似た音が鳴り響くのが聴こえてきた。あれは、目覚まし時計の音だ。どうやら現実ではもう朝になっているらしい。

 お母さんはあたしの身体を離すと、行きなさいと言うように彼方に向けて指を差し示した。だけどあたしは小さな子供のように顔を激しく横に振り、イヤイヤの仕草をして見せる。

 もうお母さんのことを忘れたくない。もう現実世界になんか戻りたくないと言うように。

 お母さんは困ったような表情を浮かべながら、そんなあたしの頭を優しくでながら言葉をつむぐ。

 聞きなさい。いまはまだ、あなたの魂はかろうじて肉体とつながっているわ。だから現実世界であなたの身体が耳にした目覚ましの音が、魂にまで届いているの。

 だけどあなたがこれ以上長くこの世界にとどまり続けると、そのつながりも切れてしまう。つまりあなたは二度と本当に現実に戻ることが出来なくなって、身体が死を迎えるその日まで永久に目覚めることはなくなるのよ。それでもいいの? と。

 その言葉を聞いてさすがにあたしもハッと我に返る。

 そうか。世間で言われている眠り病の正体はこれだったのか。魂が肉体を離れ、どこにあるとも知れない別の世界へ迷い込み、帰ってこられなくなる現象。

 だけど、構わない。あんな過酷かこくな現実世界なんかこっちから願い下げだ。それよりこのままずっとお母さんと一緒に過ごしていたい!

 そのように思ったあたしだけれど、同時にお父さんと妹の姿がパッと脳裏のうりに思い浮かんだ。

 あたしが眠り病になったら、お父さんはさらに苦しい思いをすることになるだろう。お母さんに続いてあたしまでいなくなったら、妹はどんなに悲しみ絶望するだろう。

 それを思うと、さすがに目を覚まさなければいけないという気になってくる。なに。目が覚めたら忘れてしまうとは言え、夜になって眠ればまたお母さんと会って話すことが出来るのだ。それなら現実に戻ったって……。

 いや、ダメだ。いまはこうして眠る度にこの世界を訪れることが出来ているけれど、考えてみればそれがいつまでも続くと言う保証などどこにもないのである。何日か何週間か後には……いや、最悪今日を限りに二度とこの世界に来ることは出来なくなってしまうかもしれない。

 一体あたしはどうすればいいのだろうか。この世界にとどまり続けるべきか。それとも現実に帰るべきか。

 自分では答えを出すことが出来ず、あたしは助けを求めてお母さんの顔をじっと見つめた。だけどそんなあたしの顔を、お母さんは強いまなざしで見返してくる。私はなにも言うことは出来ない。これからどうするのか、どうしたいのかは、あなたが自分で決めなさいと言うように。

 そうこうしている間に、耳に届く目覚ましのベルの音は次第に小さくなっていく。多分、この音が聞こえなくなったら、あたしはもう二度と現実に戻ることが出来ないのだろう。残された時間はもう少ないけれど、あたしはいまだどうするか決めかね、悩み続けていた。





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