王女様と幼馴染の騎士の仲を取り持とうとしたのですが、私はどうやら愛されていたようです。

野地マルテ@2月27日『帝国後宮録』発売

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※ 許せない!

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「リリアンヌ様が魔族と入れ替わってる……⁉︎」

 いっしょに後始末をしながら、アシュトスはこくりと頷く。兄の服を着る彼は、窮屈そうに首元を気にしている。一見似たような体格に見えても、騎士と魔導師では体つきがぜんぜん違うらしい。


「何それ……! そんなのぜんぜん気がつかなかった」
「エイサは魔族と対峙したことがないんだろ? ……分からなくても仕方がない。それに殿下に化けているやつはダンピールとサキュバスのハーフだ。相当魔族に詳しい人間じゃないとあの独特な匂いの正体には気がつかないはずだ」

 体液で汚れたシーツを魔道具の洗濯設備に押し込む。
 それにしても初めて聞く話ばかりで頭がまったくついていかない。

 中のプロペラが回りはじめ、洗濯設備はごうんごうんと機械音を出し始めた。洗濯室は屋敷の中でももっとも防音がしっかりしている。秘密の話をするのにぴったりだ。

 私は令嬢だけど、洗濯の仕方はきっちり教わっていた。……平民になる予定だったから。


「魔族に捕まった本物のリリアンヌ様はどうしているのかな……」
「無事だといいがな」

 ふうとアシュトスはため息を漏らす。どうみても浮かない顔だ。不本意ながら私と一線を超えてしまったからか? それとも。

「とりあえず、俺とロイドで何とかする」
「何とかって、……失敗したらどうするの?」
「失敗はしない」

 閨でリリアンヌに化けてる魔族の正体を暴き、リリアンヌの姿に戻れないように男根を切り落とす。

 そう上手くはいかないんじゃないかと私は不安になった。
 それに兄は直前で逃げ出しそうだ。兄は今、身重の義姉のことで頭がいっぱいなのだ。家族思いなところは美点だと思うが、荒ごとに巻き込むには不安がある。
 いっそ自分が動いたほうが上手くいくかもしれない。

「私も協力するよ」
「エイサが?」
「私はリリアンヌ様のお気に入りだもの」

  私は懐から魔道具の輪っかリングを取り出した。アシュトスにつけたものとはまた違うタイプのものだ。金色のそれには、トゲの多い種類の蔓薔薇模様が刻まれていた。

「それは?」
「アシュトスにつけたリングの強力版だよ。今のリリアンヌ様は両性具有の魔族なんでしょ? 私がこれをリリアンヌ様の股間に着ける」

 アシュトスに着けた銀のリングは大人のおもちゃと言っても準・医療用で、身体に害のないものだが、この金のリングは違う。
 装着者のみに全身がびりびりする電撃をおみまいするのだ。正真正銘、スキモノ専用の大人のおもちゃだ。

 兄に貰った時はこんなものいつ使うんだろうと思ったが。アシュトスへのお仕置き用だろうが……ピンとこない。こんなの使ったら嫌われると思うんだけど。

 ちなみに兄は重度のスキモノだ。確実に父の遺伝だと思う。


「エイサが殿下の閨へ行くと言うのか?」
「うん!」
「お前たちはそういう関係だったのか……?」
「ぜんぜんそんなことないけど、『アシュトスと結婚する前にお情けをください、殿下……!』って、リリアンヌ様が本命ですと言わんばかりの言葉を言えば、抱いてくれそうではあるよ?」
「……そ、想像したくもないな」

 口を覆い、顔を赤くしている。意外と百合も寝取られも嫌いじゃなさそうだ。あ、でも、今のリリアンヌは両性具有者なので少し趣は違うかもしれない。

「最後まではしないよ。アシュトスが助けてくれるんでしょう?」
「……そうだな。エイサを巻き込みたくはないが、しかし……これしか方法がないのかもしれないな。あの殿下はさして俺に興味はない」
「興味がない?」
「部屋に呼ばれたが、業物屋で新しい武器をみるような、そんな目だった」

 ──どんな目だろう?

 なかなかピンと来ないが、リリアンヌにとってアシュトスがそんなに思い入れのあるひとではないことは分かった。
 そんなひとに大事なアシュトスを盗られたくない。

「武器?道具? ……失礼しちゃう。もうすぐ結婚式だったのに邪魔されて、私はすごく怒ってるの!」
「エイサ……」
「本物のリリアンヌ様も救い出さなきゃだし、偽物はぎったんぎったんにしなきゃ気がすまない!」

 ──乙女の涙の代償は重いってことを思い知らせてやる!

 ここ数日間、私がどれだけ泣き、眠れない夜を過ごしたか。本当に、本当に辛かった。アシュトスのために身を引いたと頭では分かっていても心がまったくついていかなかった。

「ああ! うまくやろう」
「アシュトス!」

 アシュトスがいれば私は無敵だ。今まで打ち沈んでいた気分が吹っ飛ぶ。
 ダンピールだかサキュバスだか何だか知らないけど、私がぶっ飛ばしてやる!




 ◆





「すっごい。あっさり上手くいったね……」

 即落ち。二コマとはよく言ったものである。

 数日後。リリアンヌにお茶に誘われ、その席で私は言ったのだ。『抱いてくれ』的なことを。そしたらリリアンヌは頰を赤らめてコクンと頷いた。元々その気があったのかと言われゾッとしたが、すぐ側で私たちの影に変身していたアシュトスと兄がいたから何とか逃げ出さずにすんだ。

 それからは閨へ移動して。
 あれやこれや前戯的なことをされた。
 リリアンヌはとっても上手だった。サキュバスの手練手管と比べたらいけないと思いつつも、思わず比べてしまった。

 ──誰とは、何とは、言わないけど。

 緩やかに高められる快感に溺れかけたが、ごくりと生唾を飲み込むような音が聞こえて我に返った。

 ──楽しむなー‼︎

 兄はそういうのに造詣が深いことは分かっていたし、アシュトスも正直嫌いじゃないだろうなぁと思っていた。分かっていたけど、人の影に隠れて興奮されるのはとっても不愉快だった。二人とも何を考えているのだろう。呼吸を荒げないで欲しかった。

 リリアンヌの股間についていた凶器は、何というか、すごく……立派だった。『粗末なものでごめんなさい』と明後日の方向から謝られたが、こんなもので貫かれたら死ぬと思った。あきらかに膣に納まり切らない大きさだった。ある意味でも男の夢がつまったような女性だったんだなと妙に納得した。

 金の輪っかリングが取り着けられるかすごく心配になったけど、魔道具は基本、フリーサイズだ。亀頭に押し当てたらするすると根元まで入っていった。『エイサはちゃんとしてるのね』とリリアンヌに褒められたけど、嬉しくない。

 と、ここまではリリアンヌはリリアンヌの姿をしていた。ふわっふわの真っ白な胸を押し付けられながら、秘部の外側をぶっといアレでごりごり擦られるのは、言葉に言い尽くせないほど気持ちが良かった。不快感よりも、快感のほうが遥かに上回っていたのは、サキュバスの力だろうか?

 私にとってリリアンヌは大事な大事な婚約者を奪った憎き女である。それでも触られて快感を覚えたのだ。……魔族、おそるべし。

 しかしいざ挿入というところで、リリアンヌに化けていた魔族は正体を現した。

『ひっっっ‼︎』

 ダンピールとサキュバスのハーフ。何となく美形の魔族を想像していたんだけど、違った。
 その醜悪な容貌に震えが止まらなかった。尖った大きな鼻はゴブリンに似ているが、その顔はドス黒く崩れていた。首や腕は枯木のように皺々で痩せ細っているのに、肩や腕には岩のような固そうな筋肉がついている。小さなツノと細長くて黒い尻尾をもつその魔族は、紫色の煙を口からもうもうと吐き出していた。

 私の尻たぶを持ち上げているその手は氷のように冷たいのに、潤んだ秘裂に押し付けられた亀頭の先はひどく熱い。魔族は下から私を貫こうと、ずずっと腰を浮かせてきた。こんなものを挿れられたくない、正気に戻った私は狂ったように叫んだ。

『いっ、いやぁっ、いやああぁ‼︎』

 ふくらんだ先がほんの少しだけぐちゅりと埋まったところで、私の足元が崩れた。ちゃきんという、金属同士が擦れるような音もした。

 ──何っ⁉︎

 視界が暗転し、目が回る。魔族の手からごろごろ転げ落ちた私は、くらくらする頭を押さえて、先ほどまでいた枕元を見た。

 そこにはナイフがぐさりと突き刺さった男根を抱え、のたうち回る魔族がいた。小刻みに震えているのは、金のリングの力だろうか? よく見ると、青白く細い電流が、魔族の体の至るところでバチバチと放電していた。

『エイサ、平気か⁉︎』
『やっこさん、存外正体を現すのが遅かったなあ』

 やれやれと兄のロイドは心なしかすっきりした顔をしている。スキモノの兄はぜったい楽しんでいただろう。妹と王女の百合ものを視姦していたかと思うと殴りたくなる。

 魔族にナイフを突き刺したのはアシュトスだった。さすがに冷静で的確な仕事ぶりだった。着ていた外套を脱ぐと、彼はまっ裸になっていた私に着せてくれた。あまり私の身体を見ないようにしていたのが気になる。

『俺は今から団長たちを呼ぶ。お前らはずらかった方がいいぞ? 特にエイサ、そんな格好を他の連中に見られるのはヤバい』
『兄様が手柄を横取りするんですか?』
『エイサ、気持ちは分かるが、俺たちがリリアンヌに化けていた魔族の討伐に関わったと王家の方々に知られるのはまずい。魔導師団が間者の調査をしていた最中に、魔族をたまたま見つけたと、そう思われるのが一番平和的に収まるんだ』

 アシュトスの真剣な表情に、私は肯くしかなかった。彼がそう言うのならそうなのだろう。

『お前、昔からアシュトスの言うことしか聞かないよな……』

 そう語りながら、兄はやれやれと転移魔法を唱え出した。
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