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※そんなの聞いてない!
しおりを挟む「えっ⁉︎ リュボフ様と決闘?」
「そっ、君との結婚を賭けてね」
両掌と膝をシーツの上についた状態で、マイヤは後方をちらりと見る。レジナンドはというと、マイヤの尻たぶを舐めていた。ぬめぬめとした熱いものが、肌を張っている。唾液で濡れた肌にふっと息を吹きかけられると、ぞわりと粟立った。
今日も今日とて、二人は宿で会っていた。
すでに会う回数は今夜で十回目だ。
「そんなの……。私、聞いてないわ」
「リュボフさんと会ったの?」
「ええ……。まだ一応婚約者だもの」
マイヤはまだリュボフの婚約者である。彼女は特務部隊に依頼を掛けていることをリュボフに内緒にしている。
レジナンドの形の良い眉がぴくりと動く。
「エッチなこと、した? リュボフさんと」
「それは、まぁ……ええ……まだ、婚約者だから」
いくら『お飾り』の婚約者とはいえ、リュボフから性的な行為を求められれば断れない。
とは言え、リュボフとの床はいかにも義理で応じているといったもので、挿入行為は一回で終わった上、射精すらせず中折れしてしまったが。
「ふ~~ん」
「なによ、怒ってるの?」
「気持ちよかった? リュボフさんに抱かれて」
「気持ち良いわけないじゃない」
レジナンドは何故か不機嫌だ。
今、二人がこっそり宿で会っているのは、マイヤが自分の身体で依頼料を払うためだ。彼女からしてみれば、レジナンドとの将来は約束していない。婚約者と会っているからと言って不機嫌になられる筋合いはまったくないのだ。
それよりも、意味が分からないのは『決闘』だ。
「それより、リュボフ様と結婚を賭けて決闘なんて。なんのつもりよ」
「決まってるだろ? 俺はマイヤさんと結婚したい」
「嫌よ。何回も言っているでしょう?」
人の弱みにつけこんで、性的な関係を迫ってくる男と結婚だなんて冗談じゃない。自分の他にも関係を迫った女がいそうだし、結婚しても平然と浮気をしそうだ。
マイヤは背後にいるレジナンドを睨む。
「嫌? いつも嬉しそうに俺のを咥えこんでるくせに」
口を尖らせたレジナンドが背に覆い被さってきた。肉のあわいに肉棒の切先をぐっと突きつけられる。丸い切先は何の抵抗もなく、紅い隘路へ呑み込まれていく。
「ぁぁっ……」
濡れた膣壁をずぶずぶと割り開く陰茎は硬い。柔らかな膣肉を擦られるだけで堪らなくなる。やはり、リュボフのものとはまったく違う。
「あっあっ、あっ」
マイヤは瞼を閉じて自ら腰を前後に動かした。ごりごりとした陰茎の感触が気持ち良い。短い嬌声をあげながら、彼女は自身の良いところに亀頭が当たるように腰を振った。
「マイヤさんって好きモノだよね」
「私はあなたに払ってもらう分だけ、働いているだけよ」
つい先日、リュボフに中途半端に抱かれたマイヤは、欲求不満を感じていた。今夜はその分、しっかり発散したい。
どうせレジナンドに抱かれなければならないのなら、せめて気持ちよくなりたいと思うのは人間の性だ。
最低な考えだとは分かっている。しかし、そうとでも思わないとやっていられないのだ。
レジナンドもマイヤの行動に何か感じるものがあったのか、さらに彼女の身体に覆い被さると、自身を膣の奥深くまで一気に突き立てた。
「あぁぁっ!」
子宮の入り口を強く抉られたマイヤは叫ぶ。びくびくと身体を震わせ、腕を突いていられなくなった彼女はシーツの上に顔を埋める。必然的に尻を高くあげる体勢になってしまった。
「マイヤさんの中、すっげーひくひくしてる。ねえ、マイヤさん、俺と結婚したら毎日気持ちよくしてあげるよ?」
「い、今だって、しょっちゅうシてるじゃない……! あっ、あっ、そこっ……!」
身体の相性だけで言えば、最高なのかもしれない。
マイヤは色々な男と寝てきたが、ここまで気持ち良くなれたのはレジナンドが初めてだった。太すぎず、長すぎない陰茎。勃起した時の硬さが長続きするところも良い。精液の味も嫌いではない。
最奥を貫かれ続けたマイヤは、きゅうっと子宮口を締め付ける。
「はぁっ……あっ、あぁ」
頭の中が真っ白になりそうなほどの深い絶頂。勝手に下腹に力が入り、レジナンドの雄をこれでもかと締め上げた。
「マイヤさん、最高だよ……。ねぇ、絶対に結婚しよ?」
なんとかマイヤの締め付けに絶えたレジナンドは彼女の中から硬くなったままの陰茎を引き抜くと、彼女をぐちゃぐちゃになったシーツの上に横たえた。
「んんっ、いや……」
「マイヤさん……」
「あなたの男根は気持ち良いけれど、あなたには興味無いわ」
そう言いながら、マイヤは虚な瞳で股を開く。桃色に色づいた肉のあわいからは蜜が滴る紅い穴が覗いている。
「はやく中に出して」
「本当につれないよねえ、マイヤさん」
レジナンドは眉尻を下げながらも、今度は真正面からマイヤに覆い被さる。愛液と先走りに濡れた肉色の陰茎を膣に突き立てた。
「あっああっ!」
マイヤは悦びを滲ませた声を上げて、レジナンドの逞しい肩に縋りつくと、脚も彼の引き締まった腰に絡ませる。
レジナンドのことは好きではない。彼とするこの行為は嫌いではないが。
後ろから貫かれている時と刺激される場所が変わる。陰核に響くぐらい腹側の膣壁を強く擦られると、マイヤはまた快楽の高みへと昇った。
◆
翌日の夕方、仕事帰りのマイヤは使用人寮へ向かって歩いていた。
(結局、昨日はろくな話が出来なかったわね……)
レジナンドと会うといつもそうだ。彼はいつも依頼の進捗報告はそこそこに、抱こうとする。
彼はリュボフと決闘し、勝って婚約破棄させると言っていたが、同時に自分と結婚して欲しいようなことも言っている。
これでは結婚相手がリュボフからレジナンドへ変わるだけではないか。
マイヤは頭を抱える。どうしてもこうも自分は駄目な男との縁が出来てしまうのか。
王城敷地内。軍病院前を通り掛かった時だった。考えごとをしながら歩いていたマイヤは、見覚えのありすぎる人物を目撃してしまう。
「レジナンド?」
軍病院の出入り口から、灰色の騎士服姿のレジナンドがちょうど出てくるところだった。
こちらに気がついていないのか、どこか神妙な面持ちで歩いている彼に声をかける。
レジナンドはハッとした様子で目を見開くと、猫のように一歩後ろに飛び退いた。
「うおっ、マイヤさん⁉︎」
「どうしたの? 怪我でもしたの?」
「ははっ、ただの見舞いだよ。親父がさ、この軍病院へ入院してるんだ」
いつものレジナンドならば『マイヤさん、心配してくれてんの? な~に? 俺に惚れた?』とか何とか茶化すようなことを言う彼が、力なく笑って否定した。
何か嫌なものを感じたマイヤは、咄嗟にレジナンドの腕を引いた。
「そこにカフェがあるから、ちょっと話しましょう?」
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