【R18・完結】お飾りの妻なんて冗談じゃありません! 〜婚約破棄するためなら手段を選びません〜

野地マルテ

文字の大きさ
8 / 13

※そんなの聞いてない!

しおりを挟む



「えっ⁉︎ リュボフ様と決闘?」
「そっ、君との結婚を賭けてね」

 両てのひらと膝をシーツの上についた状態で、マイヤは後方をちらりと見る。レジナンドはというと、マイヤの尻たぶを舐めていた。ぬめぬめとした熱いものが、肌を張っている。唾液で濡れた肌にふっと息を吹きかけられると、ぞわりと粟立った。

 今日も今日とて、二人は宿で会っていた。
 すでに会う回数は今夜で十回目だ。

「そんなの……。私、聞いてないわ」
「リュボフさんと会ったの?」
「ええ……。まだ一応婚約者だもの」

 マイヤはまだリュボフの婚約者である。彼女は特務部隊に依頼を掛けていることをリュボフに内緒にしている。

 レジナンドの形の良い眉がぴくりと動く。

「エッチなこと、した? リュボフさんと」
「それは、まぁ……ええ……まだ、婚約者だから」

 いくら『お飾り』の婚約者とはいえ、リュボフから性的な行為を求められれば断れない。
 とは言え、リュボフとの床はいかにも義理で応じているといったもので、挿入行為は一回で終わった上、射精すらせず中折れしてしまったが。
 
「ふ~~ん」
「なによ、怒ってるの?」
「気持ちよかった? リュボフさんに抱かれて」
「気持ち良いわけないじゃない」

 レジナンドは何故か不機嫌だ。
 今、二人がこっそり宿で会っているのは、マイヤが自分の身体で依頼料を払うためだ。彼女からしてみれば、レジナンドとの将来は約束していない。婚約者と会っているからと言って不機嫌になられる筋合いはまったくないのだ。
 それよりも、意味が分からないのは『決闘』だ。

「それより、リュボフ様と結婚を賭けて決闘なんて。なんのつもりよ」
「決まってるだろ? 俺はマイヤさんと結婚したい」
「嫌よ。何回も言っているでしょう?」

 人の弱みにつけこんで、性的な関係を迫ってくる男と結婚だなんて冗談じゃない。自分の他にも関係を迫った女がいそうだし、結婚しても平然と浮気をしそうだ。
 マイヤは背後にいるレジナンドを睨む。

「嫌? いつも嬉しそうに俺のを咥えこんでるくせに」

 口を尖らせたレジナンドが背に覆い被さってきた。肉のあわいに肉棒の切先をぐっと突きつけられる。丸い切先は何の抵抗もなく、紅い隘路へ呑み込まれていく。
 
「ぁぁっ……」

 濡れた膣壁をずぶずぶと割り開く陰茎は硬い。柔らかな膣肉を擦られるだけで堪らなくなる。やはり、リュボフのものとはまったく違う。

「あっあっ、あっ」

 マイヤは瞼を閉じて自ら腰を前後に動かした。ごりごりとした陰茎の感触が気持ち良い。短い嬌声をあげながら、彼女は自身の良いところに亀頭が当たるように腰を振った。

「マイヤさんって好きモノだよね」
「私はあなたに払ってもらう分だけ、働いているだけよ」

 つい先日、リュボフに中途半端に抱かれたマイヤは、欲求不満を感じていた。今夜はその分、しっかり発散したい。
 どうせレジナンドに抱かれなければならないのなら、せめて気持ちよくなりたいと思うのは人間の性だ。
 最低な考えだとは分かっている。しかし、そうとでも思わないとやっていられないのだ。

 レジナンドもマイヤの行動に何か感じるものがあったのか、さらに彼女の身体に覆い被さると、自身を膣の奥深くまで一気に突き立てた。

「あぁぁっ!」

 子宮の入り口を強く抉られたマイヤは叫ぶ。びくびくと身体を震わせ、腕を突いていられなくなった彼女はシーツの上に顔を埋める。必然的に尻を高くあげる体勢になってしまった。

「マイヤさんの中、すっげーひくひくしてる。ねえ、マイヤさん、俺と結婚したら毎日気持ちよくしてあげるよ?」
「い、今だって、しょっちゅうシてるじゃない……! あっ、あっ、そこっ……!」

 身体の相性だけで言えば、最高なのかもしれない。
 マイヤは色々な男と寝てきたが、ここまで気持ち良くなれたのはレジナンドが初めてだった。太すぎず、長すぎない陰茎。勃起した時の硬さが長続きするところも良い。精液の味も嫌いではない。
 最奥を貫かれ続けたマイヤは、きゅうっと子宮口を締め付ける。

「はぁっ……あっ、あぁ」

 頭の中が真っ白になりそうなほどの深い絶頂。勝手に下腹に力が入り、レジナンドの雄をこれでもかと締め上げた。

「マイヤさん、最高だよ……。ねぇ、絶対に結婚しよ?」

 なんとかマイヤの締め付けに絶えたレジナンドは彼女の中から硬くなったままの陰茎を引き抜くと、彼女をぐちゃぐちゃになったシーツの上に横たえた。

「んんっ、いや……」
「マイヤさん……」
「あなたの男根は気持ち良いけれど、あなたには興味無いわ」

 そう言いながら、マイヤは虚な瞳で股を開く。桃色に色づいた肉のあわいからは蜜が滴る紅い穴が覗いている。

「はやく中に出して」
「本当につれないよねえ、マイヤさん」

 レジナンドは眉尻を下げながらも、今度は真正面からマイヤに覆い被さる。愛液と先走りに濡れた肉色の陰茎を膣に突き立てた。

「あっああっ!」

 マイヤは悦びを滲ませた声を上げて、レジナンドの逞しい肩に縋りつくと、脚も彼の引き締まった腰に絡ませる。
 レジナンドのことは好きではない。彼とするこの行為は嫌いではないが。
 後ろから貫かれている時と刺激される場所が変わる。陰核に響くぐらい腹側の膣壁を強く擦られると、マイヤはまた快楽の高みへと昇った。


 ◆


 翌日の夕方、仕事帰りのマイヤは使用人寮へ向かって歩いていた。

 (結局、昨日はろくな話が出来なかったわね……)

 レジナンドと会うといつもそうだ。彼はいつも依頼の進捗報告はそこそこに、抱こうとする。
 彼はリュボフと決闘し、勝って婚約破棄させると言っていたが、同時に自分と結婚して欲しいようなことも言っている。
 これでは結婚相手がリュボフからレジナンドへ変わるだけではないか。
 
 マイヤは頭を抱える。どうしてもこうも自分は駄目な男との縁が出来てしまうのか。

 王城敷地内。軍病院前を通り掛かった時だった。考えごとをしながら歩いていたマイヤは、見覚えのありすぎる人物を目撃してしまう。

「レジナンド?」

 軍病院の出入り口から、灰色の騎士服姿のレジナンドがちょうど出てくるところだった。
 こちらに気がついていないのか、どこか神妙な面持ちで歩いている彼に声をかける。
 レジナンドはハッとした様子で目を見開くと、猫のように一歩後ろに飛び退いた。

「うおっ、マイヤさん⁉︎」
「どうしたの? 怪我でもしたの?」
「ははっ、ただの見舞いだよ。親父がさ、この軍病院へ入院してるんだ」

 いつものレジナンドならば『マイヤさん、心配してくれてんの? な~に? 俺に惚れた?』とか何とか茶化すようなことを言う彼が、力なく笑って否定した。
 何か嫌なものを感じたマイヤは、咄嗟にレジナンドの腕を引いた。

「そこにカフェがあるから、ちょっと話しましょう?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

処理中です...