13 / 25
第13話 新たなる枠組み
しおりを挟む
夜明け前の海は、静かな青の息遣いを重ねていた。アビス・パレスの謁見室で、マリナは手にした羊皮紙を見つめている。昨日の交渉で提示された条項の数々が、複雑な文字の迷路を作り出していた。
「こんなに早くから読書とは、感心ですね」
振り返ると、リヴァイアが熱いハーブティーを運んでくる。湯気が朝の光に踊りながら、彼の青い髪に金色の帯を織り込んでいく。
「ありがとう。でも、これは読書というより...現実逃避かも」
マリナは苦笑いを浮かべながらカップを受け取った。ハーブの香りが鼻腔を満たし、少しだけ心が軽くなる。
「昨日の交渉内容に、不安を感じているのですか?」
リヴァイアは彼女の隣に腰を下ろした。間近で見る彼の瞳には、深い海の色が宿っている。マリナは思わず見とれそうになり、慌てて視線を羊皮紙に戻した。
「不安というか...この技術が本当に良い方向に向かうのか、わからなくて」
羊皮紙に記された「国際監視機関設置計画」の文字が、朝日を受けて浮かび上がる。昨日エリアス卿が提示した内容は、想像以上に大規模なものだった。
~~~
午前の陽光が海面を無数の宝石に変える頃、アビス・パレスの大会議室には各国の代表が集まっていた。昨日の基本合意を受けて、今日は具体的な監視機関の設立について話し合われる予定だった。
「では、本日の議題に入らせていただきます」
エリアス卿が立ち上がると、室内の空気が引き締まった。彼の後ろには、昨日は姿を見せなかった人物がいる。軍服に身を包んだ中年の男性で、胸に光る徽章が高い地位を物語っていた。
「こちらは、我が国の技術評価部長であるバートン准将です。今回の件について、より専門的な見地からご意見をいただくためにお越しいただきました」
バートン准将は無表情のまま一礼する。その冷たい視線がマリナに向けられた時、彼女は背筋に氷のような感覚を覚えた。
「技術評価部...」
リヴァイアが小さく呟く。竜人族の間では、人間の軍事技術開発部門について、あまり良い印象を持たれていないことをマリナは知っていた。
「准将、昨日の交渉内容はすでにご報告済みですが、改めて現場をご覧いただきたく」
エリアス卿の提案に、バートン准将は無言で頷いた。しかし、その表情に変化はない。まるで、すべてを値踏みするような冷淡な視線だった。
「魔素採掘技術の革新的成果については、確かに興味深いものがあります」
准将の声は、計算された抑揚で響く。
「しかし、この技術の軍事的応用可能性についても、我々は検討せねばなりません。特に、魔素濃度500%という数値は、従来の魔法兵器の概念を根本から覆すものです」
会議室の空気が急に重くなった。ダゴン長老とエルダー・コラリアが視線を交わす。彼らの表情には、明確な警戒が浮かんでいた。
「准将、我々の技術は平和利用を前提としています」
マリナが立ち上がる。彼女の声には、静かな強さが込められていた。
「もちろん、そう承知しております。しかし、技術というものは、開発者の意図に関わらず様々な用途に転用される可能性があります。我々としては、そうした懸念を事前に検討し、適切な管理体制を構築したいのです」
バートン准将の発言は理路整然としていたが、その底に流れる意図をマリナは敏感に感じ取った。これは、技術の独占的管理を目指す布石ではないだろうか。
「准将のご懸念は理解できます」
意外なことに、最初に口を開いたのはリヴァイアだった。
「しかし、この技術は竜人族の海洋魔法と人間の工学技術の融合により生まれたものです。どちらか一方だけでは、決して実現できない成果でした」
彼の言葉には、穏やかながらも毅然とした響きがある。
「つまり、技術の管理についても、両種族の協力なくしては成立しないということです。軍事転用を防ぐ最も確実な方法は、技術の根幹部分を分離し、それぞれが別々に管理することです」
リヴァイアの提案に、会議室がざわめいた。これは、技術の分散管理という、新しい概念だった。
「興味深いご提案ですね」
バートン准将の目に、初めて関心の光が宿る。
「具体的には、どのような分離を想定されているのでしょうか?」
~~~
午後の議論は、予想以上に建設的な方向に進んだ。リヴァイアの提案を基に、技術の分散管理システムが具体的に検討されていく。
「人間側は工学的な装置設計と製造を担当し、竜人族側は海洋魔法の調律と制御を担当する。どちらか一方だけでは、システムは機能しない」
マリナが図表を使いながら説明する。昼食の間に急いで作成した資料だったが、基本的な概念は明確に示されていた。
「さらに、第三者機関による定期的な監査を実施し、技術の平和利用を確保します。この第三者機関には、各国の代表だけでなく、独立した技術者や学者も参加していただきます」
エリアス卿が補足する。昨日の交渉以降、彼は明らかにこの技術の平和利用に向けて積極的な姿勢を見せていた。
「では、この国際監視機関の設置場所はどこを想定されているのでしょうか?」
新たな質問者は、今朝到着したばかりの南方諸島連合の代表だった。褐色の肌に深い緑の瞳を持つ女性で、海洋貿易に従事する商人らしい実践的な雰囲気を漂わせている。
「それは、重要な論点ですね」
ダゴン長老が考え込むような表情を浮かべる。
「技術の性質上、海洋環境に近い場所が理想的です。しかし、どの国の領海内に設置するかは、政治的に微妙な問題となります」
「では、中立的な海域に設置するというのはいかがでしょうか?」
リヴァイアの提案に、全員が注目した。
「アルケイオス大陸の南東海域には、どの国の領海にも属さない公海があります。そこに、人工的な研究島を建設し、監視機関の本部とするのです」
この発想には、誰もが驚いた。人工島の建設は、技術的には可能でも、費用と労力が膨大になる。
「人工島の建設費用は、参加各国の分担とし、維持費用は技術利用による収益の一部で賄う」
マリナが続ける。彼女の頭の中では、すでに具体的な運用計画が組み立てられていた。
「収益の分配は、技術提供者である竜人族と人間、監視機関の運営費、そして海洋環境保護基金に均等に分割します」
「海洋環境保護基金?」
南方諸島連合の代表が関心を示す。
「この技術は、海洋環境を改善する効果があります。それを活用して、世界中の海洋保護活動を支援するのです。技術の恩恵を、全世界が享受できるようにします」
マリナの説明に、会議室の雰囲気が変わった。これまでの議論は、主に技術の管理と制限に焦点が当てられていたが、この提案は積極的な活用と貢献を前面に打ち出していた。
「素晴らしい構想ですね」
エリアス卿が感嘆の声を上げる。
「技術の軍事転用を防ぎながら、同時に世界的な環境改善に貢献する。これほど建設的な提案は、なかなかありません」
しかし、バートン准将の表情は依然として慎重だった。
「構想としては理想的ですが、実現可能性はいかがでしょうか?特に、各国の利害調整は容易ではないと思われます」
「それについては、段階的な実施を提案します」
リヴァイアが立ち上がる。
「まず第一段階として、現在のアビス・パレス周辺海域での実証実験を継続し、その成果を各国に開示します。第二段階で、希望する国での小規模な技術導入を開始し、第三段階で国際監視機関を正式に設立します」
彼の提案は、現実的でありながら理想を失わない、絶妙なバランスを保っていた。
「各段階で、参加国は技術の平和利用について改めて確認し、合意を更新します。万が一、軍事転用の兆候が見られた場合は、即座に技術提供を停止します」
マリナが補足する。
「つまり、信頼関係を段階的に構築しながら、技術の普及と管理を両立させるということですね」
南方諸島連合の代表が理解を示す。
「ええ。そして、この信頼関係の基盤となるのが、透明性の高い国際監視機関です」
~~~
夕刻の海は、黄金の絨毯を敷き詰めたように輝いていた。一日の長い議論を終えて、マリナとリヴァイアはアビス・パレスの庭園を歩いている。
「今日は、本当にありがとう」
マリナが振り返ると、リヴァイアの顔に夕日が柔らかな影を落としていた。
「人工島の提案も、段階的実施の案も、あなたがいなければ思いつかなかった」
「いえ、あれはマリナさんの構想があったからこそです」
リヴァイアは穏やかに微笑む。
「環境保護基金の発想は、技術者である彼女ならではのものでした。私は、それを実現するための方法を考えただけです」
二人の間に、心地よい沈黙が流れる。海面を渡る風が、マリナの髪を優しく撫でていく。
「でも、まだ課題は山積みね」
マリナがため息をつく。
「バートン准将の反応を見ていると、軍部は簡単には諦めないと思う。それに、他国からの技術獲得圧力も、これから強くなるでしょう」
「確かに、容易な道のりではありませんね」
リヴァイアが海を見つめる。夕日が海面に映り、無数の金の鱗のように煌めいていた。
「しかし、今日の議論で確信したことがあります」
「確信?」
「この技術は、確実に世界を変える力を持っているということです。そして、その変化を良い方向に導くためには、私たち一人一人の選択が重要だということです」
彼の言葉に、マリナは胸の奥で何かが暖かく広がるのを感じた。
「私たち、ね」
ふと口にした言葉に、自分でも驚く。いつの間にか、彼女にとってリヴァイアは、共に未来を築いていく存在になっていた。
「ええ、私たちです」
リヴァイアが振り返ると、その瞳に夕日の輝きが宿っている。
「マリナさん、あなたと出会えて、本当に良かった。技術者としてだけでなく、一人の人間として、あなたを心から尊敬しています」
マリナの心臓が、急に早鐘を打ち始めた。彼の言葉には、単なる敬意を超えた何かが込められているように感じられる。
「私も...あなたと出会えて良かった」
声が少し震えているのを、マリナは自分でも意識した。
「最初は、立場の違いばかりが気になっていたけれど、今は...あなたと一緒にいると、何でも乗り越えられる気がする」
リヴァイアの瞳が、一瞬大きく見開かれた。そして、ゆっくりと穏やかな笑顔が浮かぶ。
「それは、私も同じ気持ちです」
彼の声は、夕風に溶けるように優しかった。
「この技術が世界に広がっていく過程で、きっと様々な困難に直面するでしょう。しかし、あなたがそばにいてくれるなら、私は何も恐れません」
二人の間の距離が、自然に縮まっていく。夕日に染まった海が、静かに彼らを見守っていた。
~~~
夜が更けて、アビス・パレスの執務室では、明日の会議に向けた準備が続いていた。マリナは机に向かい、国際監視機関の組織構造を詳細に検討している。
「技術部門、環境部門、政治調整部門...やはり三つの部門が必要かしら」
羽ペンを手に、マリナは組織図を描いていく。しかし、頭の中では、先ほどのリヴァイアとの会話が繰り返し蘇っていた。
「私たち」という言葉が、どれほど自然に口から出たことか。そして、それを受けたリヴァイアの表情が、どれほど穏やかで暖かかったことか。
コンコンと扉を叩く音が聞こえる。
「入ってください」
「遅くまでお疲れさまです」
エリアス卿が顔を出した。手には温かい飲み物のカップを持っている。
「ハーブティーをお持ちしました。夜中の作業には、これが一番です」
「ありがとうございます」
マリナはカップを受け取りながら、エリアス卿の表情を観察した。今日の議論を経て、彼の中で何かが変わったように感じられる。
「卿は、今日の提案をどう思われますか?正直なところを」
「正直に申し上げれば...驚きました」
エリアス卿は椅子に腰を下ろし、考え深げな表情を浮かべる。
「当初、我々は技術の管理という観点からのみアプローチしていました。しかし、リヴァイア王子とマリナさんの提案は、技術を通じた国際協力の新しい形を示してくれました」
彼の声には、感嘆が込められていた。
「人工島での国際監視機関、海洋環境保護基金、段階的信頼構築...これらはすべて、従来の外交では考えられなかった発想です」
「でも、実現は困難かもしれません」
マリナは素直に懸念を口にする。
「各国の思惑は複雑で、特に軍事部門の反対は根強いと思います」
「確かに、バートン准将の反応は予想通りでした」
エリアス卿が苦笑いを浮かべる。
「しかし、彼でさえ、技術の分散管理システムには関心を示していました。完全な軍事的独占は不可能だと理解したのでしょう」
「それに」と彼は続ける。
「明日は、さらに多くの国の代表が参加します。ゲルマーナ連邦の技術顧問、東方王国の海洋学者、中央諸島の環境保護官...彼らの視点が加わることで、議論はより多角的になるでしょう」
マリナの胸に、期待と不安が入り交じった感情が広がる。より多くの参加者は、より多様な可能性を意味するが、同時により複雑な利害関係も生み出す。
「マリナさん、一つお聞きしたいことがあります」
エリアス卿の表情が、急に真剣になった。
「あなたは、この技術を世界に広めることを、本当に望んでいるのでしょうか?」
予期しない質問に、マリナは一瞬言葉を失った。
「もちろんです。海洋環境の改善は、全世界の課題ですから」
「いえ、技術的な意義ではなく、個人的な感情として、です」
エリアス卿の視線が、マリナの奥底を見透かそうとするように鋭くなる。
「リヴァイア王子との関係が、あなたの判断に影響を与えていませんか?」
マリナの頬に、微かな赤みが差した。
「それは...」
「誤解しないでください」
エリアス卿が慌てて手を振る。
「批判しているわけではありません。むしろ、お二人の関係こそが、この技術協力の真の基盤だと思っているのです」
彼の言葉に、マリナは安堵と同時に新たな戸惑いを感じた。
「技術は、人と人との信頼関係なくしては成立しません。そして、お二人の間に生まれた信頼は、種族を超えた協力の可能性を示してくれました」
「でも、それが個人的な感情に基づいているとしたら...」
「それの何が問題でしょうか?」
エリアス卿の問いかけに、マリナは答えに窮した。
「歴史を変える技術の多くは、個人的な動機から生まれています。愛する人のため、故郷のため、信じる理想のため...純粋に客観的な技術開発など、存在しないのです」
夜の静寂の中で、彼の言葉が静かに響いた。
「大切なのは、その個人的な動機が、より大きな善に繋がるかどうかです。そして、お二人の関係は、確実に世界をより良い方向に導いています」
マリナは、カップに残ったハーブティーを見つめる。湯気が立ち上る様子が、複雑に絡み合った感情のようにも見えた。
「明日の会議では、より具体的な協力体制について話し合われます」
エリアス卿が立ち上がる。
「どうか、自分の気持ちに正直でいてください。技術者としてのマリナさんと、一人の女性としてのマリナさん、どちらも大切な存在なのですから」
扉が静かに閉まった後、マリナは一人執務室に残された。窓の外では、月光が海面に銀の道を描いている。
リヴァイアとの関係が、技術協力にどのような影響を与えているのか。それは、マリナ自身にもまだ明確には分からなかった。
しかし、一つだけ確かなことがある。彼と共に歩む未来への道筋が、今日また一歩明確になったということだった。
国際監視機関の設立、人工島の建設、海洋環境保護基金の創設...それらすべてが、技術と愛情の両方を基盤として築かれようとしている。
マリナは組織図に向き直り、新たな項目を書き加えた。
「文化交流部門」
技術の協力だけでなく、人と人、文化と文化の橋渡しも、この機関の重要な役割となるだろう。そして、その最初の架け橋こそが、彼女とリヴァイアの関係なのかもしれない。
月が中天に昇る頃、マリナはようやく羽ペンを置いた。明日から始まる新しい交渉に向けて、準備は整った。
技術と愛情、理想と現実、個人と世界...複雑に絡み合ったすべての要素が、一つの新しい枠組みの中で調和を見つけようとしている。
その枠組みがどのような形になるのか、まだ誰にも分からない。しかし、確実に言えることがあった。
この物語は、まだ始まったばかりだということだった。
「こんなに早くから読書とは、感心ですね」
振り返ると、リヴァイアが熱いハーブティーを運んでくる。湯気が朝の光に踊りながら、彼の青い髪に金色の帯を織り込んでいく。
「ありがとう。でも、これは読書というより...現実逃避かも」
マリナは苦笑いを浮かべながらカップを受け取った。ハーブの香りが鼻腔を満たし、少しだけ心が軽くなる。
「昨日の交渉内容に、不安を感じているのですか?」
リヴァイアは彼女の隣に腰を下ろした。間近で見る彼の瞳には、深い海の色が宿っている。マリナは思わず見とれそうになり、慌てて視線を羊皮紙に戻した。
「不安というか...この技術が本当に良い方向に向かうのか、わからなくて」
羊皮紙に記された「国際監視機関設置計画」の文字が、朝日を受けて浮かび上がる。昨日エリアス卿が提示した内容は、想像以上に大規模なものだった。
~~~
午前の陽光が海面を無数の宝石に変える頃、アビス・パレスの大会議室には各国の代表が集まっていた。昨日の基本合意を受けて、今日は具体的な監視機関の設立について話し合われる予定だった。
「では、本日の議題に入らせていただきます」
エリアス卿が立ち上がると、室内の空気が引き締まった。彼の後ろには、昨日は姿を見せなかった人物がいる。軍服に身を包んだ中年の男性で、胸に光る徽章が高い地位を物語っていた。
「こちらは、我が国の技術評価部長であるバートン准将です。今回の件について、より専門的な見地からご意見をいただくためにお越しいただきました」
バートン准将は無表情のまま一礼する。その冷たい視線がマリナに向けられた時、彼女は背筋に氷のような感覚を覚えた。
「技術評価部...」
リヴァイアが小さく呟く。竜人族の間では、人間の軍事技術開発部門について、あまり良い印象を持たれていないことをマリナは知っていた。
「准将、昨日の交渉内容はすでにご報告済みですが、改めて現場をご覧いただきたく」
エリアス卿の提案に、バートン准将は無言で頷いた。しかし、その表情に変化はない。まるで、すべてを値踏みするような冷淡な視線だった。
「魔素採掘技術の革新的成果については、確かに興味深いものがあります」
准将の声は、計算された抑揚で響く。
「しかし、この技術の軍事的応用可能性についても、我々は検討せねばなりません。特に、魔素濃度500%という数値は、従来の魔法兵器の概念を根本から覆すものです」
会議室の空気が急に重くなった。ダゴン長老とエルダー・コラリアが視線を交わす。彼らの表情には、明確な警戒が浮かんでいた。
「准将、我々の技術は平和利用を前提としています」
マリナが立ち上がる。彼女の声には、静かな強さが込められていた。
「もちろん、そう承知しております。しかし、技術というものは、開発者の意図に関わらず様々な用途に転用される可能性があります。我々としては、そうした懸念を事前に検討し、適切な管理体制を構築したいのです」
バートン准将の発言は理路整然としていたが、その底に流れる意図をマリナは敏感に感じ取った。これは、技術の独占的管理を目指す布石ではないだろうか。
「准将のご懸念は理解できます」
意外なことに、最初に口を開いたのはリヴァイアだった。
「しかし、この技術は竜人族の海洋魔法と人間の工学技術の融合により生まれたものです。どちらか一方だけでは、決して実現できない成果でした」
彼の言葉には、穏やかながらも毅然とした響きがある。
「つまり、技術の管理についても、両種族の協力なくしては成立しないということです。軍事転用を防ぐ最も確実な方法は、技術の根幹部分を分離し、それぞれが別々に管理することです」
リヴァイアの提案に、会議室がざわめいた。これは、技術の分散管理という、新しい概念だった。
「興味深いご提案ですね」
バートン准将の目に、初めて関心の光が宿る。
「具体的には、どのような分離を想定されているのでしょうか?」
~~~
午後の議論は、予想以上に建設的な方向に進んだ。リヴァイアの提案を基に、技術の分散管理システムが具体的に検討されていく。
「人間側は工学的な装置設計と製造を担当し、竜人族側は海洋魔法の調律と制御を担当する。どちらか一方だけでは、システムは機能しない」
マリナが図表を使いながら説明する。昼食の間に急いで作成した資料だったが、基本的な概念は明確に示されていた。
「さらに、第三者機関による定期的な監査を実施し、技術の平和利用を確保します。この第三者機関には、各国の代表だけでなく、独立した技術者や学者も参加していただきます」
エリアス卿が補足する。昨日の交渉以降、彼は明らかにこの技術の平和利用に向けて積極的な姿勢を見せていた。
「では、この国際監視機関の設置場所はどこを想定されているのでしょうか?」
新たな質問者は、今朝到着したばかりの南方諸島連合の代表だった。褐色の肌に深い緑の瞳を持つ女性で、海洋貿易に従事する商人らしい実践的な雰囲気を漂わせている。
「それは、重要な論点ですね」
ダゴン長老が考え込むような表情を浮かべる。
「技術の性質上、海洋環境に近い場所が理想的です。しかし、どの国の領海内に設置するかは、政治的に微妙な問題となります」
「では、中立的な海域に設置するというのはいかがでしょうか?」
リヴァイアの提案に、全員が注目した。
「アルケイオス大陸の南東海域には、どの国の領海にも属さない公海があります。そこに、人工的な研究島を建設し、監視機関の本部とするのです」
この発想には、誰もが驚いた。人工島の建設は、技術的には可能でも、費用と労力が膨大になる。
「人工島の建設費用は、参加各国の分担とし、維持費用は技術利用による収益の一部で賄う」
マリナが続ける。彼女の頭の中では、すでに具体的な運用計画が組み立てられていた。
「収益の分配は、技術提供者である竜人族と人間、監視機関の運営費、そして海洋環境保護基金に均等に分割します」
「海洋環境保護基金?」
南方諸島連合の代表が関心を示す。
「この技術は、海洋環境を改善する効果があります。それを活用して、世界中の海洋保護活動を支援するのです。技術の恩恵を、全世界が享受できるようにします」
マリナの説明に、会議室の雰囲気が変わった。これまでの議論は、主に技術の管理と制限に焦点が当てられていたが、この提案は積極的な活用と貢献を前面に打ち出していた。
「素晴らしい構想ですね」
エリアス卿が感嘆の声を上げる。
「技術の軍事転用を防ぎながら、同時に世界的な環境改善に貢献する。これほど建設的な提案は、なかなかありません」
しかし、バートン准将の表情は依然として慎重だった。
「構想としては理想的ですが、実現可能性はいかがでしょうか?特に、各国の利害調整は容易ではないと思われます」
「それについては、段階的な実施を提案します」
リヴァイアが立ち上がる。
「まず第一段階として、現在のアビス・パレス周辺海域での実証実験を継続し、その成果を各国に開示します。第二段階で、希望する国での小規模な技術導入を開始し、第三段階で国際監視機関を正式に設立します」
彼の提案は、現実的でありながら理想を失わない、絶妙なバランスを保っていた。
「各段階で、参加国は技術の平和利用について改めて確認し、合意を更新します。万が一、軍事転用の兆候が見られた場合は、即座に技術提供を停止します」
マリナが補足する。
「つまり、信頼関係を段階的に構築しながら、技術の普及と管理を両立させるということですね」
南方諸島連合の代表が理解を示す。
「ええ。そして、この信頼関係の基盤となるのが、透明性の高い国際監視機関です」
~~~
夕刻の海は、黄金の絨毯を敷き詰めたように輝いていた。一日の長い議論を終えて、マリナとリヴァイアはアビス・パレスの庭園を歩いている。
「今日は、本当にありがとう」
マリナが振り返ると、リヴァイアの顔に夕日が柔らかな影を落としていた。
「人工島の提案も、段階的実施の案も、あなたがいなければ思いつかなかった」
「いえ、あれはマリナさんの構想があったからこそです」
リヴァイアは穏やかに微笑む。
「環境保護基金の発想は、技術者である彼女ならではのものでした。私は、それを実現するための方法を考えただけです」
二人の間に、心地よい沈黙が流れる。海面を渡る風が、マリナの髪を優しく撫でていく。
「でも、まだ課題は山積みね」
マリナがため息をつく。
「バートン准将の反応を見ていると、軍部は簡単には諦めないと思う。それに、他国からの技術獲得圧力も、これから強くなるでしょう」
「確かに、容易な道のりではありませんね」
リヴァイアが海を見つめる。夕日が海面に映り、無数の金の鱗のように煌めいていた。
「しかし、今日の議論で確信したことがあります」
「確信?」
「この技術は、確実に世界を変える力を持っているということです。そして、その変化を良い方向に導くためには、私たち一人一人の選択が重要だということです」
彼の言葉に、マリナは胸の奥で何かが暖かく広がるのを感じた。
「私たち、ね」
ふと口にした言葉に、自分でも驚く。いつの間にか、彼女にとってリヴァイアは、共に未来を築いていく存在になっていた。
「ええ、私たちです」
リヴァイアが振り返ると、その瞳に夕日の輝きが宿っている。
「マリナさん、あなたと出会えて、本当に良かった。技術者としてだけでなく、一人の人間として、あなたを心から尊敬しています」
マリナの心臓が、急に早鐘を打ち始めた。彼の言葉には、単なる敬意を超えた何かが込められているように感じられる。
「私も...あなたと出会えて良かった」
声が少し震えているのを、マリナは自分でも意識した。
「最初は、立場の違いばかりが気になっていたけれど、今は...あなたと一緒にいると、何でも乗り越えられる気がする」
リヴァイアの瞳が、一瞬大きく見開かれた。そして、ゆっくりと穏やかな笑顔が浮かぶ。
「それは、私も同じ気持ちです」
彼の声は、夕風に溶けるように優しかった。
「この技術が世界に広がっていく過程で、きっと様々な困難に直面するでしょう。しかし、あなたがそばにいてくれるなら、私は何も恐れません」
二人の間の距離が、自然に縮まっていく。夕日に染まった海が、静かに彼らを見守っていた。
~~~
夜が更けて、アビス・パレスの執務室では、明日の会議に向けた準備が続いていた。マリナは机に向かい、国際監視機関の組織構造を詳細に検討している。
「技術部門、環境部門、政治調整部門...やはり三つの部門が必要かしら」
羽ペンを手に、マリナは組織図を描いていく。しかし、頭の中では、先ほどのリヴァイアとの会話が繰り返し蘇っていた。
「私たち」という言葉が、どれほど自然に口から出たことか。そして、それを受けたリヴァイアの表情が、どれほど穏やかで暖かかったことか。
コンコンと扉を叩く音が聞こえる。
「入ってください」
「遅くまでお疲れさまです」
エリアス卿が顔を出した。手には温かい飲み物のカップを持っている。
「ハーブティーをお持ちしました。夜中の作業には、これが一番です」
「ありがとうございます」
マリナはカップを受け取りながら、エリアス卿の表情を観察した。今日の議論を経て、彼の中で何かが変わったように感じられる。
「卿は、今日の提案をどう思われますか?正直なところを」
「正直に申し上げれば...驚きました」
エリアス卿は椅子に腰を下ろし、考え深げな表情を浮かべる。
「当初、我々は技術の管理という観点からのみアプローチしていました。しかし、リヴァイア王子とマリナさんの提案は、技術を通じた国際協力の新しい形を示してくれました」
彼の声には、感嘆が込められていた。
「人工島での国際監視機関、海洋環境保護基金、段階的信頼構築...これらはすべて、従来の外交では考えられなかった発想です」
「でも、実現は困難かもしれません」
マリナは素直に懸念を口にする。
「各国の思惑は複雑で、特に軍事部門の反対は根強いと思います」
「確かに、バートン准将の反応は予想通りでした」
エリアス卿が苦笑いを浮かべる。
「しかし、彼でさえ、技術の分散管理システムには関心を示していました。完全な軍事的独占は不可能だと理解したのでしょう」
「それに」と彼は続ける。
「明日は、さらに多くの国の代表が参加します。ゲルマーナ連邦の技術顧問、東方王国の海洋学者、中央諸島の環境保護官...彼らの視点が加わることで、議論はより多角的になるでしょう」
マリナの胸に、期待と不安が入り交じった感情が広がる。より多くの参加者は、より多様な可能性を意味するが、同時により複雑な利害関係も生み出す。
「マリナさん、一つお聞きしたいことがあります」
エリアス卿の表情が、急に真剣になった。
「あなたは、この技術を世界に広めることを、本当に望んでいるのでしょうか?」
予期しない質問に、マリナは一瞬言葉を失った。
「もちろんです。海洋環境の改善は、全世界の課題ですから」
「いえ、技術的な意義ではなく、個人的な感情として、です」
エリアス卿の視線が、マリナの奥底を見透かそうとするように鋭くなる。
「リヴァイア王子との関係が、あなたの判断に影響を与えていませんか?」
マリナの頬に、微かな赤みが差した。
「それは...」
「誤解しないでください」
エリアス卿が慌てて手を振る。
「批判しているわけではありません。むしろ、お二人の関係こそが、この技術協力の真の基盤だと思っているのです」
彼の言葉に、マリナは安堵と同時に新たな戸惑いを感じた。
「技術は、人と人との信頼関係なくしては成立しません。そして、お二人の間に生まれた信頼は、種族を超えた協力の可能性を示してくれました」
「でも、それが個人的な感情に基づいているとしたら...」
「それの何が問題でしょうか?」
エリアス卿の問いかけに、マリナは答えに窮した。
「歴史を変える技術の多くは、個人的な動機から生まれています。愛する人のため、故郷のため、信じる理想のため...純粋に客観的な技術開発など、存在しないのです」
夜の静寂の中で、彼の言葉が静かに響いた。
「大切なのは、その個人的な動機が、より大きな善に繋がるかどうかです。そして、お二人の関係は、確実に世界をより良い方向に導いています」
マリナは、カップに残ったハーブティーを見つめる。湯気が立ち上る様子が、複雑に絡み合った感情のようにも見えた。
「明日の会議では、より具体的な協力体制について話し合われます」
エリアス卿が立ち上がる。
「どうか、自分の気持ちに正直でいてください。技術者としてのマリナさんと、一人の女性としてのマリナさん、どちらも大切な存在なのですから」
扉が静かに閉まった後、マリナは一人執務室に残された。窓の外では、月光が海面に銀の道を描いている。
リヴァイアとの関係が、技術協力にどのような影響を与えているのか。それは、マリナ自身にもまだ明確には分からなかった。
しかし、一つだけ確かなことがある。彼と共に歩む未来への道筋が、今日また一歩明確になったということだった。
国際監視機関の設立、人工島の建設、海洋環境保護基金の創設...それらすべてが、技術と愛情の両方を基盤として築かれようとしている。
マリナは組織図に向き直り、新たな項目を書き加えた。
「文化交流部門」
技術の協力だけでなく、人と人、文化と文化の橋渡しも、この機関の重要な役割となるだろう。そして、その最初の架け橋こそが、彼女とリヴァイアの関係なのかもしれない。
月が中天に昇る頃、マリナはようやく羽ペンを置いた。明日から始まる新しい交渉に向けて、準備は整った。
技術と愛情、理想と現実、個人と世界...複雑に絡み合ったすべての要素が、一つの新しい枠組みの中で調和を見つけようとしている。
その枠組みがどのような形になるのか、まだ誰にも分からない。しかし、確実に言えることがあった。
この物語は、まだ始まったばかりだということだった。
0
あなたにおすすめの小説
ふしあわせに、殿下
古酒らずり
恋愛
帝国に祖国を滅ぼされた王女アウローラには、恋人以上で夫未満の不埒な相手がいる。
最強騎士にして魔性の美丈夫である、帝国皇子ヴァルフリード。
どう考えても女泣かせの男は、なぜかアウローラを強く正妻に迎えたがっている。だが、将来の皇太子妃なんて迷惑である。
そんな折、帝国から奇妙な挑戦状が届く。
──推理ゲームに勝てば、滅ぼされた祖国が返還される。
ついでに、ヴァルフリード皇子を皇太子の座から引きずり下ろせるらしい。皇太子妃をやめるなら、まず皇太子からやめさせる、ということだろうか?
ならば話は簡単。
くたばれ皇子。ゲームに勝利いたしましょう。
※カクヨムにも掲載しています。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました
蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。
だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる