最弱職【掃除士】が実は環境最強でした ~ダンジョンの浄化で世界を救う~

宵町あかり

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第14話 浄化士ギルドの成長

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冒険者ギルドの朝は早い。

俺たちが報告のためにギルドホールに入ると、すでに多くの冒険者たちが依頼板の前に集まっていた。誰もが新しい依頼を探し、今日の稼ぎを計算している。その喧騒の中で、俺たちの姿を見つけた者たちがざわめき始めた。

「おい、あれって浄化士ギルドの連中じゃないか?」

「昨日、採石場跡に向かってたよな」

「まさか、古代遺跡に挑んだのか?」

視線が集まる。好奇と懐疑が入り混じった視線だ。浄化士ギルドは設立されたばかりで、まだ実績らしい実績もない。多くの者にとって、俺たちはまだ「変わり者の集団」程度の認識だった。

「翔太殿!」

ギルドマスターのガルドが、二階の執務室から降りてきた。その表情は真剣そのものだ。昨夜、俺たちが街に戻ったという報告を受けていたのだろう。

「お待ちしておりました。早速ですが、詳しい報告をお聞かせ願えますか」

「はい」

俺たちは、ガルドに連れられて会議室へと向かった。すれ違う冒険者たちが、興味深そうにこちらを見ている。

会議室には、すでに数名の幹部職員が集まっていた。遺跡探索の報告は、それだけ重要な案件として扱われているようだ。

「では、順を追って報告してください」

ガルドが促す。俺は深呼吸をして、昨日の出来事を語り始めた。



「古代遺跡の入口は、想像以上に瘴気で汚染されていました」

俺は、測定器の数値を示しながら説明する。通常のダンジョンの10倍以上という異常な濃度に、職員たちが驚きの声を上げた。

「しかし、浄化を進めることで、安全に探索することができました。そして、地下へと続く階段を発見したんです」

「地下階層が存在したのか」

ガルドが身を乗り出す。

「はい。そこで遭遇したのが、これです」

俺は、守護像の破片を机の上に置いた。石の表面には、まだ微かに古代文字が刻まれている。

「守護像……レベル45の魔物でした」

会議室がざわめいた。

「レベル45!? それを君たちが?」

「全員で協力して、なんとか」

俺は謙遜を込めて答えた。実際、仲間たちの協力なしには不可能だった戦いだ。

「さらに下層では、瘴気の泉を発見しました。そこには――」

俺は言葉を選んだ。封印の間の存在を、どこまで明かすべきか。

「瘴気の化身と呼ぶべき存在が待ち構えていました。レベル55です」

「ご、55……」

職員の一人が絶句する。それは、中級冒険者でも苦戦するレベルだ。

「倒したのか?」

ガルドの問いに、俺は頷いた。

「瘴気の源となっていた結晶を破壊し、化身も浄化しました。ただ――」

俺は一呼吸置いた。

「遺跡の最深部には、まだ調査が必要な箇所があります。千年前の封印が施されているようで、今の俺たちの力では、完全な浄化は困難と判断しました」

これが、俺の出した結論だった。封印の間の詳細は伏せつつ、危険性は正確に伝える。

ガルドは、しばらく考え込んでいた。そして、ゆっくりと口を開く。

「分かりました。詳細な調査は、後日改めて行うことにしましょう。それにしても、レベル55の敵を倒すとは……」

彼の目が、俺を見つめる。そこには、評価と同時に疑問も含まれていた。

「翔太殿、あなたのレベルは?」

「54です」

「ほぼ同レベル。それでも、通常なら一人では……」

「仲間がいたからです」

俺は、リク、アンナ、グスタフを見渡した。

「浄化士ギルドは、レベルではなく適性と連携で戦います。それが、俺たちの強みです」

ガルドは、満足そうに頷いた。

「素晴らしい。その成果は、きちんと評価させていただきます。報酬は後ほどお渡ししますが、それとは別に――」

彼は立ち上がり、俺たちに向かって深く頭を下げた。

「古代遺跡の瘴気は、長年の懸案事項でした。それを浄化してくださったこと、心より感謝します」



会議室を出ると、ギルドホールは昼前の賑わいを見せていた。

俺たちの報告内容は、すでに噂として広まり始めているようだ。冒険者たちの視線が、先ほどとは明らかに違っている。

「すげぇな、レベル55を倒したって本当か?」

「浄化士ギルドって、そんなに強いのか?」

囁き声が聞こえてくる。その中に、別の声も混じっていた。

「でも、レベルの低い奴らの集まりだろ?」

「まぐれじゃないの?」

賛否両論。それが、今の浄化士ギルドに対する評価だった。

「翔太さん」

受付嬢のレイラが声をかけてきた。その手には、数枚の紙が握られている。

「これ、今朝から届いている申込書です」

「申込書?」

紙を受け取って見ると、そこには「浄化士ギルド加入希望」と書かれていた。

「昨日の噂を聞いて、参加したいという人が増えているんです」

レイラが微笑む。申込書は全部で七枚。それぞれに名前と職業、簡単な自己紹介が書かれていた。

俺は申込書に目を通す。従者、家政術師、施設管理士……多くは、戦闘職ではない者たちだった。彼らは、今まで冒険者として活躍する場がなかった。だが、浄化士ギルドなら、新たな可能性があるかもしれない。

「面接をしよう」

俺は決めた。

「今日の午後、ギルドの訓練場で適性テストを行います」



午後二時、訓練場には十名ほどが集まっていた。申込書を出した七名に加えて、噂を聞きつけた者たちも参加している。

年齢も職業も様々だ。若い見習い従者から、引退間近の老魔術師まで。彼らに共通しているのは、期待と不安が入り混じった表情だった。

「集まってくれてありがとう」

俺は、全員を見渡しながら話し始めた。

「浄化士ギルドは、レベルや職業で差別しません。大切なのは、浄化適性と、仲間と協力する心です」

そう言って、俺は浄化のデモンストレーションを行った。光が手のひらから溢れ、訓練場の隅に溜まっていた埃や汚れが消えていく。

「すげぇ……」

誰かが呟いた。

「これから、皆さんの適性をテストします。といっても、難しいことはありません。この光を感じ取れるか、そして自分でも発動できるか。それだけです」

俺は一人一人の前に立ち、浄化の光を見せた。そして、同じように光を出してみるよう促す。

最初の数名は、残念ながら適性がなかった。光を感じることはできても、自分では発動できない。彼らは肩を落として訓練場を後にした。

「次の方」

俺の前に立ったのは、若い女性だった。ローブを着ているところを見ると、魔法使いのようだ。

「ミーナです。元素魔術師をしています」

彼女は緊張した様子で自己紹介をした。レベルは15。攻撃魔法を専門としているが、威力不足で最近は依頼が取れないという。

「手を出してください」

俺が浄化の光を見せると、ミーナの瞳が大きく見開かれた。

「これは……魔力とは違う、もっと純粋な何か……」

彼女は目を閉じ、集中し始めた。そして――

小さな光が、彼女の手のひらに灯った。

「できた!」

ミーナが歓声を上げる。確かに浄化の光だ。まだ弱々しいが、適性は十分にある。

「合格です。ようこそ、浄化士ギルドへ」

次に前に出たのは、がっしりとした体格の中年男性だった。鎧は着ているが、所々に傷跡が見える。

「カールだ。元騎士団員だったが、五年前の戦いで膝を壊してな」

彼は苦笑いを浮かべた。レベルは20。戦闘経験は豊富だが、怪我のせいで前線には立てない。

「浄化なら、激しく動かなくてもいいと聞いてね」

カールは真剣な表情で俺の光を見つめた。そして、ゆっくりと手を伸ばす。

彼の手から、安定した光が生まれた。ミーナよりも強く、落ち着いた光だ。

「経験が活きているようですね」

「戦場で培った集中力が、役に立つとは思わなかった」

カールが照れくさそうに笑った。

最後に興味深い志願者が現れた。

「ボクはシン! よろしく!」

元気よく挨拶をしたのは、獣人族の少年だった。狼の耳と尻尾を持つ彼は、まだ十二歳。レベルは5と低いが、その瞳には強い意志が宿っている。

「ボク、鼻がいいんだ。瘴気の臭いもすぐ分かる!」

シンは得意げに鼻を鳴らした。確かに、獣人族の感覚は人間を遥かに上回る。瘴気の探知には、大いに役立つだろう。

「じゃあ、やってみようか」

俺が光を見せると、シンは目を輝かせた。

「キレイ……」

彼は両手を合わせ、祈るような仕草をした。すると――

予想以上に強い光が、シンの全身から溢れ出した。

「これは……」

俺も驚いた。レベル5とは思えない、純粋で強力な浄化の光だ。獣人族特有の、自然との親和性が影響しているのかもしれない。

「すごいね、シン」

「ホント!? ボク、すごい!?」

シンが尻尾を振りながら喜ぶ。その無邪気な笑顔に、周りの者たちも笑みを浮かべた。



結局、十名の志願者のうち、適性があったのは三名だけだった。

ミーナ、カール、シン。彼らが、浄化士ギルドの新たな仲間となった。

「今日から、君たちは浄化士ギルドの一員だ」

俺は、新メンバーを含めた全員を見渡した。リク、アンナ、グスタフの既存メンバーも、温かく新人を迎えている。

「早速だけど、明日から訓練を始める。浄化の技術を磨き、連携を深めていこう」

「はい!」

全員が力強く返事をした。

訓練場を後にしようとした時、入口に人影があることに気づいた。ケンジだった。

「……何の用だ?」

俺は警戒しながら尋ねた。ケンジとは、王城での一件以来、まともに話していない。

「聞いたぜ、レベル55の敵を倒したって」

ケンジの表情は複雑だった。嫉妬、苛立ち、そして僅かな……興味?

「まぐれだろ? 掃除士の分際で」

「まぐれでも何でもいい」

俺は肩をすくめた。

「俺は俺の道を行く。君は君の道を行けばいい」

ケンジの顔が歪む。何か言いたそうにしていたが、結局何も言わずに立ち去った。

その後ろ姿を見送りながら、俺は思った。いつか、分かり合える日が来るのだろうか。今はまだ、その時ではないようだが。



翌日から、本格的な訓練が始まった。

訓練場には、朝早くから全員が集まっている。既存メンバーも新メンバーも、やる気に満ちていた。

「まずは、基礎から行こう」

俺は、浄化の基本技術を改めて説明した。光の生成、維持、そして放出。これらを安定して行えるようになることが、第一歩だ。

「リク、手本を見せてくれ」

「は、はい!」

リクが前に出る。彼は既に二週間の訓練を積んでいる。その成果は、確実に現れていた。

「【浄化】!」

リクの手から、安定した光が放たれる。以前より強く、持続時間も長い。訓練場の床に撒いた泥が、きれいに消えていく。

「すごい……」

ミーナが感嘆の声を上げた。

「あんな風になれるんだ」

「君たちもすぐにできるようになる」

俺は新メンバーを励ました。

「大切なのは、毎日の積み重ねだ」

訓練は順調に進んだ。ミーナは理論派らしく、浄化のメカニズムを分析しながら効率的な方法を模索している。カールは豊富な経験を活かし、状況に応じた浄化方法を工夫していた。

そして、シンは――

「できた! 見て見て!」

天性の才能を発揮していた。彼の浄化の光は、日に日に強くなっている。まるでスポンジが水を吸うように、技術を吸収していく。

「シンすごいな……」

リクが悔しそうに呟いた。自分より年下で、レベルも低いシンに追い抜かれそうになっているのだ。

「焦るな、リク」

俺は彼の肩に手を置いた。

「成長の速さは人それぞれだ。大切なのは、諦めないことだよ」

「……はい」

リクは唇を噛みしめ、また訓練に戻った。その姿を見て、俺は微笑んだ。ライバルの存在は、成長を加速させる。シンとリクは、互いに高め合っていくだろう。

午後になると、連携訓練を始めた。

「浄化士ギルドの強みは、個人の力ではなくチームワークだ」

俺は、模擬瘴気を訓練場に設置した。濃度の違う瘴気を、複数箇所に配置する。

「これを、全員で協力して浄化する。制限時間は十分だ」

最初は、バラバラだった。各自が思い思いに動き、効率が悪い。だが、回を重ねるごとに、連携が生まれ始めた。

「シン、そっちの瘴気を探知して!」

「オッケー! あっちに濃いのがあるよ!」

「ミーナさん、理論的に最適な浄化順序は?」

「まず外側から攻めて、中央に追い込むのが効率的です」

「よし、カールさんは中央で待機を」

「了解だ」

アンナが的確に指示を出し、全員がそれに従う。俺は最小限のサポートに徹し、彼らの自主性を重んじた。

制限時間ギリギリ、最後の瘴気が浄化された。

「やった!」

シンが飛び上がって喜ぶ。他のメンバーも、達成感に満ちた表情を浮かべていた。

「素晴らしい連携だった」

俺は全員を褒めた。

「これが、浄化士ギルドの戦い方だ」



一週間後、訓練の成果は数字となって現れた。

━━━━━━━━━━━━━━━
【レベルアップ】
━━━━━━━━━━━━━━━
 リク:Lv.6 → Lv.9
 アンナ:Lv.7 → Lv.10
 グスタフ:Lv.11 → Lv.14
 ミーナ:Lv.15 → Lv.17
 カール:Lv.20 → Lv.22
 シン:Lv.5 → Lv.8
━━━━━━━━━━━━━━━

全員が確実に成長している。特に既存メンバーの成長は著しかった。日々の訓練と、実戦での経験が相乗効果を生んでいる。

「みんな、よく頑張った」

俺は仲間たちを見渡した。

「そろそろ、次の目標を決めよう」

全員の視線が、俺に集まる。

「古代遺跡の封印の間……あそこを完全に浄化する」

重い沈黙が流れた。封印の間の存在は、既にメンバーには伝えてある。千年前に封印された、恐ろしい存在。それを浄化するという、途方もない目標。

「でも、今の俺たちには無理だ」

俺は正直に言った。

「最低でも、全員がレベル30以上は必要だろう。そして、もっと多くの仲間も」

「じゃあ、どうするんですか?」

アンナが尋ねる。

「段階を踏む」

俺は計画を説明し始めた。

「まず、小規模なダンジョンや瘴気溜まりを浄化して、経験を積む。同時に、仲間を増やし、浄化士ギルドの規模を拡大する。そして、十分な準備が整ったら――」

俺は拳を握りしめた。

「封印の間に挑む」

「賛成!」

シンが真っ先に手を挙げた。

「ボク、もっと強くなる!」

「俺も……負けてられない」

リクも決意を新たにする。

一人、また一人と、全員が頷いた。不安はあるだろう。恐怖もあるだろう。それでも、彼らは前を向いている。

この仲間となら、どんな困難も乗り越えられる。俺はそう確信した。

夕暮れ時、訓練を終えた俺たちは、ギルドホールに向かった。

「翔太殿!」

ガルドが笑顔で迎えてくれた。

「浄化士ギルドの評判、日に日に上がっていますよ」

「そうですか?」

「小さな瘴気溜まりの浄化依頼が、いくつか来ています。報酬は少ないですが……」

「受けます」

俺は即答した。どんな小さな依頼でも、経験になる。そして、人々の役に立てる。

「それと、もう一つ」

ガルドが真剣な表情になった。

「近々、王都で大規模な浄化が必要になるかもしれません。その時は、協力していただけますか?」

王都での浄化。それは、浄化士ギルドの真価が問われる機会になるだろう。

「もちろんです」

俺は力強く答えた。

こうして、浄化士ギルドは着実に成長していく。メンバーは増え、実力は向上し、評判も上がっていく。

だが、これはまだ始まりに過ぎない。

古代遺跡の封印の間で見た、あの恐ろしい存在。いつか必ず、完全に浄化してみせる。

そのために、俺たちは今日も前に進む。

一歩一歩、確実に。

仲間と共に、浄化士ギルドの名の下に。

━━━━━━━━━━━━━━━
【翔太】
 職業:掃除士
 レベル:54
 HP:1,140 / 1,140
 MP:1,680 / 1,680
 
 スキル:
 ・浄化 Lv.13
 ・聖浄化 Lv.1
 ・浄化領域展開 Lv.3
 ・鑑定 Lv.5
 ・収納 Lv.5
 ・剣術 Lv.4
━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━
【浄化士ギルド・メンバー】
 
 リク(従者)Lv.9
 アンナ(家政術師)Lv.10
 グスタフ(施設管理士)Lv.14
 ミーナ(元素魔術師)Lv.17
 カール(元騎士)Lv.22
 シン(獣人族)Lv.8
━━━━━━━━━━━━━━━
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